データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 2012年APEC閣僚会合共同声明

[場所] ウラジオストク
[年月日] 2012年9月6日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

1.我々,APEC閣僚は,セルゲイ・ラヴロフ外務大臣及びアンドレイ・ベ ロウソフ経済発展大臣の共同議長の下,2012年9月5-6日,ロシアのウ ラジオストクで会合した。

2.「成長のための統合・繁栄のための革新」というAPEC2012年のテー マの下,我々は,現在のアジア太平洋地域の状況を見直し,本年APECが成 し遂げた進展を評価し,APECの更なる前進に向けた方策を議論した。

3.未だ世界経済の不確実性に直面する中,アジア太平洋地域は,アジア太平 洋自由貿易圏(FTAAP)を含む,ボゴール目標への強固なコミットメント と地域経済統合(REI)課題を通じて,世界経済の主たる起動力及び国際貿 易・投資の主要な牽引役であり続ける。我々は,均衡ある,あまねく広がる, 持続可能で,革新的かつ安全な成長を達成する2010年及び2011年にお ける首脳の指示を実施し,地域経済統合の強化,貿易の拡大,グリーン成長の 促進及び規制の一貫性の向上により,継ぎ目のない地域経済を構築するという 強いコミットメントを改めて表明する。我々は,これらの目標を念頭に置きつ つ,2012年におけるAPECの優先分野の下で,以下の課題について議論 した。

4.我々は,ルファス・エルサ世界貿易機関(WTO)事務局次長,ヴィクト ル・フリステンコ・ユーラシア経済委員会委員長と同様に,APECビジネス 諮問委員会(ABAC),東南アジア諸国連合(ASEAN),太平洋経済協力 会議(PECC),太平洋諸島フォーラム(PIF)及びAPEC事務局の本会 議への参加を歓迎する。

貿易・投資の自由化及び地域経済統合

多角的貿易体制の強化

5.国際貿易は,雇用創出及び強固で持続可能かつ均衡ある成長及び開発に対 して重要な貢献をする。全てのAPECエコノミーがWTOの現加盟国である ことが,同組織において具体化されたルールに基づいた制度の持つ価値への信 頼を強めている。我々は,世界経済の成長及び発展に不可欠なものとしてWT

Oを支持し,保護主義に対抗し,開発を支援することに強くコミットすること に変わりない。我々は,このシステムを強化するコミットメントを再確認する。 第8回WTO閣僚会議の指針及びホノルルでの首脳からの指示に沿って,我々 は,実務者に対し,そのマンデートに合致して,ドーハ・ラウンドの成功裡の 多角的な妥結を達成することを目的とした差異のある,斬新で,信頼性のある アプローチを採り続けるよう指示する。我々は,貿易円滑化及びその他の開発 関連課題に関するものを含む,より近い時期における成果のための潜在性によ り奨励される。

6.これらのコミットメントを念頭に置きつつ,我々が保護主義と闘うWTO の能力,特に透明性及び貿易監視機能を向上させるために作業することが重要 である。我々は,国際通貨基金(IMF)による本年及び来年の世界経済成長 への見通しが下向きであること及び,世界における保護主義の事例の増加を憂 慮しつつ留意する。このような状況の展開により,開かれた市場を保つために 更なる行動をとる緊急性が増大している。我々は,投資,若しくは物品, サービ スの貿易に対する新たな障壁を設けること, 新たな輸出制限を課すこと, 又は 輸出刺激措置を含むすべての分野におけるWTO非整合的な措置を実施するこ とを控えるという首脳によりなされた誓約を2015年末まで延長するコミッ トメントを再確認する。我々は,危機の発生以降に導入された貿易歪曲的,保 護主義的な措置を後退させ,WTOの規定と整合的に考慮されるが,重大な保 護主義的影響を及ぼす措置の導入を最大限抑制し,そのような措置が実施され た場合には,速やかに是正することを継続することにコミットする。我々は, WTOに対し,保護主義的措置の監視を深めるよう奨励する。

7.我々は,WTO情報技術協定(ITA)における対象品目の範囲及び加盟 国数を拡大する交渉の進行中の作業を歓迎する。ITAが成功裡に拡大すれば, 世界経済に対して切望される推進力を与えることになり,市場を開放して地域 貿易を円滑化するAPECの中心的使命に資することになる。我々は,実務者 に対して,良い交渉成果を迅速に達成できるよう真剣に作業するよう指示する。 我々はまた,ITAに最近加入した新たな加盟国を歓迎し,全てのAPECエ コノミーに対し,当該協定に加入するよう要請する。

貿易及び投資自由化の推進

8.我々は,アジア太平洋地域における自由で開かれた貿易・投資というボゴ ール目標に向けたAPECによる継続した進展を歓迎する。ボゴール目標進捗

報告及びダッシュボード指標に関する政策支援ユニットに基づいて,我々は, APECエコノミーが,貿易及び投資への障壁を削減する注目すべき取組を行 う中,地域間,部門間で進展が公平でないため,より多くの作業が実施される 必要があることに留意する。我々は,ボゴール目標の達成にコミットし続ける。 我々は,能力構築プログラム,特に,能力構築需要イニシアチブ(CBNI) に関する行動計画枠組の実施を支援する。

