データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第4回APEC閣僚会議における柿澤外務政務次官ステートメント

[場所] バンコック
[年月日] 1992年9月10日
[出典] 外交青書36号,402ー404頁.
[備考] 
[全文]

議長閣下,御列席の皆様

 昨年に引き続き渡部通産大臣とともに,このAPEC閣僚会議に出席できましたことは私の大きな喜びとするところであります。今回の会合の開催のためにホスト国として献身的に尽力されてきたタイ国政府及び関係者の皆様方に対し,心より感謝申し上げます。特に,昨日は国王陛下に拝謁するという光栄に浴することが出来,またアナン首相主催晩餐会にも出席させて頂きましたが,かかる御配慮に厚く御礼申し上げます。また,渡辺副総理兼外務大臣より,本会議の成功を祈念し,次の機会に出席者の皆様にお会いすることを楽しみにしている旨のメッセージを託されましたので,ここにお伝え致します。

 国際社会は,東西冷戦の終焉を軸にして,歴史的な変革期を迎えております。人類は,より平和で,より豊かな世界を創る機会を手にしていると言えます。アジア・太平洋の諸国は,このような中,環境の変化を現実的,鋭敏に捉えながら,独自の道を切り拓きつつあります。

 ここ東南アジアでは,カンボティアに於ける永続的和平の達成及び国家再建に向けたプロセスが進められています。私は本年6月東京で開催された「カンボディア復興閣僚会議」の議長を務めましたが,同会議では,和平プロセス及び復旧・復興に関する2つの東京宣言が全会一致で採択され,期待を上回る8.8億ドルのプレッジがなされる等,大きな成果を挙げることができました。同閣僚会議においては,「復興なければ和平なし」,「和平なければ復興なし」との認識が広く参加者に共有され,今やカンボディアにおいては復旧・復興面での取り組みが本格化しつつあります。然るに民主カンボディア派(DK)のUNTACへの非協力に起因し,依然和平プロセスが停滞している現状は打開する必要があり,各国がUNTACに対する支援を一層強化するとともに,カンボディア各派が国際社会の総意に応え,その協定上の義務を迅速かつ完全に履行していくことを強く期待致します。

 アジア・太平洋地域は,また,多様性を尊重しつつ,同時に,相互の依存関係を強めてきており,今後とも,世界で最も魅力ある,開かれた地域として発展することが期待されています。このような中,APECは,昨年中国,香港,チャイニーズ・タイペイの参加を実現し,世界のGNPの約半分を占める一大地域協力体に成長,今後の一層の進展が期待されております。このような認識は,本年のミュンヘン・サミットの政治宣言において,ASEAN拡大外相会議と並んでAPECという地域的枠組みが,この地域の平和と安定を促進する上で重要な役割を有する旨謳われたことにも反映されております。昨年のAPEC閣僚会議以降の活動を振り返ってみると,人材養成,電気通信といった本地域の将来に関わる分野のワーキング・グループが一層活発化しているほか,海洋資源保全のワーキング・グループやアドホック経済グループ会合などの場では,国連環境開発会議(UNCED)の成果をも踏まえた,環境への新たな取り組みの必要性が唱えられるようになっております。また,本年8月ワシントンにおいてAPEC教育担当大臣会合が初めて開催され人材養成について新たな角度からの検討を開始する有意義な議論が行われました。このようにAPECの活動はますます拡充の途をたどっております。

 今次会合は,APECの将来に向けての推進・強化の礎として,事務局設置及び予算制度の確立という体制整備についてコンセンサスを目ざす誠に意義深いものであります。APECの体制整備が大きく前進し,今後のアジア・太平洋経済協力の進展の礎が固められていくことを期待致します。

(アジア・太平洋地域の経済展望,我が国の経済動向)

議長

 去る8月に,東京で開催されたAPECアドホック経済グループ会合の報告にもみられるとおり,アジアNIEs及びASEAN各国の経済発展は引き続き堅調でありますし,北米やオセアニアの経済の復調にも確かなものとなりつつあります。

 我が国の経済動向について簡単に振り返ってみますと,1987年以降力強い拡大を続けてきた我が国の経済は,1990年末から緩やかに景気の減速を始め,91年後半には調整過程に入っております。我が国経済は現在,住宅建設に回復の動きがみられるものの,個人消費の伸びの鈍化が続いており,設備投資は製造業を中心に弱含みとなっているなど,最終需要を中心に停滞しており,これに加えて株価と不動産価格の大幅な低下もあって厳しい状況に直面しております。かかる状況に政府として適切かつ機動的に対処するため,去る8月28日には,公共投資等の拡大をはじめとする10兆円を超える財政措置を中心とした総合的な経済対策を実施することが決定されたところであります。

 右総合経済対策は,我が国経済の内需中心のインフレなき持続的成長に大きく寄与するとともに,本年7月のミュンヘン・サミットの経済宣言にもあるとおり,世界経済の回復の兆しが強まっている中において,世界経済の安定的発展にも資するものとなることを期待しております。

(ウルグァイ・ラウンド)

議長

 アジア・太平洋地域の経済的ダイナミズムが,まさしく多角的自由貿易体制に依拠していることに鑑みますと,本地域にとって再優先の経済上の課題はウルグァイ・ラウンド交渉の早期かつ成功裡の終結であることは言うまでもありません。ミュンヘン・サミット経済宣言にも謳われておりますとおり,我が国はウルグァイ・ラウンドの合意が1992年末より前に達成されると期待しております。我が国としても,種々の困難はあるものの,相互の理解と協力によりラウンドの早期終結に向け最大限の努力を傾注する決意であることをここで繰り返し申し上げます。

 この関連で,最近,北米自由貿易協定(NAFTA)の妥結が世界の注目を集めました。我が国としては,交渉妥結のための関係当事国の努力に敬意を表する一方で,NAFTAが地域ブロック化につながらず,ガット規定に整合し,第三国の利益に深く配慮するものとなることも必要であると考えます。

 また,ASEAN自由貿易地域(AFTA)については,その創設を決定したASEANのイニシアティヴを歓迎しており,AFTAが多角的自由貿易体制の維持・強化に寄与するものとなることを期待しております。

(結び)

議長

 アジア・太平洋の世紀ともいわれる21世紀に近づくにつれて,アジア・太平洋諸国の役割は一層大きなものとなって参ります。この関連でアジア・太平洋諸国にとっての新たな挑戦の一つは,内政外政の改革へ向けた旧ソ連邦諸国の努力への支援であります。ユーラシア大陸に広がるこれら諸国の多くは,アジア・太平洋地域と,歴史的にも,文化的にも深い関わりがあります。我が国は来たる10月28日,29日の両日,渡辺外務大臣が議長を務め,「旧ソ連支援東京会議」を主催しますが,これにAPEC加盟諸国の外務大臣の積極的参加をお願いしたいと思います。

議長

 最後に,我が国としてAPECが「世界に開かれた協力」という基本理念にたって,新しい世界に向けて着実に進展していくことを心から願っており,そのために可能な限りの貢献を果たしていく決意であることを申し上げて,私の発言を終わります。

 ありがとうございました。