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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第18回APEC閣僚会議共同声明

[場所] ハノイ
[年月日] 2006年11月16日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、中華人民共和国、中国香港、インドネシア、日本、大韓民国、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、パプアニューギニア、ペルー、フィリピン、ロシア、シンガポール、チャイニーズ・タイペイ、タイ、アメリカ合衆国、ベトナムの閣僚は、2006年11月15日及び16日にベトナムのハノイで開催された第18回アジア太平洋協力(APEC)閣僚会議(AMM-18)に出席した。APEC事務局も同会議に出席した。東南アジア諸国連合(ASEAN)事務局、太平洋経済協力会議(PECC)及び太平洋島嶼国フォーラム(PIF)は公式オブザーバーとして出席した。APECビジネス諮問会議(ABAC)は、フルメンバーとして出席した。

 ベトナムのファム・ザー・キエム副首相兼外務大臣とチュオン・ディン・トゥエン貿易大臣がAMM-18の議長を務めた。

 閣僚は、「持続可能な成長と繁栄のための躍動的なコミュニティに向けて」という2006年ベトナムAPECのテーマの下に議論を行った。閣僚は、多角的貿易体制を支持し、2010年、または2020年までに自由で開かれた貿易及び投資のボゴール目標を達成するとのコミットメントを再確認した。閣僚は、人類の繁栄のためには、さらなる経済及び技術協力、そして人間の安全保障の促進が必要であることを強調した。この精神のもと、閣僚は、APEC地域内の経済的及び社会的格差を減少させ、持続可能な開発を達成するための協調的な努力を強化することを誓約し、域内の人々の繁栄のための調和的かつ躍動的なアジア太平洋コミュニティに向けて努力することを約束した。

 閣僚は、ベトナムが主催した2006年のAPECにおける主要な成果をレビューし、オーストラリアが主催する2007年のAPECにおいて行われるイニシアティブについて合意した。

 閣僚は以下について合意した。

I. 多角的貿易体制の強化

1. 世界貿易機関(WTO)ドーハ開発アジェンダ交渉(DDA)へのAPECの貢献

 閣僚は、多角的貿易体制を強化するという長年のコミットメントを再確認し、可能な限り早期に必要な突破口を開くためにあらゆる方法を模索し、ドーハ作業を、野心的かつバランスのとれた結果への道程へ導くことに合意した。

 閣僚は、こうした努力はドーハ宣言、枠組み合意及び香港宣言に基づいたものであり、すべての交渉分野において開発的側面を反映させたものでなければならないことを再確認した。

 閣僚は、遅滞なく交渉プロセスを再開させるためのAPECの決意を再確認するDDAに関する独立の声明を発出するようAPEC首脳に提言した。

2. WTOキャパシティ・ビルディング

 閣僚は、開発途上メンバーが、WTO加盟メンバーとしての十分な恩恵と社会経済開発に向けた貿易の潜在的可能性を享受するために、WTOに加盟し、またWTO交渉に十分に参加することを可能ならしめるための手段として、APECによるWTOキャパシティ・ビルディング活動の高い重要性を強調した。

 閣僚は、APECの過去のWTOキャパシティ・ビルディング・プロジェクトのレビューと、この分野におけるより効率的・効果的アプローチへ向け活動を活性化するための議論を歓迎した。閣僚は、本年6月昆明(中国)において開催された「サービスにおけるWTOルール交渉に関するAPECワークショップ」及び2007年の第1四半期に開催予定の、カナダの支援によるAPECの政府関係者を対象としたWTO交渉プロセスに関する5日間の訓練プログラムの計画を含む、WTOキャパシティ・ビルディングにおけるAPECのイニシアティブについて、満足の意をもって留意した。

 閣僚は、こうしたプロセスがWTOにおける「貿易のための援助」イニシアティブにもたらす重要な貢献を歓迎し、WTO香港閣僚宣言と調和する形で、WTOにおける「貿易のための援助」イニシアティブ及び後発開発途上国(LDC)の産品に対する無税無枠アクセスをさらに推進することに合意した。閣僚は、高級実務者に対し、DDA交渉に含まれるすべての分野にわたり、WTOにおける義務を履行する期間中、キャパシティ・ビルディングの実施を継続するよう指示した。

 閣僚は、途上国エコノミーが将来性のある輸出向け製品を特定し発展させる能力を強化することにより、途上国エコノミーが多角的自由貿易体制へ更に参加することにつき、「貿易のための援助」アプローチに沿って支援しようとする「国際版一村一品(Global OVOP)」イニシアティブに留意した。閣僚は、2006年9月にハノイで開催され、メンバーがこの分野での経験を共有し、中小企業の競争力向上に資することができる措置について議論した、APEC「一村一品」セミナーの成功を歓迎した。

3. APECメンバーのWTO加盟

 閣僚は、ベトナムが成功裏にWTO加盟の手続を完了したことを祝福した。閣僚は、ベトナムのWTOファミリーへの参加は、ベトナムの改革プロセスにおける一里塚であると同時に、多角的貿易体制における貿易自由化の進行を促進することへのAPEC地域のコミットメントの表明でもあることに留意した。

 閣僚は、ロシアのWTO加盟に向けた顕著な前進を歓迎し、ロシアの早期加盟のためにこれらの交渉の終結を迅速に行う努力の重要性を強調した。

4. APECジュネーブ・コーカス

 閣僚は、APECジュネーブ・コーカスがDDA交渉の前進のために行った作業を賞賛し、APECのDDA交渉に対する貢献を最大化することを目的として、APECジュネーブ・コーカスと高級実務者プロセスとの間において活発な意見交換が行われたことに満足の意をもって留意した。閣僚は高級実務者に対し、WTO及びDDA交渉に関するAPECの作業を前進させるために、2007年も引き続きジュネーブ・コーカスと密接に協力するよう指示した。

II. 釜山ロードマップ実施のためのハノイ行動計画

 閣僚は、2010年、または2020年までのボゴール目標達成へのAPECのコミットメントを再確認し、今日の急速に変化する貿易・投資環境の中で、APECにとってボゴール目標が引き続き重要であることを認識した。ボゴール目標へ向けた進展を強化するために、閣僚は2005年にボゴール目標実現に向けた動きを加速することに合意した「釜山ロードマップ」実施のための「ハノイ行動計画」を承認した。

 「ハノイ行動計画」は、APECメンバーが一定の期間内に、5つの主要分野において取るべき具体的な行動を詳細に作成することにより、釜山ロードマップの実現を助ける。その分野には、多角的貿易体制の支持、個別行動計画(IAP)/共同行動計画(CAP)の強化、質の高い地域貿易協定(RTA)/自由貿易協定(FTA)の促進、釜山ビジネス・アジェンダの推進、及びECOTECHが含まれる。

 閣僚は、「行動計画」におけるキャパシティ・ビルディングの重要性を強調し、これらの行動が効果的に実施されることにより、途上エコノミーが十分にコミットメントを果たすことを支援し、途上エコノミーが貿易・投資の自由化及び円滑化、及び国内改革による利益を享受することを期待する。

 閣僚は、行動計画に記されている活動を着実に実施していく重要性を強調した。閣僚は、メンバーに対し、行動計画に記されている活動を実施及びレビューするにあたりABAC及び国際金融機関(IFIs)と協力するよう推奨した。

 閣僚は行動計画を採択のために首脳に提出することに合意した。

III. 地域貿易協定と自由貿易協定(RTA/FTA)

 閣僚は、自由貿易協定(FTA)における質の高さ、透明性、広範囲の一貫性及び包括性が、地域における自由で開かれた貿易及び投資を実現するというボゴール目標達成への重要な手段であることを再確認し、RTA/FTAの章のAPECモデル措置策定の進展を喜んだ。閣僚は、2006年、一般に受け入れられているFTAの章への6つのモデル措置に合意した。閣僚は、高級実務者に対し、可能な限り多くの一般に受け入れられているRTA/FTAの章において、モデル措置を2008年までに進展させられるよう、2007年もモデル措置に関する作業を継続することを指示した。閣僚は、モデル措置はAPECメンバーが包括的で質の高い自由貿易協定を成立させるための参考として役立つことを再確認し、モデル措置が現在進行中の及び将来のRTA/FTA交渉におけるAPECメンバーの立場を予断するものではないことに留意しつつ、モデル措置の非拘束的及び任意的性質を再確認した。

 閣僚は、RTA/FTA間における質の高さ、整合性、及び一貫性を奨励するという観点から、APECが、メンバーのRTA/FTAに関する経験や情報の共有によって、この分野において引き続き建設的な役割を担うべきであることに合意した。これに関連して、閣僚は、5月にホーチミン市で開催された「RTA/FTAに関する第4回高級実務者貿易政策対話」の成果に留意した。そこではビジネス界が特に懸念する課題が幅広く検討された。9月にダナンで開催された「貿易投資委員会(CTI)貿易政策対話」においても、ビジネス界の視点を重視しつつ、アジア太平洋地域のFTAに共通する特徴について検討が行われた。閣僚は、ABACによる分析結果、及びベスト・プラクティスに関連した「APEC地域におけるRTA/FTA目録」の共有の申し出に留意した。閣僚は、5月にホーチミン市で開催された「RTA/FTAにおける貿易政策のベスト・プラクティスに関するAPECワークショップ」、オーストラリアの資金援助を受け2005年にジャカルタで、2006年1月にクアラルンプールで開催された「FTA交渉に関する能力構築ワークショップ」に留意した。閣僚はまた、それぞれ3月と9月に日本で開催された2つのシンポジウム「APECプロセスの触媒的役割:国内の制度、ボゴール目標を超えて」及び「東アジアの地域経済統合がAPECの貿易自由化に及ぼす影響」を歓迎した。これらは、多角的貿易体制及びRTA/FTAのような地域統合のメカニズムの支持におけるAPECの実質的な役割を再確認した。

 閣僚は、APECビジネス諮問委員会(ABAC)及び太平洋経済協力会議(PECC)によるアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)のフィージビリティーに関する共同研究を歓迎した。これは、様々なRTA/FTAに関連する新たな課題及び地域経済統合というより大きな課題について価値ある考察を提出するものである。