9.我々は,貿易・投資の自由化及び円滑化,地域統合(REI)の強化に関 する2012年のAPEC優先事項に関係するアジェンダを進展させるAPE Cの作業の概要を提供する,閣僚に対する2012年貿易・投資委員会(CT I)年次報告を承認する。

次世代貿易・投資課題への対処

10.我々は,2012年の次世代貿易・投資課題としての貿易合意における 透明性課題に関する作業を歓迎し,企業,従業員のための貿易環境を改善し, 非関税障壁に対処し,FTAAPの実現に貢献する目標への重要な貢献として の,APECエコノミーにより指針として利用されるRTAs/FTAsのた めの透明性に関する更新されたAPECモデル章(付属書A参照)を承認する。

11.我々は,能力構築,世界的なサプライチェーンのベストプラクティスの 共有,世界的な生産チェーンへの中小企業(SMEs)の参画,効果的で非差 別的かつ市場主導型のイノベーション政策の促進を含む,2011年に特定さ れた次世代貿易・投資課題に対処し続ける。我々は,貿易及び投資にとって自 由で開かれた環境を通じて,国境を越えたイノベーションを促進するためのシ ンガポールで開催されたイノベーション及び貿易に関するAPEC会合の結果 に留意する。我々は,実務者に対し,この分野における2011年の首脳のコ ミットメントをより良く実施することにおいて,エコノミーを支援するイノベ ーション及び貿易の実施慣行を生み出すことにより,この作業を進展させるよ う指示する。

12.我々は,実務者に対し,2013年に地域統合及び経済成長に関する現 地調達要求の影響を更に研究し,貿易を歪曲するより,むしろ向上させる方法 で,エコノミーが雇用創出,競争的な目標を促進し得るようなあり得べき方法 を議論するよう指示する。

サービス貿易の自由化及び円滑化

13.我々は,自由で開かれた貿易・投資というボゴール目標の達成へのサー ビス貿易の自由化及び円滑化の持つ重要性を強調し,この地域の継続的な作業 を支援する。このため,我々は,この地域におけるサービス統計の集計及び質 を向上させるAPECの作業のための包括的枠組を提供する,サービス貿易統 計の行動計画を支援する。我々は,APEC地域のサービス貿易を円滑化する 強力で,ビジネスに配慮した手法として,APECサービス貿易アクセス要件 (STAR)データベースの拡大を歓迎する。我々はまた,任意の自由化を含 む,サービス部門における自由化の度合いを評価することを助けるその他の手 法及び指標の発展を歓迎する。

投資円滑化

14.我々は,APEC投資円滑化行動計画(IFAP)の継続的な実施を通 じたものを含む,APEC地域の投資環境の改善の重要性を確認し,IFAP の進展を計測するための枠組の策定において達成された進展を歓迎する。我々 は,特に,投資規制の発展における透明性の確保により,地域における投資の 流れを増加させるコミットメントを再確認する。我々は,実務者に対し,投資 紛争の防止及び迅速な解決のためのメカニズムを強化する更なる措置を探求す るよう指示する。我々は,投資に関する官民対話を歓迎し,実務者に対し,定 期的に同様の対話をもつように指示する。我々は,官民パートナーシップ枠組 の中で,より広範な作業を促進することにコミットする。

規制の調和及び規制協力

15.我々は,アジア太平洋地域の規制の調和及び良き規制慣行の促進により 貿易に対する不必要な技術障壁を防止する作業を歓迎し,そのため,良き規制 慣行を利用するWTOのTBT協定のメンバーの支援に関する2012年にお けるAPECの研究の鍵となる提言と整合的に,規制を策定する際に,貿易の 影響を考慮することにコミットする。我々は,実務者に対し,規制における適 合性評価の良き規制慣行に関する2013年会合に焦点を当てるよう指示する。 我々は,ルール設計の内部調整の確保,規制の影響力の評価,公共の相談の実 施によることを含む,良き規制慣行の実施を強化する,2011年のAPEC 首脳によるコミットメントの実施に向けたエコノミーの進展に留意する。我々

は,実務者に対し,関連する能力構築及び情報共有活動を実施し続けるよう指 示し,APECメンバーエコノミーにおける良き規制慣行の基本研究を更新す ることにより,エコノミーによるこれらの活動の実施の評価を,2013年の SOM3までに実施するという実務者に対するより早期の指示に留意する。 我々はまた,エコノミーが良い規制慣行の実施に関し,2013年に報告する ことに留意する。

16.我々は,グリーン建築のエネルギー効率の能力を向上させる,スマート グリッドへの投資及び配置のための規制的アプローチに関する作業を歓迎し, 太陽光技術に関する更なる作業を支援する。我々はまた,医療製品サプライチ ェーンの質及び統合,市民に対する安全かつ効果的な医療製品の利用可能性を 確保するためのロードマップの策定及び実施を歓迎する。我々は,実務者に対 し,APEC規制協力計画の実施に関する作業を続け,更なるフォーラム横断 的な協力を促進するよう指示する。

