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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第9回APEC閣僚会議共同声明

[場所] ヴァンクーヴァー
[年月日] 1997年11月22日
[出典] 外交青書41号,332−346頁.
[備考] 
[全文]

1.オーストラリア,ブルネイ,カナダ,チリ,中華人民共和国,中国香港,インドネシア,日本,大韓民国,マレイシア,メキシコ,ニュー・ジーランド,パプア・ニューギニア,フィリピン,シンガポール,チャイニーズ・タイペイ,タイ及びアメリカ合衆国の閣僚は,1997年11月21日及び22日にカナダのヴァンクーヴァーで開催された第9回アジア太平洋経済協力(APEC)閣僚会議に参加した。APEC事務局員も出席した。ASEAN事務局,南太平洋フォーラム及び太平洋経済協力会議(PECC)は,オブザーバーとして出席した。会議は,ロイド・アックスワージー・カナダ外務大臣及びセルジオ・マーキ・カナダ国際貿易大臣が共同議長を務めた。閣僚は,1997年のすべてのAPECのフォーラムの成果を強調する初めての「APEC活動報告」を歓迎した。

2.これらの結果と成果をレビューするにあたって,閣僚は,この地域の経済成長及び経済的展望を強化する上での協力の価値を強調した。閣僚は,貿易及び投資の自由化及び円滑化のイニシアティブ,並びに経済・技術協力を追求するとのコミットメントを再確認した。閣僚は,最近のこの地域の金融市場の混乱により,依然として非常に堅固である長期的な成長の潜在力を実現するための基礎を築くことがAPECメンバーにとって一層重要となっていることにつき意見の一致をみた。このため,閣僚は,開放的な経済の利益が完全に実現されることを確保するための前向きなアプローチを強く支持した。

貿易及び投資の自由化及び円滑化

3.閣僚は,早期自主的自由化のための分野の特定を通じた,また,個別行動及び共同行動の組合せを通じた自由化のモメンタムの継続においてなされた進展を歓迎した。

 個別行動計画(IAP){前11文字下線}:閣僚は,個別行動計画(IAP)は,先進メン バーにとっては2010年までの,また,開発途上メンバーにとっては2020年までのアジア太平洋地域の自由で開かれた貿易及び投資のための APEC貿易指針の実施の鍵となるものであることを再確認した。

−閣僚は,APECマニラ行動計画の実施の最初の年である1997年にメンバーにより達成された個別イニシアティブ及び共同イニシアティブを承認した。

−閣僚は,メンバーのIAPにおいて1997年に見られた改善を歓迎するとともに,ボゴール目標を達成するために,それぞれのIAPに対する幅広いビジネス界の意見に適切な配慮を払った,漸進的かつ継続的な改善についてのコミットメントを再確認した。

 閣僚は,IAPに関する関心分野及び可能な改善についての意見を交換するために現在行われている二国間協議のプロセスを歓迎し,奨励した。閣僚はまた,メンバーにとって,それぞれのIAPを進めるとのコミットメントを提示する追加的機会として,1997年に自主的ピア・レビューが継続されたことを賞賛し,奨励した。

 閣僚は,IAPのより一層の透明性に貢献し,レビュー及び評価を促進するとともに,ビジネス界にとっての有用性を増進するIAPのフォーマットの改善を行った貿易投資委員会(CTI)を賞賛した。閣僚は,メンバーのIAP改訂準備に際して,改善されたフォーマットの指針に従うことにつき意見の一致をみた。

 閣僚は,将来の計画が,他のフォーラムにおいてなされたコミットメントへの付加価値,透明性,具体性,行動へのコミットメントとの観点からのビジネス上の必要性をいかに一層効果的に満たすことができるかについてのAPECビジネス諮問委員会(ABAC)からの提言を歓迎した。閣僚は,1998年及び将来にわたってIAP及び共同行動計画(CAP)を改訂するに際して,この提言に留意することにつき意見が一致し,1998年貿易担当大臣会合までに本件についての報告を行うよう実務者に指示した。

4.早期自主的分野別自由化(EVSL){前17文字下線}:閣僚は,早期自主的自由化プロセスのための分野の特定を行うという,スービックにおける経済首脳の指示を想起するとともに,このプロセスを加速するため1997年5月に貿易担当大臣によりなされた進展を歓迎した。閣僚は,別添された声明に従い,早期自主的自由化のためのイニシアティブを追求することにつき意見の一致をみるとともに,多くの提案が経済・技術協力及び円滑化を促進するための措置を含んでおり,APEC作業の統合的性格を改めて例示していることを歓迎した。閣僚はまた,このプロセスが,一層幅広い多角的自由化と整合性を維持し,かつ右を促進するために他の行動がとられるべきであることにつき意見の一致をみた。閣僚は,ボゴール目標へ向けて前進するとともに,世界貿易自由化におけるAPECのリーダーシップを示すことが重要であることを強調した。

5.貿易及び投資の円滑化{前10文字下線}:閣僚は,コストを大幅に低減し,モノとサービス,資本及びビジネス関係者の移動の障壁を削減することとなる共同行動計画(CAP)の下での成果を歓迎した。閣僚は以下を含むこれら分野での作業を支持した。

