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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第20回APEC閣僚会議共同声明

[場所] リマ(ペルー)
[年月日] 2008年11月20日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

我々、APEC閣僚*(注1)*は、11月19日〜20日、リマにおいて開催された第20回アジア太平洋経済協力(APEC)閣僚会議に参加した。本会議はペルーのホセ・アントニオ・ガルシア・ベラウンデ外務大臣及びメルセデス・アラオス通商・観光大臣が共同議長を務めた。我々はAPECビジネス諮問委員会(ABAC)、APEC事務局及びAPEC公式オブザーバー*(注2)*の参加を歓迎した。

「アジア太平洋地域の発展への新たなコミットメント」という2008年のAPECのテーマの下、我々は地域が直面する主要な経済、人間の安全保障、環境及び社会上の課題について議論した。我々は、APECの鍵を握る優先課題について本年達成された進展を再検討するとともに、この地域に一層の繁栄、安全保障、安定を創りあげるためにどのように協力していけるかについて検討した。

我々は、1989年にAPECが創設されて以来、最も困難な一連の経済的状況の中で会議を開催した。すべてのAPECエコノミーが国際金融危機の影響を受けており、我々が過去10年にわたって記録してきたこの地域経済の高成長率は、大幅に下落する見込みである。商品・食料価格の乱高下は、経常収支に影響を与え、インフレ圧力をかけている。我々の誓約は、金融及び経済の挑戦的な見通しに対処し、APECを通じた地域協力を強化し、自由で開かれた貿易と投資を引き続き促進させ、経済の構造改革を支援し、人間の安全保障を向上させ、また、すべてのメンバー・エコノミーがグローバル化の恩恵を受けるために必要な訓練及び機会を確保することである。

国際金融危機

現在の国際金融危機への迅速で協調した効果的対応を確保することが、APECエコノミーの最優先課題であり、APEC首脳が今週後半に会合を行う際の関心の焦点となろう。APEC財務大臣は、信用市場の混乱及びグローバル経済成長の鈍化に対する共通のアプローチを協議するために、今月上旬に会合した。APECエコノミーは、これらの課題への対応策が、一貫性がありかつ効果的なものにするために、緊密な連絡を今後も保っていく。APECエコノミーは、この地域において実体経済を押し上げ、投資と消費のレベルを高めるために必要な全ての措置を実施することにコミットしている。我々は、中小企業(SMEs)が貿易を続けビジネスを拡大するための資金へのアクセスを確保することの重要性を認識した。我々は、この地域における貿易及び投資を支えるために協力し協働する輸出信用機関の努力を歓迎した。我々はまた、商品先物市場の透明性及び市場間の協力を増大させるために関連国内当局が行った作業に留意した。

我々は、こうした危機によって生じるいかなる保護主義への傾斜にも断固立ち向かい、改革及び貿易と投資の自由化・円滑化のプロセスを維持していく。このように、我々は、経済回復、成長及び発展を促進するために全力を注いでいく。我々は、これまでにとられた金融・経済政策に対する対応を支えていくため、開かれた貿易・投資政策を維持していく。我々は、首脳がG20ワシントン宣言を強く支持し、貿易及び投資の新たな障壁を設けないとの誓約を強調するよう提言した。

WTO及び多角的貿易体制への支持

APECエコノミーは、世界貿易機関(WTO)の下での開かれた、ルールに基づいた多角的貿易体制から最大の恩恵を受けているグループの一角を成してきた。本年、APEC貿易担当大臣(MRT)会合は、本年WTOドーハ開発アジェンダ(DDA)交渉の迅速かつ成功裡の妥結に向けた強力な支持を提供した。我々は、7月の閣僚会合におけるものを含む、ジュネーブで達成した進展を歓迎した。我々は、これまでの交渉で達成された真の進展が失われてはならないという点で一致した。

本年末までにモダリティにつき最終決定するとのG20首脳の呼びかけに効果を与えるため、我々、APEC閣僚はジュネーブで参加すべく準備されている会合を含め、我々のパートナー達と緊急に交渉を進捗させるための必要な関与を進める。我々は、我々の高級実務者に対し、必要とされる準備作業を迅速に行うために今週末ジュネーブに集まるよう指示した。また、他のWTOメンバーにも参加するよう呼びかけた。我々は、我々の全てのパートナーに対し、所属するグループを通じた呼びかけを含め、野心的かつバランスのとれた結果に向けて、柔軟性を発揮し、貢献を行うことを促し、また、我々も同じことを行う。我々は、国際金融危機にかんがみ、この交渉の妥結が一層の緊急性を有していると信じている。強力な合意ができれば、悪化している世界経済を強化するための協力に関する国際社会の能力を示すことになるだろう。

我々は、ロシア連邦のWTOへの加盟に対する支持を確認し、加盟交渉の進展を歓迎した。

APEC地域経済統合アジェンダ

我々は、アジア太平洋地域における経済統合強化に向け、本年とられた措置に関する進捗報告書を完成させ、首脳に提出した。我々は、シドニーの首脳会議で承認された2007年の報告書に盛り込まれた53の合意された行動のうち、相当数が遂行されたことを報告することに満足しており、未達成のもののうち大部分についても進展が見られた。我々が2008年に達成した成功を引き続き強化するために、我々は、この重要で急速に展開する分野におけるAPECの努力を加速するような、2009年及びその後の経済統合のための具体的なアジェンダを提案した。