 閣僚は、RTA/FTAに関するキャパシティ・ビルディングの提供に係るCTIの作業の進展に留意した。

IV. 貿易・投資の自由化及び円滑化

 閣僚は、ボゴール目標の達成への道を整備するにあたり、TILF(貿易・投資の自由化及び・円滑化)活動の重要性を繰り返し、日本によるTILF基金に対する継続的な拠出を賞賛した。閣僚は、CTI小フォーラムにより開発された共同行動計画を含む「2006年APECの貿易・投資の自由化及び円滑化の活動に関する閣僚への貿易投資委員会年次報告」を高く評価し、承認した。

1. 個別行動計画(IAP)と共同行動計画(CAP)

 閣僚は、メンバーが貿易・投資の自由化及び円滑化への継続したコミットメントの重要性を再確認し、メンバーの2006年のIAPにおける新たな進展を歓迎した。

 閣僚は、2007年「第2回IAPピア・レビュー」の準備を開始することに留意し、ABAC、CTI及び関係する下部委員会の積極的な関与を通じてピア・レビューの過程を強化する努力を歓迎した。閣僚は、ボゴール目標達成の進展に向け、この過程がより活発、包括的かつ積極的な手段となることの必要性を強調した。

 閣僚は、貿易・投資の自由化及び円滑化(TILF)へのAPECのコミットメントを実行に移す有益な道筋として、IAPを補完するCAPの重要性を認識した。閣僚は、CAPの年次レビュー・メカニズムの創設を検討することを奨励し、かかるレビューの結果を考慮しつつ、CAPが改訂される必要があることに合意した。

 メンバーの経済発展段階の違いに留意し、閣僚は、CAPの開発において、パスファインダー・イニシアティブにキャパシティ・ビルディングの要素を組み入れることの重要性を強調した。

2. 投資

 閣僚は、APEC地域への、APEC地域からの、及びAPEC地域内の投資フローの重要性に留意し、ボゴール目標へ向け前進する中で、APECの投資の自由化・円滑化関連の作業を推進する重要性を再確認した。閣僚は、投資の自由化・円滑化に関する拡大ワークプログラムの進展に果たしたAPECメンバーの貢献を賞賛し、ABACと協力しこのワークプログラムが着実に実施されることを要請した。これに関連し、閣僚は、ホーチミン市(ベトナム)で2006年5月に開催された「多国籍企業(TNCs)からの投資誘致の経験に関するAPECセミナー」に留意し、2007年6月にオーストラリアで開催される「官民対話促進セミナー」への期待を表明した。

 閣僚は、地域におけるビジネスのための投資環境を改善する必要性を再確認した。この関連で、閣僚は、成長と貧困削減のための投資の重要性、APECエコノミーにおける投資障壁、投資環境改善のためのこれら障壁の除去の重要性に関する知識を向上させる「APEC地域における投資自由化強化」プロジェクトの第一段階レポートが完成したことを認識した。閣僚は、2007年にABACとの共催にて開催され、APECメンバーの投資とビジネス環境を改善するための主要優先課題の特定と政策提言を行うことを目的とした「投資自由化・円滑化に関する調査とシンポジウム」に期待した。2006年10月、メキシコ・シティにて開催された「APEC地域における投資家と国家の紛争解決のためのAPEC-UNCTADプロジェクト」に関する研究及びセミナーもまた完了した。本プロジェクトはAPEC地域における投資家と国家間の紛争の関係に見られる問題点と傾向及びメンバーに与えうる影響について特定した。両プロジェクトの結果はともに2007年の更なるプロジェクトを検討するに当たり、政策分析の実質的基盤を提供した。

 閣僚はまた、9月にベトナムで開催され、PFI原則への理解を促進し、PFIをいかに活用すべきかについて議論された「投資政策フレームワーク(PFI)に関するAPEC-OECDセミナー」を歓迎した。閣僚は、2007年3月にメルボルン(オーストラリア)において「OECD投資政策フレームワークに関するAPECハイレベル官民政策対話」が開催されることを歓迎した。閣僚はまた、現行の「既存のRTA/FTA及び二国間の投資条約における中核となる要素の研究」を、投資の促進においてこれらの合意が果たす役割をよりよく理解する上で重要な一歩となるものとして、歓迎した。

 閣僚は、投資の自由化・円滑化に関する能力構築とベスト・プラクティスの共有が必要性であることを繰り返した。これに関連して、閣僚は、無差別待遇問題及びその経済及び開発面での影響に関するメンバーの理解を促進した「APEC投資協定における無差別待遇ワークショップ」が2006年9月、廈門(中国)において開催されたことに留意した。閣僚は、開発途上メンバーの官民部門の投資関連体制に関する理解の向上を目指す「投資自由化・円滑化のための能力構築」プロジェクトを歓迎した。閣僚はまた、APECメンバーの投資政策と投資機会に関する情報を共有するため、2006年11月、ハノイにて「APEC投資フォーラム」を「CEOサミット」の機会と併せて開催すとのベトナムのイニシアティブを歓迎した。

3. 貿易円滑化行動計画(TFAP)

 閣僚は、APEC地域内の自由で開かれた貿易・投資というボゴール目標の達成の上で貿易の円滑化が決定的に重要であると再確認した。閣僚は、「貿易円滑化行動計画(TFAP)」の最終レビューに関する報告書を歓迎した。閣僚はAPECが貿易取引費用を2006年までに5%削減するとの2001年の上海目標を達成したと結論し、TFAP実施における高いレベルのコミットメントに対するメンバーの行動を賞賛した。

 閣僚は、2010年までにAPEC内の貿易取引費用を更に5%削減し、貿易円滑化を次の段階へ前進させるという報告書に示された枠組を歓迎した。閣僚は、実務者に対し、進化を続ける地域の貿易の眺望の性質を考慮し、「2007年貿易担当大臣会合(MRT)」における承認のために、詳細な行動計画(第2次貿易円滑化行動計画、TFAP2)を策定するよう指示した。APECの第1次貿易円滑化行動計画の経験に依拠しつつ、閣僚は、実務者に対し、TFAP2の策定の際には特にキャパシティ・ビルディング、民間部門からのインプット、共同行動大日個別行動のより緊密な連携を考慮することを奨励した。

 閣僚は、域内の関税及びその他の貿易報告手続を簡素化する新しいイニシアティブの進展を承認した。このイニシアティブには、国際貿易業者、輸送業者、政府関連機関が利用するシングル・ウィンドウの整備に向けた共通アプローチの開発を必要としている。これによりビジネスにかかる規制の負荷を簡素化し軽減することができる。閣僚は、2007年におけるこのイニシアティブの進展に期待した。

 閣僚は、貿易円滑化イニシアティブを実施するにあたり、官民連携を強化することの重要性を強調した。閣僚は、2006年5月にベトナムが主催した「APEC貿易円滑化に関する官民対話」の成果を歓迎した。閣僚は特にAPECメンバーが、APECビジネス諮問会議及び広くビジネス界との関係を育成することを奨励した。

4. 税関手続

 閣僚は、APEC地域内の税関手続の簡素化し、共通のアプローチを開発することを通じて貿易を円滑化するためのメンバーの努力と貢献を認め、賞賛した。閣僚は、税関手続小委員会(SCCP)メンバーが貿易取引費用を削減するために実施した質の高いイニシアティブ事例を提供する「税関手続小委員会(SCCP)による上海目標に関する最終報告」を歓迎した。閣僚はまた、、{読点ママ}2006年に「第2回SCCP会合」の機会に併せて開催された、「2006年APEC税関ビジネス対話」の成功裏の終了に留意した。

 閣僚は、メンバーに対し、地域内において調和され、簡素化され、標準化された税関手続を推進する取組の追求を継続するよう奨励した。閣僚は、実務者に対し、「最終レビューのために閣僚に提出された貿易円滑化行動計画」に掲げられている更なる行動と措置、すなわち、シングル・ウィンドウ化のための共通のアプローチ開発及びキャパシティ・ビルディングや技術協力の要件の検証を含むシングル・シングルウィンドウを実施する他のエコノミーのための支援計画の作成、安全な貿易環境整備のための「APEC安全な貿易フレームワーク」の実施、税関関連手続の障害を特定するための自己評価手段である通関手続所要時間調査(TRS)の実施、知的財産権の国境における執行、及びすべての税関及び入管関連情報の電子化に向けた作業、に取り組むよう指示した。

5. ビジネス関係者の移動

 閣僚は、貿易の円滑化におけるビジネス関係者の移動の重要性を再確認した。閣僚は、APECビジネス界が受ける恩恵を最大化するため、APECビジネス・トラベル・カード(ABTC)制度にすべてのメンバーが完全に参加することを促す努力を支持した。閣僚は、米国がABTC制度に参加し、国際空港、大使館、領事館において、場合によっては、迅速処理を提供するとの米国の発表を歓迎した。

6. 基準・適合性

 基準・適合性の分野において、特に共同行動計画における行動及び措置による域内貿易の推進に対する貢献の重要性を認識し、閣僚は、基準・適合性小委員会(SCSC)による貿易円滑化共同行動計画(TFCAP)の実施の有効性評価に関する基準・適合性小委員会(SCSC)策定の最終報告を歓迎した。閣僚は、2006年の第2回基準・適合性小委員会(SCSC)の開催に併せて開催された「第4回GRP(良き規制慣行)会議」及び「第6回基準・認証会合」の成功裏の終了を歓迎した。閣僚はまた、2005年に開始され、2010年までに完了する予定である、国際電気標準会議(IEC)の電気用品基準との新規の自主的基準整合作業を歓迎した。閣僚は、メンバー及び民間企業を対象に、日本が主導して実施した相互承認協定(MRAs)及びそれらと同様のメカニズムの有効性に関するケース・スタディの成果を賞賛したが、閣僚は、こうした成果が、MRAsあるいは同様のメカニズムの実効性ある適用を助け、それらの効果を向上させることにより、貿易の円滑化を支援することに留意した。、を。閣僚はまた、キャパシティ・ビルディングと相互認証取決めにおける相乗効果を達成するために、特別地域主体との関係を強化するSCSCによるイニシアティブに留意し、歓迎した。

 閣僚は、基準・適合性評価手続に関する地域の議論へ規制当局者を、特に規制当局が基準設定及びそれに関連する適合性評価手続も管轄する国の規制当局者を、深く関与させることが貿易を阻害する規制関連の課題の解決及び国際基準の採用促進に寄与しうることに合意した。閣僚は、電子・電気製品など優先分野の部門会合に規制当局者を招く具体的イニシアティブの諸提案を歓迎し、メンバーが規制当局者のこうした会合への積極的な参加を確保するよう奨励した。

