データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 多角的貿易体制への支持と保護主義抑止に関する閣僚声明

[場所] カザン
[年月日] 2012年6月5日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

1.我々,APEC貿易担当大臣は,ロシア・カザンにおける第18回会合に集まり,雇用創出を促進し,強固で持続可能かつ均衡ある成長及び開発の潜在力を増大させる重要な推進力としての国際貿易の重要性を改めて表明する。我々は,WTOに体現される多角的貿易体制の価値と中核性,優位性を認識する。

2.我々は,開かれた市場の維持が,持続的な世界経済回復の達成に不可欠であることを再確認する。世界経済の現在の不確実性,並びに世界貿易及び投資における保護主義的傾向の高まりに関する持続的なリスクに鑑み,我々は,保護主義を食い止めることに引き続き強くコミットし,更なる貿易自由化に貢献するイニシアティブへの取組を継続する。同時に,我々は,保護主義の高まりを示す世界各地の事例に対する深刻な懸念を表明する。我々は,投資,物品・サービス貿易に対する新たな障壁を設けること,新たな輸出制限を課すこと,又は輸出刺激措置を含む全ての分野におけるWTOと非整合的な措置を実施することを控えるとの約束を2015年末まで延長する旨の,ホノルルでのAPEC首脳によるコミットメントを再確認する。我々は,経済危機の発生以降に導入された貿易歪曲的又は保護主義的な措置を是正することに引き続きコミットするとともに,WTOの規定と整合的と考えられるとしても重大な保護主義的影響を及ぼすような措置の導入を最大限抑制し,そのような措置が実施された場合には速やかに是正することを継続する。

3.我々は,現下の経済環境において,多角的貿易体制が従来にも増して重要であるとの見解を共有するとともに,保護主義に対抗する取組の最前線に立つWTO常設機関による作業を含む,WTOの機能強化の必要性を強調する。この点に関し,我々は,WTO及び他の国際機関による貿易及び貿易関連措置に関する現状確認及び監視の作業を支持するとともに,これらの分野における作業の強化・深化を関係機関に慫慂する。我々はまた,WTO協定を遵守し,貿易・投資に影響を与える措置を実施する際に透明性及び予測可能性を引き続き確保するとの我々のこれまでの約束を再確認する。

4.我々は,多角的貿易体制への信認を付与し,WTOの更なる強化に資する,ロシア連邦の来たるWTO加盟を歓迎する。

5.我々は,途上エコノミーの多角的貿易体制への統合は,重要な課題であることを再確認する。この点において,APEC地域で行われているものを含む「貿易のための援助」の取組は,他の技術支援及び能力構築のための活動とともに,これらのエコノミーがこの体制への参加による利益を最大化することを支援する重要な手段である。

6.ホノルルにおける首脳の指示に従い,また,第8回WTO閣僚会議を受けて進められている作業を踏まえ,我々は,同会議の成果文書である「政治的ガイダンスの要素」を実施するための最善の方途について議論した。我々は,ドーハ・ラウンド交渉の全ての要素の妥結に向けた取組が膠着状態にあることに引き続き失望しているが,APECにおいては,前進するための最善の方途に焦点を当てていく。この文脈で,我々は,貿易円滑化及び第8回WTO閣僚会議において指示されたLDC加盟その他の開発関連課題を含め,現在進行中の技術的作業が生産的に進むと考えられる分野について議論を行った。ドーハ・ラウンド交渉の成功裏の多角的妥結に向けた作業に際して,我々は,ドーハ・マンデート,透明性の原則,多角的貿易体制の重要性及び開発を尊重しつつ,斬新で信頼性のある様々なアプローチを探求し続けるべきとの,ジュネーブの実務者に対する指示を再確認した。

(了)