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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第12回APEC閣僚会議共同声明

[場所] バンダル・スリ・ブガワン、ブルネイ
[年月日] 2000年11月13日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1. オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、中華人民共和国、中国香港、インドネシア、日本、大韓民国、マレイシア、メキシコ、ニュー・ジーランド、ペルー、フィリピン、ロシア、シンガポール、チャイニーズ・タイペイ、タイ、アメリカ合衆国及びヴィエトナムの閣僚は、2000年11月12日及び13日にバンダル・スリ・ブガワンで開催された第12回アジア太平洋経済協力(APEC)閣僚会議に参加した。APEC事務局がこれに出席した。東南アジア諸国連合(ASEAN)事務局、太平洋経済協力委員会(PECC)及び太平洋諸島フォーラムが、オブザーバーとして出席した。

2. ブルネイのアブドゥル・ラーマン・タイブ・産業・一次資源大臣、及び外務大臣代行のマスナ王女殿下が会議の議長を務めた。APEC2000の主要テーマである「コミュニティーへの貢献」は、域内の収入を増大し貧困を減少させるための持続的経済成長の必要性を示している。このため、会議の議題は3つのテーマに沿って構成された。

・テーマ1:より強固な基盤作り

・テーマ2:新たな機会の創造

・テーマ3:APECの重要性を高める

3. マクロ経済状況は、世界的にも地域的にも、APEC地域にとって明るい将来と経済見通しに対する自信を強めるものとなっている。しかし、メンバーは、成長の持続性を高めるために改革及び構造改善を引き続き行うべきである。経済成長の潜在能力を完全に引き出せるかどうかは、グローバル化及び開かれた貿易体制へのAPECのコミットメントによってもたらされる巨大な機会を利用する上での、政府とビジネス界、及びメンバー間の密接な協力に依存している。このような繁栄を大幅に高める潜在力は、途上メンバーがグローバル化した経済により意味ある形で参加することを可能とするAPEC協力アジェンダの強化に引き続き努めていくことを必要とするであろう。APECは多くの成果をあげてきたが、大部分は今後に残されている。こうした新たな機会と課題を背景として、APECの閣僚は、APEC地域における共通の繁栄のための地域的な経済協力について議論し、これを前進させるために集まった。

より強固な基盤作り

4. 閣僚は、自由で開かれた貿易及び投資というボゴール目標に対するコミットメントを再確認した。閣僚は、過去10年の進展の後、来たる将来がAPECメンバーに対し更なる成長を促す広範な機会を提供しており、このような機会を逃すべきではないことを検討した。しかし、多くの課題が存在し、APECは、各メンバーがボゴール目標に向かっていく際の備えを行うためのより創造的で効率的な方途を探求する必要があった。APECの共通の目標である経済的繁栄と社会的進歩は、APECメンバーが過去10年に渡り築いてきた堅固な基盤の上に構築すること、及び能力を構築するための協力を引き続き行っていくことを通じて、可能となるであろう。こうした努力は、メンバーが成長の潜在力を理解し、その力をより高い生活水準へと転換させていくことを助けるであろう。また、それは、APECが国際フォーラムにおいてより強力な指導的役割を果たし、国際市場において成長の牽引力として行動するための能力を高めるであろう。

貿易及び投資の自由化及び円滑化(TILF) {前21文字下線}

個別行動計画

5. 閣僚は、個別的及び集団的行動のプロセスを通じて、自由化及び円滑化の目標を推進するという、APEC独自のアプローチを再確認した。

6. 閣僚は、個別行動計画(IAPs)をより透明で、具体的、かつ包括的なものにするべきであるとのビジネス界の要請に効果的に応えるものとして、e−IAPイニシアティブを賞賛した。閣僚は、ビジネス・コミュニティー及び政策立案者にとってIAPの有効性や利用しやすさを改善するために、電子媒体への転換を通じてIAPメカニズムを改善する作業が着手されていることを歓迎した。閣僚は、新しい電子個別行動計画(e−IAPs)のための2000年IAPフォーマット・ガイドラインの提案を含む、こうした画期的な進展を承認するとともに、新しいフォーマットにより、IAPシステムが、ボゴール目標に向けた進展を反映し、かつ促すより効果的なメカニズムとなったと結論づけた。閣僚は、マイクロソフト社のe−IAPシステムへの後援及び貢献に対する謝意を表明した。こうした進展は、報告要件の合理化とともに、ビジネス・コミュニティーが、より確実性をもって計画を行い、かつ、APECメンバーがビジネス環境改善のために推進している自由化、円滑化及び規制緩和のプロセスからより迅速に利益を得ることを可能とするであろう。閣僚は、e−IAPシステムは、実際に使用してみた経験に基づき更に改良される可能性があることを認識し、実務者に対して、2001年の貿易担当大臣(MRT)会合に対しその進展を報告するよう要請した。

7. 閣僚は、2000年にメンバーによって提出されたIAPの改善点、及びボゴール目標を達成するためにそれぞれの個別計画を前進させ、引き続き改善しようというメンバーが示した強固なコミットメントに勇気づけられた。閣僚は、本年新たに登場した電子フォーマットを活用したメンバーを賞賛し、2001年のIAPの提出において新しいe−IAPシステムを全てのメンバーが活用することで意見が一致した。

8. 閣僚は、メンバーがそれぞれの個別計画を一層の改善に向けたコミットメントを示すことを可能とし、また、メンバーに対し、これをどのように行うかについて緊密に協議する追加的な機会を提供することとなる、進行中のピア・レビューのプロセスへの支持を再び表明した。大阪行動指針(OAA)の原則に導かれ、閣僚は、自主性の性質を損なうことなく、定期的で、焦点が絞られ、かつ実施しやすいピア・レビューを要請したプロセスの厳格性及び格を改善するための一連の提言を承認した。閣僚は、中国、インドネシア、メキシコ、ペルー、シンガポール、チャイニーズ・タイペイ及びタイが、ピア・レビューのために本年それぞれのIAPを提出したことを賞賛し、2001年にカナダ及びロシアがIAPを提出すると申し出たことを歓迎した。また、閣僚は、こうしたピア・レビューのいくつかにビジネス界が参加したことに留意し、ピア・レビュー・プロセスにビジネス界を自発性に基づき招待することを歓迎した。