17.APECエコノミーが金属の主要な生産者,消費者の間に存在している ことを考慮しつつ,我々は,世界的,地域的な化学管理における金属性質の認 識が,域内,域外におけるエコノミーとの対話において考慮されなければなら ないと信じる。我々は,金属及び合金に関する法律及び規制の策定が透明で, 健全な科学的に基づいたものでなければならず,必要以上に貿易制限的となら ず,規則の結果を考慮すべきであることを確認する。その失敗は,経済成長, 生活水準,環境,人の健康及び発展の保護に関する不必要な負の影響をもたら す。我々は,化学の分類及び表示に関する国際調和化システム(GHS)を実 施する作業を歓迎し,実務者に対し,規制協力及び規制能力を促進し,ビジネ スの機密を保護することと同時に規制プロセスの透明性を高め,データ交換を 円滑化し,国際的な化学製品アジェンダに貢献する作業を継続するよう指示す る。

情報通信技術の促進

18.我々は,個人間のみでなく,政府,企業,そして消費者に偉大な交流を もたらす電子環境に対する信用及び信頼の重要性及び必要性を再確認する。 我々は,電子文書を含む国境を越えた情報の安全な流通によってグローバルな 電子環境に対する信用及び信頼の促進を評価する。我々は,ICT部門の代表 との対話の醸成によることを含む,ICTリテラシーを拡大するAPECの作 業を支持する。我々はまた,ICTの開発及び適切なシステムや技術の促進を

通じて,災害への準備,対応,復興に向けた加盟エコノミーの協力を奨励する。

越境個人情報保護規則の実施

19.我々は,情報流通の障壁を低減し,消費者プライバシーを高め,さらに 地域のデータプライバシー体制を越えた相互運用性を促進するため,APEC 越境 プライバシールール(CBPR)制度を実施する2011年のAPEC首脳の コミットメントを実現させるためのAPECの作業を歓迎する。我々は,EU・ BCR(拘束的企業規則)とAPEC・CBPR間の同質性及び潜在的な相互 運用可能性の課題に関する議論を通じたものを含む,CBPRの実施に期待す る。

環境物品貿易の促進

20.我々は,グリーン成長及び持続可能な開発アジェンダの重要な部分とし て,本年,環境物品,サービスにおける貿易・投資を促進する2011年の首 脳によるコミットメントの実施に向けた大幅な進展を達成した。我々は,直接 的,積極的なグリーン成長及び持続可能な開発目標に対して貢献するAPEC 環境物品リストを策定するという2011年の首脳の指示を実現させるために 利用可能なあらゆる資源を投入した。我々は,首脳による同リストの承認を歓 迎するとともに提言する。また,各APECエコノミーのWTOにおける立場 を予断することなく,各エコノミーの経済状況を考慮しつつ,2015年末ま でに,同リストに記載された環境物品に課される関税の実行税率を,5パーセ ント以下に削減するという決意を再確認する。

グリーン成長の促進

21.我々は,貿易及び環境問題に関する地域的な協力を強化することにコミ ットする。我々は,環境適合的措置の進展における環境保護と並行して貿易・ 開発目標を考慮することと同様に,貿易への重大な影響をもたらし得る環境適 合的措置及び要件に関し,エコノミー間での国際基準,透明性及び情報交換を 促進することを通じたものを含む,共通のグリーン成長目標を進展させ,貿易 及び環境政策の間における相互支援を強化する作業の更なる重要性を強調する。 我々は,APEC環境担当大臣会合の成果,特に,APECエコノミーがグリ ーン成長を通じた持続可能な開発を達成することを支援する世界グリーン成長 制度の将来的な役割に対する展望を歓迎する。

22.我々は,エネルギー効率の改善の重要性を認識する。我々は,電気自動 車,車輌間,車輌インフラ間の通信といった,新たな自動車技術の強力な配備 を円滑化する定期的な協力及び収斂に関する作業を歓迎する。安全を向上させ, 交通渋滞及び排出を削減するこれらの新技術の重要性に鑑み,我々は,実務者 に対し,向上した技術及び代替燃料車の普及を円滑化させる政策アプローチに 関する更新の共有を続けるよう指示する。我々は,再生物品に関する貿易を円 滑化するメンバーによりなされた進展を歓迎し,実務者に対し,新たに生産さ れていない物品に関するエコノミーの関税・非関税措置を編集し続けることを 促す。我々は,再生物品の貿易円滑化に関するパスファインダーへのエコノミ ーの参加を支援する,進行中の能力構築に関する研究会及び再生に関する物的 資源の更なる開発に期待する。

23.我々は,エコノミーの能力を考慮しつつ,経済及び環境の目標を達成す るために重要である,生物多様性の保全,水資源と越境水路を含む,天然資源 の持続可能な利用,越境汚染との闘い,気候変動を緩和し,これに適応し,再 生可能なエネルギー利用を増加させる措置を取ることの重要性に留意する。 我々は,違法貿易並びに環境保護及び天然資源に関連する腐敗に立ち向かうた めの作業を賞賛する。我々は,森林保全,合法的に伐採された林産物の貿易の 促進,持続可能な森林経営及び修復の重要性に留意し,違法伐採及び関連する 貿易に立ち向かうために本年行われた作業を賞賛する。我々は,国際協力,能 力構築,取締に関する取組を強化することにより,違法な野生生物の売買,違 法・無報告・無規制(IUU)漁業及びそれに関連する貿易との闘いにコミッ トする。我々は,野生生物の生息数の持続可能な管理及び保全を向上させるこ とと同様に,野生生物の違法な需給を制限するよう措置をとることにコミット する。

