イスラーム・ジェンダー学の構築のための基礎的総合的研究

日本学術振興会科学研究費 基盤研究(A) 
研究代表者:長澤榮治  

イスラーム家族・女性関連法の運用実態の研究

研究会名 イスラーム家族・女性関連法の運用実態の研究
代表者森田豊子(鹿児島大学グローバルセンター) zanan.kaken◆gmail.com
◆を半角@に直してご利用ください
研究会の概要イラン家族保護法の翻訳から浮かび上がってきた、法の運用実態における「婚姻(一時婚、複婚、婚資、外国人との婚姻等)」、「離婚(養育権、扶養料、ドメスティック・バイオレンス等)」、「養子縁組(相続、血統・家系・親族関係等)」、「LGBT」、「妊娠、出産、 人工妊娠中絶」、「女性の就学・就労の権利」など具体的な問題を民法や家族保護法を参照にしながら考察する。また、その成果を他国の事例と比較することで、イスラーム諸国における女性及び家族に係わる法律の運用実態の共通性と差異を明らかにする。
代表者からのメッセージ研究会にご参加を希望される場合には、必ず上記連絡先に事前にご一報ください。

次回の研究会

決まり次第等サイトにてお知らせします!


これまでの活動

第3回

  • 日時: 2017年5月27日(土) 14:00 - 17:30
  • 場所:東京大学 東洋文化研究所 大会議室

プログラム

14:00-14:15挨拶と趣旨説明
14:15-15:15研究報告1「イスラーム法における「子の権利」(仮)」
報告者:小野仁美(立教大学)
要旨:古典イスラーム法には、親と子それぞれの権利・義務について 詳細な規定がある。本発表では、「子の権利」に着目して、スンナ派4法学派およびシーア派の古典イスラーム法規定を概観し、それらが現代の各国家族法(チュニジア、モロッコ、イラン)にどのような影響を与え、どのように変容したのかについて検討する。
15:15-15:30休 憩
15:30-16:30研究報告2 「イラン家族保護法における子ども」
報告者:森田豊子(鹿児島大学)
要旨:イラン家族保護法では、夫婦の問題だけでなく、その子どもについての規定もある。本研究会では離婚した場合の後見の 権利の行方や、幼児婚、子どもの虐待などイラン社会の変化とその変化が及ぼす子を持つ母親の権利、子の権利への影響について考察する。
16:30-17:30質疑応答と総合討論
 
 

第2回

  • 日時 2017年2月13日(月) 17:00~19:00
  • 場所 東京大学東洋文化研究所 3階 大会議室
  • タイムテーブル
17:00-17:10研究会の趣旨説明および報告者紹介
17:10-18:10講演 "Islamic Family Law in Contemporary Iran"
サハル・マランルー(オクスフォード大学)
18:10-18:30休憩
18:30-18:50質疑応答

実施報告

2017年2月13日(月)17時より、東京大学東洋文化研究所において「イスラーム・ジェンダー学の構築のための基礎的総合的研究」公募研究「イスラーム家族・女性関連法案の運用実態の研究」班による第2回研究会として「女性の法的地位とジェンダー」と題する国際セミナーが開催された。英国オクスフォード大学フェローのサハル・マランルー博士を講師に迎え、モデレーターの細谷幸子氏と司会の山﨑和美氏の他、10名が参加した。当初予定していた2時間を超過するほど積極的な議論が交わされ、イランにおける女性の法的地位に対する参加者の関心の高さが伺えるセミナーとなった。

Access to Justice in Iran: Women, Perceptions, and Reality, Cambridge: Cambridge University Press, 2014の著者であるマランルー博士は、女性の司法アクセス、法と社会、ジェンダー、イランの法制度、エンパワメントなど幅広い研究を行っておられる。本セミナーでマランルー博士は、イランの婚姻や離婚、子どもの親権などの現状とそれに関連する法制度における女性の地位について講演し、イランの法律そのものがイスラーム法との関係上、多重で多層的であるという現状を明らかにした。こうした現状の中で、イランの女性たちは家族法における女性の地位の向上のために闘ってきたという点、女性の教育や雇用状態の向上という社会変化の後押しを受けて、イランの女性団体が家族保護法の改正に道を開いてきたという点が主に考察されていた。