9. 閣僚は、APECの基盤を強化することの重要性、並びに貿易と経済協力を通じて経済成長及び公平な発展を達成するための努力の中で、ビジネスとコミュニティー一般との間により緊密な関係を作ることの重要性を承認した。閣僚は、APECが引き続き成功を築き上げるとともに、新たな世界的な課題に直面し、来たる世紀における新しい機会を捉えるために、その作業が適切であるように確保することが必要であることで意見が一致した。閣僚は、大阪行動指針を見直し活用する包括的アプローチを採択した、ダーウィンでのMRT会合における決定を再確認した。閣僚は、これまで行われてきた初期段階の作業を承認し、実務者に対して、ABACの見解を考慮しつつ作業を完了させ、2001年のMRT会合に対し提言を提出するように指示した。

共同行動計画(早期自主的分野別自由化及び貿易の円滑化を含む)

10. 閣僚は、貿易投資委員会(CTI)の年次報告及び提言を承認した。閣僚は、共同行動計画(CAPs)が高度化されたことに留意し、貿易及び投資政策の透明性が増大したことによりビジネス・コミュニティーに対しより大きな確実性及び予測可能性が提供されること、並びに、ビジネスにおける取引コストを引き下げる結果となることを検討した。閣僚は、2000年における以下の主要な結果を承認し、かつ特記した。

・非関税措置(NTMs)に関する作業を強化するためのCPAの拡大。

・技術的規制に関する良き慣行の原則及び特徴、並びにインフォメーション・ノート。

・関税手続のための「ペーパーレス貿易」を含むCAPの拡大。

・サービスに関する作業のためのAPEC政策フレームワークの完成。

11. 閣僚は、CTIにより提案された2001年の優先分野を承認し、実務者に対して、作業計画の効率性を高めるための新たな方途を探求するよう指示した。閣僚は、APECの作業が引き続きダイナミックかつ適切であることを確保するプロセスにおいて、ABACを含むビジネス・コミュニティーと緊密に作業を行うことの重要性を強調した。

12. APEC地域への安定的な投資フローを確保することの重要性を考慮しつつ、閣僚は、2002年にウラジオストックにおいて第3回投資マート、及び第7回投資シンポジウムを主催するというロシアの申し出を歓迎した。

早期自主的分野別自由化

13. 閣僚は、非関税措置、円滑化及び経済技術協力に関する作業を進展させるための多岐にわたる調査や分野別セミナー、乃至ワークショップを含む、EVSLイニシアティブの下での多くの活動に留意した。特に、閣僚は、非関税措置の作業計画の統合を歓迎し、CTIに対して、次回閣僚会議までに非関税措置に関する追加的な共同行動を更に発展させることを課した。閣僚は、また、関連のAPECフォーラムに対して、このプロセスを支援する適当な経済・技術協力プログラムを検討するよう要請した。

14. 閣僚は、また、2000年のAPEC自動車対話においてなされた進展を歓迎し、タイでの次回対話においてこのような進展が更に見られるよう促した。閣僚は、政府関係者及び産業界の代表者からなる化学ダイアローグを立ち上げるイニシアティブを歓迎した。そのような官民セクターの対話は、将来の政策を発展させるための主要論点に関する相互理解を増進し、化学産業における競争力を高める上で重要である。

貿易円滑化

15. 閣僚は、貿易及び投資の円滑化の改善における近年のAPECの前進を見直し、これがビジネス界にとって直ちに利益となり、APECメンバーを自由で開かれた貿易と投資という目標へ近づけるものであることで意見が一致した。閣僚は、地域における検査と認証の要件における迅速な情報の交換及び透明性の増大、APECビジネス・トラベル・カード、BizAPEC.comウェッブサイトの立ち上げ、並びに「APEC:ビジネスのための結果及び2000年SCCPブループリント:現代ビジネス環境の課題への対応」に関する作業の成果に留意した。閣僚は、APECのフォーラムに対して、ビジネス界及び消費者にとって取引コストの削減という直接の利益のため、この作業を引き続き行うとともに、新たな分野及びこれを前進させるための方途を探求するよう要請した。

16. 閣僚は、貿易円滑化が引き続き優先的課題のひとつであることで意見が一致した。閣僚は、貿易円滑化に関する一連の非拘束原則を発展させる最初の作業を歓迎するとともに、実務者に対して、2001年6月に貿易担当大臣が検討するため、この作業を完了し報告を行うよう指示した。閣僚は、貿易円滑化に関する非拘束原則に関する作業がWTOへの有用な貢献となり得ることに留意した。閣僚は、アジア太平洋地域における貿易円滑化に関するAPECワークショップの結果を認識し、実務者に対して、来年のプロセスにおいて貿易円滑化に関するカナダの提案を検討するよう指示した。

多角的貿易体制の強化{前10文字下線}

17. 閣僚は、開かれた地域主義に対する強固なコミットメント及び多角的貿易体制の優越性への強い支持を表明した。閣僚は、多角的貿易体制は21世紀のグローバル化した経済のニーズに対応するべきであり、WTOルールの下での貿易自由化は成長と発展を加速させるダイナミックな力であることで意見が一致した。閣僚は、また、世界経済において成長を促進する上でのWTOの重要性につきより良い意思疎通を行うことが、一層の貿易自由化に対する支持を広げることで意見が一致した。

18. 閣僚は、WTO協定を実施し多角的貿易体制により完全に参加するため、途上メンバーの能力を構築することに対するコミットメントを再度表明した。閣僚は、WTOに完全に参加する能力を高めるための共同の行動の基礎として、戦略的APEC計画を承認するとともに、出来る限り早期に実施することが重要であることで意見が一致した。閣僚は、この戦略的計画が個々のニーズに応えるための具体的なプログラムを提供するように策定されたことを歓迎した。閣僚は、また、適当な場合には、先進メンバー及び途上メンバーの双方が開発プログラムにおいて同計画の優先順位付けを行うことを決定した。また、閣僚は、確立されたTILF承認プロセスに従って、可能なプログラムに融資するため、APEC・TILF基金を割り当てることに対して優先性が与えられることを決定した。閣僚は、更に、この計画の実施において、世界銀行やアジア開発銀行等関連する国際機関との協力をメンバーが進めることを決定した。