エネルギー安全保障の強化

24.我々は,地域のエネルギー安全保障課題に対処するAPECの作業を賞 賛する。APEC地域の増加するエネルギー需要に留意しつつ,我々は,地域 のエネルギー安全保障,経済成長及びAPEC地域の繁栄を進展させる自由で 開かれたエネルギー貿易市場,透明な投資枠組の重要性を確認する。地域のエ ネルギー・ミックスの幅を広げることはまた,地域のエネルギー安全保障に対 する主要な貢献となる。地域のエネルギー・ミックスにおいて化石燃料が引き 続き果たす重要な役割を認識しつつ,天然ガスの増大した生産,貿易は,低炭 素経済及び持続可能な成長目標への移行において,グリーン成長アジェンダを

進展させ得る。関心を有するエコノミーによる原子力エネルギーの安全かつ保 障された利用はまた,地域のエネルギー・ミックスの幅を広げることに貢献す る。同時に,我々は,無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金を合理化 し,段階的に廃止する必要性を強調する。我々はまた,APEC地域の石油及 びガスの緊急事態への対応を向上する作業を歓迎する。我々は,高騰している 石油価格によって形成された相当なリスクへの警戒を続けるとともに,市場が 十分かつ適時に供給されることを確保するために国際エネルギー機関(IEA) による適切な行動を歓迎する。

金融リテラシーの向上

25.我々は,21世紀において全ての人にとって重要な生活スキルとしての 金融リテラシーの重要性,及び経済,金融の安定性,インクルーシブな発展, 個人及び家族の福祉を効果的に支援する全てのエコノミーの取組の重要な要素 を認識する。我々は,G20首脳により承認された金融教育のための国家戦略 に関するOECD/金融教育に関する国際ネットワーク(INFE)ハイレベ ル原則の重要性を認識し,エコノミー全域,地域,地方それぞれの状況を考慮 しつつ,APECエコノミーによるエコノミー全体の戦略の作成及び実施を歓 迎する。鍵となる優先事項の一つとして,我々は,特に,生徒のニーズに適応 し,効果的であると判明しているアプローチを評価しまた拡大する,状況に応 じかつ専門的な学習フレームワークを通じた将来の世代のための金融教育の重 要性を認識する。この目的を達成するため,我々は,学校における金融教育の ためのOECD/INFEガイドラインを歓迎し,APECエコノミーに対し, その活用を検討することを奨励する。我々はまた,APECエコノミーに対し, 2015年の生徒の学習到達度調査(PISA)における金融リテラシー測定 への参加を検討することを奨励する。

構造改革アジェンダの促進

26.我々は,APEC構造改革新戦略(ANSSR)実施を追跡するための 2013年の中間評価を実施することを含む,2010年に承認されたANS SRの実施に関する更なる進展を歓迎する。

食料安全保障の強化

APECの食料安全保障に関するカザン宣言の履行

27.我々は,地域的,世界的な食料安全保障を確保するコミットメントを再 確認する。我々は,2012年5月にロシアのカザンで開催された第2回食料 安全保障担当大臣会合における,APECの食料安全保障に関するカザン宣言 の承認を歓迎し,開かれた透明な市場の促進,持続可能な農業生産の増大及び 生産性の向上,世界の環境条件の多様性及び農業の正の外部経済の考慮,共同 の研究及び開発の実施,農業技術普及の支援,食品の安全性及び質の向上,市 場を志向した貿易の円滑化,食料市場及び関連インフラの開発,食料サプライ チェーン全体を通じた収穫後ロスの削減,自然災害及び人為的災害により緊急 事態に直面する人々を含む,脆弱層における食料へのアクセス向上,海洋生態 系の持続可能な管理に向けた作業,違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び それに関連する貿易の阻止を通じて,食料安全保障を強化するAPEC食料安 全保障担当大臣によりなされたコミットメントを再確認する。我々は,特に, 主要食料輸入に頼るAPECエコノミーにおいて,食料輸出に係る禁輸及びそ の他の制限措置が食料価格の乱高下を生じさせ得ることを認識しつつ,APE C首脳の保護主義に対するコミットメントを再確認する。食料安全保障上の危 機的な状況に対する世界食料計画(WFP)の貢献を念頭に置きつつ,我々は, 非商業的な人道目的で購入された食料に対する制限及び非常に高い税を撤廃す るというコミットメントを再確認する。

持続可能な農業

28.食料安全保障の複雑性及び横断的な性格に鑑み,我々は,持続可能な農 業成長を達成する必要性を強調する。この目標を追求し,我々は,既存の革新 的な農業技術を積極的に採用しつつ,農業への投資を促進する具体的な活動を 行う。我々は,公共及び民間の農業投資の増加を促進する環境をつくり,農業 生産の増大に関する海外直接投資の積極的な役割に留意することにコミットす る。そのため,我々は,世界銀行,FAO,IFAD,及びUNCTADによ って作成された責任ある農業投資原則(PRAI)を評価し,それらの原則に 関する現在進行中の広範囲の協議を支援し,土地保有,漁業及び森林の責任あ るガバナンスのための任意ガイドライン(VG)の承認を歓迎した。我々は, 農業及び気候変動に関するグローバル・リサーチ・アライアンスの下で行われ た作業を歓迎する。