−税関近代化ブループリント及び税関協力に関するその他のイニシアティブの策定

−ビジネスの情報及び支援のためのAPECインターネット・サイトの設置

−国際規格との整合化の進展

−知的所有権の取得及び使用についての透明性向上

−メンバーが自主的にそれぞれのIAPに含めることが可能な投資環境を改善するための選択肢の策定

−モデル相互承認取決めの作成

−紛争仲介作業を指導するための原則

−APECビジネス・トラベル・カードへの参加拡大等を通じたビジネス関係者の移動の円滑化

−政府調達における透明性に関する非拘束的要素

−アジア太平洋情報社会を実現するための作業

−技術的規制に関する準備,採択及びレビューに向けたAPEC指針の完成

−APECメンバーの実効関税率についてのインターネットを通じた一般からのアクセスの確保

−統合・インテリジェント輸送システム創造のための行動計画

−水産業のための市場・貿易情報

−独立発電事業者にとっての入札,承認及び規制の簡素化及び一層の透明性に関する指針の作成

−貿易促進作業部会及び貿易・投資データ・レビュー作業部会におけるイニシアティブ

 閣僚は,貿易投資委員会(CTI)年次報告を歓迎するとともに,CAPの実施及び改善並びに報告に盛り込まれた包括的範囲にわたる短期的成果が可能な事項につきAPECフォーラムを賞賛した。閣僚は,ビジネス界の優先事項に対し特段の配慮をもって,1998年を通じCTI及び関連作業部会において貿易円滑化についての更なる努力が払われることを要請した。特に,閣僚は,税関手続の簡素化と調和についての作業の強化を要請し,事業者,特に中小企業に求められる(印刷された及び電子化された)必要書類を削減し,単純化するための標準的アプローチを要請し,更に,最近APECの5メンバーの証認機関間にて署名されたアジア太平洋試験期間認証会議相互証認取決めへの追加メンバーによる参加を奨励した。閣僚はまた,電気通信作業部会により作成された電気通信機器の認証に関する相互証認取決めのメンバーによる実施を要請した。

6.世界貿易機関(WTO)プロセスに対する貢献{前21文字下線}:閣僚は,多角的貿易体制を支援するためのAPECの継続的な貢献につき議論するとともに,特に,先進メンバー及び開発途上メンバーのいずれも含む幅広いメンバーシップ及び自由化に対する断続的なコミットメントによりAPECの果たすダイナミックかつ触媒的な役割につき留意した。閣僚は,地域的,多角的な貿易及び投資イニシアティブは,相互に補完し,支持するものであることを確保するべく努力することにつき意見の一致をみた。閣僚は,世界貿易機関(WTO)の下での開かれた,ルールに基づいた多角的貿易体制の優越性を再確認し,また,WTOのルールに従い,かつ,WTO加盟国を普遍的なものとするために,効果的な市場アクセスへのコミットメントに基づく,WTO加盟申請国・地域の速やかな加盟に対する支持を改めて表明した。

 閣僚は,合意されたタイムテーブルに従ってWTOのビルト・イン・アジェンダを実施することを特に通じて,一層の多角的な貿易自由化の基礎としてのすべての既存のWTOコミットメントの完全な実施の重要性を改めて表明した。したがって,閣僚は,WTO基本電気通信合意の成功裡の妥結を歓迎した。ITAへの参加をコミットしているメンバーの閣僚は次期ITA交渉におけるより幅広い参加及び対象品目の拡大を達成するために共働することにつき意見の一致をみた。閣僚は,より広範な市場アクセス及びその他の多角的自由化を追求するとの観点から,1998年5月に開催される第2回WTO閣僚会議が,既存のコミットメントの実施及びビルト・イン・アジェンダの進捗状況を検討するとともに,WTOの諸機関に対し,1999年後半に開催されるWTO閣僚会議への実質的な議題を準備するために必要な作業に関する指示を与える時宜に適った機会となることにつき意見の一致をみた。

 閣僚は,WTOで行われている金融サービス交渉の1997年12月12日の期限までの成功裡に妥結すべく多くのAPECメンバーの交渉担当者が払っている努力を支持する。大蔵大臣及び貿易担当大臣により意見の一致をみたとおり,成功裡の妥結は,相当改善されたコミットメントに基づくMFN合意を含むであろう。そうした成果は,金融システムの中での競争を促進し,地域的な資本市場の発展を助長し,金融市場の統合を促進し,地域的な貯蓄仲介能力を向上させ,更に世界貿易体制を強化するであろう。

 多角的な貿易の自由化及び円滑化におけるAPECのリーダーシップを維持し,強化するために,閣僚は,競争政策,貿易円滑化,政府調達の透明性,紛争仲介等の側面を含むWTOにおける作業を支援するAPECイニシアティブを引き続き追求するとの意図を再確認した。閣僚は,1998年5月の多角的貿易体制50周年は,右体制が最初の半世紀の間にもたらした利益を強調するまたとない機会であることにつき意見の一致をみた。こうした実績の上に立ち,閣僚は,APECが,多角的貿易体制を補完,支持することが可能なすべての分野を特定し,追求するための共同作業を継続することにつき意見の一致をみた。