19. 閣僚は、可能な限り早い機会に多角的貿易交渉の新ラウンドを立ち上げることへの強固なコミットメントを再確認した。閣僚は、新ラウンドを成功裡にかつ迅速に立ち上げるためには、全てのWTO加盟国の関心や懸念に応えるような、バランスが取れかつ十分に広範なアジェンダが必要なことで意見が一致した。この点を考慮しつつ、閣僚は、ジュネーブの代表団に対して、2001年にアジェンダに関して合意するよう指示するとともに、全てのWTO加盟国が政治的意思を結集し、柔軟性を発揮するよう求めた。閣僚は、また、後発途上メンバーの市場アクセスに関する措置や、WTO協定の実施の側面に関する懸念に対処する措置を含む、WTOにおいて採択された信頼醸成措置を賞賛した。閣僚は、実施に関連する全ての問題に真剣に対処することにコミットした。

20. 閣僚は、途上メンバーがWTOに完全に参加する能力を促進するような特別かつ差別化された取扱いの効果的な実施、並びに、キャパシティー・ビルディング及び技術援助への現在進行中の支援に対して払われる注意を高めることを通じて、途上メンバーの懸念に対処すべきであることを再確認した。

21. 閣僚は、農業及びサービスに関するマンデートを与えられた交渉がジュネーブにおいて開始されたことを歓迎した。昨年のオークランドにおける農業及びサービス交渉に関する閣僚による合意を認識しつつ、閣僚は、これらの分野において意義のある前進が見られるよう促した。

22. 閣僚は、サービス分野におけるAPECの専門的知見に留意するとともに、交渉に弾みをつけるためにその知見を活用する努力を支持した。閣僚は、WTOサービス機関における作業等を通じて、貿易円滑化措置を引き続き前進させる作業の重要性について意見が一致した。閣僚は、また、WTOのサービス交渉に対し、経済・技術協力が貢献し得ることを認識した。

23. 閣僚は、交渉のアジェンダ全体を予断することなく、新ラウンドに対する準備の一環として、全てのWTO加盟国が、鉱工業品関税及び他の関連する分野に関するWTOの準備作業に積極的に貢献するよう求めた。

24. 閣僚は、次回WTO閣僚会議までの間の電子商取引への関税賦課に関するAPEC全域に渡るモラトリアムに対するコミットメントを再確認した。閣僚は、電子商取引の利用及び開発を制限する不必要な措置を避けることの重要性を認識し、WTOのルールが電子商取引の進化に対してどれほど適切であるかを検討するアド・ホックの分析タスク・フォースをWTO内に設立するよう要請した。

25. 閣僚は、投資・競争政策の相互理解を促進するためペルーにおいて開催されたセミナーの結果に留意するとともに、11月にフィリピンにおいてセミナーが開催されることを歓迎した。閣僚は、また、こ

れらの問題に関するAPECによる既存の分析作業に留意した。

26. 閣僚は、また、2001年9月にTRIMSの実施に関するセミナーを主催するという中国の申し出を歓迎した。

27. 閣僚は、中国のWTO加盟交渉に実質的な進展があったことを歓迎するとともに、加盟交渉を早期に完了するよう求めた。閣僚は、また、チャイニーズ・タイペイのWTOへの早期加盟、並びに、ロシア及びヴィエトナムの加盟プロセスの進展に対する支持を再度表明した。閣僚は、全ての加盟しつつあるメンバーがWTO新ラウンド交渉に何らかの形で参加するとの合意を支持した。

28. 閣僚は、既存の地域貿易協定と二国間投資条約に関するデータベース化の作業の進展に留意した。

29. 閣僚は、地域貿易協定や二国間貿易協定がWTOにおける多角的貿易自由化のための踏み台(ビルディング・ブロック)となるべきであることで意見が一致した。閣僚は、既存の及びこれから出来つつある地域貿易協定や二国間貿易協定が、WTOのルール及び規律に整合的であることが不可欠であると認識した。閣僚は、これらの協定がAPECの構想に沿うものであり、また、APECの目標及びその諸原則に資するものであると考えた。

人々に恩恵をもたらすオープン・エコノミー:APEC10年の進展

30. 閣僚は、オーストラリアがAPEC首脳会合のために準備した「人々に恩恵をもたらすオープン・エコノミー:APEC10年の進展」の報告を承認した。同報告は、国際的な競争力を促進し経済ガヴァナンスを強化するための措置とともに、開かれた経済政策を採用したことにより、APECメンバーが力強い経済成長のみならず、域内の人々の生活の大幅な向上も達成したと結論づけている。閣僚は、APEC域内において過去10年間の開かれた経済政策が貧困の軽減に大きく役立ち、かつ多くの雇用を創出したことに特に留意した。閣僚は、また、経済的変化にうまく対処していくためには、適切な場合には、ソーシャル・セーフティー・ネットの開発を含む、構造調整の戦略が必要とされることを認識した。

31. 閣僚は、開かれた経済政策を引き続き追求していくことが域内の人々の願望に応ずるために不可欠であり、また、メンバーが開かれた経済政策を追求することを支援するため、APECが適切に位置づけられていると結論づけた。従って、閣僚は、実務者に対し、組織的なキャパシティ・ビルディングや変化にうまく対処するための戦略を含め、関連するフォーラムにおいて、メンバーによる開かれた経済政策の追求を支援する作業を強化するよう指示した。

市場機能の強化 {前7文字下線}

32. 閣僚は、域内の市場機能の強化に対しAPECが行っている重要な貢献を歓迎した。閣僚は、持続する経済成長を目指す上で、強力な市場が、貿易や投資の自由化及び円滑化にとって必要となる補完物であることを認識した。閣僚は、また、ニュー・エコノミーの出現が、効率的、競争的かつダイナミックな市場の重要性を強調する役割を果たしているに過ぎないことに留意した。

33. 閣僚は、「市場の強化に関するAPECロード・マップ」の進捗状況報告を賞賛した。この報告は、重要な市場原理に対処する上で、APECの多大な共同及び個々の努力に焦点を絞ることを可能とした。このような努力や、オークランドにおいて特定されたロード・マップの中の要素に加え、閣僚は、以下を承認した。

