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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 2012年APEC閣僚会合共同声明 附属書B:信頼できるサプライチェーンに向けて

[場所] ウラジオストク
[年月日] 2012年9月6日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

 信頼できるサプライチェーンは,地域及び世界全体における経済,エネルギー,食糧及び環境安全に寄与する一方で,持続可能な開発を維持するために極めて重要である。この点,我々は,個々のエコノミーの状況を考慮しつつ,アジア太平洋地域での物品及びサービスの移動の時間,費用及び不確実性を削減する観点から,2015年までに APEC 全体でサプライチェーン能力を10%改善させるため, APEC サプライチェーン連結枠組及び 2010 年横浜首脳宣言の目標を実施することの重要性を再確認する。

 我々は,個々の難点に対処するための政策を特定することによってサプライチェーン能力を改善するためのより体系的なアプローチをとること,エコノミーがこれらの政策を実際に有しているか決定するための診断報告書を発展させること,及びエコノミーにこれらの政策を実施するための目標とされる支援を提供する能力構築活動に着手することの必要性を再認識する。我々は,2014年に目標とされる能力構築に着手できるよう,2012年にサプライチェーンのインベントリー案の発展及び診断報告書の作成に基づく体系的アプローチの実施を開始するよう,実務者に対し指示する。

 我々は,サプライチェーン能力の 10 パーセント改善目標に向けた APEC エコノミーの進展を測るための中間評価の一部としての 2012 年 APEC サプライチェーン連結性自己評価調査を発展させるための政策支援ユニットによる作業を評価する。我々は,低価値貨物の貿易を円滑化するための商業的に有用な免税輸入限度額(デミニミス)の利益に関するエコノミーの理解を増加させること及び「免税輸入限度額基準の設定によるサプライチェーン連結性の強化に対する APECパスファインダー」拡大のための能力構築イニシアチブを歓迎する。我々は,APEC地域における国境を越える貿易に関する電子的原産地証明(ECO)の実施に向けた作業の重要性に留意する。

 自然的及び人為的災害に加え,世界経済の課題は,我々の脆弱さ並びにサプライチェーンの連結性及びAPECエコノミーの信頼できるサプライチェーンの構築努力の重要性を強調する。したがって,我々は 2012 年の信頼できるサプライチェーンの確立に関する議論を評価し,既存の問題及び地域エコノミー間での運輸対話に関する将来的発展分野の議論に重要な貢献をした 2011 年 9 月にアメリカのサンフランシスコで開催された第 7 回運輸閣僚会合とともに, 2012 年 8 月にロシアのサンクトペテルブルクにおいて開催されたAPEC特別運輸閣僚会合の結果を歓迎する。

 サプライチェーンの連結性を改善し,ビジネス界及び消費者の利益を保護し,また,物品輸送の速度及び質を高めるために,また大量の貨物への管理の透明性及び機会を保証し,危険物品及び有害物質を追跡する能力を高めるために,サプライチェーンは高度道路交通システム(ITS),衛星測位システム(GNSS)をベースとした監督システム,電波による個体識別(RFID)をベースとした自動貨物識別システム及び自動輸送管理物流サービスを含むスマート技術を備えた単一の現代的ネットワークと見なされる必要がある。

 この点において,サプライチェーンに次世代技術のより広範な実施方法を見出すこと,ITS及びGNSSシステムに,主要な運輸ハブ,協同一環輸送システム,アジア太平洋における物流経路を設けること,サプライチェーンの安定及び安全のための様々な衛星システムから得られたデータを主として用いた情報交換を強化するために参加エコノミーの宇宙機関間の相互交流を増加させること,輸送フロー管理,物流情報サービスネットワーク並びにコンテナ及び貨物の認識システムを調和すること通じての実施を含め,ITS実施の努力の調整を向上させること,また,危険貨物の国境を越える運輸の際の緊急事態に備え早期警戒技術に関する共通のアプローチを発展させることを含め,サプライチェーンの技術的側面を向上させる可能な方法に関して、すべての利害関係者と協議を持つことが重要である。我々はまた,サプライチェーンの信頼性のために高度技術を改善し,実施する際のメンバー・エコノミーのための能力構築プログラムを作成する必要性を強調する。

 APEC エコノミーの増加する貿易及び運輸及び取引費用の低減からの実質的経済利益を支え,並びにサプライチェーンの効率性及び安定性を高め,より良いビジネス環境を生み出す目的をもって,我々は,産業界及び関連利害関係者とともに,すべてのモードにわたって,運輸及びサプライチェーン・ルートの多様化の可能性を分析する。サプライチェーン・ルートのための最適の仕組みを構築することは,地域経済統合を強化し,地域におけるより高い経済成長率を支える主要な要因になりえる。

我々はまた,国境を越える輸送に関連する緊急事態に備えた早期警戒システムの調整に向けた努力を支持する。自然的及び人為的な災害への我々のエコノミーの脆弱さを認識しつつ,我々は緊急時の備え及び災害回復力を強化し,並びに APEC エコノミー,コミュニティー及びビジネス間の科学的及び技術的協力を促進することへ向けた措置を取るべきである。この点,我々は災害管理,国境を越える運輸における緊急事態早期警戒システムのためのベスト・プラクティスの特定及び APEC エコノミーにおける危機管理センター間の協力の発展に関するさらなる調和並びにより良い連結性を支持する。

我々は,サプライチェーンの信頼性を強化するためのビジネス継続計画の促進 に関するガイドライン提案とともに,APEC中小企業作業部会(SMEWG) 及び緊急事態への備え作業部会(EPWG)からの共同作業を認識する。緊急事態への備え及びSMEの自然災害強じん性を改善するための作業は,信頼できるサプライチェーンを確立し,APEC地域におけるサプライチェーンの信頼性強化のための災害予防/対応メカニズムを促進するイニシアチブを前進させ続けるために必要不可欠である。