7.貿易自由化の影響{前8文字下線}:閣僚は,貿易及び投資の自由化及び円滑化を継続することは,この地域の経済成長及び衡平な開発にとり不可欠であるとの強い信念を再確認した。閣僚は,APEC経済委員会の中で実施された研究が,APEC地域内の及びより広く世界の貿易及び生産を相当増大することとなることを確認していることにつき留意した。閣僚は,国内各界におけるこの問題についての幅広いバランスのとれた理解を促進するために,自由化及び円滑化の影響評価を拡充することの必要性を認識した。閣僚は,更なる作業への着手を求め,そして,1998年6月のAPEC貿易担当大臣会合の際に進捗状況に関する報告を要請した。

経済・技術協力

8.閣僚は,1996年に意見の一致をみた「経済協力・開発の強化に向けた枠組み」を十分に実施することにより経済・技術協力を更に強化することをコミットした。閣僚はまた,経済のファンダメンタルズを強化するための経済・技術協力活動の重要性を再確認し,この点で本年になされた努力を歓迎した。閣僚は,経済・技術協力に関する高級実務者会合の下での小委員会の設置を支持した。

 閣僚は,6つのすべての優先分野(人材養成,健全で安全かつ効率的な資本市場の発展,経済インフラストラクチャーの強化,未来技術の活用,環境的に健全な成長を通じた生活の質の確保,中小企業のダイナミズムの強化)における進展が,APECメンバー間の経済格差を縮小し,人々の経済的及び社会的な福利を向上させ,かつアジア太平洋地域における持続可能な成長と衡平な開発を達成する上で不可欠であることを強調した。

 閣僚は,1997年を通じて2つの優先分野,即ち経済インフラストラクチャーの強化と環境的に健全な成長の促進に特に重点が置かれたことを歓迎したが,これは,これら2つの分野における課題への対応における進展を加速させることに資するものである

 閣僚は,APECのフォーラムが,「経済協力・開発の強化に向けた枠組み」の実施において民間部門及びその他の専門家を関与させていることを賞賛した。これには官民対話セッションや1997年におけるビジネス・ワークショップや博覧会,及び人口増大と経済成長の食糧,エネルギー及び環境への影響(FEEEP)に関するシンポジウムの開催を通じたものが含まれるが,これらは政府,学界,非政府,及びビジネス界の専門家を一堂に集めるものである。

 以下は枠組みの6つの優先分野に関する1997年における進展を概括するものである。

i)経済インフラストラクチャー{前13文字下線}

 改善されたインフラストラクチャーは,この地域における緊急の要請である。閣僚は,公的資金のみではこの地域の膨大なインフラストラクチャーのニーズを満たすことはできないことに留意し,この地域におけるインフラストラクチャーの要求を満たすための民間/ビジネス部門の一層の関与の必要性を再確認した。閣僚は,「インフラ整備官民協力のためのヴァンクーヴァー・フレームワーク」の作成を承認し,検討を求めるため経済首脳に提言した。閣僚は,このフレームワークの実施に対する貢献における,APECの作業部会,経済委員会のインフラストラクチャー・ワークショップ及び関連の官民対話プロセスの作業を賞賛した。閣僚はまた,インフラストラクチャーは分野横断的問題であることを認め,幾つかの分野別大臣会合のプロセスによるこのフレームワークの実施に対する貢献を認識した。閣僚は,インフラストラクチャー開発のための拠点としてのAPECインフラストラクチャー促進センター・ネットワークに関する実現可能性調査の提案を支持した。閣僚は,民間部門の参加者にとってプロジェクト毎のインフラストラクチャー投資の魅力を高めるために参加輸出信用機関(訳注:日本の場合,貿易保険機関を指す)・輸出金融機関により署名された相互協力取決めを歓迎した。閣僚は,すべてのAPECのフォーラムに対し,下記のものを含む域内のインフラストラクチャー開発のニーズに対する取組みに引き続き積極的に参画することを求めた。

「アジア太平洋情報社会の構築」

 閣僚は,電気通信及び情報技術は,社会・経済を変容させており,アジア太平洋情報基盤(APII)が新しい時代に向けたアジア太平洋地域の競争力を確保するための不可欠な基礎であることを認めた。閣僚は,電気通信作業部会,及びAPECメンバーに対し,アジア太平洋情報社会を現実のものとするために必要な行動を実施するよう求めた。閣僚は,1998年に電気通信・情報産業担当大臣会合を開催するとのシンガポールの申し出を歓迎した。

「統合されたアジア太平洋運輸システムの構築」

 効率的で,安全かつ統合された地域運輸システムは,成長を支えるために不可欠である。閣僚は,民間航空安全規則の調和に対するコミットメントを確認する原則宣言を含む,1997年6月にヴィクトリアで開催されたAPEC運輸大臣会合の成果を歓迎した。閣僚は,民間航空の安全性と効率性を支えるこれら諸原則の実施を奨励した。閣僚は,交通混雑地点調査の完成と域内の統合された運輸システムを開発するためのインターモーダル・タスク・フォースの設置を歓迎した。