・OECDと共同で企画され、「競争の向上及び規制改革のためのAPECの原則」を実施するためにメンバーのキャパシティ・ビルディングを目指す「規制改革の協力イニシアティブ」。

・良き規制システムを開発するため、キャパシティ・ビルディング及び組織の構築とともに、企業法、競争政策に焦点をおいた「経済法制度強化のための協力フレームワーク」。インドネシア、日本及びオーストラリアの共同企画で、2000年7月にジャカルタにおいて開催された「経済法制度の強化に関するAPECシンポジウム」は、このフレームワークの出発点となった。

・2000年9月に東京と台北で開催された二つのワークショップに引き続き、進展中の協力イニシアティブに基づいた「中小企業及び新規事業の支援」の分野における協力プログラム。

・太平洋経済協力会議(PECC)に対し、APECが域内の経済及び企業ガヴァナンス向上のための作業を更に進める上で検討すべき計画を発展させるよう要請する提案。このような提案を行うに当たり、閣僚は、APEC蔵相会合での「企業ガヴァナンスに関するイニシアティブ」における進展を賞賛するとともに、将来の計画がこのフォーラムにおいて現在進行中の活動を考慮すべきことに留意した。

34. 閣僚は、また、ロード・マップの特定の要素の実施においてAPECが達成した進展を賞賛した。特に留意されたのは、域内の貿易と基本的なサービスの提供において重要となる、切れ目なくかつ安全な交通システムの開発のためになされた努力である。このため、閣僚は、航空サービス自由化のために同様の考え方を有する5つのメンバー間での多国間の取極とともに、APEC内での措置の拡大及び深化についての提言を含む、自発性に基づく、より競争的な航空サービスのための提言の実施における進展を歓迎した。その他のイニシアティブとしては、2000年9月に日本とブルネイの共催で開催され、「産業構造高度化のための人材開発」の問題について議論した「構造改革のための人材開発の強化に関するセミナー」、ニュージーランドの企画で、2000年5月にシンガポールで開催され、公共部門の効率性向上のための見解と経験の交換を行う有意義な場を提供した「公共部門マネージメントに関するAPECワークショップ」がある。

35. 閣僚は、市場強化に関してAPECの行う活動は、人材能力の強化とともに、関連する市場インフラ及び組織の構築という課題に対処していくことがますます必要であることに留意した。従って、閣僚は、実務者に対して、こうした課題に集中し、かつ新たなイニシアティブや提案を考慮に入れた上で、2001年におけるロード・マップの更なる進捗状況につき報告するよう指示した。

経済及び経済協力問題{前10文字下線}

経済・技術協力小委員会高級実務者会合(ESC)

36. 閣僚は、経済・技術協力小委員会の高級実務者報告、並びに、その提言及び結論を承認した。APECの経済協力アジェンダを更に進展させるため、閣僚は、経済協力案件はより重点を絞り、かつ適切に優先順位付けすべきであることを強調した。閣僚は、経済・技術協力小委員会に対して、2001年に大阪行動指針の共同行動/対話部分を、同指針の実施状況のレビューを踏まえ、更に発展させていくよう指示した。ボゴール目標を達成するにあたっての技術協力の重要性を再確認した上で、閣僚は、より焦点が絞られ、かつ強化された行動アジェンダを求めた。この点に関し、閣僚は、実務者に対して、技術協力においても個別行動計画を設定する可能性につき検討するよう指示した。

37. プロジェクトの調整能力向上の必要性を認識し、閣僚は、エコテク・クリアリング・ハウスの設置を歓迎し、エコテク測定マトリックスへの改訂を承認した。閣僚は、APECのフォーラムにおいて、経済・経済協力活動の調整のためにクリアリング・ハウスの電子掲示板の機能を活用するよう促した。閣僚は、また、経済・技術協力プロジェクトへの参加の拡大を求め、経済・技術協力小委員会がAPECにおいてより重要な役割を担うべきであることを強調した。この点に関し、閣僚は、実務者及びAPECのフォーラムに対し、「経済・技術協力小委員会を通じAPECは人々にとってより重要な意味を持つ」という出版物を例にあげて、APECのプロジェクトが域内の人々の生活にもたらした利益を伝達し、広報するよう指示した。

38. 閣僚は、持続可能な経済の地域統合(RISE)に関する報告を歓迎し、中国やインドネシアにおいて継続されているように、民間セクターの一層の関与を求め、また、他のメンバーの都市にも拡大していくことにコミットした。

39. 閣僚は、「APEC教育財団」の活性化の努力を歓迎するとともに、メンバーが同財団に活発に参加するよう促した。

経済委員会(EC)

40. 閣僚は、2000年に閣僚に提出された経済委員会報告を承認するとともに、経済委員会がその研究プロジェクトのために企画したシンポジウムの結果に留意した。閣僚は、また、経済委員会のAPECメンバーに対する石油価格高騰の影響に関する報告を歓迎するとともに、APEC経済委員会が引き続きこの問題に取り組み、その結果を2001年のAPECエコノミック・アウトルックに盛り込むよう指示した。

41. 閣僚は、2000年APECエコノミック・アウトルックを承認した。本報告は、アジア経済危機が封じ込められ、APEC地域における経済の回復が一層広く見られることを確認した。閣僚は、また、ニュー・エコノミーの主要課題に注目した「アジア経済危機後のAPEC経済」の報告を承認した。閣僚は、更に、「APECにおける知識集約型経済に向けて」の報告、並びに、知識クリアリング・ハウスの設置、知識集約型経済への移行の契機を促す政策メニューの策定、及びAPECエコノミック・アウトルックに知識集約型経済関連指標を含めるとの同報告書の提案を承認した。閣僚は、経済委員会に対して、共同行動を通じて実施可能な提案を特定の上、APEC事務局と協力して実施のための詳細な計画を策定し、来年の閣僚会議において、閣僚に対し報告するよう指示した。

人材養成に関する新イニシアティブ

42. ニュー・エコノミーの出現は、人材養成にとって新しい次元を創り出した。この点に関し、閣僚は、人材養成の重要性を再確認するとともに、高級実務者に対して、APECが新しい環境における課題に対処できるよう、目的、優先順位及び原則を規定した人材育成の戦略を準備するよう指示した。