 閣僚は、基準に関する教育の重要性を認識し、メンバーに対し、地域における貿易円滑化において基準及び適合性が重要であることについて説明する参考となるカリキュラムや資料を開発することを奨励した。

7. 民間部門の発展

 閣僚は、「APEC民間部門開発作業計画」を支持し、ビジネスを支援する環境の重要性の推進における中小企業作業部会(SMEWG)の主導的な役割を歓迎した。閣僚は、また、民間部門を発展させる活動の実施に際して他の関連する委員会や作業部会を関与させることを奨励した。閣僚は、次の4つのAPEC議長エコノミーが、ニュージーランドとカナダが成功裏に共催した「モントリオール・シンポジウム」において特定された優先分野に基づき、ベスト・プラクティス及びそれぞれのエコノミーにおいてどのようにビジネス環境を改善できるかについて情報共有ができるキャパシティ・ビルディングに関するワークショップを開催することにコミットしていることを歓迎した。閣僚はまた、世界銀行及びABACといった他の機関との間に確立された協力を歓迎し、このアジェンダはAPECにおけるプロセスの改革の具体的な適用の良い例であることに留意した。

8. 知的財産権の保護の強化と及び執行

 閣僚は、知的財産権(IPR)の効果的な保護と執行が知識基盤型経済を確立する上で不可欠な要素であり、投資機会を拡大し、技術革新を促進し、小規模企業を含む創造的産業の成長を促進することによって、経済成長を推進する上でも重要であることを確認した。

 閣僚は、したがって「APEC模倣品・海賊版対策イニシアティブ」に対する支持を再確認し、効果的な「IPRに関する効果的な公衆周知活動のためのモデルガイドライン」及び「模倣品・海賊版からサプライ・チェーンを保護するためのモデルガイドライン」を承認した。この2つの新ガイドラインは、2005年に承認された既存の3つのIPRモデルガイドライン、すなわち、「模倣品・海賊版取引の削減のためのモデルガイドライン」、「不正コピー防止のためのモデルガイドライン」、「インターネット上の模倣品販売防止に関するモデルガイドライン」に追加されたものである。閣僚は、5つのモデルガイドラインは、すべて、インターネット上の海賊行為及び模倣品・海賊版の取引という新たに生じた課題への時期を得た政策対応であり、メンバーのIPR財産保護及び執行体制の強化を手助けする貴重な手段として作用することを認識した。これに関連し、閣僚は、メンバーに対し、最初の3つのガイドラインに定められた実施テンプレートに関する情報の交換を2007年のAPEC貿易担当大臣会合までに完了するよう要請した。閣僚は、IPRガイドラインの実施を助けるキャパシティ・ビルディングのための努力を増やすよう要請した。

 さらに閣僚は、「APEC模倣品・海賊版対策イニシアティブ」に基づいて、本年の首脳宣言に、政府機関が合法なソフトウェア及びその他著作物のみを使用し、著作権及び関連する権利に関する国際条約及び国内法令に従って、政府機関が使用するコンピューターシステム及びインターネット上において著作権侵害に対する効果的な措置を講じること、また、不法ソフトウェア及びその他不法著作物を購入するために中央政府の資金が請負人や受領機関に使われないようにするとの声明を盛り込むイニシアティブを歓迎した。

 APEC地域におけるIPR保護及び執行強化の積極的な推進の重要性にかんがみ、閣僚は、メンバーが来年、「APEC模倣品・海賊版対策イニシアティブ」に基づいてより踏み込んだ措置を取るよう要請した。閣僚は、IPRの国境における執行を強化するために効果的な情報共有チャンネルを確立する重要性を強調した。この文脈において、閣僚は高級実務者に対し、IPRの関税における保護にかんするAPEC情報交換メカニズムの確立の可能性を模索するよう指示した。

 閣僚は、メンバーに対し「2007年貿易担当大臣会合」の前にIPRウェブサイト及びIPR執行官の連絡先に関する情報交換を完了させること、及び2007年においても「APEC光ディスクの生産関連規制のための効果的な慣行」を適用するためにさらなる措置を継続することを要請した。

 閣僚は、14のIPRサービスセンターの設立を含むIPRについてのCAPの推進におけるメンバーの進展を歓迎し、まだセンターを設立していないメンバーに対し、可能な限り早期に設立するよう奨励した。閣僚はまた、中小企業に対しIPR教育を促進する努力を歓迎し、メンバーに対し、この重要な分野における努力を継続することを要請した。閣僚は、自動車産業、バイク及び部品産業におけるIPR保護のための計画と措置の実施についてメンバーに有益な情報を提供することを目的とした自動車対話におけるIPRベスト・プラクティス報告書を支持した。

9. 情報通信技術(ICT)及び電子商取引

 地域におけるビジネス及び政府プロセスにおいて、情報通信技術の利用が増大していることを認識し、閣僚は、電子商取引の利益を実現化するのに資する政策及びキャパシティ・ビルディング・プロジェクトの開発を推進することの重要性を再確認した。この文脈において、閣僚は、「データ・プライバシー及びペーパーレス貿易」アジェンダの履行に向けた電子商取引運営グループ(ECSG)の取組を賞賛し、この取組への民間部門の参加を歓迎した。閣僚は、国境を超える情報の流れの責任及び説明責任が確保されること、及び不必要な障壁を生じさせることなく効果的にプライバシーを保護することを目標とする国境を超える規則という概念を承認した。閣僚は、国境を超える規則のベスト・プラクティスなど、実施のための枠組を開発し、普及させることにより、この目標の実現に向け努力するよう実務者に対し指示した。閣僚はまた、APEC地域内でのプライバシー保護及び自由な情報の流れの確保に適したアプローチの開発にあたって「情報プライバシー個別行動計画(IAP)」を策定することの重要性につき留意した。閣僚は、ペーパーレス貿易の主要な利害関係者であり受益者である民間部門へのより多くの訓練及び教育の提供、ペーパーレス貿易の分野における政策策定に関する経験や専門知識の共有、及び国際機関との協力を拡充する必要性を認めた。閣僚は、「第2回APEC電子商取引ビジネス連盟フォーラム」の開催を歓迎し、2006年中国で複数回開催された「APEC電子貿易及びサプライ・チェーン管理に関する訓練コース」を賞賛した。

 閣僚は、地域におけるインターネットアクセスに関する「ブルネイ目標」の達成へ向けての努力を助けるために、メンバーに対し情報通信技術(ICT)のインフラと能力開発についてより深く関与するよう奨励した。閣僚は、当初はインフラ、保健、金融、及び商取引という4つの主要セクターに焦点を当てつつ、地域におけるICTによる成長のための枠組の策定における民間部門との協力を、歓迎した。

 閣僚は、情報通信技術(ICT)の継続的な開発及び実施がすべてのメンバーに対して機会をもたらすこと、しかし同時にこうした新たな技術が情報とコミュニティ・ネットワークへの脅威となりうることを認識した。これに関連し、閣僚は、APEC電気通信・情報作業部会(APEC TEL)がオンラインの安全、スパム及び関連する脅威に焦点をあてた取組の一環として開始した、基盤インフラ及びサービスのための情報システムの保護ガイドラインの起草努力につき留意した。加えて、閣僚は、2006年4月にTELが主催した「スパム及び関連する脅威に関するシンポジウム」を通じてスパム(無差別大量送信)とマルウェア(悪意ソフト)の脅威に対処し、緩和するためには協力行動が重要であることを強調した。閣僚は、サービス貿易協定(GATS)におけるコミットメントに合致する遠距離通信及び情報技術分野の効果的な国内規制の策定の助けとなるグッド・プラクティス・ガイドラインの策定におけるTELの取組につき留意した。

 閣僚は、デジタル能力に関するメンバー間の格差について、引き続き対処することの重要性を認識した上で、デジタル・ディバイドを機会に変換することは、メンバーのデジタル経済の発展において有益であることを認識した。閣僚は、2006年におけるAPECデジタル機会センター(ADOC)による漸進的な作業及び貢献を歓迎し、この分野におけるメンバーの協力をさらに促進することを奨励した。

 閣僚は、アジア太平洋情報通信社会(APIS)における明確なビジョンの形成におけるAPEC TELの取組を強調し、APEC TELに対し、さらにAPISを発展させるよう奨励した。

 閣僚は、「モデル政府情報化統括官責任者(CIO)協議会の開発」に関し、6月に東京で、9月に米国で開催された2つの会議の結果を認識した。会議は、学者、ビジネス界、及び政府関係者に対し、CIO協議会が直面する課題及び新たに生じたICT社会に関連する問題及び進化するICT分野に関連する問題についての考え方を前進させる議論のプラットフォームを提供した。閣僚は、これら作業を進展させるAPEC TELの新たな活動の作成を支持した。

10. パスファインダー・イニシアティブ

10.1. 貿易及びデジタル・エコノミー

 閣僚は、APEC地域で情報技術協定(ITA)が果たす重要な役割を認識し、技術の収斂や新機能の追加などの技術開発を踏まえつつ、ITAの実効性を保持するために、どのように協定が適用される製品の範囲が維持されるか見直すことの必要性を強調した。閣僚は、技術的に進歩した型のITA適用製品が、ITA適用製品の非常に狭義の解釈により無税の扱いを受けることができなくなる危険があるかも知れないことを憂慮した。閣僚は、実務者に対し、非APECメンバーとも協力し、本件について最良の対応を取るためにどうすべきかを検討し、さらなる行動を探求することを奨励した。本件に関連し、閣僚は、いくつかのAPECメンバーがITAの補完としてマルチチップ・パッケージ(MCPs)の無税化に合意した最近のイニシアティブを歓迎し、さらにAPECメンバーが、こうしたイニシアティブに参加するよう奨励した。

10.2. 技術選択

 2002年の「貿易及びデジタル・エコノミーに関するAPEC政策実施のためのパスファインダー首脳声明」を前進させ、市場を開放し、貿易を自由化しすることにより、改革のサイクルと機会を加速し、地域全体に経済発展を促進する技術選択の原則を推進するため、閣僚は首脳が「APEC情報選択の原則」を新たなパスファインダー・イニシアティブとして採択することを提言した。

10.3. APEC分野別食品相互承認取決め(MRA)

 閣僚は、8月、タイにおいて開催された「第2回APEC分野別MRAパスファインダー・イニシアティブ会合」の実りある成果を歓迎した。本イニシアティブは、国際的に食品基準の調和を促進し、APEC地域におけるキャパシティ・ビルディング活動を調整するために「APEC食品安全協力イニシアティブ」と緊密に協力していくことになる。閣僚は、APEC地域及び全体的な目標にとって重要な、食品貿易の円滑化のために、メンバーが積極的に参加するよう奨励した。