「エネルギー・インフラストラクチャー」

 閣僚は,エネルギー・インフラストラクチャーがこの地域の開発ニーズに対する鍵であることに留意し,計画された将来の作業がビジネスと投資に資する組織及び規制の枠組みを生み出し,環境面で責任ある実践を促進することを認識した。閣僚は,1997年8月のエドモントンで開催されたAPECエネルギー大臣会合の成果に留意し,エネルギー大臣の同僚が入札,応札,評価及び認可のプロセスに係る予測可能で透明な枠組みを推進することに焦点を当てた「独立発電事業者のための優良事例原則マニュアル」を作成したことに祝意を表した。閣僚は,環境上健全な規制慣行,天然ガス・インフラストラクチャーの開発,並びにエネルギー効率試験の施設,方法及び結果についての多数国間承認を推進するイニシアティブを歓迎した。閣僚は,エネルギーに関する幅広い課題及び政策につき議論するため,次回エネルギー大臣会合を1998年10月に沖縄で開催するとの日本の申し出を歓迎した。

「持続可能な都市のためのインフラストラクチャー」

 閣僚は,経済的に実現可能で,環境上持続可能な,社会的に健全な都市の発展におけるインフラストラクチャーの果たす役割についてのより大きな理解を増進する上での1997年の進展を歓迎した。特に,閣僚は,1997年6月のロス・カボスでの官民対話,1997年9月の北京における持続可能な都市に向けた環境及び経済政策に関するセミナー,及び来たる1997年12月の台北における持続可能な都市に向けた経済手段の利用に関するワークショップに留意した。

「地方の多様化と統合のためのインフラストラクチャー」

 閣僚は,道路,電気通信,電源開発,及びキャパシティ・ビルディングを含む,地方共同体におけるインフラストラクチャーの改善は,この地域の開発にとって不可欠であり,看過できないことに留意した。閣僚はAPECのフォーラムに対し,民間部門と連携し,地方共同体の統合と多様化を促進するためのインフラストラクチャー・イニシアティブをそれぞれの努力の中に含めることを指示した。 

 ii)環境上持続可能な成長{前10文字下線}

  閣僚は,APECの作業計画のすべてにわたり持続可能な開発に取り組むとの決定を想起し,経済面,社会面及び環境面の配慮を作業計画に統合する,調整されたアプローチの例として,APECのクリーナー・プロダクション戦略や,海洋環境の持続可能性に向けた戦略,及び持続可能な都市のための行動計画を賞賛した。閣僚は,1997年6月のトロントにおける持続可能な成長に関するAPEC環境大臣会合の中で個別の行動項目が実施のために特定されたことに留意し,すべてのAPECのフォーラムに対しこれらのイニシアティブを早急に実施するよう指示した。閣僚はまた,顕在化する伝染病による持続可能な成長に対する挑戦を認め,更なる協力の必要性につき意見の一致をみた。

 閣僚は,APECメンバーが国内的優先事項及び条件に十分な考慮を払いつつ世界的コミットメントを実施するために,自らの役割を果たすべきであるとの環境大臣による表明を支持した。この文脈の中で,閣僚は,温室効果ガスの全世界における排出につき取り組む効果的行動の重要性を認め,国連気候変動枠組条約第三回締約国会合(COP3)における建設的対話と成功に対し,同条約の目的の達成に向けた重要なステップとして強い支持を強調した。閣僚はまた,エネルギー効率を高めることが気候変動への取組みの鍵であるとのエネルギー大臣の認識を共有した。

「FEEEP」

 閣僚は,急速に増大する人口と急速な経済成長の食糧,エネルギー,及び環境に与える影響(FEEEP)の調査を通じた持続可能性への取組みにおける,エネルギー作業部会,環境・経済担当高級実務者会合及び他のAPECのフォーラムとの連携による,経済委員会及び食糧タスク・フォースの作業を賞賛した。閣僚は,カナダのサスカトゥーンで1997年9月に開催された,持続可能性の要因と,分野横断的テーマの間の相互連関を分析したFEEEPシンポジウムの成果を歓迎した。閣僚は,経済首脳に対するFEEEP中間報告を歓迎し,変化する技術条件と経済的制約への適応能力が,パートナーシップの構築及びキャパシティ・ビルディングと並んで,次の千年における成功の鍵となる要因であることにつき意見の一致をみた。閣僚は,成し得る共同行動についての経済首脳による議論の基礎を構築するため1998年における更なる作業を要請した。

「資源管理」

 1993年の宣言において,APEC経済首脳は大気,水,緑地の質の保護によって,より確かな未来に備えることができる共同体を思い描いた。閣僚は,観光,漁業,海洋資源保全,人材養成,産業科学技術,運輸,及びエネルギーに関する作業部会が技術協力を促進するとともに,投資を円滑化し環境保護を促進する持続可能な実践を推進したことを賞賛した。閣僚は,中国における「APEC環境保護センター」の設立を歓迎した。閣僚はまた,「太平洋海洋調査ネットワーク」,「持続可能な開発のための訓練情報ネットワーク」,「APEC地域のための海洋モデルと情報システム」,「環境技術交流のためのAPECヴァーチャル・センター」,及び「APECスタディ・センター・コンソーシアム」の下での「教育ネットワーク(Edu−Net)」を含む,一群のネットワークによる海洋環境に関する作業の調整に留意した。閣僚はこの調整を賞賛し,他のAPECのフォーラムに対し,こうした包括的アプローチをとるよう求めた。