ボゴール目標に向けての進展

我々は、APECの鍵となる組織的原則であり原動力であるボゴール目標への我々の誓約を再確認した。自由で開かれた貿易及び投資に関する我々の誓約の増進及び強化は、現在の困難な経済環境の下でも経済成長を促進することになろう。また、我々はボゴール目標達成への原動力としてのAPECの個別行動計画(IAPs)の重要性を再確認し、貿易及び投資の自由化・円滑化のためにエコノミーが実行した措置を称賛した。我々は、高級実務者会合(SOM)議長の2008年IAP概要報告書を歓迎するとともに、6件の2008年IAPピア・レビュー(カナダ、チリ、メキシコ、ペルー、シンガポール、米国)が成功裡に完了したことを歓迎した。我々はまた、メンバー・エコノミーの取組に一層の透明性をもたらすよう、APECビジネス諮問委員会、貿易・投資委員会(CTI)及び関連サブ・フォーラへの積極的な関与を通じて、ピア・レビューのプロセスを強化する努力が行われたことを歓迎する。

アジア太平洋の自由貿易圏(FTAAP)構想の探究

我々は、本年、アジア太平洋の自由貿易圏(FTAAP)構想の選択肢と展望についての実践的かつ追加的措置を通じた検討において、我々は大きな進展を遂げた。我々は、準備段階の一部として解決を要するであろう、あり得べきFTAAPの関連課題の予備的な一覧表の進展に留意した。我々は、FTAAPの発展を更に検討する上で有益な方法となるAPEC域内の地域貿易協定(RTAs)及び自由貿易協定(FTAs)間の収斂と相違の特定に関する研究を歓迎した。我々はまた、あり得べきFTAAPに関する既存の分析作業の検証の結果、及びこの分野における更なる作業のための勧告に留意した。更に、我々は、APEC域内自由貿易協定の拡大、結合及び統合の概念の検討を行った。

我々は、FTAAPが地域経済統合アジェンダの他の要素、特にボゴール目標達成を補完し、支持するものであるべきとの見方を共有した。FTAAPはまた、地域における現在の多数のFTAs及びRTAsによって生じた複雑さを是正するのに役立つものとなるべきである。FTAAPはWTOと一貫性があるものであり、多角的制度を通じてこれまで達成された以上の地域経済統合を促進すべきものである。FTAAPは、APECの既存のプロセスに影響を与え、追加的な能力構築が必要となるだろう。FTAAPに関するこれまでの分析は、FTAAPが地域に経済的利益をもたらし、グローバルな世界貿易を促進することを提示している。我々は、FTAAPがもたらし得る経済的インパクト、利益及び課題について更なる分析を来年も継続するよう実務者に指示した。

構造改革への支援

我々は、メルボルンで本年に開催された構造改革担当大臣会合の結果について議論した。消費者の福利を高めるための高収益かつ回復が早く強固なエコノミーの創設において、貿易及び投資に関する国内障壁に対処することが根本的に重要であることについて合意した。我々は、構造改革の政治的課題と便益について、及び規制改革枠組みがいかに構造改革を促進するかについて議論した。我々は、構造的経済改革が、投資・貿易の自由化、ビジネスの円滑化、並びに経済的・技術的支援及び協力という3つの柱を統合するものとして、APECのアジェンダの現下の重要な要素となっていることで一致した。我々は、構造改革を支持するメンバー・エコノミーの制度的枠組みについて自発的レビューあるいは自己レビューのプロセスを開始するとの決定を歓迎した。我々はまた、メンバー・エコノミーが構造改革を成功裡に履行するための効果的な支援の提供を支持した。

我々は、「構造改革実施のための首脳の課題(LAISR)」の5つの優先分野に基づいて進められている作業を強化するための経済委員会の努力を歓迎した。LAISRは、市民の利益のためにビジネスを効果的に規制するための透明性のある開発および法制施行に向けた政府の責任に関係した問題に対処するものである。我々は、「コーポレート・ガバナンスに関するOECD原則」を確認し、アジア太平洋において同原則をAPECが継続的に実施することを確保するための計画に取り組むことを含めた、良い企業統治を促進するための同委員会の作業に留意した。我々は、「2008年APEC経済政策報告」を承認し、競争政策に焦点が置かれていることを歓迎した。

金融市場の強化

我々は、地域の金融市場強化のため、本年APECの財務大臣が行った努力に留意した。財務大臣及び実務者は、多様かつ健全な機関投資基盤の発展を支援する新たな政策イニシアティブの実施を含む、資本市場を強化・深化するための戦略を検証した。これは、投資家の参加を妨げるような制限規定または規範的投資規則を撤廃するためのより良い政策アプローチをエコノミーが形成することを助けることになろう。また、金融市場における企業統治、情報公開及び透明性の改善を奨励する規制枠組み及び執行プロセスをエコノミーが改善することを助けることになろう。我々は、APEC経済のインフラ投資の要件を満たすために利用できる官民パートナーシップ(PPPs)の分野での統合拡大を支援するとの財務大臣による合意を歓迎した。我々は、この地域における能力構築、情報共有及び地域協力の促進に関するアジア太平洋金融・開発センター(AFDC)の果たす重要な役割を認識した。

APECの貿易と投資の自由化・円滑化

我々は、我々をボゴール目標達成及び地域経済統合の強化に近づけるAPECの貿易・投資の自由化・円滑化(TILF)に関するAPECの作業を歓迎する。我々は、APECのTILF活動に関する貿易・投資委員会(CTI)の閣僚への2008年年次報告を承認し、これらの分野で以下の進展があったことに留意した。

RTAs/FTAsを通じた地域経済統合の支持

多くのAPECメンバーは、総合的貿易・投資自由化戦略の一環として、RTAs/FTAsの実現を引き続き追求している。APECは、地域の経済統合を強化し、ボゴール目標を達成するため、質の高い、一貫性のある、包括的なRTAs/FTAsを促進するための積極的役割を引き続き維持する。この努力の中核的側面は、質が高く一貫性がありかつ包括的なRTAs/FTAsを促進するAPECエコノミーの努力を支援するための、能力構築のツール及び非拘束的な参照文書としてのRTA/FTA章のためのモデル措置の作成にある。我々は、セーフガードに関する新たなモデル措置について承認し、これにより15章のモデル措置のセットに帰結した。大多数のエコノミーは、投資、ダンピング防止、補助金・相殺関税措置、サービス貿易及び労働協力に関するモデル措置を受け入れた。我々は、エコノミーに対し、次の年にかけて相違を埋めるべく努力をするよう促した。この作業は、将来の交渉に際し、各エコノミーにとって重要な参考となるだろう。

