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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第17回APEC首脳会議首脳宣言「成長の持続、地域の連繋強化」

[場所] シンガポール
[年月日] 2009年11月15日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 我々、アジア太平洋経済協力(APEC)首脳は、シンガポールに集まり、経済成長と我々の人々の繁栄を促進するための20年にわたる協力を記念した。新たな動向と課題に対応すべく、我々のアジェンダは、その幅、深さ、複雑さを増大させてきた。しかし、ボゴール目標に組み込まれた、自由で開かれた貿易及び投資を通じたアジア太平洋地域の成長と繁栄の推進という我々の共通の目標は、不変である。

 1年前、世界経済がその深刻さにおいて大恐慌以来例のない経済危機に陥る中、我々は、この危機を18箇月以内に克服することを目指すと決意した。本日、我々の力強い政策対応は、回復への準備に役立った。しかし、経済回復の足取りはいまだ堅固ではない。保護主義を拒絶し自由で開かれた市場を維持するとの我々のコミットメントは、貿易が問題の一部ではなく解決の一部とであることを可能とした。我々は、持続的な経済回復が確保されるまで、我々の経済刺激策を維持する。

 我々は、最近ピッツバーグで開かれたG20サミットに掲げられたように、強固で持続可能かつ均衡ある世界経済の成長に向けたモメンタムを強化するため、協働する。

 回復の支援という観点を超えて、我々は、危機後の変化した状況に対応した新たな成長パラダイム及びアジア太平洋地域の地域経済統合を強化する拡大した貿易及び投資アジェンダを策定する必要性を認識する。我々は、「これまでどおりの成長」に戻ることはできない。我々は、エコノミー域内外で、より均衡ある成長を支え、成長の恩恵がこれまで以上にあまねく広がる社会を実現し、環境を持続可能なものとするような、包括的な長期の成長戦略を明年策定する。これは、技術革新と知識集約型経済を通じて、我々の成長潜在力の向上に資するものである。

「均衡ある成長(balanced growth)」の支持

 我々は、G20の「強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組み」が掲げる目標を支持する。我々は、次のG20のコミットメントに参加する。

●マクロ経済、規制及び構造政策がより持続的で均衡ある成長への道筋と全体として整合的となることを確保すべく、協働する。

●世界の繁栄と成長の持続可能性を高めるため、経常収支の持続可能性並びに開かれた貿易及び投資を促進する。

●貸出し及び資産価格の循環が不安定化の要因とならないようにするためのマクロ健全性及び規制政策を実施する。

●世界的な成長の不均衡解消の一助として開発と貧困削減を促進する。

 我々は、アジア太平洋地域におけるより強固で均衡あるかつ持続的な成長を達成するための財務大臣の努力に関し、明年の財務大臣による進捗報告を期待する。

 構造改革は、経済の柔軟性を向上させ、民間需要を促進し、金融市場を発展させることで、長期の潜在的な生産成長力を強化し、エコノミー間の開発格差を縮小させる上で、極めて重要である。我々は、2010年に向けた構造改革実施のための首脳の課題(LAISR 2010)に基づいて、構造改革に関するAPECの取組を再活性化する。

 我々は、インフラ開発、農業・食料管理、社会保障、教育及び職業訓練、及び規制枠組みにおいて必要な改革を実施するために、自発的協力、能力構築、優良事例の共有、民間部門との協力といったAPECの伝統的な強みを梃子として活用する。我々は、これらの努力を促進するために、国際金融機関及び多国間開発銀行と協働する。これらの改革は、APECの多様性を踏まえ、各エコノミーの発展段階、人口動向、要素と制度上の賦存量及び比較優位を考慮する。

「あまねく広がる成長(inclusive growth)」の助長

 我々は、将来の経済成長がよりあまねく広がるものとなることを確保し、成長によって生み出される機会へのアクセスを拡大し、成長がもたらす利益がより幅広く行き渡るようにすることを決意する。このことにより、我々のエコノミーが、グローバル化によって生まれた機会をよりよくとらえ、その課題に対処することを可能にする。「あまねく広がる成長」は、自由で開かれた貿易及び投資に向けたコンセンサスを強化する。