「災害に向けた緊急事態準備」

 閣僚は,APECが緊急事態準備及び災害復興対策の策定においてその付加価値の高い役割を規定すべきであることに留意した。閣僚は,この鍵となる問題に取り組むために効果的で統合的なアプローチを確保するための協力的努力を強化するよう求めた。閣僚は高級実務者に対し,他の地域的及び国際的な組織の計画を考慮しつつ共同行動のための措置を追求すること,及び1998年6月1日までに会期の間での報告を提出することにつき任務を与えた。

 iii)中小企業(SME){前9文字下線}

  閣僚は,1997年9月にオタワで開催されたAPEC中小企業(SME)大臣会合の成果を歓迎するとともに,中小企業の特別なニーズに対応し,企業の創設を奨励するビジネス環境を作り出すため,国内かつAPECレベルで変化を起すとの中小企業担当大臣のコミットメントを賞賛した。閣僚はまた,APECが中小企業のニーズに適応し,市場,技術,人材,資金及び情報への中小企業のアクセスを改善するためAPECのフォーラム全般においてとられている措置及び行動を中小企業が常に入手できるようにする「APEC中小企業活動のための枠組み及びガイド」を歓迎した。閣僚は,すべてのAPECのフォーラムがAPECの中小企業に関する活動のための枠組みをそれぞれのプログラムに組み込むことを求めた。閣僚は,マレイシアが1998年に次回の中小企業大臣会合を主催するとの申し出を歓迎した。

 iv) 人材の養成{前5文字下線}

  閣僚は,9月にソウルで開催された人材養成大臣会合の成果を歓迎した。この会合では,生涯学習と学校から職場への移行は,適応力のある労働力を創出し,関連技術を個人に供与するために不可欠であること,技術開発は,労働市場及び経済環境における変化に適応するための最も重要な手段の一つであること,この地域における持続可能な経済成長及び人々の全体的な福利の促進というAPECの目的を達成するにおいて労働者及び経営者の役割と貢献が重要であること,が強調された。閣僚は,2000年までに次回の人材養成大臣会合を主催するとのアメリカの提案に留意した。閣僚は,人材養成を1998年に特に重視するよう実務者に促した。

 v) 将来の技術の活用{前8文字下線}

  閣僚は,APECメンバーの技術的な近代化を促進するための多くのイニシアティブに留意した。特に,閣僚は,次のことを歓迎した。

−1997年9月の北京における「APEC科学技術パーク・ネットワーク」の設立会合

−1997年6月にタイにおいて開催された「技術の展望に関するAPECシンポジウム」

−研究者の移動,技術に関する情報及び技術の改善された流れ,並びに電子機器及びコンピューター分野,繊維染色及び最終加工分野並びに食品産業分野におけるクリーナー・プロダクション戦略の分野ベースの計画を増加するための産業科学技術作業部会の作業

−APECが次の千年へ新技術を採用し続けていくことを確保するための運輸,エネルギー及び電気通信の各作業部会のイニシアティブ

 閣僚は,電子商取引が重要な技術的革新であることにつき意見の一致をみた。経済及び社会の成長の手段として電子商取引が提供する機会を認識し,閣僚は,すべてのAPECメンバーが電子商取引の利益を享受するとともに,電子商取引を育成することができるような予見可能かつ一貫性のある環境を整備するため,電子商取引に関する幅広い問題を研究するための作業計画を要請した。閣僚は,民間部門がこの重要な媒体の革新者かつ開発者として主導的な役割を果たすべきであることを認識した。更なるステップを検討するため,1998年6月の貿易担当大臣会合において,作業計画がレビューされるべきである。

 農作物及び食糧の生産の拡大に向けてバイオテクノロジーが果たす決定的な貢献を認識し,閣僚は,バイオテクノロジー製品の導入及び使用のための科学に基づいたアプローチを強化するよう農業技術協力専門家会合に指示した。

 閣僚は,1998年10月に科学技術大臣会合を主催するとのメキシコの申し出を歓迎した。閣僚は,この課題を1998年に特に重視するよう実務者に指示した。

 vi) 資本市場の発展{前7文字下線}

  最近の通貨金融市場の不安定性が地域経済に与えた影響を認識し,閣僚は,金融市場の安定及び持続的な成長のため,健全なマクロ経済政策が決定的に重要であることについてAPECの大蔵大臣が作業を継続していることを認識した。閣僚はまた,金融資本市場の発展を導くための自主的な原則の作成作業及び国内の金融資本市場を深化させ拡大させるための協調的なイニシアティブを歓迎した。閣僚は,次回の大蔵大臣会合が1998年5月にカナダのカナナスキスにおいて開催されることに留意した。

 最近の通貨及び金融市場の不安定性がこの地域に対し及ぼした影響を認識し,閣僚は,金融・通貨の安定に向けたアジア地域協力強化のための新フレームワークについて議論した,1997年11月18〜19日のマニラでの幾つかのAPECメンバーが出席した蔵相・中央銀行総裁代理会合の結果を歓迎した。閣僚は,この地域の通貨の混乱によって引き起こされた問題に取り組むための共同の努力を歓迎した。閣僚は,ASEAN,幾つかののアジアのメンバー及びG15のメンバー国が参加する同様の会合が,12月初めにクアラルンプールにおいて開催されることに留意した。

