イスラーム・ジェンダー学の構築のための基礎的総合的研究

日本学術振興会科学研究費 基盤研究(A) 
研究代表者:長澤榮治  

2016年12月の活動報告

公募研究会「イスラーム圏における「ジェンダー化された暴力/苦悩」第1回が開催されました

  • タイムテーブル
13:30-13:40研究会趣旨説明「ジェンダー化された暴力/苦悩」をイスラーム圏から/その外から考える」
嶺崎寛子(本公募研究会代表者:愛知教育大学)
13:40-14:00参加者自己紹介
14:00-14:20研究会の方向性の調整・確認、今後の研究会の日程調整
14:30-15:30「中東におけるジェンダー化された暴力と政治」
嶺崎寛子(本公募研究会代表者:愛知教育大学)
15:40-17:00「「失踪」の暴力とその解決――アルゼンチンの「人権問題」と市民社会」
石田智恵(日本学術振興会特別研究員)(質疑応答を含む)
17:00-17:30全体討論

実施報告

◆趣旨説明等:「中東におけるジェンダー化された暴力と政治/国家」 嶺崎寛子(愛知教育大学准教授)

分科会の趣旨、設定理由について、分科会の代表の嶺崎より趣旨説明があった。学際的な場であること、地方の院生や女性研究者が参加しやすい会にすることなど、都市と地方の格差を踏まえた研究会にしたい旨、説明した。
その後、中東の暴力の現状や問題関心や問題設定についてなどをまとめ、発表した。

◆「「失踪」の暴力とその解決:アルゼンチンの「人権問題」と市民社会」 石田智恵(JSPS特別研究員PD)(当時)

本報告では、アルゼンチン1970年代後半にみられた国家暴力「強制失踪」を主題とし、まずその発生の背景と性質、特徴を示し、この問題についての議論が現地で現在までどのように展開してきたかを紹介した。暴力の背景を軍事政権とゲリラ勢力の対立として捉えその両者に責任を帰すことに批判が提示されるようになる一方、現在支配的な「人権問題」としての論じ方には人種・民族的問題と政治問題を切り離す傾向があるという点も指摘できる。次に「(強制)失踪」という特異・新奇な事態に関する研究・議論の傾向を概観し、近年の文化人類学の議論を参照しつつ「死」と「失踪」の違いについて論点を提示した。文化人類学における「死」の主題は多くが「死の儀礼」すなわち葬送・弔いの社会的実践に関するものだが、これらを参照し、社会における「失踪」という事態の位置づけを「死」と比較して捉えることで「失踪」の独自性を指摘した。後半ではこれをふまえ、「失踪」に対する独自の「解決」の試みを紹介し、また報告者の現地調査に基づき、親族の失踪に直面した人々の組織的活動や、死亡が確認された「失踪者」の事例を紹介しながら、「失踪」がどのような影響を人々にもたらし、人々はその新奇な「問題」にいかに取り組んできたのかを報告した。死を証明する遺体がない「失踪」の状態が引き延ばされるという特異な現実は、親族にとってある意味で「死」を求めたり、死亡が確認されることで悲しみよりも安堵を得るといった特異な経験に現れていることがわかる、また、死亡が確認されることが必ずしも「失踪者」を「死者」と呼び変えることにはならないという点を重要な事実として指摘した。


公募研究会「イスラーム家族・女性関連法の運用実態の研究」第1回が開催されました

  • タイムテーブル
14:00-14:15研究会趣意説明
14:15-15:15「トルコにおけるエヴラットルックの変容と近代的養子概念の成立」
報告者:村上薫(アジア経済研究所)
要旨:現代の養子縁組制度につながるエヴラットルックの歴史的変容をたどったF.オズバイの研究を紹介する。
15:15-15:30休憩
15:30-16:30「近年のイランにおける養子縁組に関連した変化」
報告者:細谷幸子(東京外国語大学AA研)
要旨:2013年に家族保護法が成立した後の現代イランにおける養子縁組に関する法律などの現状の変化の分析
16:30-17:30全体討論

実施報告

 2016年12月11日(日)の午後、横浜市立大学において「イスラーム・ジェンダー学の構築のための基礎的総合的研究」公募研究「イスラーム家族・女性関連法案の運用実態の研究」による研究会が開催された。アジア経済研究所の村上薫氏による「トルコにおけるエヴラットルックの変容と近代的養子概念の成立」の報告、および東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の細谷幸子氏による「イランの養子縁組と『保護者のいない子どもの援護法』(2013年)をめぐる議論」の報告が行われた。

  イスラーム法では身寄りのない子を引き取り育てることは問題ないが、その子どもが養子として同じ姓を名乗り、遺産相続することは認められていない。また、養子は親族と見なされず家族成員との結婚も可能であるとされる。今回の研究会では、このようなイスラーム法の規定が歴史的、社会的変化に伴い、どう変化し運用されているのかについてトルコとイランの例が報告された。

 村上氏は、家族に引き取られて養育されるが不払いの家内労働を担うエヴラットルックと呼ばれた子どもたち(多くは女児)について報告した。1926年のトルコ民法では養子を認める規定があったが、19世紀半ば以降に家内奴隷制度が禁止される中、戦争や貧困により大量に流入した女児などが奴隷として売られないよう、オスマン政府が推奨したことから、1960年頃までエヴラットルックが存在した。本報告では小説や回顧録、インタビューにもとづきエヴラットルックの成立と変容の過程をたどったF.オズバイの研究を紹介した。

 細谷氏の報告では、2013年に改正された「保護者がいない、あるいは保護者に責任能力のない児童と青少年の援護に関する法」の内容について、主にペルシャ語・英語の報道記事、評論記事、論文、関連機関のホームページに掲載されている情報などをもとに、議論となった三点に関する考察がなされた。この法律はイラン革命前に成立した法律の改正という形をとっているが、養子と養親が結婚できる、養子の元の親の名前が身分証明書に記載される、独身女性が養親になることができるなどの条項が新たに付け加えられ、議論となっている。二人の報告に対して、会場からは、婚外子の問題、子への相続の問題、成文法に影響を与える慣習(法)の問題を中心に活発な議論が行われた。

      <IG科研 公募研究「イスラーム家族・女性関連法の運用実態の研究」今後の予定>
  • 2017年5~6月頃「子どもの後見」
  • 2017年10~11月頃 公開講演会「イスラームと婚姻-一時婚、児童婚の問題」
  • 2018年2~3月頃 「イスラームと女性の労働」
                                     

(文責:森田豊子)


公募研究会「フィールドから見たイスラーム、ジェンダー、セクシュアリティ研究会」第1回が開催されました

  • 日時:2016年12月10日(土) 13:00-16:00
  • 場所:東京大学東洋文化研究所 8階 804号室
  • タイムテーブル
13:00-13:20研究会の概要:「今、イスラーム、ジェンダー、セクシュアリティをフィールドから考える意義」
鳥山純子(日本学術振興会)
13:20-13:40参加者自己紹介
13:40-14:10話題提供:「パレスチナのフィールド体験から見たイスラーム、ジェンダー、セクシュアリティ」(仮題)
藤屋リカ(慶應大学)
14:10-15:00全体討論
15:00-15:15休憩
15:15-15:40研究発表:「ピンク・ウォッシング イスラエルの性的少数者の包摂とナショナリズム」
保井啓志(東京大学大学院)
15:40-15:55全体討論
15:55-16:00次回研究会のお知らせ