V. 腐敗防止及び透明性

 閣僚は、腐敗がAPEC地域の安全と安定を脅かし、経済的業績を阻害し、貿易・投資の障壁を造り、アジア太平洋地域の繁栄と持続的可能な成長を実現するAPECメンバーの努力を阻害することに注目した。腐敗の影響は社会のすべての部分で感じられる一方、閣僚は、腐敗が貧困者、弱者及び若年者を不釣り合いに大きく傷つけることに合意した。

 閣僚は、APECメンバーが2006年に実現した腐敗防止と透明性確保の分野における進展を評価した。閣僚は、「腐敗行為の訴追、統治の強化、市場の信頼性促進」に関する2006年のAPECの取組の主要な成果を承認し、メンバーに対し、コミットメントを果たすために行動をとるよう奨励した。閣僚はまた、すべてのメンバーに対し、2007年までにACT約束の実施に関する進捗状況報告を完成するよう奨励した。閣僚は、APECが腐敗防止のための二国間及び地域間の取決めに基づき現状把握のための演習を適切な国際及び地域機関と協力しつつ行ったことを歓迎し、メンバーに対し、こうした現状把握のための活動に十分に参加するよう奨励した。

 閣僚は、「腐敗の防止に関する国際連合条約(UNCAC)」を批准したメンバーを賞賛し、関係メンバーに対しUNCACが適切な場合は、その批准、あるいは批准することにコミットするよう奨励した。閣僚は、腐敗との闘いにおける予防措置と信頼性のある制度の重要性を強調し、UNCACと整合的な行動規範ないし倫理規範を採択し及び実施するよう促した。

 腐敗防止の分野で多国間機関がAPECと共有できる貴重な情報や経験を認識し、閣僚は、APEC腐敗防止タスクフォースに対し、適切な場合には、他の国際機関や地域機関、特に国連、世界銀行、アジア開発銀行(ADB)、経済協力開発機構(OECD)、国際刑事警察機構(インターポール)、金融行動タスクフォース及びアジア太平洋マネーロンダリング対策グループ(APG)と、アジア太平洋地域における各機関の腐敗防止イニシアティブに関連し、協力を強化するよう奨励した。

 閣僚は、腐敗の訴追、特に公務員や贈賄者を含む上層部の腐敗行為の訴追に対するコミットメントを強調した。この点について、閣僚は、2006年4月、上海(中国)において開催された「聖域の拒否:財産回収及び引き渡しワークショップ」の結果を賞賛した。閣僚はさらに、メンバーの立法措置に基づき、腐敗行為を行う個人及び贈賄者の聖域を拒否するための国内行動を展開し、また腐敗を犯した官僚の国際金融システムへのアクセスを拒否する効果的な管理の実施を含め、こうした人々が金融システムを通じて腐敗行為の果実にアクセスすることを阻止することに合意した。

 閣僚は、腐敗防止と透明性確保に関する官民協調の重要性を強調し、ベトナムでのSOM IIIに併せて開催された「ビジネスにおける腐敗防止と透明性確保に関する官民対話」の結果を歓迎した。閣僚は、革新的な戦略を持つ企業統治を強化し、より大きな経済機会と繁栄を確保するため、APECビジネス諮問会議、財界首脳と協力することにより官民の連携を深めることに合意した。

 閣僚はまた、APECの一般的及び個別分野別の「透明性基準」の確実な実施の重要性を再確認し、高級実務者に対し「透明性基準」の実施状況の評価を完全に終了させるよう指示した。

VI. 人間の安全保障

 閣僚は、テロ攻撃、自然災害、感染症及びその他の悲劇の被害者の苦しみと遺族の喪失感を共有し、遺族と政府に対し深い哀悼の意を表した。閣僚は、人間の安全保障、特にテロ対策、健康に関する安全保障、非常事態への備え、エネルギー安全保障の分野において必要な行動を適時実行する決意を再確認した。

1. テロ対策及び安全な貿易

 閣僚は、すべてのテロ行為を強く非難し、テロの攻撃は引き続きAPEC地域の安全保障、安定、成長及び人々の福利厚生にとって深刻な課題であることを再確認した。閣僚は、APECメンバーに対し、2003年バンコクでAPEC首脳がコミットした国際的なテログループの解体、大量破壊兵器及びその運搬手段、関連物質の拡散による危険の除去、及び地域の安全保障に対するその他の直接的な脅威との対決の実施状況の進展を、引き続き見直していくことを奨励した。この目標に向けて、閣僚は、国際法及び国内法に従い、それぞれの状況や政策と整合性をとりつつ、正当な金融及び商業システムを濫用から保護するために適切な個別行動及び共同行動をとる必要性を認めた。こうした行動の中には、拡散活動に対する障壁を高めること、閣僚によって採択された「2004年APEC効果的な輸出管理制度の鍵となる要素」の実施を通じたものを含めた貿易管理の強化を含むことができる。

 閣僚は、APEC域内における経済協力のために安全な環境を創造するとの観点から、既存のコミットメント実施、能力強化と技術協力の提供に前進が見られることを歓迎した。閣僚は、途上メンバーが行う資金洗浄対策、国境管理、港湾と空港の安全、及び地域の安全保障のための有意義なプログラムや企画を支援する「アジア開発銀行地域貿易及び金融安全保障イニシアティブ」にAPECメンバーが、追加的な拠出を行ったことに留意した。閣僚はまた、放射能源の安全な取扱いと貿易における分野、及び携帯式地対空ミサイルシステムによる脅威からの空港保護の分野における既存のコミットメントを実施するための、任意の支援を提供する個別及び共同の努力に留意した。

 閣僚は、地域安全保障の枠組における能力格差を特定する「APECテロ対策行動計画(CTAPs)」の恩恵を歓迎し、すべてのメンバーによる年次報告と包括的なCTAPsを毎年提出し定期的に更新することを奨励した。閣僚は、適切な能力構築活動とベスト・プラクティスの開発に対するコミットメントを再確認するとともに、CTAPsの横断的分析が特定する、能力格差是正におけるメンバー・エコノミーの支援により具体的な措置を取るようことを呼びかけた。

 閣僚は、安全な貿易を確保し、テロの危険を除去するための更なる個別行動と共同行動を奨励した。閣僚は、以下を含めた新しいイニシアティブを歓迎した。「APEC地域の食糧供給へのテロの脅威を軽減するイニシアティブ」及び、その成果として米国とタイの共催により11月にバンコク開催された「食糧防衛ワークショップ」、フィリピンが完了した「APECテロ対策レビュー」、オーストラリアが提案した「テロ対策資金調達ワークショップ」、米国が提案した「航空安全品質管理プログラム」。閣僚は、カナダと米国がそれぞれ提案したように、ビジネス再開コンタクト・ポイントと航空安全コンタクト・ポイントを「APEC流行及び災害管理調整官リスト」へ組み入れることを歓迎した。

 閣僚はまた、対テロ重要エネルギーインフラ防護を向上し、適切なAPEC緊急対応ネットワーク(コンタクト・ポイント)を確立するというロシアの提案に留意した。閣僚は、「核によるテロリズム行為の防止に関する国際条約」と、同様に「核物質の防護に関する条約の改正」を早期に締結する必要性を認識した。

 閣僚は、APEC地域の安全な貿易を確保する決意を再確認した。閣僚は、2月にベトナムで開催された「第4回APEC地域における安全な貿易に関する会合(STAR IV)」の成果を歓迎し、オーストラリアで開催される予定の「第5回STAR会合(STAR V)」に期待した。閣僚はさらに、STARイニシアティブへの民間部門の積極的な参加を奨励した。閣僚は、安全保障と経済効率性の双方を確保し、安全保障対策が強化された結果ビジネス界が追加的に負担する取引費用を最小限に抑えるため、安全な貿易確保の努力と、貿易の円滑化措置の実施をバランス良く推進することの重要性を強調した。

 閣僚は、7月にシンガポールが主催した「APECトータル・サプライ・チェーン・セキュリティーに関するシンポジウム」の成果を賞賛し、世界規模のサプライ・チェーンに対する大規模テロ攻撃あるいはその他の災害による供給途絶の際に国際貿易と国内ビジネスの回復を促進する方法をAPECメンバーが緊急に検討する必要性を認識した。

 閣僚は、貿易の円滑化を推進し、安全を強化する重要な官民協力の一つとして、「APECベトナム税関eマニフエストデモンストレーションプロジェクト」の実施を賞賛した。同プロジェクトにより、迅速な物品の通関、在庫管理の改善、関税徴収の向上、安全とリスク管理の改善が可能になる。加えて、eマニフエスト電子システムは、より透明な税関プロセスの提供を約束し、ベトナムの「APEC安全な貿易のための枠組」実施を奨励する。閣僚は、このプロジェクトがAPECの他の地域においても実用化されるモデルとなりうることに留意し、高級実務者に対し、その可能性を探求し、報告を行うよう指示した。

 閣僚は、「APECの安全な貿易のための枠組」の任意の実施は、一連の共通基準を構築し、運用することにより貿易の円滑化させるものであることに留意し、APECメンバーが速やかに枠組の実施を開始することを奨励した。これまでに、18のメンバーが、製品の流れを促進・確保するための枠組基準の適用にコミットしている。

 閣僚は、米国、オーストラリア及びニュージーランドの間で試験的に実施されてきた「地域的出入国警戒リスト(RMAL)」の成功を歓迎した。これは、正当な旅行者の安全で効率的な移動を円滑に進めながら、多国間で旅券データの交換をリアルタイムで行い、紛失・盗難旅券の利用を検知し、国境を超える犯罪やテロとの闘いを支援する世界で初めての試みである。閣僚は、RMALを拡大し、完全に運用可能な「地域的出入国警戒システム(RMAS)」として知られるようになった多国間政策枠組が完結したことを歓迎し、他のメンバーに対しても準備が整い次第、参加を考慮するよう奨励した。

 閣僚は、生態情報付き渡航文書の国際基準に対する認識を向上させるための努力が結実したことを歓迎し、基準の採用を支援するための能力構築の推進を支持した。閣僚は、安全な旅行と旅客の移動を円滑にする「事前旅客情報(API)システム」の重要性に留意し、同システムの更なる実施を奨励した。