 APECの「あまねく広がる成長」アジェンダは、進行中のLAISR 2010の下での構造改革に関する取組に基づいて、主に二つの観点から推進される。第一に、社会の全ての層が成長の恩恵を享受する機会を高めるような構造調整に、着手する。以下の具体的分野に重点を置く。

●我々は、中小企業(SMEs)を支援し、発展させる。中小企業は、APEC地域における全ビジネスの90パーセント以上を占め、労働者の50から80パーセントを雇用している。我々は、中小企業が世界の市場、技術、及び資金に対してよりよいアクセスを得ると共に危機管理能力を向上させることを支援する。

●我々は、雇用の創出を我々の経済戦略の中心に据え、グローバリゼーションがもたらす社会的影響に対処するための協力を促進する。我々は、「労働者」の再訓練、技術向上及び移動を促進し、特に新興産業及び成長産業において雇用を確保することができるようにする。

●我々は、女性の経済的な機会を最大化するために、教育、訓練、金融、技術及びインフラへの女性のアクセスを向上させることに焦点を置く。我々は、女性の経済的関与が生産性及び持続可能な成長に及ぼし得る正の乗数効果を増大するための女性企業家に対する継続的なアウトリーチを歓迎する。

 第二に、我々は、我々エコノミーにおける最も脆弱な層に焦点を当て、個人が短期的な苦境を乗り越えるのを助ける一方で、長期的な努力に対するインセンティブを提供する「たくましい社会」を強化する。

●我々は、長期的な経済的保障を高めるために、教育及び技術訓練における成果を改善する。

●我々は、仕事と企業の振興につながる所得補助又は勤労所得控除を検討する。

●我々は、短期的な経済的保障を提供しつつも長期的な依存を防ぐソーシャル・セーフティ・ネットを設計する。

 我々は、閣僚及び実務者に対して、2010年におけるAPECのあまねく広がる成長アジェンダを更に進め、構造改革と中小企業の発展、雇用創出、及びソーシャル・セーフティ・ネットの構築のための能力を構築するための複数年プログラムを発展させるよう指示する。

「持続可能な成長(sustainable growth)」の促進

 我々は、地域の経済成長が持続可能な開発と整合的であることを確保する。人為的な気候変動は、最大の地球規模課題の一つである。これは、各エコノミーに影響を与えるものである。我々は、ラクイラにおける「エネルギーと気候に関する主要経済国フォーラム首脳宣言」及びG20ピッツバーグ・サミットにおける首脳宣言を歓迎し、気候変動がもたらす脅威に対応し、国連気候変動枠組条約の目的、規定及び原則の下で、コペンハーゲンでの野心的な成果に向けて努力するとの我々のコミットメントを再確認する。温室効果ガス排出削減のための国際的な行動は、途上エコノミーが気候変動の負の影響に適応するための財政支援及び技術移転を含む措置を伴う必要がある。

 我々は、2030年までにエネルギー集約度を少なくとも25パーセント削減するというAPEC地域全体の目標を設定した、2007年のシドニーの「気候変動、エネルギー安全保障及びクリーン開発に関する宣言」を想起する。我々は、排出削減のために自主的な措置をとった個々のAPECエコノミーの努力を称賛する。持続可能な森林管理は、世界の排出緩和において重要な役割を担う。我々は、APEC地域におけるすべての種類の森林の面積を2020年までに少なくとも2000万ヘクタール増加させるというシドニー宣言の目標を達成するための取組を強化する。我々は、途上エコノミーによる森林減少及び森林劣化からの排出を削減する(REDD)ための行動の合意に向けた国連気候変動枠組条約の下の交渉における努力を支持する。我々は、気候変動を緩和する上で海洋が果たす役割並びに海洋及び沿岸地域への気候変動の影響を認識し、マナド海洋宣言を歓迎する。