食料安全保障に関する政策パートナーシップ

29.我々は,APEC食料安全保障に関する政策パートナーシップ(PPFS)及び域内の食料安全保障を達成するために必要な政策的,技術的な協力を 確保するハイレベルのメカニズムを設立するためのAPECエコノミーとビジ ネス界共同の取組を賞賛する。我々は,地域のエコノミーに対する持続的な食 料安全保障を提供するために十分な食料システム構造の設立を2020年まで に成功させるPPFSの長期的目標を支援する。我々は,関連するAPEC作 業部会を巻き込んだ食料安全保障政策の検討のための第一義的な諮問フォーラ ムとしてのPPFSを歓迎する。我々は,PPFSの長期的な目標及びその達 成に向けた具体的な提言を作成するための作業部会の設立を達成するためのロ ードマップの策定を構想する,2012―2013年PPFS行動計画の採択 を賞賛する。

農業技術協力と能力構築

30.我々は,農業技術協力が,食料生産の増大,メンバーエコノミーのため の農業技術の分野における能力構築の強化及び域内で市場を基礎としてかつ自 主的に高度な農業技術を普及させることにおいて,引き続き極めて重大な役割 を果たすことを認識した。我々は,持続可能な環境・自然資源の管理及び食料 安全保障に関連するインフラ整備を促進し,農業情報に関するシステム及び分 析を強化し,自然災害,人為的災害及び国境を越えた脅威への準備の改善を行 いつつ,教育及び訓練を通じた技術協力及び能力構築活動を支援する。

能力構築を通じた食品の安全性の強化及び規制協力の奨励

31.我々は,食品安全の能力構築及び規制協力は,公衆衛生を促進し,貿易 を円滑化し,食料安全保障を増加させることにおいて,重要な役割を果たして いることを認識する。我々は,予防的管理措置及び試験所の能力強化を含む, 食品安全の能力構築を展開する官民パートナーシップを発展させる,食品安全 規制者及びパートナーシップ訓練機関ネットワーク(PTIN)間の対話構築 における食品安全協力フォーラム(FSCF)の作業を認識する。我々は,こ れらの取組から生まれ,世界的な食品安全の能力構築の拡大のためのモデルと してFSCF及びPTINを活用する,世界銀行により管理される世界食品安 全パートナーシップの多数ドナーによる信託基金の創設を支援する。

APECにおける食料安全保障のための革新的バイオテクノロジーの応用

32.我々は,安全性確保のための透明かつ機能的な規制制度を奨励し,革新

的バイオテクノロジーへの投資及びその開発,応用を円滑化する,APECに おける食料安全保障のための作業を歓迎する。我々は,食料安全保障及び持続 可能性に貢献するバイオテクノロジーの重要な潜在性と,遺伝子組換え物質が 微量混入した場合を含め,安全性を確保し,制度への国民の信頼を促進し,貿 易を円滑化する透明な規制制度をエコノミーが構築することを支援するAPE Cの役割を再認識する。

APECにおける食料安全保障政策に関する研究

33.我々は,地域的な食料安全保障の課題に対し,より効果的に対処するた めに,政策環境と同様に現在の食料安全保障のニーズと優先事項を強調したA PEC地域における食料安全保障政策に関する政策支援ユニットの研究成果に 留意する。我々はまた,食料供給可能量,経済的かつ物理的な食料へのアクセ スと食料活用に関する四次元食料安全保障コンセプト・モデルに基づいたAP EC地域の食料安全保障事情の綿密な分析に留意する。我々は,人口増加,気 候変動,天然資源に係る制約,減少する農業投資,自然災害,上昇する食料価 格,栄養教育の欠如を含む,全APECエコノミーに共通する食料安全保障上 の懸念に関する研究についての有益な成果を認識した。我々は,特に,国内レ ベルで実施されている食料安全保障政策が,その他のエコノミーの食料安全保 障上の目標を妥協させ,地域的な食料安全保障の状況を損ない得ることがある という発見を強調する。

アジア太平洋食料安全保障プラットフォーム

34.我々は,食料安全保障に関する地域的な情報を共有するためのウェブに 基づいた情報源として立案された,アジア太平洋食料安全保障情報プラットフ ォーム(APIP)の2012年3月における日本での立上げを歓迎する。我々 は,APIPに対し,2つのシステム間の協力を強化するために,2011年 6月,パリにおいて,G20の枠組みの中で創設された農業市場情報システム (AMIS)との連結を確立することに向け踏み出すよう奨励する。我々は, 情報共有及びこの重要な手法の実効性を増大させるため,APIPに関連デー タ及び情報を提供するよう,APECエコノミーに要請する。