我々は、地域におけるRTAs/FTAsの増加によって生じる煩雑さ、特に特恵原産地規則(ROO)に関し、APECが民間部門との関与を継続していることに満足している。この観点から、我々は、特恵原産地規則に対するアプローチを部門別に検証するために、この分野での取組を2009年も継続するよう実務者に指示した。

貿易・投資円滑化アジェンダの拡大を通じたビジネス活動の円滑化

我々は、貿易円滑化へのAPECの取組が進展したことを歓迎し、特に通関手続、基準認証、電子商取引、ビジネス関係者の移動といった分野がビジネス界にとって重要であることを再確認した。我々は、貿易取引コストを2010年までに更に5%削減するという第2次貿易円滑化行動計画(TFAP II)の履行を強化するよう実務者に指示した。我々は、TFAP IIの履行に向けた共通行動やパスファインダー・イニシアティブでの進展を示す主要業績評価指標(KPIs)とその報告方法について進展があったことに留意した。

我々は、貿易円滑化アジェンダに、貿易に関するロジスティクスの問題が含まれたことを歓迎し、実務者に対し、2009年はこの問題に焦点を当てるよう指示した。我々は、貿易円滑化及び貿易ロジスティクスに関する新たなイニシアティブを開発するよう実務者に指示した。また、我々は、貿易システムの相互運用性を向上させるために、国際的に認められた制度及び基準を用いた、APECにおける国際貿易の「窓口単一化」(シングル・ウィンドウ化)の実施に向けた作業を加速させるよう実務者に指示した。

我々は、国内基準と関連する国際基準との調整が、場合によりAPEC地域の貿易円滑化への重要な貢献となることを認識し、この問題での一層の取組を奨励した。

我々は、中国及びシンガポールがAPECデータ・プライバシー・パスファインダー計画への参加を発表したことを歓迎した。これにより参加エコノミーは合計16に達した。我々は、メキシコによるAPECビジネス・トラベル・カード(ABTC)制度の完全実施を賞賛した。また、我々はカナダがABTC制度の参加準備メンバーとなり、参加準備メンバーとして米国が進展を示したことを歓迎した。

投資の自由化・円滑化は、地域の経済成長と持続可能な発展の促進に不可欠な役割を果たす。我々は、地域の投資環境を改善する必要性を再確認した。我々は、2008年?2010年の投資円滑化行動計画(IFAP)を実施するための電子透明性、投資リスクの削減、ビジネス規制の簡素化という三つの当面の優先分野に留意した。我々は、2009年の貿易担当大臣会合で承認できるようKPIsとその報告手順を含む、IFAPの実施計画を策定するよう実務者に指示した。我々は、二国間投資協定及び地域の既存のFTAの投資関連主要部分に関する研究を実務者が継続していることを歓迎した。我々は、この取組が2009年も継続され、投資協定の一連の原則の基礎となることを期待している。

知的財産権及びデジタル・エコノミー

強固な知的財産権(IPR)制度は、技術、経済及び社会開発の重要な手段となる。我々は、創造性と革新を奨励するインセンティブを提供及び保護し、IPRの成功裡の管理と開発への手段を提供する包括的かつバランスのとれた知的財産システムの重要性を再確認した。これらの努力は、知識ベースの経済の発展を助長し、投資機会を拡大し、経済成長を促進するために肝要である。

我々は、IPR機関、権利保有者、法執行当局及び民間部門の国際協力及び情報共有を通じて、模造品及び海賊版の拡散を阻止するために更なる措置を取ることの重要性を認識した。この点に関し、我々は、「2005年APEC模倣版・海賊版対策イニシアティブ」に基づき採択されたIPRガイドラインの履行を継続し、2007年の閣僚共同声明に盛り込まれたとおり、来年も地域における衛星及びケーブル信号詐取に対処する作業を継続するよう実務者に奨励した。

我々は、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)と国連生物多様性条約との関係、遺伝子資源、及び伝統的知識、フォークロアの保護などを含む、現下の国際会議の重要性、特にWTOにおけるもの、について再確認した。我々は、引き続き、これらのことについて、自覚を高めるための作業を促進し、共有された目的を前進させる。

我々は、APECエコノミー間での審査協力プラクティスに関する調査の内容についての合意を含む、特許取得手続きに関するAPEC協力イニシアティブの進展を歓迎した。我々は、中小企業による権利保護改善を支援するためのIPR教育の強化に関するAPECによる作業の継続を歓迎した。

我々は、経済成長及び発展の維持を支える貿易及びデジタル・エコノミーを促進するためのAPECによる継続的な作業を歓迎した。我々は、経済効率を増大させ、透明性を促進し、競争を慫慂し、改革に拍車をかけるための手段としての情報通信技術の利用促進と開発のために不可欠な支援をエコノミーに提供するものとして、APECデジタル繁栄チェックリストを承認した。我々は、実務者に対し、2009年に貿易及びデジタル経済を促進するためのさらなる作業に関与することにより、デジタル繁栄チェックリストを増強するよう指示した。

我々は、APECエコノミーの貿易、投資及び経済成長の促進について、情報技術協定(ITA)が過去10年に亘り果たした重要な役割について再確認した。我々は、ITAにカバーされる製品が技術革新の結果として関税免除措置を享受しなくなる可能性について懸念を表明した。我々はさらに、最近の開発がITAを弱体化することへの懸念を表明し、ITAの完結性が維持されることを確保するために協働することに合意した。