43. こうしたプロセスを支援するため、閣僚は、経済・技術協力小委員会高級実務者会合に先導される人材養成の代表者による特別調整グループを設立し、高級実務者の提言にあるように、APECの人材養成努力の調整と効率の向上のために情報交換を行うことで意見が一致した。特に、閣僚は、調整グループに対して、首脳及び閣僚へのAPECの人材養成努力に関する報告を毎年準備させることにより、APECの人材養成努力についての報告と広報の改善を行うという提案を承認した。閣僚は、第1回年次報告書の出版に対する支援を提供するというブルネイの申し出を歓迎した。

44. 閣僚は、情報・通信技術(ICT)が、キャパシティー・ビルディングの他の分野とともに、教育と訓練の実施にもたらす新しい機会と貢献を大いに活用するため、APECの全てのフォーラムにおいて、ICTの採用を加速化することの重要性を認識した。ビジネス界及び労働者も含む全ての利害関係者とのパートナーシップを強化するメカニズムの開発を通じ、APEC地域における人材養成の活動は、強化され、より効果的になることが可能である。閣僚は、APECの作業部会に対し、関連する政府以外の代表を関与させるよう促すとともに、実務者に対して、彼らを関与させる適切な方途を探求するよう指示した。閣僚は、ブルネイと中国によるこのイニシアティブを進展させる努力を歓迎した。

共有された繁栄と調和に関するAPECフォーラム

45. 閣僚は、2000年3月31日から4月1日に韓国で開催された「共有された繁栄と調和に関するAPECフォーラム」の成功裏の開催を歓迎した。このフォーラムでは、他の問題とともに、経済危機の再発防止のための措置やメンバー間の経済的・社会的不均衡を乗り越えるための措置について議論が行われた。閣僚は、また、このフォーラムからのイニシアティブを歓迎し、実務者及び関連のフォーラムに対して、必要場合には、実施のためにこうしたイニシアティブのレビューを行うよう指示した。

分野別大臣会合

46. 閣僚は、2000年4月にシンガポールで開催された第2回APEC教育大臣会合(AEM)の結果を歓迎した。閣僚は、メンバーが教育システムの開発について教育大臣会合が提言した主要戦略を検討すべきことで意見が一致した。すなわち、提案された戦略とは、(a)将来の学習・教育において主要能力となる情報技術の重要性、(b)教授法及び教師の質の向上、(c)教育管理制度の高度化及びAPEC内での教育交流、並びに(d)アジア太平洋地域内の理解の深化を強固なものとし、地方及び地域レベルの教育の改善に向けた継続的努力に活動力を与え、かつ豊かなものとするための、APECメンバーの間での教育の場における積極的関与の文化の促進である。閣僚は、実務者に対して、これらの戦略分野における全体的なワークプランの策定を行うよう、また、人材養成作業部会の教育ネットワークがこのワークプランの実施のための調整を行うよう指示した。閣僚は、APEC教育大臣会合が5年に一度会合を行うとの決定に留意した。閣僚は、また、アジア太平洋地域において、教育サービスでの貿易・投資に影響を及ぼす措置を特定するというオーストラリアとニュージーランドのイニシアティブに関する進展に留意するとともに、実務者に対して、協力の対象となり得る分野の特定を含め、本年にイニシアティブを完了させ、2001年のMRT会合に報告するよう指示した。

47. 閣僚は、2000年5月にメキシコのカンクンで開催された電気通信・情報産業大臣会合(TELMIN)の成果、特に「カンクン宣言」の採択を歓迎した。閣僚は、アジア太平洋情報基盤(APII)、アジア太平洋情報社会(APIS)、及び電子商取引行動のリファレンス・フレームワークの実施を推進するとのコミットメントに留意した。閣僚は、また、競争志向の環境、及び幅広い分野におけるビジネス界との協力を推進する電気通信・情報産業大臣会合の役割に留意した。

48. 閣僚は、中小企業が経済の回復を維持する上で重要であり、また、成長の基盤を支え、新しい機会を創るという形で、APECが中小企業のニーズに応える必要があることを認識した。閣僚は、2000年6月にブルネイのバンダル・スリ・ブガワンで開催された中小企業大臣会合の成果を歓迎し、また、APECフォーラムが、人材開発、ICT、金融、及び戦略提携の分野で、中小企業の利益を発展させることを奨励した。このような観点から、閣僚は、実務者および関連するフォーラムに対し、これら特定の分野における作業計画を立て、中小企業の発展を高めるために民間セクターと提携するよう指示した。閣僚は、メンバーが国内向研修プログラムのいくつかを、自発性に基づき、APECメンバーからの参加希望者に開放することを検討し、APEC地域全体で研修を実施できる指導者のリストを含めるよう奨励した。閣僚は、米国の中小企業と、関心を有するAPECメンバーから参加する一定の資格を有するビジネス・パートナーとの間の商業上のつながりを促すニュー・ビジネス・パートナーシップ・イニシアティブを認識し、米国に対して、2001年にこのプログラムを更に発展させ、上海で開催される中小企業大臣会合に報告するよう要請した。

49. 閣僚は、2000年7月にソウルで開催された第一回観光大臣会議での、APEC観光憲章に関するソウル宣言の採択を含む成果に留意した。この点に関し、閣僚は、実務者に対して、APEC地域における観光の促進のための共同コミットメントを発展させ、2001年にその進捗状況を報告するよう指示した。閣僚は、また、環境面で持続可能な観光、観光情報ネットワークの立ち上げ、及び観光衛星口座に関する具体的成果を歓迎し、観光作業部会に対して、それらの実行のため行動をとるよう指示した。

50. 閣僚は、サンディエゴで開催されたAPECエネルギー大臣会合の宣言に含まれていた持続可能な開発にとってエネルギーが中心的な重要性を有するとのメッセージを歓迎し、新しい実施戦略に対するコミットメントを歓迎した。閣僚は、また、石油市場の不安定性が経済開発に及ぼすリスクに留意し、消費者と生産者の双方の利益のために、より大きな長期の市場安定性促進のために適切な措置を要請した。この関連で、閣僚は、メンバーによる石油市場のバランスを取とろうとする本年の努力を歓迎した。