 「グリーン・エコノミー」への移行を通じた気候変動への取組は、機会を提供する。我々は、気候変動に取り組む努力が、我々の国際貿易上の義務と整合的であるよう確保する。APECの「持続可能な成長」アジェンダの鍵は環境物品及びサービス(EGS)作業計画であり、同計画の下にAPEC地域における持続可能な成長を促進する一連の行動を発展させ、実施する。具体的には、EGSの活用及び普及を増やす取組を前進させ、EGSにおける投資及び貿易に対する既存の障壁を削減し、新規障壁の導入を差し控え、各エコノミーがEGS部門を発展させる能力を強化する。我々は、また、必要不可欠なエネルギー・サービスを要する者にはこれを供与する必要性を認めつつも、無駄な消費を促すような化石燃料に対する補助金を中期的に合理化し、廃止することにコミットする。我々は、これについて、2010年の会合で進捗状況をレビューする。我々はまた、経済・技術協力(ECOTECH)及び能力構築活動を通じたものも含む、気候に優しい技術の普及促進に向けた措置をとる。

 我々は、よりクリーンで効率性の高い技術の普及に向け、エネルギー効率における優良事例を共有するための取組を前進させ、エネルギー効率に関する自主的なAPEC相互評価(ピア・レビュー)の実施を歓迎する。我々は、排出削減における再生可能エネルギーの役割を認識し、APEC地域におけるその開発を奨励する。我々は、また、適当な場合には、石油の産出、消費、精製及び貯蔵レベルに関する適時で、正確かつ完全なデータを定期的に公表することを奨励する。

保護主義への対抗

 我々は、あらゆる形態の保護主義を断固拒否し、開かれた市場を維持し、投資、または物品及びサービス貿易に対する新たな障壁を設けないとの我々のコミットメントを再確認し、閣僚に対して、これらのコミットメントの遵守に関する定期的なレビューを継続するよう、指示する。こうした努力は、WTOのモニタリング制度を補強し、危機への対応としてとられた措置の透明性を確保することによって、保護主義的圧力に対するもう一つの防波堤として作用する。

多角的貿易制度の支持

 我々は、保護主義の圧力に対処し回復を持続させ確保するための世界的な景気刺激パッケージを実施するにあたっての最も効果的な手段は、モダリティーに関するものも含むこれまでに達成した進展を基礎として2010年のドーハ開発アジェンダ(DDA)の野心的でバランスのとれた妥結であることに、強く再確認する。ドーハ・ラウンド妥結に向けた高いレベルの政治的コミットメントが交渉における実質的進展に転換されることが、重要である。我々は、最終的なパッケージのとりまとめに向けて交渉のペースを加速するために、プラグマティズム及び可能な限りの柔軟性を発揮し、可能なあらゆる手段を活用する用意がある。我々は、閣僚に対し、DDAを成功裡に妥結させるためになすべきことについて緊密に協力し、遅くとも2010年初めまでに状況を評価するよう指示する。

地域経済統合の加速

 我々は、自由で開かれた貿易及び投資というボゴール目標に対するコミットメントを再確認する。我々は、閣僚及び実務者に対し、APEC先進エコノミーのボゴール目標達成についての有意義な評価を行い、明年報告するよう、指示する。

 我々は、将来のあり得べきアジア太平洋の自由貿易圏(FTAAP)へ向けた構成要素の探求を継続する。実務者による分析研究は、FTAAPの創設に伴う課題とともに、FTAAPが大きな経済的恩恵をもたらすことを示している。我々は、明年、FTAAPを実現するための一連のあり得べき道筋を探求した成果について閣僚及び実務者からの進捗報告を期待する。

 我々は、アジア太平洋地域において、「国境における(at the border)」貿易を自由化し、「国内での(behind the border)」ビジネス環境を向上させ、「越境(across the border)」供給網の連繋を強化するための取組に焦点を当てた総合的なアプローチをとり、地域経済統合を強化するための取組を加速させる。

●我々は、実務者に対し、サービス、デジタル・エコノミー、投資、貿易円滑化、原産地規則及び貿易にかかる基準・技術的な障壁を含む、APEC地域経済統合アジェンダの鍵となる分野において、エコノミー間の一層の収斂を促進するためのイニシアティブに関する取組を強化するよう、指示する。

●我々は、FTA締約国間で原産地にかかる自己証明を行うことに合意するパスファインダー・イニシアティブへの豪州、カナダ、日本、韓国、ニュージーランド、シンガポール及び米国の参加を歓迎する。このイニシアティブは、証明にかかる手続を一段階に減らすとともに手続に要する時間を1日に短縮することにより、貿易を円滑にさせるものである。