環境物品及びサービス

我々は、地域の環境及び持続可能な開発における優先事項を達成するために、環境物品及びサービスの調査と開発の継続及び活用の重要性を認識した。我々はこの分野に関するAPECにおける進展を歓迎した。我々は、2009年に貿易担当大臣会合で紹介する具体的な「環境物品及びサービス(EGS)」作業プログラムの開発の基礎となるEGS作業を前進させる枠組みを歓迎した。我々はまた、この重要なセクターにおいて情報交換を促進するための努力を継続することを支持する。

我々は、環境物品及びサービスへの市場アクセスを増大させるためのWTO交渉の進展を検討した。そして我々は、開かれたグローバル貿易・投資体制が、我々のクリーン開発目的及びWTOによる市場開放の中核を成すことを再確認した。これは、我々の気候及びエネルギー安全保障の目標を前進させる一助となろう。

民間セクターの関与

我々は、自動車、化学及び生命科学部門が直面する主要な課題に関する官民対話の促進のために進められているAPEC産業対話の作業を支持した。我々は、二国間及び地域自由貿易協定における自動車製品に関する原産地規則の手法を簡素化するための継続的作業を含む、自動車対話の作業を賞賛した。我々はまた、バイオ燃料資源、燃料順応性のある車輌・インフラ、及びバイオ燃料についての経済・貿易に関連する課題を検証するための作業計画を策定するために、自動車対話がエネルギー作業部会のバイオ燃料タスクフォースと連携していることを歓迎した。

我々は、EUのREACH規則の観点を明確にし、化学製品のラベルに関する規則を調和させ、原産地規則を合理化するための継続的な努力を含む、化学対話の作業を賞賛した。我々はまた、合意された化学の規則に関するベスト・プラクティス・ガイドライン等を通じて、化学の規則を検討するための他の政府間機関に情報提供するとの化学対話の努力を歓迎した。

保健革新に関する貿易及び投資を可能とすることの重要性を認識しつつ、我々は、各エコノミーに対する自発的な指針の手法として、生命科学イノベーション・フォーラム(LSIF)投資可能者チェックリストを承認した。我々は、昨年のこの研究に対する要請に応じた保健革新への投資収益に関する徹底した経済的分析を賞賛し、この結果に対応するためにエコノミーが会合を持つことを提言した。規制改革及び調和の促進への我々の誓約を想起しつつ、我々は、ソウルにおけるAPECのLSIF調和センターの創設を前進への鍵となるステップとして歓迎し、承認した。

我々は、ABACが本年、国際金融危機、WTO・DDA交渉、地域経済統合アジェンダ、企業の社会的責任(CSR)、中小企業(SME)開発及びこの地域で経験した食料価格高騰を含む、APECアジェンダの重要な要素に対して行った貴重な貢献を歓迎した。我々はAPEC、ビジネス界及び地域の貿易・投資問題に関与する関係者の間で継続的に対話を行うことを奨励する。

企業の社会的責任(CSR)

自発的にCSRを実行することへの強い誓約は、健全で長期的なビジネス戦略にとって不可欠である。民間組織は、その事業活動によって影響を受けるすべての利害関係者の利益に対する経済的、社会的、環境上の目的を追求する責任がある。この地域全体には、高い水準のCSRの活動とそれへの関心がある。すべてのAPECエコノミーにおいて、近年、異なる発展の段階、地域要因、特徴的な企業風土、経済構造を反映し、CSRは様々な速度と方向に発展している。自発的なCSR活動は、メンバー・エコノミーの異なる国内の経済的、社会的、文化的背景を考慮するべきである。我々は市民の利益のためビジネスを効果的に規制するため、政府が透明な発展及び法律の施行に責任を有することを確認する。公的部門は、CSR活動をより広い持続可能な開発戦略に組み入れるために、明確なインセンティブを与え、広範囲にわたる目標を立てることによって、CSRの発展を促進することができる。我々は、地域の企業が、ビジネス取引において、経済的、社会的、文化的背景を考慮することを奨励する。

我々は、この地域で企業規模と事業活動に応じたCSR原則の認識と適用の水準を上げるためのCSR活動の展開を歓迎した。我々は、公的・民間両部門においてCSRに対する認識及び能力を推進するための努力(ABACによるものも含む)を支持する。我々は、APEC観光大臣による地域での責任ある観光産業の必要性に対する努力、中小企業でのCSRの重要性を高めるための中小企業担当大臣の努力にも留意した。我々は、首脳がこの地域におけるCSR推進の重要性を強調するよう提言した。

分野別課題とAPEC大臣会合

我々は、「アジア太平洋地域における責任あるツーリズムに関するパチャカマク宣言」の採択を含む、2008年4月にリマで開かれた第5回APEC観光大臣会合の結果を歓迎した。地域コミュニティにおいて所得及び雇用を創出し貧困を削減するために、観光産業の持続可能な成長を確保するというメンバーの誓約を再確認した。また、観光時の社会的・文化的側面を含む環境の保護と保全を促進することに合意した。

APEC電気通信・情報産業担当大臣会合は、2008年4月にタイのバンコクで開催された。2000年のブルネイ首脳会議にて設定されたアジア太平洋地域内のインターネット・アクセスを3倍にするとの目標が達成されたことを歓迎した。我々は、ブロードバンドへのユニバーサルなアクセスを2015年までに達成するとの意欲的な目標の設定に基づいて通信網の範囲を拡大する努力を継続するという誓約を歓迎した。我々はまた、「WTOサービス貿易に関する一般協定(GATS)第6条の実施ガイド?電気通信部門に適用される国内規制」の完成を歓迎した。