海洋生態系,漁業及び養殖業の持続可能な管理への支援

35.我々は,海洋生態系,漁業及び養殖業の持続可能な管理に関するイニシ アチブの実施を確保する作業を支援する。我々は,IUU漁業及びそれに関連 する貿易の阻止,全体的なアプローチを通じた海洋資源の持続可能性への対処 に関する取組を支援する。我々は,漁業及び養殖業が,多くのAPECエコノ ミーの生計及び経済的福祉にとって不可欠である海洋生態系の重要な要素であ ることを認識し,実務者に対し,この領域における作業を深めることを指示す る。我々は,首脳による成長戦略に沿って地域経済統合を支援することで,海 洋関連の課題を主流に取り込むための取組を奨励する。

信頼できるサプライチェーンの確立

サプライチェーン連結性の実施

36.2015年までにサプライチェーンの能力をAPEC全体で10パーセ ント改善することを達成し,地域における信頼性のあるサプライチェーンを確 保することは,APECにとって重要な優先事項であり続ける。このため,我々 は,サプライチェーンの信頼性及び能力を改善するため本年実行される作業を 歓迎する(付属書B参照)。我々はまた,サプライチェーンの可視性を促進し, サプライチェーンへのメンバーエコノミーの関与を促進することを目的として, 電子商取引や準プロバイダーの物流能力を含む,サプライチェーン連結性の実 施における能力構築の強化をするため本年実行される作業を歓迎する。

税関手続の向上

37.我々は,免税輸入限度額(デミニミス)に関する能力構築における進展 を含む,サプライチェーン連結枠組行動計画内での関連する下位フォーラムに より実施された作業を歓迎し,APEC各エコノミーにおけるシングルウィン ドウの開発に関する作業をし,各エコノミーのシングルウィンドウシステム間 の連携,税関関連の課題に関する民間部門との協力を強化するバーチャル税関 ビジネス作業部会の形成を促進する。我々は,税関水際取締,偽造品及び海賊 版のためのAPECガイドラインを支援する知的財産権(IPR)水際取締に 関する能力構築活動と同様に,偽造電子製品に焦点を当てた,第2回のIPR 任意取締活動の実施を歓迎する。我々はまた,税関手続の安全及び円滑化に貢 献する世界税関機構(WCO)/APEC・SAFE「基準の枠組」に沿って,

APEC地域全域において,認定事業者(AEO)制度の実施のための能力を構築 する継続的な作業を支援する。

サプライチェーン信頼性の改善

38.我々は,サプライチェーンの強化に関する議論の結果を評価し,201 2年のAPEC交通作業部会の活動が,各エコノミーの状況を考慮しつつ,時 間,費用,アジア太平洋地域を通じて移動する物品及びサービスの不確実性の 削減の観点から,2015年までにサプライチェーンの能力を10パーセント 向上させるAPEC全体での目標を達成するというゴールを規定した,201 0年の首脳宣言において発表された指示の実施に向けて重要な一歩を示すもの と信じる。我々は,全ての様式において交通及びサプライチェーンルートを多 様化,最適化し,サプライチェーン連結性を強化し,物流情報サービス網を確 立し,スマートテクノロジーをサプライチェーンの全ての要素に備え付け,災 害の予防及び管理の分野における協力を拡大するために産業及び関係する利害 関係者とともに機会の探求を継続するロシアのサンクトペテルブルグで201 2年8月に開催されたAPEC交通大臣特別会合においてなされた提言を支援 する。

国境を越えた貿易・渡航の保障及び災害強じん性の強化

39.我々は,APECテロ対策及び安全な貿易についての総合的な戦略の第 1回目の年次進捗報告を歓迎し,地域通商及び渡航をより安全かつ効率的,強 じん性あるものにする首脳のビジョンを進展させるAPECの下位フォーラム によりなされた重要な達成を認識する。我々は,対テロ・タスクフォースのマ ンデートの拡張及び安全なサプライチェーン,渡航,金融,インフラという戦 略の優先的かつ横断的な分野を通じて,APEC,民間部門,その他の組織内 における強調,協力の強化に対する同タスクフォースの貢献を歓迎する。我々 は,CTTFの能力構築活動の有効性を強化し続ける進行中の取組を認識する。

40.我々は,地域におけるビジネス活動を強化し,開かれた安全な貿易を確 保するため,APECエコノミー間における,ビジネス旅行の更なる円滑化の 重要性を再確認する。この点に関して,我々は,より効率的で,安全かつ促進 されたAPEC域内の渡航を提供するために,APECビジネス・トラベル・ カード(ABTC)システムを強化する取組を含む,APEC渡航円滑化イニ シアチブを進展させるフォーラム横断的な協力,を賞賛する。これに関連して,

我々は,アジア太平洋の強固な経済のための観光の円滑化に関するハバロフス ク宣言を歓迎する。

41.我々は,メンバーエコノミーに対し,ベストプラクティスを共有,採用 し,国内外でより旅行者を保護するための国内的措置を設計,確立する有益な 参考を提供する,旅行者の安全を確保するためのAPECガイドラインを承認 する。我々は,APECメンバーに対し,ガイドラインの規定を実施する実践 的かつ焦点を当てた活動を行うよう奨励する。