51. 閣僚は、高級実務者の報告に留意した。また、閣僚は、需要と供給の間の一層の均衡を達成することを含め、メンバーのエネルギー安全保障を強化することの重要性を考慮し、エネルギー作業部会に対して、石油市場に対する圧力を軽減するため、エネルギー市場の機能、エネルギーの効率性及び保全、エネルギー源の多様化、再生可能なエネルギーの開発及び普及、並びに、運輸産業向け代替燃料の可能性探求について、進展を見るためのに同作業部会プログラムを継続するよう指示した。閣僚は、また、石油市場の混乱に応えるための選択肢のひとつとしての備蓄が果たし得る役割について、自発性に基づき、情報を発展させ、かつ共有する新しいイニシアティブに留意した。

52. APECプロセス全体の効率性を確保するため、閣僚は、実務者に対して、APEC分野別大臣会合において承認されたイニシアティブの実施のレビューに取り組むよう要請した。

新たな機会の創造

53. ICT革命はこの地域でのビジネスのやり方を変えてしまった。このニュー・エコノミーは、APECの先進メンバー及び途上メンバーの双方に対して、新しくてエキサイティングな成長の機会をもたらした。これらの新しい機会が持つ潜在的利益を全てのAPECメンバーが最大化出来るよう必要な政策的枠組みのための触媒として、APECは、重要かつ拡大する役割を担っている。

ニュー・エコノミー{前9文字下線}

54. インターネットの急速な成長、盛んな電子商取引やその他多くの変化がビジネスと貿易のやり方を変化させており、世界経済は、このような貿易と技術の革命にさらされている。ICT革命がもたらした効率性の向上は、インフレを起こすことなく、より高い成長を達成し生活水準を向上させるための多くの機会を、先進メンバー及び途上メンバーの双方にもたらしている。しかし、経済委員会の二つの報告、「APEC地域における知識集約型経済の促進」及び「アジア危機を乗り越えるAPECメンバー」でも議論されているとおり、これらの潜在的利益の多くを現実のものとするためには、市場機能の強化、貿易と投資に対する開放性、発明と起業、健全なマクロ経済政策、教育と生涯学習、及び情報・電気通信インフラストラクチャーの役割、というものを奨励するような適切な政策的枠組みが必要である。閣僚は、ソフトウェア産業における発明のニュー・エコノミーに対する重要性を認識した。この観点から、閣僚は、ユーザーによる合法的かつ適切なソフトウェアやその他の知的財産の使用を確保するために、APECが強力な財産管理の実行を促進すべきことで意見が一致した。閣僚は、また、実務家に対して、現存するAPECのフォーラムを活用し、IT専門家の間の相互作用を高める方法を検討するよう要請した。

55. 閣僚は、APEC地域において、デジタル・デバイドが社会的及び経済的格差を更に拡大させ得ることを認識し、ICTネットワークがもたらす機会をAPEC地域内の誰もが利用できるよう確保することの重要性を強調した。閣僚は、このため、安価な技術の利用改善を要請した。ニュー・エコノミーは主としてビジネス・セクターが牽引しているので、APECの作業が適切であることを維持して行くためには、APECはビジネス・コミュニティーとの関係を強化する必要がある。この点に関して、閣僚は、デジタル・オポチュニティーを創造し、ニュー・エコノミーのもたらす利益を社会全体に行き渡らせるために官民のパートナーシップを要請した。閣僚は、この地域が発展する際に誰も取り残されるようなことがあってはならないことを強調しつつ、教育とニュー・エコノミーの潜在能力を最大化することの間に存在する不可欠なつながりを再確認した。デジタル・デバイドを軽減するための努力の一部として、閣僚は、また、この地域の全ての子供達が基礎教育を受けられることの重要性を再確認した。

56. 閣僚は、ベンチャー・キャピタルに関して開催された二つのAPECシンポジウムで出された結論を歓迎した。これらシンポジウムは、本年チャイニーズ・タイペイにて開催された「新興企業及びベンチャー・キャピタルを通じた経済再活性化」に関して承認された提案に対するフォロー・アップとして行われたものであり、閣僚は、この分野における更なる作業を促した。閣僚は、実務者に対して、ニュー・エコノミーに関連する様々なAPECイニシアティブから相乗効果が得られるよう、そのようなイニシアティブを調整し、まとまりのあるものにするよう指示した。閣僚が承認したイニシアティブは、以下のとおりである。

・米国が提案する「対応度評価アクション・パートナーシップ」

・チャイニーズ・タイペイが提案し、2001年に第一段階が実施される「デジタル・デバイドからデジタル機会への転換」

・ベトナムが提案する「電子商取引のための法的枠組制定APECガイド」の開発

・韓国が提案する「サイバー・教育協力」

・ブルネイが提案する「APECにおける人材のキャパシティー・ビルディング:21世紀の要求に応えるため」

・シンガポールが提案する「学習する社会における情報技術の活用」

・マレイシアの提案する「技能ネットワーク開発センター」

・経済委員会のKBEに関するプロジェクト

電子商取引(e−コマース)

57. 電子商取引は、APEC地域のコミュニティーに利益をもたらす新しい機会の創造のための重要な要素のひとつである。電子商取引に関する現在行われている作業を歓迎しつつ、閣僚は、キャパシティー・ビルディング、消費者保護、ネットワーク・セキュリティー、電子商取引にとって好ましくかつ整合性のある法的枠組のような他の様々な側面とともに、電子商取引から最大限の利益を得るためには、貿易促進における電子商取引の役割において前進を見る必要があることを強調した。

58. キャパシティー・ビルディングを進め、かつ中小企業が電子商取引を採用するのを支援するため、閣僚は、「中小企業による電子商取引利用支援に向けた全APEC地域の行動計画に関する提案を承認した。閣僚は、また、中国とオーストラリアが提案した「電子商取引とペーパーレス貿易に関するAPECハイレベル・シンポジウム」を承認した。閣僚は、「APEC電子商取引対応度イニシアティブ」の進展を賞賛し、また、「電子商取引対応度ガイド」を活用して19のメンバーがこのイニシアティブに参加していることを認識した。閣僚は、全てのメンバーが対応度アセスメントの結果を将来の政策策定のために活用すること、及びメンバーが各々電子商取引の対応度を高めるための更なる作業を計画するよう求めた。閣僚は、また、電子商取引におけるトレーニングや教育ニーズのための包括的アプローチを開発するために、関心を有する全ての関係者を集めようという、太平洋経済協力会議(PECC)の努力を賞賛した。