21世紀における万人のための能力と技術とのテーマの下で2008年6月にリマで開催されたAPEC教育担当大臣会合の結果を歓迎した。APECの人材養成(HRD)における教育に関する作業は、万人に対する質の高い教育を達成し、APECの労働者が国際経済の中で成功できる技能を持つことを確保することに焦点が置かれている。APEC教育大臣の研究ベースの焦点が、数学・理科、職業、技術教育、他言語の学習、及び情報技術・システム改革の優先分野に当てられていることを歓迎した。我々は、持続可能な開発に関連した主要問題に地域の青年を関与させ、彼らの技能を発展させるというAPEC内の努力に励まされた。我々は、APEC教育大臣が「APECウィキ」を共通の教育知識の基盤を構築するための協調プラットフォームとして採択する展望を有していることを認識した。我々は、有能な学生、大学院生及び研究者の相互交流の増加に向けた、国際交流を容易にするための教育大臣の勧告を支持した。我々は、中国が2010年の第5回APEC人材養成大臣会合を主催するとのイニシアティブを歓迎し、英語及び他の言語に関するAPECの戦略計画の進展を歓迎した。

我々は、「中小企業(SME)の成長を促進するための持続可能な地方開発に関する閣僚共同声明」を採択した、8月にペルーで開催された中小企業担当大臣会合の結果を歓迎した。企業の社会的責任(CSR)、地域経済統合及びイノベーション・マネージメントなどの一連の分野を通じて地域コミュニティにおけるSMEの発展を支援し、貧困を削減するための政策を協議した。1)ビジネス環境、2)経営能力の育成と起業家精神の促進、3)市場アクセスと国際化、4)技術革新、5)資金調達、6)持続可能なビジネス慣行の意識向上の6つの優先分野での作業の指針となる「新4ヶ年SME作業部会戦略計画 2009-2012」を承認した。我々はまた、APECエコノミーのビジネス環境を改善することを目指す「民間セクター開発(ビジネス環境の整備)アジェンダ」に基づく活動を加速するための修正作業計画を歓迎した。

我々は、より安全で、確実で、かつ効率的な交通システムの発展を通じた移動の円滑化及び経済的繁栄の重要性を認識した。我々は、「運輸作業部会(TPTWG)」の作業に留意し、APEC港湾サービスネットワーク(APSN)の履行を歓迎した。我々は、APSNを通じた地域の港湾及び関連セクター間の協力とコミュニケーションの円滑化へのメンバー・エコノミーによる積極的な参加を奨励した。我々は、航空排出に関するタスクフォースの設立を歓迎し、効率の良い航空旅行を促進し、最大限に利用するためのAPECエコノミー間の協力の強化の重要性につき一致した。我々は、代替航空燃料の使用を含めた、エネルギー効率政策及び実例を特定するためのTPTWGとエネルギー作業部会(EWG)との継続した協力を歓迎した。

我々は、鉱山セクターにおける持続可能な開発の促進に関する作業、及び鉱山セクターへの投資誘致におけるベスト・プラクティスを分析するという鉱山タスクフォース(MTF)の意図に留意した。

我々は、エコシステムに基づく管理アプローチの履行と海洋エコシステムへの気候変動の影響に対する我々の理解を高める必要性を含む、「バリ行動計画」実績評価イニシアティブの中で特定された課題と優先事項に対処するための海洋資源保全作業部会(MRCWG)と漁業作業部会(FWG)の作業を歓迎した。我々は、違法・無報告・無規制漁業と闘い、我々の市場への水産物の持続可能な供給を確保することを目指した多くの国際的イニシティブが進行中であることを認識した。また、我々は我々の海洋及び沿岸の資源の保存管理に向けて、2008年に完了した能力構築イニシアティブにおける進展を歓迎した。我々は、海洋汚染が沿岸のコミュニティの経済的機会を脅威にさらしていることを認識し、我々は、この急を要する課題について協力して取組むことを期待する。我々は、2010年にペルーにおいて開催される海洋関連大臣会合の準備において、FWG及びMRCWGが、これらの、及びその他の表面化した国際的優先事項に対処するためのAPECエコノミーの準備体制と必要性を査定するプログラムを策定することを奨励する。

我々は、地域の女性に対する性的差別がアジア太平洋地域のエコノミーに年間800億米ドルのコストをもたらしていると推定されることに留意した。我々は通商・経済政策の中にジェンダーへの考慮を組み込むことによって、APECメンバーの能力を強化するという我々の誓約を再確認した。我々はまた、APECプロセスにおけるジェンダー統合、APECにおけるあらゆる意思決定における女性の関与の拡大並びにグローバル経済及び社会への女性の全面的参加に対する障壁の除去という目標に対する我々の誓約を再確認した。

アジア太平洋における食料安全保障の改善

最近の食料価格の乱高下は、特にアジア太平洋地域及び世界中の最も貧しくぜい弱な人々に対し、深刻な課題をもたらしている。この状況は、特に金融市場における不安定さが地域全体の経済成長を削減するべく脅かしていることから、地域における我々の貧困との闘いを弱体化させ経済社会問題を悪化させる脅威となっている。我々は、APECが食料及び農業分野で取り組んできた作業を賞賛し、幅広い分野でAPECの食料安全保障アジェンダをより精錬し強化するために実務者から提出された包括的作業計画を承認した。

我々は、グローバル農業貿易における市場アクセスの実質的な改善及び市場歪曲措置の削減を達成する必要性に対処するに際しては、2008年MRT声明を増強することが必要であることについて合意し、この観点から野心的かつバランスのとれたWTO・DDA交渉の妥結の重要性に留意した。我々は、食料安全保障の課題に対するための技術開発及び普及の重要性について認識した。我々は、APECが投資貢献条件及び農業調査・開発の進展を強化する作業をするべきであり、農業生物技術の潜在性からメンバー・エコノミーが利益を得ることを助長するための自発的努力を含み、エコノミーが新たな農業技術及び手法を活用することを助長するべきであることについて合意した。我々はまた、非食材から造られる次世代バイオ燃料の迅速な開発と商品化のための条件を育むための協力の増強を、この技術の出現に影響している主要経済、環境及び他の問題の検証を含み、APECに対して指示した。