 現下の通貨の変動に鑑み,閣僚は,この地域における金融・通貨の安定を向上させるためのメカニズムを採択するために次回APEC蔵相会合のタイミングを検討するよう経済首脳に提言することにつき意見の一致をみた。

共同体精神の深化

9.閣僚は,この地域及び世界において,建設的な影響を行使するに当たり,APECのアプローチに従った共同体精神の深化が決定的に重要であることを想起した。この共同体のビジョンは,社会のすべての部門がAPECの成功に対し利害関係を有するようになることを求めている。

 APECビジネス諮問委員会(ABAC)報告{前21文字下線}:閣僚は,分野別大臣会合を含め全体的なプロセスにおける官民対話及びABACとの増加した相互作用の重要性につき討議した。閣僚は,ABACの1996年の報告においてなされた提言への対応を示す証左を歓迎した。閣僚は,すべてのAPECのフォーラムが,提言を精緻化し,優先事項を定め,必要な行動を実施するにおいて作業していくための努力を引き続き行うよう指示した。

10.ビジネス及び民間部門からの貢献{前15文字下線}:この地域において活動するビジネス界の懸念を理解することがABACの中心的な作業である。この点に関して,閣僚は,金融・貿易,持続可能な開発,運輸,エネルギー及び中小企業に関する1997年の分野別大臣会合がすべてビジネス界と対話のセッションを含めたことに留意した。閣僚はまた,貿易投資委員会の小委員会が行った税関と投資に関するビジネス・シンポジウム,経済委員会の「インフラストラクチャーに関する官民対話のためのワークショップ」,FEEEPシンポジウム,「エネルギー作業部会のアド・ホック・ビジネス・フォーラム」,電気通信作業部会との間で実施されたAPEC−PECC対話,などのAPECフォーラムによるイニシアティブは,民間部門からの貢献を得るための革新的な方法であることを認めた。APECの活動がビジネス界に実際的に裨益することを確保するため,閣僚は,これまでの民間部門の作業部会への活動の関与を賞賛するとともに,青年実業家及び女性指導者を含め民間部門の参加を拡大するようAPECのフォーラムに奨励した。

11.青年{前2文字下線}:閣僚は,1997年を通じてAPECの活動に青年の参加があったことを賞賛し,貿易,持続可能な開発,運輸,エネルギー及び中小企業に関する分野別大臣会合が有意義な対話のためのフォーラムを提供したことに留意した。閣僚は,青年代表者がAPEC域内における職業,研究及び交流の機会に関する「電子資料集」を作成したこと並びに「APEC青年技能キャンプ」を創設するとの提案を賞賛した人材養成大臣会合により承認されたイニシアティブを歓迎した。閣僚は,これらのイニシアティブを支援するようメンバーに奨励した。

12.女性{前2文字下線}:閣僚は,産業科学技術,人材養成,観光,運輸の作業部会,中小企業政策責任者会合,環境に関する高級実務者会合を含めAPECのフォーラムにおいてジェンダー(性差)に係る問題に払われた注意に留意した。閣僚は,1998年にマニラにおいて経済開発における女性の役割に焦点を当てかつ APECの活動の中心に女性を統合する女性問題担当大臣会合を主催するとのフィリピンの申し出を歓迎した。

13.人と人の結びつき{前8文字下線}:持続可能な開発と成長を促進するための政策策定において社会のすべての分野,特に教育とビジネスの関係者を参加させることは重要である。この点に関して,閣僚は,多くのAPECのフォーラムの会合におけるそのような利害関係者の参加,韓国のソウルにおけるAPEC教育基金の贈与及びプログラム事務局の,また,アメリカ合衆国のモントレーにおける事務所の開設などが1997年に達成されたことを歓迎する。閣僚はまた,APECにとり重要な問題により緊密な分析の焦点を当てることに貢献したコンソーシアム会合を含め,APECスタディ・センターのAPEC作業計画に対する1997年の貢献に留意した。

 閣僚は,経済成長及び自由化の影響を受けた社会のより広範囲な部門に対するAPECの関与という問題を討議した。閣僚は,政府及び社会の関連部門が協調して共に取り組むときに経済調整及び経済成長は最も効果的に対処されるものであることにつき基本的に意見の一致をみた。閣僚は,最近の人材養成大臣会合により承認されたとおり,人材養成(HRD)作業部会において行われている関連の活動に留意するとともに,これらの課題に対処するに当たり,その作業を続けていくよう人材養成作業部会に対して求めた。

機構及び財政問題

14.閣僚は,

 i)貿易投資委員会の1997年の年次報告を承認し,その提言につき意見の一致をみた。貿易及び投資の自由化及び円滑化の課題を進めるにおいての同委員会及び小委員会の包括的な作業につき賞賛した。

 ii)経済委員会の1997年の年次報告を承認し,エコノミック・アウトルック,貿易及び投資の自由化及び円滑化に関連する研究,並びに食糧,エネルギー,環境への人口増加と経済成長の影響及びインフラストラクチャーに関するイニシアティブに対する貢献の検討の進展に関する同委員会及び小委員会の作業を賞賛した。

 iii)行財政委員会の1997年の年次報告を承認し,プロジェクト提案を審査し,手続を能率化し,一般からのアクセスのためのAPEC文書の秘密指定解除作業を含め運営及び管理の効率性及び有効性を向上させたこの一年間の作業につき賞賛した。