●我々は、APECエコノミー間でのサービス貿易を促進し、越境サービス貿易の扱いにおける一層の収斂を図るために今後のAPECによる取組の基礎となるAPEC越境サービス原則及びAPECサービス行動計画を承認する。

●我々は、ビジネスを営む上での5つの主要分野、すなわち「起業」、「資金調達」、「契約履行」、「越境貿易」及び「許可取得」において、2015年までにAPEC全体で25パーセント、2011年までに5パーセント改善するという目標の達成を目指す。我々は、米国、ニュージーランド、日本、韓国、中国香港及びシンガポールのチャンピオン・エコノミーによる能力構築作業計画の策定を歓迎するとともに、アジア太平洋地域におけるビジネスの実施をより安価に、より迅速に、より容易にすることを目標とした「ビジネス環境改善行動計画」を通じ、より継続的且つ協調的な努力を奨励する。

●我々は、2010年におけるLAISR(構造改革実施のための首脳の課題)前進のための作業計画の実施における進捗状況の把握に期待するとともに、閣僚及び実務者に対し、我々の新たな成長戦略への支援という観点も含め、LAISRの次なる段階を戦略化するよう、指示する。

●我々は、2010年にAPECの「第二次貿易円滑化行動計画」が成功裡に完了することを期待し、2010年までに追加的に5パーセントの貿易取引コスト削減の達成に向けてAPEC全体として軌道に乗っていることに満足の意をもって留意する。

●我々は、良く機能した官民連携(PPP)市場に向けた共通のアプローチを策定する。我々は、実務者に対し、域内の連携網の連繋拡大に資する交通インフラの改良のため、PPPを活用することの実行可能性を探求するよう、勧奨する。

●我々は、域内の供給網の連繋における8つの問題点を特定した供給網連繋枠組みを歓迎し、これら問題点に対処するための行動を示唆した。我々は、複合運送ネットワークをより継ぎ目のない状況にするための交通担当大臣のコミットメントを歓迎するとともに、実務者に対し、供給網の連繋の改善に向けた団結した努力を継続するよう、求める。

●我々は、投資円滑化行動計画(IFAP)業績評価指標を特定するための作業を歓迎するとともに、来年のIFAPの実施に期待する。

●我々は、知的財産権の保護及び執行を強化するという我々のコミットメントを再確認し、創造及び技術革新を奨励し、知的財産権の良好な管理及び利用の手段を与えるインセンティブの提供及び保護のための、包括的で均衡ある知的財産制度の重要性を再表明する。APEC地域全体で我々の知的財産権専門家、APECビジネス諮問委員会(ABAC)及び取締当局との間のより緊密な協力の促進を継続するとともに、能力構築の重要性を認識する。我々は、APEC偽倣品・海賊版防止イニシアティブの実施について、各エコノミーが達成した進展及び地域の特許制度を改善するための協力を歓迎し、明年における更なる進展を期待する。

●我々は、社会・経済的問題に対処するために情報通信技術(ICT)を活用すること、2015年までにすべてのAPECエコノミーにおけるブロードバンドの普遍的アクセスを達成するというAPECの目標の実現に向けた進行中の努力を奨励する。

●我々は、APECの貿易再開計画の試行訓練の結果と勧告を支持する。我々は、世界税関機関(WCO)の国際貿易の安全確保及び円滑化のための(SAFE)基準の枠組みと整合的な形での認定事業者(AEO)制度の相互承認、貿易再開及び信頼関係の構築に向けたコミュニケーションの仕組み及びその他のアプローチのようなイニシアティブを実施する重要性を再確認する。

経済・技術協力の強化

 「あまねく広がる成長」及び地域経済統合を促進することを目指す改革のための能力構築は、APECにとって重大な優先事項となっている。我々は、大阪行動指針で掲げられたECOTECH活動の実施のための基盤としての役割を果たすマニラ枠組みへの我々のコミットメントを再確認する。我々は、新たな課題に立ち向かうために優先事項が変化するのに伴い能力構築のニーズも発展することを認識する。したがって、我々は、能力構築のためのより戦略的、結果志向かつ複数年にわたるアプローチの策定、及びAPECの各フォーラムを通じて能力構築活動の優先順位付け及び効果的な実施を強化するための進行中の努力を歓迎する。我々は、APECのECOTECH を促進・推進する目的で設立された、1000万米ドルの中国APEC協力基金を歓迎する。