我々はAPECに対し、APECによる、良く機能する市場、規制機関及びベスト・プラクティスの発展の促進についての作業を承認とともに留意しつつ、農業部門の成長に資する他の分野における技術協力及び能力構築の増強を促した。これは、食料の貯蔵、輸送及び分配システムをより効率的にするためのベスト・プラクティスを開発するための協力、並びに土地、水及びその他資源の持続的利用のためのベスト・プラクティスを促進するための協力を含む。我々は、農業高等教育における革新とベスト・プラクティスを共有するための潜在的協力を探求するためのAPEC関係会議を慫慂した。

我々は、食料支援プログラムに対する更なる強い支持を慫慂するとともに、最も支援を必要としている者が受け取ることを確保しつつ、これが市場を歪曲せず現地生産へのインセンティブを削がないような方法で行われることを確保することの必要性を強調した。我々はまた、食料高値に最も脆弱な人達を助けつつ農業生産者への価格情報の伝達を阻害しないように慎重に目的化された社会セーフティネットの検証を支持した。我々は、1998年のAPEC食料システムに関する要請を含み、APECアジェンダにおいて食料及び農業問題の重要性を喚起するABACの積極的及び長期にわたる役割を認識した。我々は、食料安全保障に関する官民両部門の関与と協力の継続を促した。

我々は、食料安全保障に対処する地球レベルの努力を歓迎し、この問題に取り組んでいる他の多国間機関との対話と協調のチャンネルを開けるようAPECに促した。我々は、「グローバル食料安全保障のための国連ハイレベルタスクフォースによる包括的行動枠組み」の進展を含む、国連の努力を認識した。我々はまた、世銀及び食料及び農業に関するG8輸出グループの努力も認識した。

経済及び技術協力(ECOTECH)-能力構築のための戦略的アプローチ

我々は、APECエコノミーのボゴール目標達成を支援する能力構築に対する戦略的、目標志向的な複数年のアプローチの重要性を強化した。我々は、他の多国間機関へのAPECの関与を高める戦略、及び来年民間部門と同様の戦略を発展させることを承認し、こうした連携が各フォーラムが検討していくべき調査にとり有益なモデルであることに同意した。我々は、経済・技術協力運営委員会(SCE)の政策アジェンダ及び能力構築活動を評価する努力を強化するための進展を歓迎した。

我々は、緊急事態への備えタスクフォース(TFEP)とテロ対策タスクフォース(CTTF)の委任事項の改訂を歓迎し、観光作業部会(TWG)、女性問題担当者ネットワーク(GFPN)及び海洋資源保全作業部会(MRCWG)、及び2008年の77のAPEC基金による経済・技術協力プロジェクトに関する独立レビューの完了に留意した。我々は、SCEが、現在進行中の能力構築の概観を提供し、経済・技術協力に関する前向きな作業計画の基盤とするために、サブ・フォーラに対し、能力構築活動の実績調査を実施するよう指示したことに留意した。我々は、APEC支援基金に対してロシアから50万米ドル、中国香港からも同様に50万米ドルの自発的な資金拠出が行われたことを歓迎した。我々は、APECデジタル・オポチュニティ・センター(ADOC)の進展を認識し、デジタル格差を埋めるための関係エコノミー間の努力の拡大の開始を歓迎した。

腐敗防止及び透明性

我々は、この地域の腐敗との戦いへの誓約を再度表明した。我々は、金融活動作業部会(FATF)の基準に応じた、腐敗及び資金洗浄との闘いに関する国際協力の更なる強化に同意した。国際司法協力は、汚職利益の回収及び返還とともに、重大な腐敗の防止、取調べ、起訴、処罰にとり不可欠である。我々は、すべてのエコノミーが更に説明責任を強化し、公務員の職権濫用に関連する管理課題に共同で取り組むことを奨励した。

我々は、メンバー・エコノミーが市民の信頼を回復し、政府と市場の一体性を確保することを含む包括的な腐敗対策戦略を構築するための努力を賞賛した。我々はまた、国際違法ネットワークを解体し、不正な支払いや違法な資金流入に関して金融情報機関と法執行における協力を通じ、不正を犯す個人及び組織犯罪集団による金融システムの悪用から我々エコノミーを守るための努力を賞賛した。我々は、SMEにAPECビジネス行動規範を導入するために2009年に豪、チリ、タイ及びベトナムによりパイロット・プログラムが実施されたことを歓迎した。我々は、金融市場の健全性に関するリマ腐敗防止宣言と汚職に対するAPEC腐敗対策官民行動ガイドラインを承認した。我々は、国連腐敗防止条約(UNCAC)未批准のエコノミーに対し、必要に応じて速やかに批准し、実行することへの強い支持を繰り返し述べた。

人間の安全保障の促進

テロ及び大量破壊兵器の拡散は、自由で開かれかつ繁栄した、人間の安全保障が確保されたエコノミーというAPECの理想に挑戦し続け、我々は、これらの課題に対抗するとの誓約を再確認した。我々は、APECのメンバー・エコノミーが、テロ、大量破壊兵器の拡散・輸送手段、自然災害、感染症、気候変動、危険な食品及び製品がもたらす甚大な人的・経済的被害を防止するために全力を尽くさなければならないという点で一致した。これらがもたらす被害を防止し、発生した場合の速やかな回復は、人々の保護及び経済成長及び繁栄の達成に不可欠である。