   閣僚はまた,エネルギー,漁業,人材養成,産業科学技術,海洋資源保存,電気通信,観光,貿易・投資データ・レビュー,貿易促進,運輸という10の作業部会,中小企業政策責任者会合,農業技術協力専門家会合及び環境経済高級実務者会合からの1997年の作業の成果に留意し,調整されたイニシアティブを通じた「経済協力・開発の強化に向けた枠組み」を引き続き実施していくようこれらのフォーラムに指示した。

15.閣僚は,機構問題に関する高級実務者会合(SOM)議長の報告を承認し,報告及び補助的文書に含まれている提言を実施するよう実務者に指示した。閣僚は,1998年度予算7,551,139ドルを承認した。閣僚はまた,メンバーか らの1998年拠出3,864,000ドルを承認した。

16.APEC事務局の報告{前10文字下線}:閣僚は,様々なAPECの委員会や作業部会及びAPECプロセス全体を支援するに当たり,APEC事務局の事務局長ジャック・ウィトルトン大使及びスタッフによりなされた作業に謝意を表した。

参加問題

17.参加{前2文字下線}:閣僚は,APECメンバーシップに関するガイドラインを承認し,この問題について将来検討する際にこれを考慮することとした。参加を認められるべき新しいメンバーの数と時期につき様々な意見が表明された。しかしながら,この問題についての最終的な決定は経済首脳に委ねられた。

18.APECのフォーラムにおける非メンバーの参加{前22文字下線}:閣僚は,非メンバーの作業部会の活動への参加のための統合されたガイドラインが昨年11月に採択されたことを受け,作業部会の活動に参加する非メンバーの増加に留意した。閣僚はさらに,統合されたガイドラインの適用に関する高級実務者会合の決定を承認した。

その他の事項

19.将来の会合{前5文字下線}:閣僚は,第10回APEC閣僚会合の準備につき,マレイシアが貴重な説明を行ったことに対して感謝の意を表明し,1998年のクアラルンプールにおける次回会合を期待する。閣僚はまた,ニュー・ジーランド及びブルネイで開催される第11回及び第12回年次会合のための計画につき両国がそれぞれの最新状況を説明したことに対して感謝の意を表明した。閣僚は,2001年に第13回会合を主催するとの中華人民共和国の表明を歓迎した

早期自主的分野別自由化(仮訳){前15文字太字}

 モントリオールにおいて,APECの貿易担当大臣は,貿易及び投資の自由化をグローバルに促進するための触媒としての活動をAPECが引き続き行っていくべきことを確認した。情報技術合意の成功裡の妥結を確保するに際してAPECが果たした主導的な役割を想起し,彼等はまた,大阪行動指針において掲げられた一般的な原則に従った貿易の自由化においてAPECのリーダーシップと信頼を維持していくとの決意を再確認した。

 このため彼らは,「早期の自主的な自由化がそれぞれのAPECメンバー内及びこの地域の貿易,投資及び経済成長に建設的な影響をもたらすであろう分野を特定し,これがいかに達成され得るかについての提言を提出する」とのスービックにおけるAPEC経済首脳により提示された課題に応えて,早期自主的自由化の可能性のある分野を1997年に特定することで意見の一致をみた。

 彼らは,向上したインフラストラクチャー及び持続可能な開発を支援する分野を含むいくつかの分野の自由化の追求の利点を次の点を考慮しつつ,検討するよう実務者に指示した。

 ・円滑化の関税及び非関税の側面及び要素,並びに経済・技術協力を可能な限り包含すること。

 ・APECビジネス諮問委員会(ABAC)を通じたものを含め,可能な限り完全な民間部門からの貢献,協議及び支援

 ・APECメンバーの異なる経済発展段階及び多様な状況を考慮しつつ,APECメンバーの相当部分に支持され,適当な場合には,WTOへの組込みのためのイニシアティブの作成による実質的大勢(クリティカル・マス)

 モントリオールにおいて彼らの意見の一致を見たこのイニシアティブは,個別行動計画(IAP)を補完するものであり,APECの貿易及び投資の指針の実施の鍵である。この数年にわたるプロセスの開始は,この地域の貿易自由化の実質的な計画に基づく経済成長を促進するとのAPECメンバーの明確なコミットメントを示している。閣僚は,このプロセスがより広範なかつ多角的な自由化と整合性を維持しつつ,またこれを促進するためにその他の行動がとられるべきことにつき意見の一致をみた。

 貿易担当大臣の指示に応え,41分野がレビュー及び検討のために提案された。APECメンバーの参加の幅及び候補としてあげられている分野の多様な範囲は,この地域における一層の貿易自由化に対する支持の高さの現れである。われわれは,これらの提案の利点を慎重に吟味し,個別の提案に対する支持の程度,経済的重要性,及び個々の提言毎にこれまで形成されてきたバランスにつき,十分な検討を加えた。メンバー間で最大限の支持を享受している15の提案が特定された。

 これらの提案は,以下のとおりである。

 −環境関連の製品及びサービス

 −水産物及び水産加工品

 −玩具

 −林産物

 −貴金属及び宝石

 −油糧種子及び油糧種子製品

 −化学品

 −電気通信端末機器認証手続相互承認取決め(MRA)