59. 閣僚は、電子商取引における消費者の信頼と確信を改善する必要を認識し、APEC全域に通じる消費者保護、電子取引の文書及び署名のための、一貫性を備え、好ましく、かつ整合性のある法律及び規制の枠組作成に向けた作業計画を承認した。この点に関して、閣僚は、電子商取引のための法的枠組に関する作業、並びに、電子政府、認証とネットワーク・セキュリティー、及び現行のビジネスモデルに関するワークショップを更に開催することを歓迎した。

60. 多くの下部機関において電子商取引が活動の主流となりつつある中で、閣僚は、より良い調整と共同作業の必要性を強調した。この点に関して、閣僚は、実務者に対して事務局と共同で電子商取引に関する活動の現状調査を行い、電子商取引ステアリング・グループ(ECSC)の関連する提言を考慮しつつ、APEC電子商取引の作業計画の対象範囲の拡大を検討するよう指示した。閣僚は、また、メンバーに対して、各メンバーにある電子データ交換(EDI)システム間の相互接続及び相互操作の確立において民間の参加を促進するよう求めた。

APECの重要性を高める

61. 閣僚は、2000年においてこの地域の人々に対してもたらされた具体的な利益に焦点が当てられるように努力が払われたことを歓迎した。「コミュニティーへの貢献」という全体を貫くテーマを通じて、APECは、自らの作業計画が利害関係者にとってより適切で、かつ意味のあるものであることを確保した。

コミュニティーとの相互作用{前13文字下線}

APECの一般へのアウトリーチ/貿易自由化の利益に対する理解促進

62. APECの役割と貿易自由化の利益に対する理解を促進することは、共同でも個別でも取り組まなければならない課題である。APECの作業に対してより広い一般の関心を意識し、閣僚は、また、我々のコミュニティーにある関心、専門的技能、及び洞察力から最大限の利益を得る方法を検討するために、APECの相互作用に関する実務者によるアド・ホックの研究グループの設立を承認し、ブルネイがそのグループを率いることを要請した。閣僚は、また、アウトリーチ活動の重要性を認識しつつ、独立した専門家の支援を得て、効果的なコミュニケーションとアウトリーチ戦略を開発するための高級実務者によるAPEC閣僚に対する提言に留意した。

63. 我々のコミュニティー、特にビジネス・コミュニティーにとって意味のある成果を達成するためには、民間セクターやその他のグループとの緊密な連携が重要な手段であることを認識しつつ、閣僚は、実務者に対して、バンダル・スリ・ブガワンにおける中小企業大臣会合に並行して行われる中小企業フォーラムやE−貿易フェアの開催に見られるように、適切な場合には、ビジネス・コミュニティーやその他の適切な利害関係者のAPECとの相互作用を高めるよう指示した。

BizAPEC.com

64. 電子商取引がAPEC地域における貿易促進に果たし得る膨大な潜在的可能性を考慮しつつ、閣僚は、APECのビジネスのためのインターネット・サービスの改善のためのイニシアティブの下で創設されたbizAPEC.comウェブサイトの発展を歓迎し、評価した。また、閣僚は、実務者及びメンバーに対して、ウェブサイトを広く宣伝し、維持し、及び改訂するよう指示した。

APECビジネス諮問委員会(ABAC)との対話{前23文字下線}

65. 閣僚は、「APEC流グローバリゼーションへの対応」と題するAPECビジネス諮問委員会(ABAC)の首脳に対する報告及びその2つの重要なテーマを歓迎した。2つのテーマとは貿易と投資の自由化及び円滑化の議題推進の必要性の強調、並びにキャパシティー・ビルディングに実体を与えることの重要性である。閣僚は、また、ABACが地域及び国のレベルでより強固な金融制度を構築することを強調していることに留意するとともに、APEC自動車対話や新たに開始された化学ダイアローグに見られるようなセクター毎の官民対話の重要性について、意見が一致した。。閣僚は、ABACが全般的にアウトリーチを強調していることを歓迎した。閣僚は、ABACによる支援の継続と励ましに謝意を表し、実務者に対して、今年提出された分も含め、ABACの提言の実施をレビューするよう指示した。

危機が社会に及ぼす影響{前11文字下線}

66. 閣僚は、危機や経済構造改革の課程により影響を受けるコミュニティーの中の貧困層や弱い立場にある層を支援することの重要性を再度表明した。この点に関して、閣僚は、韓国とタイによる「APECにおけるソーシャル・セーフティー・ネット活動の再活性化」に関する提案を承認した。閣僚は、また、ソーシャル・セーフティーに関するAPECの活動をレビューし、提言を2001年に閣僚に提出するために、「APECソーシャル・セーフティー・ネットの強化に関するアドホック作業部会」を設立することで意見が一致した。

67. 閣僚は、ソーシャル・セーフティー・ネットを強化し、アジア危機の悪影響を軽減するため、様々なAPECのフォーラムによる更なる作業に留意した。これには、オーストラリアとタイによる社会政策及びプログラム実施の発展のためのキャパシティー・ビルディング支援に焦点を当てたソーシャル・プロテクション・ファシリティーの設立が含まれる。閣僚は、また、2000年3月にタイに於いて行われた第三回年金改革に関する地域フォーラムの成功裏の開催に留意した。このフォーラムでは、社会福祉、年金及び共済基金の統合や、監督及び規制に関連する事項に関して議論が行われた。閣僚は、また、カナダが提出した「危機にさらされている貧困層にとっての南東アジア経済危機」の編纂を歓迎した。

女性の統合のための枠組{前11文字下線}

68. 閣僚はまた、APEC地域、特に中小企業セクターにおける経済開発に対する女性の重要な貢献を認識した。閣僚は、「APECにおける女性の統合のための枠組の実施」に関する最初の高級実務者報告書を承認し、この枠組みの実施における重要な前進に留意した。閣僚は、いくつかのAPECのフォーラムで開催された「性差情報セッション」を賞賛し、まだそのようなセッションを開催していないAPECのフォーラムに対して、開催するよう指示した。APECのプロセスへの女性の参加を高めるためには更なる作業が必要であるとの考慮から、閣僚は、高級実務者による提言の全てを実施するための措置を取り、より広範に枠組みを実施するよう、APECのフォーラムに対して課すとともに、APECメンバーを促した。