 閣僚は、テロ対策タスクフォース(CTTF)がテロ対策活動の調整に果たした効果的な役割を評価し、そのマンデートを2008年末まで延長した高級実務者の決定を賞賛した。閣僚は、次の2年間のCTTF議長として韓国を歓迎した。

2. 健康に関する安全保障

 閣僚は、APEC地域の健康に関する安全保障問題についての協力と調整の重要性を再確認し、「APEC保健タスクフォース(HTF)」の3つの優先分野:(1)鳥及び新型インフルエンザへの備えと対応強化、(2)APEC地域のHIV/エイズとの闘い、(3)保健関連情報技術の発展による健康の向上、へのコミットメントを再確認した。閣僚は、「2005年のAPEC首脳会議及び閣僚会議」で設定された目標への対応を2006年も継続実施したHTFの価値ある取組を賞賛した。閣僚は、HTFが来年、APEC地域の人々の健康促進のためにどうすれば最良に努力を継続出来るかについて更に検討することを期待した。

2.1. 鳥及び新型インフルエンザへの備えと対応強化

 閣僚は、深い憂慮をもって、高病原性鳥インフルエンザ/H5N1型ウィルスが感染性の高いウィルス株に変異する潜在的可能性が引き続きAPEC地域、引いては世界の脅威であることに留意した。2006年、APECメンバーは、鳥インフルエンザを発生源の鳥対策によって管理し、新型インフルエンザの影響を軽減するためのキャパシティ・ビルディングに集中的に取り組んだ。閣僚は、APECメンバーが、この脅威の影響を緩和するために取ったキャパシティ・ビルディングの行動、及び「新型インフルエンザへの備えとその緩和に関するAPECイニシアティブ」によって承認された措置を実施したことを歓迎した。閣僚は、APECがすべての地域を通じて、感染症に効果的に対処するための備えを継続することを確保するコミットメントを再確認した。

 既に達成された作業を承認する一方、閣僚は、動物感染症の突発的な発生についてウィルスの感染を減少させるには、警戒と行動が引き続き必要であることに注目した。閣僚は、備えを改善するために、感染発生の際には透明性の高い情報交換及び研究用サンプルの共有を行うとの約束を更新し、人々の苦しみを緩和し、経済活動、貿易及び安全保障への悪影響を軽減するための鳥・新型インフルエンザに対する備えの計画を開発し、統合し、そして予行演習を行う努力の継続を促した。

 閣僚は、共通の目標である国際的な備えと緊急事態対処能力を達成するため、「鳥・新型インフルエンザに関する国際的なパートナーシップ」及び国際的専門機関、特に世界保健機関(WHO)、国連食糧農業機関(FAO)、国際獣疫事務局(OIE)との協力を維持することに合意した。

 閣僚は、「鳥・新型インフルエンザ担当大臣会合」の成果を歓迎し、すべてのAPECメンバーに対し、鳥インフルエンザ及び起こりうる新型インフルエンザ流行の予防・対処及び影響の軽減のために、個別に、また協力して「鳥・新型インフルエンザ予防・対処に関する行動計画」を実施することを強く奨励した。

 閣僚は、2006年4月に北京で開催された「新興感染症に関するAPECシンポジウム」の結論とコンセンサスを承認した。同シンポジウムは、APECメンバー間の共通の目標である新興感染症の備えと予防を強化し、APEC地域における監視、対応、リスク情報伝達及び緊急対応の調整された協力についての更なる意見交換や協力の機会を提供した。

 閣僚は、「新型インフルエンザ流行のリスク情報伝達ワークショップ」の成功を承認した。同ワークショップは、リスクの情報伝達に関する地域協力の重要性と理解に注目し、APECメンバー間のリスク情報伝達能力を構築し、APECメンバーに対し、流行対策準備計画の一部として情報伝達戦略を作成するよう奨励する。

 閣僚は、メンバーが「地域的新興感染症対処(REDI)センター」と協力し、対応可能な地域の専門家リストの整備を進めたことに大変満足した。閣僚はまた、閣僚が非常に重要な分野であるとみなす、途上エコノミーの流行病に対する備え計画の自己評価方法に関する意思決定を支援する枠組を提供する「流行に対する備え計画の評価に関する保健タスク・フォース・セミナー」を賞賛した。

 閣僚は、感染症などの流行の際に、経済活動を継続し、ビジネス活動の混乱を抑えるAPECメンバーの努力を支援する重要な作業が行われていることに留意し、「流行発生時の経済機能維持に関するシンポジウム」の成功に満足の意を表明した。閣僚は、「APEC新型インフルエンザ対策の備えのための小規模企業チェックリスト」が迅速に作成されたことを支持し、ABACとの緊密な協力と現在進みつつある民間部門におけるインフルエンザ感染の発生に対する備えを奨励した。

 閣僚は、日本と米国の共催による「鳥インフルエンザ能力構築セミナー:発生源での鳥インフルエンザ予防と補償に関する対話」の成果を喜んだ。このセミナーでは、動物原生感染症等の発生を抑え、結果としてヒトへの感染を防ぐために動物衛生とヒトの保健担当高級実務者の間での情報共有と協力が促進されたほか、鳥インフルエンザの悪影響を緩和するために取られた国内措置に関する報告書を共有し、H5N1ウィルスの鳥からの感染をコントロールし、阻止する努力を向上させることが合意された。

 閣僚は、入手可能な抗ウィルス薬へのアクセスが、新型インフルエンザ流行の封じ込め戦略に不可欠な要素であることを認識した。したがって、閣僚は、APECメンバーに対し、手頃な値段の薬とワクチンが入手可能となるよう確保するために努力するよう奨励した。

 閣僚は、HTFと「緊急事態への備えタスクフォース(TFEP)」の作業を歓迎し、可能な限り広い分野の多くの関係者の関与を得て、動物衛生とヒトの保健の両面に対処する統合的計画立案と協調的アプローチの重要性を強調した。閣僚は、すべてのAPECフォーラムとメンバーに対し、これらの目標の達成に向け協力して作業を続けるよう指示した。

2.2. APEC地域におけるHIV/エイズとの闘い

 閣僚は、懸念をもって、アジア太平洋地域で高まるHIV感染率に留意し、APEC地域のHIV/エイズの拡大に個別に及び共同で立ち向かう作業へのコミットメントを新たにした。閣僚は、HIV/エイズ及びそれに関係する疾病への適切な対処を誤れば、ヒトの保健とAPECメンバーの社会経済的福利に重大な影を与えうることを認識した。

 閣僚は、HTFのHIV/エイズの分野での作業を賞賛し、2004年の首脳会議で承認された「APECのHIV/エイズと闘うためのイニシアティブ」に従って、この分野における努力を維持するよう求めた。

 閣僚は、トロント(カナダ)で開催された「第16回国際エイズ会議」において、APECのエイズとの闘いへのコミットメントを再確認し、APEC首脳に対しHIV/エイズとの闘いへの関与を引き続き拡充することを求めた「APEC HIV/エイズ声明」が発表されたことに満足した。

 閣僚は、HIV/エイズと共に生きる人々、特に移民労働者、女性、及び少女のための職場における効果的な実践に雇用者が取り組みやすい環境作りのためのガイドラインの策定における進展に留意し、値段が手頃な救命医薬品へのアクセスの重要性を再確認した。

2.3. 保健関連情報技術の発展による健康評価の向上

 閣僚は、保健関連情報技術の分野におけるHTFの作業を歓迎し、情報技術の進展がAPEC地域の保健関連情報と保健・医療サービスへのアクセス拡大に寄与することを認識した。閣僚はまた、この問題に関するHTFと他のAPECフォーラムの間の協力を賞賛した。

 閣僚は、「強化されたAPEC保健関連コミュニケーション」、APEC e-ヘルス・セミナーの年1回の開催を含む「e-ヘルス・イニシアティブ・プロジェクト」の成果に期待し、「HTFウェブサイト」の立ち上げに満足の意を表明した。

3. 緊急事態への備え

 閣僚は、APEC地域の災害への備えと対応能力の構築の分野において2006年に緊急事態への備えタスクフォース(TFEP)が実施した作業を歓迎した。閣僚は、APECの作業が既存の国際的及び地域的イニシアティブを補完することを確保する一方、緊急事態への備えと対応のため、また同様に復興段階における支援の提供のために二国間及び多国間のメンバー間、また同様に国連、赤十字運動などの適切な国際機関との情報共有と技術協力を奨励した。

 閣僚は、APECメンバーが初めて一致して地域の対応とコミュニケーション・ネットワークを試した、オーストラリアが主導し、シンガポールの共催で2006年6月7日及び8日に実施された「2006APEC流行対策演習」及び、続いて事後演習として2006年8月15日及び16日にシンガポールで開催された「鳥インフルエンザに関するAPECワークショップ」の成功にも留意した。閣僚は、流行病・災害管理調整官の登録完了に留意し、登録の定期更新を奨励した。閣僚はまた、タスクフォースに専門家及び緊急事態管理機関をさらに関与させることを奨励した。

 災害に対する備えと回復のすべての観点において女性が果たす役割の重要性を認識し、閣僚は、APECが災害管理のすべての段階において女性の役割を強化する方法について検討する必要性を強調した。

 閣僚は、近く開催予定のAPEC緊急災害管理担当CEOワークショップなどの機会を含む、災害削減の分野におけるAPECの新たなイニシアティブを期待した。

 TFEPの活動期間が2007年3月に終了することを認識した上で、閣僚は、高級実務者に対し、2007年SOM Iの場でTFEPの今後の方向性について検討するよう指示した。

4. エネルギー安全保障

 閣僚は、効果的な対応には需要・供給両面からの一連の対策が必要であることに留意しつつ、継続する石油価格高騰の影響に対するメンバーの懸念を再確認した。閣僚は、信頼できるエネルギー源への信頼できるアクセスによるエネルギー安全保障が、継続的な地域経済開発の基盤であることを再確認した。閣僚は、エネルギー作業部会(EWG)に対し、エネルギー供給と利用の環境に対する影響を緩和する一方、市場の歪曲を削減ないし除去するエネルギー政策の追求、効率的な消費と生産の結果及びAPEC域内におけるエネルギー安全保障の向上のための作業を継続するよう奨励した。閣僚はまた、EWGに対し、液化天然ガス(LNG)公教育と情報伝達、及び高機能性建築物と地域社会に関する資金提供のイニシアティブの実施を継続するよう奨励した。