テロ対策及び貿易の安全

テロは、繁栄、安全及びAPECエコノミーが尊重する基本的価値を脅かし続ける。我々は、地域の経済、貿易、投資及び金融システムをテロリストの攻撃及び、(大量破壊兵器)拡散者による悪用から守るという誓約を再確認し、経済界がそれらのリスクの軽減に強い関心を持っていることに留意した。我々は、テロ対策タスクフォース(CTTF)の設置期限が延長されたことを歓迎した。これによって、テロ資金を止め、陸・海・空の安全を高め、食料供給網への攻撃を防ぎ、攻撃があってもその後の貿易の回復を支えるといったAPECの重要な活動が継続されることになる。我々は、貿易再開計画(TRP)を開発したCTTFの努力を特に評価し、2009年にTRPパイロット演習を実施するシンガポールを中心としたメンバー・エコノミーのグループのイニシアティブを歓迎した。

我々は、爆発現場事後管理、サイバーテロ、官民パートナーシップ、重要なエネルギー・インフラの保護並びにこの地域での能力構築の年次情況調査に関するタスクフォースの努力を賞賛した。我々は、乗客及び貨物の安全な移動の環境を醸成するための交通担当大臣の作業を賞賛した。

我々は、国連テロ対策及びテロリストの資金に関する金融活動作業部会(FATF)特別勧告を含む既存の国際基準を、可能であれば完全に実行することが緊急に必要であることを再確認した。我々は、テロリストによる搾取、及びテロ資金を融通するための代替送金、非営利団体、資金運搬業者の悪用と戦うために、FATF特別勧告、特にSR VI, VIII及びIX、のすべてを実施する努力を強化することを約束し、この点に関する訓練及び能力構築に関するワークショップを歓迎した。我々は、テロ支援資金についてさらなる研究を行うとのFATFの決定を歓迎した。

我々は、本年リマで開かれた第6回APEC地域における安全な貿易(STAR)会議の成果を含め、地域の貿易の安全を確保する努力を歓迎し、実務者が民間部門との真の協力を追求することを奨励した。我々は、意図的な汚染から食品製造及び貿易を保護するためのペルーにおける食品防衛パイロット・プログラムの実施を歓迎し、APEC全体の能力の発展を継続するための1あるいは2のAPECエコノミーによるパイロット・プロジェクトに期待する。この地域の空港、港、陸上輸送ネットワークの安全性を高め、通信システムを検証し、地域的入出国警戒システムを構築し、一貫した安全保障対策を推進するために、現在APECが継続している努力が強く支持された。我々は、貨物の安全保障は更なる能力構築が必要な分野であることを確認した。世界のシー・レーンの安全と防護は、地域及びグローバルな貿易にとり緊急に必要である。我々は、海賊及び海上における武装強盗行為への闘いに対する国際社会の継続した努力を完全に支持する。

我々は、テロリスト・グループの解体、大量破壊兵器及びその運搬システム拡大の防止、暴力を支持する過激なイデオロギー対策、テロリストによるインターネット使用の抑制に対する誓約を再確認した。テロは、アジア太平洋地域の人、文化、及び信仰に対する深刻な脅威である。我々は、すべてのテロ行動、特に唾棄すべき行為である自爆テロと人質略取を、犯罪且つ不当行為として非難する。

緊急事態への備え

5月に中国四川地方を襲い、約9万人の死者・行方不明者をもたらした大地震を含め、2008年にこの地域で発生した悲劇的な自然災害によって、災害及び他の緊急事態に対するコミュニティとビジネスの回復力の構築の重要性が再確認され、公的部門と民間部門との協力の重要性が改めて強調された。我々は、緊急事態への備えに関するベスト・プラクティス及び能力構築の必要性に関する2度の現状調査の成果を歓迎し、2013年まで緊急事態管理CEOセミナーを毎年開催していくことを支持した。我々は、2008年9月にチャイニーズ・タイペイにより開催された大規模災害復興に関するワークショップ及び2009年に第3回CEOセミナーを主催するとのベトナムの申し出を歓迎した。

我々は、災害リスク軽減と緊急事態に関する準備及び対応に関する緊急事態への備えタスクフォース(TFEP)の戦略及び災害への対応及び協調に関するAPEC原則が採択されたことを歓迎した。我々はまた、チャイニーズ・タイペイが主催した大規模災害復興ワークショップにおいて共同で策定されたベスト・プラクティス及び実用的な提言を歓迎した。さらに、我々はメンバー・エコノミーによる被災地の復興を円滑化・加速化すること、災害教育を学校のカリキュラムに組み込むこと、及び災害管理にジェンダーを統合するための女性問題担当者ネットワーク(GFPN)の取組を目的とした複数年プロジェクトの実施に関するタスクフォースの提案を歓迎した。我々は、首脳に対し、災害リスクの軽減と国内における災害管理能力の構築により大きな力点を置き、並びに2005-2015兵庫行動枠組み:「災害に対する国家及び地域社会の回復力の構築」との連携及び結束を改善するために、地域の災害対策及び管理機構について議論するよう提言した。

保健

我々は健康、経済発展、安全保障の間に強い関連性があることに合意した。我々は、保健ワーキング・グループの委任事項と中期作業計画の採択を歓迎し、この地域、特に途上エコノミーの、公衆衛生に関する緊急事態への対策の策定、準備及び対応という公衆衛生に関する問題に取組、この地域の能力を強化するための熱意及び努力を支持した。我々は、鳥及び新型インフルエンザ、生物媒介病及びHIV/AIDSの潜在的影響を防止及び緩和し、保健情報技術の向上を共有しようとする努力を歓迎した。我々は、動物及び環境が人間の健康に及ぼす影響に関する作業を支持し、感染症に対処するための地域の能力を構築するためにこの調査を継続することに同意した。我々は、世界保健機関(WHO)プロセスへの我々の支持を確認し、APECの活動がWHOの努力を支持し、補完すべきであることに同意した。

