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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ドーハ開発アジェンダ(DDA)交渉に関するAPEC首脳声明(第13回APEC首脳会議)

[場所] 釜山(韓国)
[年月日] 2005年11月19日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1.我々、APEC首脳は、WTOドーハ開発アジェンダ(DDA)交渉は、多角的貿易体制を強化し、グローバルな経済成長を促進し、特に途上国の経済開発の機会を向上させる比類なき可能性を有していると信じている。ドーハ開発アジェンダの達成は、ミレニアム開発目標(MDGs)を達成するためのグローバルなパートナーシップの重要な要素である。このため、ドーハ・ラウンドは、ドーハ宣言にある高い野心の水準を保ちつつ、2006年末までに成功裏に妥結されなければならない。

2.世界貿易の半分近くを占め、世界全体のGDPの60%近くを占めるAPECエコノミーは、自由貿易体制から多くの恩恵を受けている。過去15年間でAPECエコノミーの平均関税率は、3分の2削減された。この期間は、特にAPECの低所得エコノミーにとって急速な経済成長期であった。ドーハ・ラウンドはAPECエコノミーをこの成長と開発の軌道に乗せ続けるために不可欠である。更には、全てのWTO加盟国にとっても不可欠なものである。

3.香港閣僚会議はこの目標を達成するための重要なステップとなる。香港では、未だ存在する大きな意見の差を埋めるために大きな進展がなされなければならず、2006年のラウンド妥結に向けた明確なロードマップが構築されなければならない。このことにより、単なる経済自由化の次の段階という以上の重要な意味がある。ドーハ・ラウンドの成功裏の妥結はWTOの将来の信頼性及びルールに基づく多角的貿易体制にとって重要である。

4.全てのWTO加盟国は、ラウンド終了時には野心的かつ全体としてバランスの取れた結果を達成しなければならない。右結果には、特に次のものが含まれる。貿易歪曲的な国内支持を実質的に削減すること、意味のある関税引下げ及び数量制限削減により市場アクセスを実質的に改善すること、並びに先進加盟国は2010年までに全ての形態の輸出補助金を撤廃することを確保する農業分野における包括的パッケージ、野心的な(複数の)係数を有するスイス・フォーミュラ及び任意の分野別合意を通じた全てのWTO加盟国に真の市場アクセス改善を確保するNAMAにおける合意、全てのWTO加盟国における商業的に意味のあるかつ新規の市場機会を創造するサービス分野の合意、より明確かつ予見可能性の高い貿易規律を確保し、市場アクセスを確保しかつ市場アクセスにおける利益を拡充するWTOルールの明確化及び改善、物品の移動や国内引取りの更なる迅速化に貢献する貿易円滑化のための明確化かつ改善されたWTOルール。

5.我々は、農業交渉、とりわけ市場アクセスにおいて、現在の行詰り状態を打破することを要請する。このことは、非農産品市場アクセス(NAMA)やサービスを含むほかの主要交渉分野における停滞感を打破することにつながる。本交渉分野において進展が見込めないのであれば、ラウンド全体としての進展を見ることは出来ない。この問題に関する我々の「野心」を回避したり妥協したりすることは、ラウンド全体の期待値を下げることになる。

6.我々は、DDAが、全ての交渉分野において開発の側面を勘案し、真の意味での開発の利益をもたらすものであることを確保しなければならない。また、DDAが開発途上加盟国のニーズ及び関心、特に、低開発途上国(LDCs)の特別なニーズにつき考慮すべきである。我々は、香港閣僚会議においてLDCsの問題に関し、かなり進展することを期待する。

7.我々、APEC首脳は、DDAの課題に付随する政治的課題に向き合うことを約束する。我々は、香港において各交渉分野での成功裏の妥結を導く土台を作り出すのに必要な強い政治的リーダーシップとコミットメントを提供する用意がある。我々は、全てのWTO加盟国に対し、特にグローバルな貿易体制に大きな関心を有し、そこから最大の利益を引き出している国に対し、香港まで及び香港以降に交渉を前進させるために必要な柔軟性を示すことを要請する。