 閣僚はまた、エネルギー需要の急激な成長が環境に与える影響に対処する必要性について留意した。特に、閣僚はAPECに対し、結果的にエネルギー安全保障と空気の質の目的に対応すると同様に気候変動の挑戦にも対応する、よりクリーンなエネルギーの推進に貢献する方策を検討するよう要請した。

 閣僚は、「共同石油データ・イニシアティブ」によるエネルギー統計の透明性の改善、エネルギー供給中断への対応、投資と国境を超える貿易の促進、エネルギー効率の向上、新・再生エネルギーを含むエネルギー源の多様化、クリーン・コール及び関心のあるメンバーによる原子力エネルギー利用及び技術協力の推進のための具体的な措置を含む、「エネルギー安全保障イニシアティブ(ESI)」によるエネルギー問題に関する協力を強化することを奨励した。閣僚は、経済的な側面、インフラ、輸送手段、資源、貿易等の問題に焦点を置くAPECバイオ燃料タスクフォースの設立を認識した。閣僚は、原子力のセーフガードを担当する当局間の協力を促進するプロジェクトを歓迎した。閣僚はまた、EWGの視野を広げ、EWG活動の促進につながるEWGと国際エネルギー機関(IEA)の緊密な協力を歓迎した。

VII. 経済・技術協力(ECOTECH)

 閣僚は、持続可能な成長への寄与と共通の繁栄の達成におけるECOTECHの重要性及びボゴール目標の達成を確保する上でのECOTECHの重要な役割を再確認した。

 閣僚は、APECの経済・技術協力活動の焦点を調整し、より戦略的なアプローチを提供するためのECOTECH運営委員会(SCE)の作業を歓迎し「経済・技術協力に関する2006年高級実務者報告書」を承認した。閣僚はまた、「大阪行動指針」に述べられたECOTECHの活動の実施の基盤を提供する「マニラ・フレームワーク」へのコミットメントを再確認し、優先分野の更新されたリストを承認した。

 閣僚は、SCEのAPECフォーラムに関するレビューに記載された提言について、これらの改善は、更に焦点を当てた経済・技術協力を確保し、APECのキャパシティ・ビルディング及び技術協力に対し、更に戦略的な観点をもたらすものであると認識しつつ、これを承認した。閣僚はまた、中小企業作業部会(SMEWG)及び観光作業部会(TWG)による独立した評価について、これらはボゴール目標を達成するための運営及び対応の改善のための道を整えるものであるとして、これを歓迎した。閣僚は、SCEに対し、2007年以降の限られた財源を最大限に利用し、ECOTECHの活動が的を絞ったものであり、効果的かつ効率的であることを確保するために、作業部会、タスクフォース及びネットワークの運営を改善する努力を続けるよう指示した。

 閣僚はまた、「経済・技術協力に関する2006年高級実務者報告書」及び「2006年フォーラム報告書」により報告されているとおり、2006年において作業部会及びタスクフォースにより完了した幅広い経済・技術協力関連キャパシティ・ビルディング・イニシアティブを認識した。閣僚は、APECにおけるより広範な優先分野を反映するために、作業取決めをレビューし、キャパシティ・ビルディングに的を絞るために現在実施している努力を、今後も続けるよう奨励した。

 総合的かつ協調的な海運業(総合物流業)へ向け、更に前進することが、自由で開かれた貿易というAPECの全体的な目的の実現をより十分に支えるのに役立つことを認識し、閣僚は、「APEC港湾サービス・ネットワーク(APSN)イニシアティブ」を承認した。閣僚は、高級実務者に対し、更なる協力及びキャパシティ・ビルディングのための基盤を提供するため、港湾操業及び海運業に関するすべての関係者を含めて、そのネットワークを期限までに構築するよう指示した。

 閣僚は、衡平かつ共有された繁栄を確保する経済・技術協力(ECOTECH)を推進するための「APEC支援基金」への中国及び米国の拠出を歓迎した。閣僚はまた、それ以前のオーストラリア、韓国及びチャイニーズ・タイペイによる基金への拠出を歓迎した。

 閣僚は、上海(中国)に設立されたアジア太平洋金融開発センター(AFDC)によって、地域における金融の安定と発展、金融システム改革及びキャパシティ・ビルディングの促進において達成された進展を歓迎した。

1. 持続可能な開発

 閣僚は、持続可能な開発問題につき本年行われた取組を高く評価した。閣僚は、ECOTECH運営委員会(SCE)により調整され、サンティアゴ(チリ)で7月20日及び21日に開催された「持続可能な開発に関するハイレベル会合」の成果を歓迎し、その提言を承認した。

2. 人材養成

 閣僚は、APEC地域の持続可能な開発と繁栄のために人材養成が極めて重要な役割を持つことを再確認した。閣僚はまた、APECメンバーの教育、雇用、労働、キャパシティ・ビルディング分野における「人材養成作業部会(HRDWG)」の重要性を認識した。閣僚は、HRDWGの2006年の作業計画と新しい主幹事を歓迎した。

 閣僚は、「人材養成作業部会」により本年実施されている相当な作業上の前進、特に、人的キャパシティ・ビルディングにおけるキャパシティ・ビルディング・ネットワーク(CBN)の貢献に留意し、HRDWGがAPECプロセスの牽引力として、人材養成分野の強化のために新しいイニシアティブ、プロジェクト、プログラムの策定を発展させることを奨励した。特に、閣僚は、「労働・社会保護ネットワーク(LSPN)」に対し、APEC地域全体における人材能力の改善に効果的に寄与するため、3つの新たな人材養成関連事項-生産性、技能開発及び労働力への参加率-に焦点を当てるよう奨励した。閣僚はまた、HRDWGに対し、「APEC地域における英語及びその他の言語の学習に関する戦略的行動計画策定」イニシアティブに関する作業を継続するよう奨励した。

 今日の急速な技術の進歩・革新の時代の中で、世界のエコノミーは、知識基盤型経済を確立し、持続可能な経済成長と繁栄を実現する人材に投資する方法を常に模索している。9月19日及び20日にハノイで開催された米国とベトナム共催の会議の席上、APEC地域全体から集まった人材養成の専門家及び実務者は、官民連携実践の効果的手法及び原則と、労働市場の非効率性に対処するための需要主導型雇用サービスについて議論した。閣僚は、会議の成果を認識し、HRDWGに対し、既に着手されているHRDWGの教育ネットワークにおける「知識銀行プロジェクト」を通じた調査研究に基づく将来性ある慣行を記述する作業をさらに進展させることを考慮するよう奨励した。

3. 海洋・沿岸資源、漁業及び養殖

 閣僚は、海洋・沿岸資源の持続可能な開発及びそれが投資及び貿易から富と雇用を創出する機会の重要性を認識した。津波後の海洋経済活動と自然緩衝地帯の保護に関する海洋資源保全作業部会(MRCWG)の作業は、被災地における更なる持続可能な成長を確保する。閣僚は、さらに、海洋汚染が沿岸地域社会における経済機会を脅かすことを認識し、MRCに対し、経済価値を保護するための海洋浚渫物管理及び海洋資源の地図作成に関する作業を強化することを支持した。

 閣僚は、多くのAPECメンバーにとって特に重要である、漁業及び養殖部門の持続可能な経済開発の重要性を認識した。閣僚はさらに、MRCWG及び漁業作業部会(FWG)が、APEC規模の海洋関連活動の青写真として資するために2005年APEC海洋関連大臣会合において閣僚により合意された「バリ行動計画」を、活発に実施していることを認識した。閣僚は、海洋からの経済利益を最大化するために、水産物及び水産物製品の貿易と市場アクセスを円滑にし、維持するための努力を行わねばならないことを認識した。閣僚はまた、違法漁獲は自由で公正な水産物製品貿易を阻害することに留意し、FWGに対し、違法漁獲活動による影響の評価、漁場管理措置の強化、漁船団による過剰漁獲への対処のための計画を発展させ、それらの進捗を閣僚に報告するよう指導した。

 この関連において、閣僚は、2006年5月、チャイニーズ・タイペイで開催された「漁獲量管理における経験共有に関する漁業作業部会セミナー」の成果を歓迎した。

4. 産業科学技術

 閣僚は、メンバーが、産業科学技術の分野における協力強化を通じて、持続可能な開発と共通の繁栄を推進していることを賞賛した。

 閣僚は、「APEC気候センター(APCC)」、「電子国際分子生物学研究室(eIMBL)」「APEC技術展望センター」により実施された進展、並びにAPEC地域の女性及び少数民族コミュニティによる、科学技術関連の労働力や新興感染症対策関連技術整備の集中のためのロードマップ策定分野への参加の改善を歓迎した。

5. 中小企業

 閣僚は、零細企業及び中小企業の競争力、技術革新、起業家精神を育成し、投資・貿易のためのキャパシティ・ビルディングを支援することが可能な環境作りを通じた「中小企業の貿易・投資競争力」の強化の重要性を認識した。この関連で、閣僚は、中小企業のためのビジネス環境の強化に向けた民間部門開発のイニシアティブのための多年度作業計画の進展を歓迎し、高級実務者に対し、更なる作業を要する分野の特定を継続するよう指示した。

 閣僚は、9月の「第13回中小企業大臣会合」の成果に留意し、APECの中小企業関連活動のキャパシティ・ビルディングの重要性について中小企業大臣に合意した。

 閣僚は、満足の意をもって、青島(中国)で2006年5月に開催された「第4回APEC中小企業技術会議・フェア」、ハノイ(ベトナム)にて開催された「第4回APEC中小企業サービス連盟フォーラム」(10月)、及び「第1回APEC OVOP(一村一品)セミナー」(9月)の成果に留意した。閣僚は、中小企業の成長及び競争力を促進する上でこれらの活動がもたらす利点を認め、これに関連するすべてのメンバーによる継続的努力を奨励した。

 閣僚は、中小企業及び零細企業において、貿易促進及び特に海外市場におけるビジネス機会を探求するため、情報通信技術の利用を支持するための努力を奨励した。閣僚は、「APEC地域文化産業バーチャル博覧会」のウェブサイト及び本年チャイニーズ・タイペイにおいて開催された「APEC地域文化産業市場開発フォーラム」を含む、この関連の異なるイニシアティブを歓迎した。