42.我々は,自然災害に対するアジア太平洋地域の脆弱性を認識し,化学物 質緊急時における第一応答者のための包括的なウェブサイトに関する作業とい った,探索,救助及び犠牲者を最小化する災害後の緊急援助の動員を容易にさ せることを目的とした協力を通じたものを含む,緊急事態への備え及び災害に 対する強じん性を高めることの重要性を再確認する。我々は,これらの取組に 留意し,サプライチェーンの信頼性を向上させるビジネス継続計画の促進に関 する更なる作業を奨励する。我々はまた,統合的な災害リスク金融に関する政 策が,全体的な災害対応準備の一部となることを認識する。

革新的成長を醸成する集中的な協力

イノベーション協力及びビジネスの役割の強化

43.我々は,競争的な商業部門,非営利的部門の双方とともに,共同の科学 的研究,技術の始期,普及,商業化サイクルに関係するイノベーション関係者 間の世界的なネットワーク形成を促進する取組を支援する。我々は,イノベー ションの促進における必須の要因として,政府,民間部門及び学界間の協力の 重要性を認識する。我々は,APECイノベーション・アジェンダに関する議 論におけるビジネスの役割を拡張する重要性を確認する。我々は,科学,技術 及びイノベーションに関する政策パートナーシップ(PPSTI)及びその新 たな参考規約への産業科学技術作業部会(ISTWG)の移行を支援する。P PSTIは,協力を強化し,メンバーエコノミーのイノベーション能力を向上 させ,科学,研究及び技術協力を発展させ,アイデア商品化のためのインフラ を支援し,政策枠組を策定し,イノベーションに友好的な環境を醸成する。我々 は,ビジネスがその作業において果たすべき重要な役割を認識し,ABACに 対し,PPSTIへの民間部門の代表を任命し,その活動に積極的に参加する よう求める。この点に関し,我々は,ABACの支援の下に,PPSTIに対

し,短期的,長期的な目標を含んだ行動計画を作成するよう指示する。

44.我々は,ロシアのカザンにて2012年5月に開催されたエネルギー効 率のためのナノテクノロジーに関するイノベーション技術対話(ITD)の最 終提言に留意し(付属書C参照),実務者に対し,これを実施するよう奨励する。 将来のITDは,イノベーション政策対話と同様に,新たに形成されたPPS TIの枠組の中で実施される。我々は,アジア太平洋エコノミーが直面する現 在の課題に対処するという観点から,鍵となる新興の技術市場,関連技術,そ の応用のための展望を議論するため,ITDを実施するよう奨励する。

知的財産

45.我々は,APECエコノミーにおけるプログラムの質及び有効性を向上 させるため,知的財産(IP)権教育,訓練を促進する活動を発展させること を通じて,知的財産保護及び執行における協力を奨励する。我々はまた,革新 的な成長を促進する目標の達成に向けた不可欠な措置として,APECエコノ ミーにおける関係者間の協力を奨励する。

革新的かつ輸出志向の中小企業育成

46.我々は,APEC地域における非差別的かつ市場主導型のイノベーショ ン環境を形成するために,中小・零細企業(SMMEs)間で革新的慣行の発 展及び採用の重要性を認識する。我々は,革新的なアイデアを生むことにおい て,中小・零細企業のもつ深い役割を認識し,実務者に対し,革新的な中小・ 零細企業を支援する追加的な作業を実行するよう指示する。我々は,域内で中 小・零細企業にとってビジネスを行うこと-中小・零細企業に影響を及ぼす貿 易・投資への障壁に対処し,貿易,経済,情報及び技術交換,協力を促進し, 域内の中小・零細企業間の国際的な競争力を高める-をより容易にするという コミットメントを再確認する。我々はまた,ビジネス倫理の任意規範のための APEC原則の実施における進展を歓迎し,能力構築活動を通じた倫理的なビ ジネス慣行を強化する更なるAPECの取組に期待する。

教育に関する協働,協力及びネットワーク形成の促進

47.我々は,APECエコノミーの革新的成長のために,教育に関する協働 を増加させ,教育サービスにおける国境を越えた交流を促進することの重要性

を認識する。我々は,韓国で2012年5月に開催された第5回APEC教育 大臣会合の結果及び教育に関する協働を促進する教育大臣の取組を賞賛する。 我々は,実務者に対し,APECエコノミーにおける学生,研究者,教育機関 の移動を向上させる優先事項を進めるよう指示する(付属書D参照)。我々は, 透明性向上のために協調し,能力構築を図ることで,APECエコノミーが, 国境を越えた教育及び教育サービスの交流に資する環境を大幅に改善し得るこ とを確認する。

起業及び若手起業家の支援

48.我々は,革新的成長のための若手研究者,変革者,起業家のための支援 の重要性を認識する。我々は,イノベーション,研究及び教育のためのAPE C科学賞(ASPIRE)を通じて,地域において協力する若手科学者の継続 的な認識を促す。我々は,若手起業家ネットワーク(YEN)の実施を支援し, 定期的にYEN会合をもつことの利益を認識する。我々はまた,APEC起業 加速イニシアチブ(ASA)を歓迎し,APEC域内での起業の発展を支援, 促進するために,YEN及びASAに関する,メンバー間での更なる協力を奨 励する。

