おしらせ

第3回アジア古籍保全講演会を開催しました


2007年11月20日(火)、工学部8号館教授会室において第3回アジア古籍保全講演会を開催しました。当日の様子を簡単にご報告します。
 
 
「後期イスラム世界における紙と書物」
 鈴木董教授
 (東洋文化研究所西アジア研究部門)

各文字文化圏のちょうど中央に位置するアラビア文字圏の紹介とオスマン帝国が台頭した後期イスラム世界の文化の解説を踏まえて、東方から西方への紙の伝播や、筆記用具、書物、アラビア文字の書体等に及ぶ幅広い話題に渡った講演が行われました。
 
「東洋の紙と歴史」
 宍倉佐敏氏
 (女子美術大学大学院非常勤講師)

中国における紙の発明、製紙法、材料となる植物繊維の解説に始まり、紙の材料となるアジア各地の植物や、それらを使った紙の製法、特徴等、東洋各国の紙作りに関するさまざまな内容を盛り込んだ講演が行われました。
 
「紙資料を修復すること」
 増田勝彦氏
 (昭和女子大学大学院生活機構研究科教授)

紙資料の修復に深く関わる立場から、修復においては単なるモノではなく芸術的要素を持つ「文化財」を取り扱うという視点が大事であること、伝統的な紙が現在でも作り続けられている国は少数で、日本の和紙は海外でも文化財修復に用いられていること等、資料と修復を通じて和紙への愛情があふれた講演が行われました。
 
「マイクロ資料の劣化-原因と対処」
 安江明夫氏
 (国立国会図書館顧問)

いわゆる「ビネガー・シンドローム」が発生する原因とメカニズムを紹介し、対象となるTACベースフィルムのケアと対策について、一次調査による状態の概要把握から、劣化フィルムを個別に調べて以後の対策につなげていく二次調査に至るまでの、基本的な考え方についての講演が行われました。
 
事例報告
「東洋文化研究所マイクロフィルム状態調査
-A-Dストリップを用いて」

 東洋文化研究所図書室

所蔵するマイクロフィルム管理の現状と、安江氏による一次調査に対応するサンプル調査の方法等を紹介し、調査結果からTACベースフィルムのうち酸性劣化について早急な対策を取らなければならないものが2割以上にのぼることが推定され、これを材料に今後の劣化対策を検討していきたいという報告が行われました。
 
総合討論
 司会:池本幸生教授
 (東洋文化研究所汎アジア研究部門)

会場から寄せられた多数の質問をもとに、各報告・講演の補足説明と意見交換が行われました。

学内、学外の大学や図書館等から合計183名の方々にご参加いただきました。
講師の方々、ご参加いただいた皆様、またご協力いただいた創立130周年事業関係者、会場をご提供くださった工学部関係者の皆様に厚くお礼を申し上げます。