人間の安全保障の強化

 我々は、中国、日本、フィリピン、チャイニーズ・タイペイ及びベトナムを襲った破壊的な台風、インドネシアにおける地震及び先般のテロ攻撃が引き起こした人命の損失と破壊に対し、謹んで哀悼の意を表明する。我々は、アジア太平洋地域における経済成長と繁栄を持続する上で、人間の安全保障を強化し、ビジネスと貿易の攪乱への脅威を減少する重要性を再確認する。我々は、テロ対策のための能力構築の重要性を認識するとともに、貿易の安全、航空保安、エネルギー・インフラのテロ攻撃からの保護、テロリスト向け金融対策、サイバー・テロとの闘い、食料供給のテロリストによる異物混入からの保護及び緊急事態への備えといった分野におけるAPECの取組を歓迎する。

 域内の食料安全保障にかかる課題に対処することは、APECにとっての最優先事項の一つである。栄養のある、安全でかつ購入可能な食料へのアクセスを含む食料安全保障は、依然としてアジア太平洋地域及び世界各地における多くの懸念となっている。我々は、持続可能な農業生産及び地方開発の促進を含めた、食料安全保障及び安全な食品の供給にかかる課題に対処するための民間部門、学界、市民社会との協力の継続を奨励するとともに、実務者に対し、食料安全保障のための能力構築プロジェクト及びその他の実用的なイニシアティブを実施し、明年それらの進捗状況を報告するよう、指示する。我々は、「世界の食料安全保障に関するラクイラ共同宣言」を支持する。

 我々は、2009年の経済危機とインフルエンザ・パンデミック(H1N1)が世界に及ぼしている二重の影響に対処するにあたる経験の共有を歓迎する。我々は、鳥及びその他の潜在的なヒト・インフルエンザのパンデミックや、HIV/エイズ、結核のような新興・再興感染症のための地域能力の構築へのコミットメントを再確認する。我々は、我々の医療体制を強化し、世界中で発生している感染症の予防及びコントロールに向けた協力を行う。

腐敗との闘い、統治及び透明性の向上

 公的及び民間部門の双方における良い統治、組織的な統合及び透明性は、貿易及び経済活動の円滑な流れに対して重大な影響を有し、犯罪や腐敗の抑制に役立つ。我々は、良い統治のための措置及び腐敗対策は相互に強化しあう関係にあることを認識する。我々は、この分野におけるメンバー・エコノミー及びABACによる努力を歓迎するとともに、官民連携が、統治の強化、組織的な統合性及び腐敗との闘いに向けたAPECの努力を進展させることを奨励する。

 我々は、統治を強化するためのABAC及び産業界の努力を歓迎し、各エコノミー及び官民連携が、この分野における官民連携を通じてAPECの努力を前進させることを奨励する。

 我々は、違法な越境犯罪ネットワーク及び腐敗分子との相互関係の脅威との闘い及びその除去における国際協力の重要性について、留意する。我々は、適当な場合に、メンバー・エコノミーが国連腐敗防止条約及び国際組織犯罪防止条約を批准し、各エコノミーの法的枠組みに従って、これら条約の規定を実施する措置をとることを奨励する。

APECの強化

 APECの活性化は、持続的な回復に向けた課題に対処し、21世紀の地域の経済課題に取り組むために、極めて重要である。それを行うためには、APECエコノミーは、強固で、均衡あるかつ持続可能な成長を生み出すための共通の関心事項における連携を築かなくてはならない。初代専任事務局長の選出は、メンバー・エコノミー及びその他の利害関係者からの高まる要求に応えるためにAPEC事務局の能力を強化する上での重要な第一歩である。我々は、閣僚及び実務者に対し、APECが地域の経済協力の最も重要な枠組みであり続けることを確保するため、対応能力のある且つ効率的なメカニズムを確立するための努力を加速させるよう、指示する。