 閣僚は、中小企業作業部会の焦点と有効性を改善するための一連の提言を述べた、同部会の独立したレビューを歓迎した。閣僚は中小企業作業部会に対し、これらの提言を注意深く考慮し、提言への回答を2007年前半に高級実務者に対して報告するよう指示した。

 閣僚は、第11回女性指導者ネットワーク(WLN)会合からの提言を歓迎し、女性の中小企業及び零細企業の問題と課題がすべての中小企業作業部会(SMEWG)イニシアティブに統合されることを確保すべく、WLNとSMEWGとのより緊密な協力を奨励した。閣僚はまた、APECビジネス諮問会議(ABAC)からのインプットを歓迎し、ABACとのより緊密な作業関係を歓迎した。

VIII. 経済的問題

 閣僚は、地域及び世界経済の強いパフォーマンスが継続していることを歓迎した。経済的繁栄の持続的な拡大を確保するため、ドーハラウンドの貿易交渉を再活性化することが重要である。閣僚は、力強い地域的・国際的経済成長を支えるような世界的不均衡の秩序立った調整の重要性と、それを成し遂げるためにAPECメンバーが共有する責任に関する財務大臣声明を認識した。成長を維持しつつ世界的不均衡を削減するには、財政的持続可能性、物価及び為替の柔軟性、投資促進のための改革、金融市場の強化、よりバランスのとれた国内需要の創出、及びアジア太平洋地域全域の企業統治と法的制度の改善が必要である。

1. 構造改革

 閣僚は、開発と成長を妨げる国内の障害に焦点を置く傾向が地域内で高まっていること、及び「構造改革実施のための首脳の課題(LAISR)」が、APECの作業の進展・強化・協調のための重要な基盤を提供していることに留意した。

 国内の障害に対処するための構造改革は、メンバー及びこの地域が、経済的ショックからより早く立直れるようになり、マクロ経済の更なる安定を達成し、長期的に更なる生産性を経験するよう確保することを促進するであろう。このことは、この地域の経済発展及び成長成果の改善に相当に貢献し得る。

 閣僚は、ハイレベル政策対話・分析のフォーラムとしての経済委員会(EC)の新たな役割を歓迎した。閣僚は、「2010年に向けたLAISRに関するAPEC作業計画(LAISR 2010)」を実施するための経済委員会(EC)のこれまでの努力を認識し、ECに対しLAISR 2010を生かし、APECの構造改革関連議題がどのように明瞭かつ整合的に進展するのかを示す詳細で野心的な作業計画を作成し、2007年の閣僚会議において報告するよう指示した。

 閣僚はまた、構造改革に重点を置いたECの2006年版「APEC経済政策レポート」の発行を歓迎した。閣僚は持続可能な開発に関する新しい問題に留意し、メンバーは構造改革プロセスが効率的かつ現実的な方法で実施されることを確保しなければならないと強調した。閣僚は、メンバーによる国内の構造改革活動レビューのための「規制改革に関するAPEC-OECD統合チェックリスト」を用いた自己評価演習に留意し、奨励した。

 閣僚は、この地域における構造改革問題に関する更なるキャパシティ・ビルディングを奨励した。この関連で、閣僚は、ダナン(ベトナム)で2006年9月に開催された「公共部門管理に関するセミナー」の成功を歓迎し、ECに対し、この分野において更なる作業に着手することを奨励した。閣僚はまた、各エコノミーにおける構造改革の進展が特に有益な分野を診断し、構造改革の進展を見守るために利用できるよう、構造改革のすべての主要側面に関する包括的な一連の指標の開発に関するECの作業に留意した。

 閣僚はまた、APECメンバーに対し、セミナーを通じ、市場経済化政策の方向性に関する情報共有を促進することを奨励した。これに関連し、閣僚は、2007年3月にハノイで開催予定の「経済の法制度整備に関するAPECエコノミーの経験共有のためのセミナー」の成功に期待した。

2. 社会・経済的格差

 閣僚は、すべての市民が貿易の自由化と経済成長による恩恵を共有する機会を得ることを確保することの重要性を再確認した。閣僚は、2006年6月28日及び29日にソウルで開催された韓国主催の「社会・経済的格差に関するAPECシンポジウム」の成果を歓迎し、「APEC地域の社会・経済的不均衡に関する報告書」に留意した。この報告書は、対処すべき分野を特定し、社会・経済格差問題に関連する課題と障害にどう立ち向かうかについての提言を示している。

3. 持続可能な成長のための情報共有

 閣僚は、アジア太平洋エコノミーが、持続可能な成長のため、より正確、迅速で、利用者にとって使いやすい方法での情報共有を促進するための日本の提案に留意した。

IX. ビジネス界との相互作用

1. APECビジネス諮問会議(ABAC)との対話

 閣僚は、APEC地域の自由で開かれた貿易と投資を実現するため、ABACとの協力を促進するよう、高級実務者に指示した。閣僚は、首脳に対する「ABAC2006提言書」を歓迎し、高級実務者に対し、提言を考慮し、高級実務者の意見をABAC及び閣僚に報告するよう課した。

 閣僚は、2006年5月にモントリオール(カナダ)で開催された第2回ABAC会合以来続けられているSOMとABACの間の、ドーハ開発アジェンダ交渉(DDA)、地域貿易協定・自由貿易協定(RTA/FTA)及び釜山ビジネス・アジェンダを議論するための対話を高く評価した。閣僚は、2007年5月に東京(日本)で開催される予定の次回のSOM/ABAC対話に期待を表明した。

 閣僚は、政策提言及びAPEC改革イニシアティブに沿ったAPEC活動の見直しにおいてABACが今後も重要な役割を果たすことを求めた。

2. 産業界との対話

2.1. 自動車対話

 閣僚は、低リスクの自動車及び自動車部品会社に対し税関手続を円滑にするための自動車対話によるイニシアティブを歓迎し、適切なキャパシティ・ビルディングを含むイニシアティブの実施方法に関し2007年に提出される予定の自動車対話の提言に期待を表明した。閣僚は、自動車対話に対し、他の分野において更に作業することを検討するよう奨励した。閣僚は、オーストラリアで開催される「道路安全サミット」の成果に期待し、道路安全に対する意識の向上という自動車対話の目標を歓迎した。閣僚はまた、自動車対話の新燃料及び環境問題の分野での作業に留意し、この分野での自動車対話の提言に期待した。

2.2. 化学対話

 閣僚は、地域の化学製品貿易の円滑化における化学対話の作業を認識した。閣僚は、EUの新たな化学物質規制(REACH)制度について、その実施の詳細、及び地域企業が煩瑣な試験要件を満たす能力を有するかについて不確定なため、潜在的な貿易障壁となる懸念が高まっていると表明した。閣僚はまた、化学対話の「電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する指令(RoHS)」を含むその他の製品に関連する環境規制の実施の問題に対する取組に留意した。

 閣僚は、DDA交渉の失敗が国際貿易の拡大の動きを大きく後退させるかもしれないとの化学対話の懸念とDDA交渉の早期再開の要望に留意した。閣僚は、「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)」の実施に関する進展を歓迎し、2006年9月に開催されたGHSの実施及び技術協力に関するAPECセミナーについて、世界的な分類基準に適合するためのメンバーによる確実な一歩前進であるとして、謝意を表明した。閣僚は、メンバーに対し、2008年までにGHSを完全に実施するとの提言された目標にかんがみ、GHSの実施へ向けた努力を継続するよう奨励した。閣僚は、原産地規制及び緊急事態への対応を含む、化学対話の作業プログラムが拡大したことを歓迎した。

2.3. 非鉄金属対話

 閣僚は、非鉄金属のはっきりした定義を導き、2006年以降の行動計画を採択した「第2回非鉄金属対話」(NFMD)の目に見える成果を歓迎した。閣僚はまた、NFMDの主要な目標を達成し、官民双方の代表者が貿易関連規制政策の分野における協力と相互作用を促進し、アジア太平洋地域における非鉄金属の貿易、産業の競争力及び持続的発展を円滑にするよう働きかける努力を評価した。

2.4. 生命科学革新フォーラム(LSIF)

 閣僚は、「第4回生命科学革新フォーラム(LSIF)」の成果を歓迎した。閣僚は、感染症の流行、慢性疾患や人口の高齢化を含む地域の経済課題の保健的側面への革新的アプローチを議論するための2007年におけるLSIF専門家と金融、保健担当高級実務者との間の対話提言を承認した。閣僚は、疾病管理と健康のための試験的プロジェクトの開発、医療制度における生命科学革新への投資を可能にする要因の特定と対処、生命科学革新の分野での地域の指導力強化と健康と経済発展の保障の手段として科学交流と訓練を発展させることを視野に入れた研究能力評価のための官民連携を歓迎し、承認した。閣僚は、国際的ベスト・プラクティスの調和、模倣医薬品及び模倣医療器具と闘うための訓練を含め、2007年に実施することが承認されているプロジェクトへの幅広い参加を奨励した。

3. 農業バイオテクノロジーに関するハイレベル政策対話(HLPDAB)

 閣僚は、農業生産性の向上、食の安全の強化、環境資源の保護における農業バイオテクノロジーの価値を認識した。閣僚は、「第5回農業バイオテクノロジーに関するAPECハイレベル政策対話」の成果を歓迎した。閣僚は、締結国が議定書上の義務を履行し、また、遺伝子組替え生物の貿易を円滑にする方法に関連して、「バイオセイフティに関するカルタヘナ議定書」には今後も注意を払う価値があるとする政策対話の提言に留意した。

 閣僚はまた、2007-2009年HLPDAB作業計画の承認を認識し、農民対農民のワークショップ、バイオテクノロジー部門での創造を促進するのに必要な要素に関する情報共有のための投資手段の発展を含む、HLPDABにより調整されている今後の活動に、APECメンバーが参加するよう奨励した。

X. 文化交流と観光協力

1. 文化交流と関連問題

 閣僚は、10月にハノイ、ダナン、ホーチミン市開催された2006年「APEC映画祭」と2006年APEC首脳会議の週にハノイで開催される「APEC写真展」の成功を歓迎した。閣僚は、これらの行事がAPECメンバー間の相互理解、友好関係、共同体意識の醸成に寄与することに留意し、今後同様の活動の実施を考慮するよう奨励した。