 マランルー博士の講演に関し、シャリーアにおける女性の法的地位、シーア派十二イマーム派の一時婚、離婚、家庭内暴力など、多くの質問がなされた。これらの質問に対し、スンナ派諸国における状況との違いに触れつつ、現代イランの男女の婚姻年齢、離婚後の子どもの後見と扶養、結婚式の実態、NGOの活動、慈善活動、婚資や嫁入り道具、SNSの使用状況、クルアーンの規定など広範囲に渡る実態を踏まえながら、応答がなされた。

 
 

第1回

  • タイムテーブル
14:00-14:15研究会趣意説明
14:15-15:15「トルコにおけるエヴラットルックの変容と近代的養子概念の成立」
報告者:村上薫(アジア経済研究所)
要旨:現代の養子縁組制度につながるエヴラットルックの歴史的変容をたどったF.オズバイの研究を紹介する。
15:15-15:30休憩
15:30-16:30「近年のイランにおける養子縁組に関連した変化」
報告者:細谷幸子(東京外国語大学AA研)
要旨:2013年に家族保護法が成立した後の現代イランにおける養子縁組に関する法律などの現状の変化の分析
16:30-17:30全体討論

実施報告

 2016年12月11日(日)の午後、横浜市立大学において「イスラーム・ジェンダー学の構築のための基礎的総合的研究」公募研究「イスラーム家族・女性関連法案の運用実態の研究」による研究会が開催された。アジア経済研究所の村上薫氏による「トルコにおけるエヴラットルックの変容と近代的養子概念の成立」の報告、および東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の細谷幸子氏による「イランの養子縁組と『保護者のいない子どもの援護法』(2013年)をめぐる議論」の報告が行われた。

  イスラーム法では身寄りのない子を引き取り育てることは問題ないが、その子どもが養子として同じ姓を名乗り、遺産相続することは認められていない。また、養子は親族と見なされず家族成員との結婚も可能であるとされる。今回の研究会では、このようなイスラーム法の規定が歴史的、社会的変化に伴い、どう変化し運用されているのかについてトルコとイランの例が報告された。

 村上氏は、家族に引き取られて養育されるが不払いの家内労働を担うエヴラットルックと呼ばれた子どもたち(多くは女児)について報告した。1926年のトルコ民法では養子を認める規定があったが、19世紀半ば以降に家内奴隷制度が禁止される中、戦争や貧困により大量に流入した女児などが奴隷として売られないよう、オスマン政府が推奨したことから、1960年頃までエヴラットルックが存在した。本報告では小説や回顧録、インタビューにもとづきエヴラットルックの成立と変容の過程をたどったF.オズバイの研究を紹介した。

 細谷氏の報告では、2013年に改正された「保護者がいない、あるいは保護者に責任能力のない児童と青少年の援護に関する法」の内容について、主にペルシャ語・英語の報道記事、評論記事、論文、関連機関のホームページに掲載されている情報などをもとに、議論となった三点に関する考察がなされた。この法律はイラン革命前に成立した法律の改正という形をとっているが、養子と養親が結婚できる、養子の元の親の名前が身分証明書に記載される、独身女性が養親になることができるなどの条項が新たに付け加えられ、議論となっている。二人の報告に対して、会場からは、婚外子の問題、子への相続の問題、成文法に影響を与える慣習(法)の問題を中心に活発な議論が行われた。

      <IG科研 公募研究「イスラーム家族・女性関連法の運用実態の研究」今後の予定>
  • 2017年5~6月頃「子どもの後見」
  • 2017年10~11月頃 公開講演会「イスラームと婚姻-一時婚、児童婚の問題」
  • 2018年2~3月頃 「イスラームと女性の労働」
                                     

(文責:森田豊子)