イスラーム・ジェンダー学の構築のための基礎的総合的研究

日本学術振興会科学研究費 基盤研究(A) 
研究代表者:長澤榮治  

2017年1月の活動報告

公募研究会「開発とトランスナショナルな社会運動」 第2回が開催されました

  • 日時 2017年1月28日(土) 14:30~17:30
  • 場所 東京大学東洋文化研究所 3階 第1会議室
  • タイムテーブル
14:30~14:45挨拶
14:45~15:30発表1 Marta Saldaña "GCC National Identity and Citizenship Policies and their Impact on National Women"
15:30~15:45ブレーク
15:45~16:30発表2 Luciano Zaccara "Comparing Women's Political and Electoral Performance in Iran and the GCC"
16:30~16:45ブレーク
16:45~17:30質疑応答

実施報告

 カタルから来訪している二人の研究者を迎えて研究会を開催した。最初に講師二人の簡単な紹介と趣旨説明が司会からあった後、Marta Saldaña氏から、GCC National Identity and Citizenship Policies and their Impact on National Womenと題する講演があった。GCC諸国(湾岸協力会議加盟国)では、ナショナル・アイデンティティの語りと市民権(帰化)の条件が、国家の統治の問題と強く結びついていることが説明されたのち、市民権は市民の権利というよりも、国王/首長から与えられるものとして認識されている傾向が強いことが明らかにされた。そして多くのGCC諸国では、憲法上は男女平等が謳われているが、家父長主義や「アラブの伝統」を強調する姿勢にのために、女性は実態的にはより劣等で依存的な地位に置かれているとした。その例として、GCCの女性と結婚した外国人の夫が法的にGCC諸国に帰化できるのはオマーンだけであること、GCCの女性と外国籍の夫との間に生まれた子供たちには原則としてGCCの市民権は与えられないこと、などが指摘された。またMarta Saldana氏によるアンケート結果から、安全保障への問題意識の高さに比して、ジェンダー平等に問題があると考える回答者はとても少なく、政治指導者や政治参加は男性が中心であるとの認識が強いことも示された。

 コーヒーブレークをはさんだ後、Luciano Zaccara氏より、Comparing Women Political and Electoral Performance in Iran and GCCと題する講演があった。イランとGCC諸国における選挙の歴史、国・地方レベルでの選挙の実施の有無、を一覧した後、イラクにも言及しながら各国の憲法上の選挙権の位置づけやジェンダー平等を確認した。また、全世界をみわたして女性が政治指導者となっている国の数や地域ごとのパーセントを示し、西アジアのみならずアジア全体で女性の政治指導者が非常に少ない現状が明らかにされた。さらにペルシア/アラビア湾を囲む国々で、指名を受けて女性が大臣になった例はあるがその担当は教育・環境・健康など、比較的重要度が低いと思われる分野であること、そしてイランの大統領選における女性候補者数の推移が示された。世界的に見て、国会議員の数に女性の占める割合が高いところは、クオータ制を導入しているところであることを図示したうえで、クオータ制の導入されていないイラン、イラク、GCC諸国では、議会(国政だけでなく地方評議会も含める)において女性がはかばかしいパフォーマンスを行えていないことが結論付けられた。

 質疑応答では、アンケート調査を行った際の現地の状況、GCC諸国特有の女性の労働市場の問題、クオータ制導入の意義、女性が国家の指導者になるかならないかは宗教的というよりも社会的な性格というべきではないか、GCC諸国では集会結社の制限が厳しいために市民社会的な活動が難しい事情、などの論点をめぐって活発な論議が交わされた。


公募研究会「フィールドから見たイスラーム、ジェンダー、セクシュアリティ研究会」第2回が開催されました

  • 日時:2017年1月22日(日) 13:00-16:00
  • 場所:東京大学東洋文化研究所 3階 大会議室

フィールドで日々時間を過ごす中、調査者は目の前の人々が生きるイスラーム、ジェンダー、セクシュアリティを共に生きる目撃者となります。しかしながら、フィールドでの個人的経験は、しばしば「私的」、「親密」、なものとして、それが強烈な印象を残す出来事であっても、学術的な文脈で中心的課題として取り上げられる機会は限られてきました。そこで本研究会では、調査者がフィールドで直接・間接的に出会ったイスラーム、ジェンダー、セクシュアリティ経験を掬い上げ、それらを直接的な議論の対象としながら、人々が生きる実態に沿ったイスラーム、ジェンダー、セクシュアリティに迫ることを試みます。

第二回目は、前回の研究会成果を受けた問題提起(鳥山)ののち、山本沙希さん(お茶の水女子大学博士後期課程)に、フィールド調査中に日々経験したタクシー運転手とのやりとりについて、〈性〉を切り口にした試論をご発表いただきます。山本さんの発表は、これまで、「個人的なフィールド経験」として主たる研究対象から切り落とされてきた、ご自身が経験された具体的な出来事を捉え直し、刻々と変化する関係性について議論を試みる非常に刺激的なご報告です。第一回目にご参加いただけなかった方々も、どうか振るってご参加ください。

  • タイムテーブル
13:00-13:40前回の成果から振り返る本研究会の目的:「セクシュアリティというトリックスターの可能性」
鳥山純子(日本学術振興会)
13:40-14:00質疑応答
14:00-14:40 発表: 「男性タクシー運転手による〈性〉実践―現代アルジェリア都市部におけるフィールドワークの経験から」
山本沙希(お茶の水女子大学博士後期課程)
14:40-15:00 質疑応答
15:00-15:50 本研究会の可能性についておよび今後の方針についての全体討論
15:50-16:00次回研究会のお知らせ