ギャラリー杜ぐすく 2005年11月
11月の夕方、ギャラリー杜ぐすくを出ようとして、あまりに大きな虫の音に足を止められた。秋の虫の音というようなものではない。それは、大音響であった。
しばらく驚いて足を止めている間に、私は不思議な感覚にとらわれた。
夕闇の近づく空は、刻々と色を濃くし、星がいくつかまたたき始めていた。ギャラリー杜ぐすくをほとんど覆うかのように枝を伸ばした巨大なガジュマルの下では、暗がりが徐々に大きくなり、そこからますます活発な虫の鳴き声が発せられていた。ガジュマルの下の水路あたりからは、カエルの声も聞こえ、ケケケというヤモリの鳴き声も混じっている。
遠くからは、ピッピーピッピーという寝ぐらに帰り着いたサシバ*の声が聞こえ、大きな腕のように伸びたガジュマルの枝はワサワサと音をたてて、大きなフルーツ・バットの目覚めを知らせてくれた。
そうなのか。この大ガジュマルは、こうして生き物たちを擁護し、生き物たちは、この木に抱かれて、安心して生を謳歌しているのか。
そう想ってガジュマルの漆黒の茎葉のシルエットを見上げると、私もギャラリー杜ぐすくもその展示品も、この巨木の腕の下にあって、ゆっくりと共に息をしているように感じられてきた。
*冬の間、琉球半島からインドネシアに渡るタカの種類の渡り鳥