青年{前2文字下線}

69. 閣僚は、青年がAPECにおける利害関係者として重要であることを認識し、APECの活動を通じて、青年との関係をネットワーク化し強化することにより、青年の関与を更に促進するよう促した。閣僚は、「APEC青年ネットワーク:来たるミレニアムのAPEC社会に向けた青年の準備」という2000年7月にバンコクで開催されたフォーラムの主要な成果である「バンコクAPEC青年宣言」に留意した。閣僚は、児童労働が基礎教育の享受を制限するとの認識を含む、2000年10月にバンコクで開催された「最悪な形の児童労働の撲滅及び青年のための教育機会の提供に関するAPEC会議」の成果に留意した。閣僚は、また、「第二回APEC青年科学フェスティバル」の成功に留意し、2001年中旬に中国で開催される予定のAPEC青年フェスティバル」を歓迎した。閣僚は、韓国のウルサンで2000年9月に行われた「第一回APEC青年技能キャンプ」の成功裡の開催を歓迎した。閣僚は、また、バンダル・スリ・ブガワンで2000年6月に開催された「APEC青年起業家との市庁舎会議」を、また、11月の首脳会談開催期間中に開催される同様のセッションを歓迎した。閣僚は、更に、APECビジネス・サミット期間中に開催されることとなっている「第一回APEC青年芸術家展」、及びカナダのイニシアティブである「APEC子供のための場所−青年のアウトリーチ・イニシアティブ」を歓迎した。

APEC食料システム(AFS){前15文字下線}

70. 閣僚は、高級実務者によるAPEC食料システム(AFS)の実施報告を歓迎し、承認した。閣僚は、AFSの3つの分野、すなわち、地方インフラの開発、食料品貿易の促進、並びに、食品生産及び加工における技術的進歩の普及に対応することの重要性を再確認した。閣僚は、各々のメンバー及び割り当てられたフォーラムに対し、それぞれの責任分野において活動を強化することを通じてAFSの提言の実施に優先度を与えるよう、及びAFSの提言の実施状況について年一回報告書を提出するよう促した。

バイオテクノロジー{前9文字下線}

71. 閣僚は、バイオテクノロジーが食料増産を通じた食料安全保障及び持続可能な農法の開発に貢献する大きな潜在的能力を持っていることを認識しつつ、バイオテクノロジー製品の導入と使用の際のリスク評価及びリスク管理に対して、透明でかつ科学的根拠に基づいたアプローチを取ることの継続的重要性を強調した。閣僚は、バイオテクノロジーから生まれる製品の安全な導入及び使用の重要性を認識するとともに、バイオテクノロジーの開発及び応用に当たっては、WTOルール、並びに消費者が食品の安全性及び環境の質について持つ関心を考慮に入れるべきであることを認識した。閣僚は、農業技術協力専門家グループ(ATCEG)に対して、キャパシティー・ビルディングや情報交換を含むバイオテクノロジー分野での技術協力プログラムを更に実施し、2001年のMRT会合において進捗状況を報告するよう指示した。閣僚は、また、バイオテクノロジー製品の利益とリスクに関する消費者意識を高め、この技術の潜在的利益の実現を促すため、適切な場合には、他の国際フォーラムやボランティア団体との緊密な協力を促した。

その他の問題{前6文字下線}

運営の問題{前5文字下線}

運営のレビュー

72. 閣僚は、APECの運営プロセスのレビューに関する高級実務者議長報告、及びその全ての提言、特に、新たなAPECフォーラムの設立に関する基準、APECフォーラムの間により大きな連携を発展させるためのメカニズム、及びそれらの作業計画を承認した。閣僚は、また、ブルネイ、ニュー・ジーランド及びマレイシアが先導して実施された3年間の運営のレビュー・プロセス(その間に承認された措置の実施を含む)の成果に留意した。閣僚は、また、3年間にわたる運営のレビュー・プロセスが終了したことに留意した。閣僚は、更に、運営プロセスを改善するための高級実務者の決定に留意するとともに、高級実務者に対して、現在進行中の基準でAPECのプロセスの効率化を継続するよう要請した。

73. 閣僚は、インフラストラクチャー・ワークショップ(IWS)を経済インフラストラクチャー・グループ(GEI)と改名することに留意した。閣僚は、また、ATCEGを農業技術協力作業部会(ATCWG)と改名し、PLGSMEを中小企業作業部会(SMEWG)と改名することで意見が一致した。

2001年予算

74. 閣僚は、予算問題に関する高級実務者議長の報告書を承認するとともに、7,661,920米ドルの2001年予算、及びメンバーからAPEC中央基金に対する 3,338,000米ドルの拠出を承認した。

75. 閣僚は、所定の基準を満たすことを条件とし、かつ長期的な予算の持続可能性を維持する必要性を認識しつつ、年次活動予算に含めるために閣僚乃至実務家に対して提出されなかった緊急プロジェクトを即時実施するための承認を行う権限、及びオペレーショナル・アカウントの下で緊急プロジェクトのために6月、7月以降に生じたコミットされていない留保分を使用する権限を、予算運営委員会(BMC)に付託した。

APEC事務局

76. 閣僚は、APEC事務局長の報告を承認するとともに、APEC予算サイクルに併せて事務局がBMCと共に作業をするとの申し出を歓迎した。また、閣僚は、事務局長であるセルビニ・アリ大使とそのスタッフの業務と支援に謝意を表明した。

オブザーバーによるステートメント{前16文字下線}

77. 閣僚は、ASEAN事務局、太平洋経済協力会議(PECC)、及び太平洋諸島フォーラムによるステートメントに留意した。

APEC 2001{前8文字下線}

78. 閣僚は、2001年10月に開催される第13回APEC閣僚会議及び第9回APEC首脳会議の準備に関するブリーフィングについて中国に謝意を表明した。

将来の会合 {前5文字下線}

79. 閣僚は、2002年の第14回閣僚会議の準備の最新情報についてメキシコに謝意を表明した。2003年の閣僚会議はタイが主催することとなっており、また、2004年にはチリが、更に、2005年には韓国が主催することとなっている。