 閣僚は、インドネシアがロシア及び米国を共同提案国として提案したAPEC文化間・宗教間イニシアティブを承認し、10月5日及び6日にジョグジャカルタ(インドネシア)で開催された「文化間・宗教間シンポジウム」の成果を歓迎した。閣僚は、APEC地域の貿易・投資の促進には不可欠な、異なる文化や信仰の背景を持つメンバー間の社会的交流の推進、相互理解、受容、信頼の構築の機会を提供するイニシアティブを考慮するAPECにとっての必要性を強調した。

 閣僚はまた、この分野におけるAPECのイニシアティブは、既に行われている宗教間、文化間対話に価値を付与するものであることに留意した。閣僚は、まず何よりも革新を引き起こし、生産性を高めるような地域社会の知識や信条を広めることによって、APECの地域社会の潜在力を実現する必要性を強調した。閣僚は、いかなる形での過激主義やテロリズムも廃絶するために、協調して作業することに合意した。閣僚は、APEC地域における調和のとれたコミュニティを促進するため、社会的、法的、ガバナンス、経済的課題への対処に合意した。

2. 観光協力

 地域協力の優先的分野の一つとして観光が重要であることを再確認しつつ、閣僚は、2006年5月に静岡(日本)で開催された「観光作業部会(TWG)」の第28回会合と、同10月にホイアン(ベトナム)で開催された第29回会合の成果を歓迎した。閣僚は、APEC観光投資フォーラムへの民間部門の参加奨励、APECメンバーの文化遺産遺跡間や主要な観光地への直行航空路線新設の検討、及び海外からの訪問客の招致ために自発的に開催される予定の「APEC観光フェア」などの推進によってAPEC地域の観光を活性化する、観光担当大臣によって採択されたイニシアティブを賞賛した。

 加えて、閣僚は、TWGに、旅行及び観光への障壁を特定し、前向きなビジネス環境の創造を育成する政策を発展させるよう奨励した。観光はこの地域における最大の雇用を創出していること、及び観光は流行病、自然災害及びテロ攻撃に脆弱であることにかんがみ、閣僚は、これらの要因により引き起こされた破壊からの観光業の迅速な回復を促進することの重要性を強調した。

XI. 青年協力

 閣僚は、APECメンバーの青年世代に対し、APEC共同体の概念を深め、将来の首脳間協力へ向けた基礎を据えるため、APEC関連事項に活発に関与するよう奨励した。閣僚は、「持続可能な開発のためのアジア太平洋地域の青年協力の強化」のテーマの下で8月に開催された「APECユース・フォーラム2006」の成功を歓迎した。閣僚は、メンバーに対し、フォーラムの提言の実施、特に2007年ベトナムにおける「APEC青年ボランティア・ワークショップ」の開催を奨励した。

XII. ジェンダーの統合

 閣僚は、ジェンダーをすべてのAPEC政策及びプロジェクトに統合することはAPECの分野横断的テーマであり、APECへの女性の更なる参加を促進することは、持続可能な開発と繁栄のための躍動的なコミュニティの達成という目標に相当に寄与する効果的方策であることを再確認した。

 閣僚は、「APECにおける女性の統合のためのフレームワーク」による恩恵及びその実施を更に促進する必要性を認識し、閣僚レベルでの検討へ向けた問題を強調するため、定期的にその実施をレビューすることをメンバーに奨励した。

 閣僚は、メンバーとフォーラムに、それぞれの作業においてジェンダーを主流に組み入れる活動に必要な資金及び資源を割り当てること、さらにワークショップ/会議等の活動はもとより、意思決定プロセス、プロジェクト/プログラム実施に女性が参加することを奨励するよう求めた。

 閣僚は、「躍動的なコミュニティに向けて:持続可能な開発と繁栄のための女性のビジネス競争力強化」のテーマの下で、2006年9月19日から22日までハノイ(ベトナム)で開催された「第11回女性リーダー・ネットワーク(WLN)」の結果を歓迎した。閣僚は、メンバーに対し、デジタル・エコノミーへの女性の参加及び女性の能力開発の促進の方法について、第一に零細・中小企業における女性の能力開発に個別に、また共同で取り組むことを奨励した。

 閣僚は、「第2回女性輸出者への支持及び能力強化に関するCTIセミナー」からの提言を歓迎した。世界市場とサプライ・チェーンにおける女性の重要性を認識し、閣僚は、RTA/FTA及びDDAが女性に与える差別的影響に関する更なる調査の必要性を認識し、世界経済への女性の完全な参加を確保するための調査の着手を支持した。

XIII. APEC改革

 閣僚は、「運営の効率性向上・運営上の連携促進・運営のダイナミズムの強化」というテーマの下に高級実務者が作成した2006年APEC改革に関する提言を承認した。閣僚は、事務局の強化、APECプロセスの連携と効率性の向上、ABACとの統合深化及び目標集中的な政策アジェンダのための実質的な改革措置が提言に盛り込まれていることを賞賛した。閣僚は、APEC事務局に総務部長を置くという合意を歓迎し、高級実務者に対し、2007年にこの提案の詳細を議論し、実施し、事務局長の期限付き専従化について更に議論することを指示した。閣僚は、事務局の中に政策・評価支援ユニットの設立を促進するとの日本のイニシアティブを賞賛し、高級実務者に対し2007年の優先的改革関連事項として、この支援ユニットについて更に議論するよう指示した。

 閣僚は、APECフォーラムの合理化、プロジェクト提案の優先順位付け、下部組織・作業部会・タスクフォース間のより良い調整に寄与する「経済・技術協力に関するSOM運営委員会(SCE)」の作業を歓迎した。閣僚は、高級実務者にAPEC事務局と連携し2007年についても改革施策の早期実施を確保するよう指示した。

 閣僚は、APECが引き続きメンバー及びビジネス界のニーズに適切かつ効果的に対応する組織であり続けることを確保するためにAPEC改革を継続することへのコミットメントを再確認した。

XIV. 分野別閣僚会合

1. APEC鳥・新型インフルエンザ担当大臣会合

 閣僚は、満足の意をもって、2006年5月4日から6日までダナン(ベトナム)において開催された「APEC鳥・新型インフルエンザ担当大臣会合」の成功と成果に留意し、「鳥・新型インフルエンザ予防・対処に関するAPEC行動計画」を歓迎した。閣僚は、この行動計画を2005年の首脳会議で承認された「流行性インフルエンザへの備えとその緩和に関する首脳イニシアティブ」の実現への重要な貢献と捉えて、行動計画の実施のために個別にあるいは共同でメンバーが努力することを奨励した。

2. APEC財務大臣会合

 閣僚は、力強い地域及び世界の経済成長を支えるような方法で、世界的不均衡を秩序立てて調整する共同行動が重要であることを認識した、第13回APEC財務大臣会合(FMM)の成果を歓迎した。閣僚は、これを達成するには、APECメンバーが財政の持続可能性、物価及び為替の柔軟性、財政改革を促進する必要があることから、共同の責任であるとのFMMによるコンセンサスを支持した。閣僚はまた、効率的で持続可能な歳入システム及び資金フローを引きつける金融セクター改革を促進するための適切な政策及び協力活動に関するFMMの審議を歓迎した。閣僚は、開かれ、よく管理され、体系的に健全な金融サービス部門の重要性をFMMが強調したことを認識し、IMF及び世界銀行の金融セクター評価プログラムが改革の優先付けを支援し得ることに留意した。

 閣僚は、財務大臣プロセスのレビューの成果に留意し、さらに、APEC首脳プロセスを補完し、ボゴール目標達成の成功のための財務大臣プロセスの質と効果を更に強化しAPECプロセスにより効果的に貢献することへのコミットメントの表れである、更新された「戦略的目標」及び「ハノイ中期アジェンダ」を支持した。

 閣僚は、テロリストへの資金供与、資金洗浄、その他メンバーの金融システムの濫用に立ち向かうため、行動タスクフォース(FATF)により示された国際基準へのFMMのコミットメントを歓迎し、FATFがタスクフォース構成メンバーの拡大について適切に努力することの呼びかけを歓迎した。閣僚はまた、財務大臣がWTOメンバーに対し、包括的な地域自由貿易合意を模索するためドーハ開発ラウンドの多角的貿易交渉を再開し、長年にわたり懸案であったIMFの統治構造改革へ向けた努力を完了し、発言力と分担金について数多くの急速に成長する新興経済を含め、世界経済をより良く反映するように要請したことを認識した。

3. APEC観光大臣会合

 閣僚は、10月にホイアン(ベトナム)で開催された「第4回APEC観光大臣会合」の成果、特に地域の持続可能な観光と投資を促進することへのメンバーのコミットメントを再確認し、活力ある観光産業のための地域協力を強化するために採択された措置を特記した「観光に関するホイアン宣言」の採択を歓迎した。

 閣僚は、APECの観光分野での今後の協力に向けたガイドラインに関する観光大臣会合の熟慮を歓迎した。その協力は、観光分野の人材の訓練及び育成、観光サービスと職業技能の基準化、旅行円滑化手続の調和化、TSA(観光部門が地域経済に与える影響を算出する統計処理、Tourism Satellite Account)の採用、観光開発分野での賢明な官民パートナーシップ、観光インフラの開発、観光製品及び観光サービスの質の向上、観光マーケティング及び観光促進、持続可能な観光開発のための観光資源保護を含む。

4. APEC中小企業大臣会合

 閣僚は、APECメンバーの中小企業の成長促進に対する中小企業大臣の努力に留意し、9月にハノイで開催された「第13回APEC中小企業大臣会合」の成果、特に改善分野を特定し、中小企業の競争力強化のための行動を示した「中小企業の貿易・投資競争力の強化に関するハノイ宣言」の採択を歓迎した。

XV. APEC事務局

ACMSとAIMP

 閣僚は、APEC事務局による「APEC情報管理ポータル(AIMP)」の公式運用開始を歓迎し、システムによってもたらされる便益に留意し、すべてのAPECメンバー及びフォーラムに対し、AIMPを十分活用するよう奨励した。

XVI. 公式オブザーバー

 閣僚は、APECと公式オブザーバーであるASEAN事務局、太平洋経済協力会議(PECC)、太平洋島嶼国フォーラム(PIF)との間の相互作用を歓迎し、それらのAPEC全体への貢献に留意した。

XVII. 将来の会合

 閣僚は、2007年APECのオーストラリアによる準備状況に留意した。閣僚は今後APEC閣僚会合が、2008年にペルーで、2009年にシンガポールで、2010年に日本で開催されることに留意した。

XVIII. 高級実務者会合の報告の承認

 閣僚は、その中の決定事項を含め、高級実務者会合の報告を承認した。