革新的経済における女性の役割及び経済的エンパワーメントの促進

49.我々は,革新的な経済発展,人的資本の開発,ビジネスの拡大における 女性が果たす極めて重要な役割を認識し,APEC女性と経済フォーラム声明 の履行にコミットする。我々は,女性の経済的参画を制限する多くの障壁が未 だ存在することを認識し,実務者に対し,APECのフォーラムにおいて,A PEC域内での女性の更なる経済的参画,エンパワーメントに向けた政策及び 具体的な活動に関して作業するよう指示する。我々はまた,これらの成果を達 成するため,APECの下位フォーラムと女性と経済に関する政策パートナー シップとの間での更なる横断的協力を奨励する。

人的資本への投資:健康なライフスタイル及び母子保健の促進

50.出生前から老齢期までの人生のあらゆる段階における健康への投資が将 来への投資であることを認識しつつ,我々は,APECエコノミーにおける非 感染性疾患の負担を予防し,軽減させ,健康及び健康的なライフスタイルを増 進させることを含む,人の健康への投資を促進する具体的な歩みを進める作業

を歓迎する(付属書E参照)。

51.我々は,健康,特に,APECエコノミーにおける力強い成長及び将来 の健康的な青年期,老齢期の基礎としての母子保健の向上を支援し,進行中の 保健部門及びパンデミックへの備えを充実することの重要性を認識する。我々 は,健康を支援するための予防診療,治療及び疾病管理におけるイノベーショ ンが,力強い成長の源泉となること,及び保健医療への投資,とりわけ母子保 健への投資が,APECエコノミーにおける将来の健康的な青年期及び老齢期 のための基礎となることに留意する。我々はまた,進行中の保健制度,パンデ ミックへの備え及び対応を充実することの重要性を認識する。

52.我々は,実務者に対し,経済的,社会的に相応の利益をもたらす生涯を 通じて効果の高い投資を見出すため,利害関係者と作業し,2015年にその 知見を報告するよう指示する。我々はまた,実務者に対し,出生前から生涯を 通じての予防的介入を含む,母子の良質な医療へのアクセスを優先させるよう, 利害関係者と作業するよう指示する。我々は,保健医療関連感染の経済的,公 衆衛生的な負担に対処する作業を歓迎する。我々は,実務者に対し,保健医療 の現場において感染の発生を減少させるために,利害関係者とともに作業する よう奨励する。

人的資本の開発及び経済成長

53.我々は,強固で持続可能かつ均衡ある経済の成長及び安定を達成するた めに社会的保護の鍵となる役割を強調する。我々は,グローバル化していく経 済の利益を享受させる雇用機会へのアクセスのために求められるスキルを,従 業員に対し獲得させる雇用政策及びプログラムを改善させるというコミットメ ントを確認する。我々は,雇用の改善及び社会的保護政策措置がビジネスに友 好的な環境の創出及び安定した経済成長を確保することに貢献し得ることに留 意する。

経済・技術協力

54.我々は,大阪行動指針及びマニラ枠組に合致して,APECエコノミー が2020年のボゴール目標を達成することを支援するAPECアジェンダに おける継続的な能力構築作業の重要性を改めて表明する。我々は,ECOTE CHに関する2012年SOM報告を承認し,経済,技術協力の分野で増加す

る能力構築プログラムにより焦点を当て,一貫性を創出し,影響をもたらす, より戦略的で目標志向かつ横断的なアプローチを開発することにより,ECO TECHを強化する進行中の取組を歓迎する。

組織としてのAPECの強化

55.我々は,APECプロセスへの民間部門の建設的な関与を増加させるこ との重要性を歓迎,強調し,ABAC及びその他の利害関係者との更なる実質 的な協力を奨励する。

56.我々は,APEC事務局の運営及び組織能力を強化する実務者の継続的 な取組を歓迎する。我々は,事務局の組織強化につながるオーストラリアの助 成金及び米・APEC技術支援訓練施設(TATF)の貢献を歓迎する。我々 はまた,APEC支援基金及び傘下の基金に対するAPECエコノミーの貢献 を歓迎する。

57.我々は,APECの外における達成を促進することと同様に,ビジネス を行うことの緩和,ボゴール目標,サプライチェーン連結性のようなAPEC の鍵となるイニシアチブを進展させ,APECの政策立案者間の議論の質を高 める,政策支援ユニット(PSU)による貢献を評価する。我々は,戦略的な 方向を調査する中期的な見直しとともに,2014年から2020年まで追加 的に7年間PSUのマンデートを拡張するという高級実務者の決定に同意する。

58.我々は,付属の提言を含む,APEC作業計画の2012年版高級実務 者報告を承認し,APEC事務局長による2012年版年次報告に留意し,2 013年のAPEC予算及びメンバーの貢献を承認する。

59.我々は,APEC事務局の運営及び組織能力を引き続き強化する。我々 は,事務局の第二代の期限付事務局長の成功裏の選挙及び選出を歓迎する。

60.我々は,インドネシアにおける2013年APECの準備を歓迎する。 我々は,それぞれ2014年,2015年,2016年にAPECを主催する との中国,フィリピン,ペルーによる発表を歓迎する。

付属書A-RTA/FTAの透明性に関するAPECモデル章

付属書B-信頼できるサプライチェーンに向けて

付属書C-エネルギー効率のためのナノテクノロジーに関するイノベーション技術対話の提言

付属書D-APEC国際教育会議「APEC内における教育の形成」の成果

付属書E-人的資本の投資