食品及びその他の製品の安全

我々は、APEC食品安全協力フォーラム(FSCF)に対する強い支持を表明し、メンバー・エコノミーの能力を強化するために着手された作業を賞賛した。我々は、安全かつ入手可能な価格の食品へのアクセスに関する消費者の懸念に留意し、APECの実務者に対し、調和のとれた基準及びリスクに基づいた規制的アプローチを更に追求することを奨励した。我々は、この重要な役割に関し、民間部門及び学術的な専門家からの指導力及び支持を得るための手段として、食品安全に関するFSCFのパートナーシップ訓練機関ネットワーク(FSCF PTIN)の設立を承認し、実務者に対し、当初のFSCF PTINの活動及び2009年の第2回FSCFの成果を報告するよう指示した。APEC FSCF PTINは、規則制定者、製造者及び生産者に対し、食品の安全に関する国際的なベスト・プラクティスを活用するための能力を構築するために、研修機関及び指導官の地域全体のネットワークを開発するための学会及び業界の専門性と資源を提供することにより、APEC地域の食料供給網のより良い安全を確保する。

我々はまた、製品の安全に関する協力を深化させることへの誓約を再確認した。我々は、この分野における現下の水準と慣行を改善することの重要性を認識し、この観点から実務者に対し、2009年に玩具の安全を確保するための作業を行うことを含み、行動をとるよう指示する。

気候変動

我々は、首脳に対し、国際的な気候変動に関するプロセスを支持する強い声明を発出するよう奨励した。

我々は、持続可能な森林管理及び回復のためのアジア太平洋ネットワーク(APFNet)の創設を歓迎し、このイニシアティブに対する中国の現下の財政支援を評価した。我々は、地域における森林破壊及び森林劣化に起因する排出を削減することへの協働を継続し、背景にある経済及び社会の機動力としての側面に対処しつつ、違法伐採と闘うために適切な措置をとる。我々は、気候変動へのグローバルな対応における、森林の保全及び持続可能管理、並びに炭素隔離のための森林炭素貯蔵の強化の価値について認識した。

我々は、クリーン技術の開発、移転及び展開を促進することを含む、気候変動の緩和及び適応に対する協力と能力構築への支持を表明した。そして、クリーン技術基金に対する米国の財政支援を評価し、気候投資基金に対する豪州、日本及び米国による財政支援も評価する。

我々はまた、地球の気候変動に海が担う役割、及び気候変動が海と海洋資源に与える大きな影響について認識した。我々は、脆弱性をより良く理解し、適応戦略を開発するための追加的かつ協調された努力を支持する。この追加的課題を受けて、バリ行動計画に示されたとおり、海洋資源の持続的利用及び海洋環境保護のために、我々が実質的かつ具体的な行動をとることが緊要となっている。我々は、海洋関連閣僚に対し、2010年にペルーで開催される会議への準備としてこれらの目的を前進させる作業に取りかかることを要請した。

エネルギー安全保障及び持続可能性

我々は、地域エコノミーがエネルギー供給に対し、十分かつ確実そして入手可能な価格でアクセスできることを保証する、エネルギーの自由で開かれた貿易の重要性に留意した。国境を越えたエネルギー貿易と投資、再生可能エネルギー源、排出量の少ない代替エネルギー技術・製品の開発と展開を推進するため、我々は、APECメンバーがAPECエネルギー貿易及び投資に関する研究及びラウンドテーブルの成果に対応するよう奨励した。我々はまた、エネルギー効率に関する自発的なAPECピア・レビューの実行を歓迎し、APECエコノミーが、参加を検討し、エネルギーの安全保障及び経済的競争力を高め、環境への影響を最小限にするエネルギー効率の向上を引き続き求めるよう奨励した。

APECの機構改革及び管理事項

我々は、より効果的・効率的に、21世紀における機会を包含し、課題を克服するためのAPECの機構改革に対するコミットメントを再確認した。我々は、長期的、より戦略的且つよく調整された能力構築プロジェクト及びその計画の強調を含む一連のプロジェクト管理改革を承認した。我々は、プロジェクトの認可を高級実務者会議(SOM)と財政管理委員会(BMC)に委ね、2010年からの四半期毎のプロジェクト審査体制と迅速な資金支出のシステムへの移行に関する提案を承認した。我々は、実務者に対し、APECの目標の達成を容易にする高水準のプロジェクトに対する資金手当を確保するためのAPECのプロジェクト評価、ランキング・査定システム及びプロジェクト運営責任をメンバー・エコノミーに委ねる可能性を検討するよう指示した。

我々は、任期付専任事務局長の任命及び実務者に対し、選考プロセスを始め、2009年中に任命を最終化させるよう指示するSOM提案を承認した。我々は、効率性及びコストを改善するために現在進行中のプロセスの一部としてAPEC会合のスケジュールを変更することを歓迎した。我々は、APECポリシーサポートユニットの設立を歓迎し、現在の作業プログラムが我々の貿易、投資、構造改革及び関連の経済・技術協力活動への分析能力を追加することに留意した。我々は、APEC事務局及びAPECメンバー・エコノミーへの能力構築に対する支援を提供し、APECのプロジェクト管理改革アジェンダを支援するために米国が柔軟に対応できるメカニズムである、US-APEC技術支援・訓練施設がシンガポールにおいて設立されたことを歓迎する。

我々は、ここに含まれる提言を含め、APECの作業プログラムに関するSOM議長報告を承認し、APEC事務局長による2008年年次報告に留意した。我々は、2009年のAPEC予算を承認し、事務局の為替リスクを軽減するためのメカニズムの検討を支持した。我々は、2009年のシンガポールにおけるAPEC開催の準備が進行中であることを歓迎した。

*(注1)*オーストラリア、ブルネイ・ダルサラーム、カナダ、チリ、中国、中国香港、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、パプア・ニューギニア、ペルー、フィリピン、ロシア、シンガポール、チャイニーズ・タイペイ、タイ、米国、ベトナム。

*(注2)*太平洋経済協力会議、アセアン事務局、太平洋諸島フォーラム。