 −エネルギー部門

 −食品部門

 −天然ゴム及び合成ゴム

 −肥料

 −自動車

 −医療機器及び医療用具

 −民間航空機

 われわれは,これらの分野に関して現在実施されている自主的自由化プログラムを追求することにつき意見の一致をみた。われわれは,APECメンバー間で自由化イニシアティブを引き続き促進するとともに,われわれの地域を越えた参加の拡大のための及び,適当な場合には,WTOへの組込みのための基礎とするべく,これらの分野におけるAPECの早期自主的自由化を進展させるとのわれわれのコミットメントを確認した。

 バランスのとれた互恵的なパッケージの必要性を認識するとともに,早期自由化プロセスは,それぞれのメンバーがその参加する分野別イニシアティブの決定につき自由であり続けるとのAPECの自主性原則を基礎として実施されることを想起し,われわれは,そのため,以下の分野における既存の提言に基づき,市場開放及び円滑化のための適切な合意又は取決め並びに経済・技術協力のための措置の策定を要請する。

 −環境関連の製品及びサービス

 −水産物及び水産加工品

 −林産物

 −医療機器及び医療用具

 −電気通信端末機器認証手続相互承認取決め(MRA)

 −エネルギー部門

 −玩具

 −貴金属及び宝石

 −化学品

 われわれは,これらの各分野に関して,既存の提言をもとにした実施のための措置及び手段の選択を含む対象品目の範囲,柔軟な期間設定,対象となる措置及び実施スケジュールを最終的にまとめることを通じ,これらの提言についての作業を完了させることをメンバーが早急に開始することを経済首脳が承認することを提言する。われわれは,1999年において可能なところから実施を開始するために,1998年の前半にこれらの作業が完了することを望む。われわれは,進捗状況のレビューを継続し,1998年6月のマレーシアのクチンにおける貿易担当大臣会合を含め,1998年前半を通じた全ての適当な機会を活用する。

 われわれは,残る6分野における自主的自由化に対し,APECメンバー内で広範な関心があることに留意する。これらの分野における自由化のイニシアティブもまた,メンバーに対し経済的利益を生み出し,バランスのとれた互恵的な結果に貢献するものであるが,これらは更なる準備作業を必要とする。したがって,われわれは,高級実務者に対し,これら残る候補から明年6月のわれわれの評価とレビューのための提案及び明年11月の経済首脳に対するあり得る提言を更に策定するよう指示する。われわれはまた,機会が生じれば早期自主的自由化のための他の分野を検討することにオープンである。

 われわれは,いくつかのメンバーの,全ての関税を大幅に削減させ,あるいは「ニューサンス・タリフ」(2%に満たない関税)を撤廃するイニシアティブを歓迎する。われわれは,経済首脳に対し,メンバーが自らの個別行動計画において,そのようなイニシアティブに取り組む選択肢をレビューすることをコミットするよう奨励されるべきことを提言する。

 われわれはまた,競争政策や政府調達,知的所有権及び投資といった多くの水平的又は分野横断的な問題に関する作業を進めることに対する多くのメンバーの多大な支持と関心に留意する。したがって,われわれは高級実務者に対し,これら提言を作業計画の中に出来れば盛り込むことにつき議論を行うことを適当な既存のAPECのフォーラムに委ねるよう指示する。

メンバーシップに関するAPEC閣僚声明(仮訳){前23文字太字}

 アジア太平洋経済協力(APEC)は,アジア太平洋の地域フォーラムである。APECは,メンバーシップ及びゲスト参加に関して開放的なフォーラムである。

 1998{前4文字ママ}年の創設以来, APECは,

 ●原メンバー数を12から,50%増の18へと拡大した。

 ●限定された数の新規メンバーを遅くとも1999年までに承認することとした。

 ●非メンバーに対し,APEC作業部会におけるゲストとしての地位が与えられるための手続を承認した。

  上記に加え,APECは,その情報政策の下で,全ての主要な文書,決定及び声明を出版し,又は公に入手可能としている。

 APECはメンバー数の最終的な上限は設けていないが,アジア太平洋地域の性格及び運営可能で効率的な組織を維持するとの必要性により,APECはその規模において今後とも限定的なものであり続ける。

 開かれた地域主義及び運営可能で効率的な規模を維持するという優先的考慮の下で,APECは,新規参加メンバーを承認する際の検討の一助として,以下のガイドラインを採択した。

 ●新規参加候補は,アジア太平洋地域に位置すること。

 ●新規参加候補は,既存のAPECメンバーとの間で,実質的かつ広範囲な経済的つながりを有し,特に,新規参加候補の国際的貿易額に占めるAPECメンバーとの貿易額の割合が比較的高いこと。

 ●新規参加候補は,対外指向的な市場経済政策を遂行すること。

 ●新規参加候補は,様々なAPEC宣言,特に経済首脳宣言に掲げられた基本的な目的及び原則を受け入れる必要があること。

 ●参加の認められる新規参加候補は,実施すべき個別行動計画(IAP)を作成し,APEC参加時よりAPEC作業計画全般にわたる共同行動計画への参加を開始することが求められること。

 APECへの新規参加メンバーの承認に関する決定は,全ての既存のメンバーのコンセンサスによる。