おしらせ

第2回アジア古籍保全講演会を開催しました


2007年1月23日(火)、工学部2号館大講堂において第2回アジア古籍保全講演会を開催しました。本研究所の蔵書を始め、学内、学外に現存する貴重な古籍コレクションの保存対策は重要かつ緊急の問題であり、本講演会は前回に引き続き、この課題に取り組む図書館職員等の意識向上とスキルアップを目指した試みです。当日の様子を簡単にご報告します。
 
 
事例報告
「漢籍・中国書の劣化調査と補修」

 木部徹氏
 (有)資料保存器材

本研究所蔵漢籍(叢書部)に対する劣化状態悉皆調査の中間報告をしていただきました。現時点までの調査では虫損・カビ等の被害はほとんど見られず、大半が通常の利用には問題のない良好な状態であるとのことです。
 
事例報告
「アジア近現代資料の保存と利用」

 小島浩之助手
 東京大学経済学部資料室

経済学部所蔵資料に対する図書館・資料室・文書室による保存の取り組みについてご報告いただきました。特に最近の成果として環境対策やマイクロフィルムの劣化調査を取り上げ、保存計画を検討する際の基本姿勢等についても話題が及びました。
 
講演「中国古籍の保全と修復」
 周崇潤氏
 中国国家図書館善本特蔵部図保組組長
  通訳:橋本秀美北京大学歴史系副教授

中国国家図書館の資料保全の状況についてお話いただきました。古籍の保護及び修復に関する技術的な紹介と科学的な研究成果の応用状況について、敦煌遺書や「永楽大典」等個別資料の修復状況も交えた大変幅広く精細な紹介がありました。
 
講演「書籍・資料のカビとその対策」
 木川りか氏
 東京文化財研究所保存科学部主任研究官

IPM(総合的有害生物管理)の見地から、図書館にとっては悩みの種であるカビの問題についてお話いただきました。カビ対策は、湿度調整等の環境管理によりそもそも発生させないことが肝要であるという基本的考え方や、人体へのカビの影響について、さまざまな機関での豊富な対策事例を交えて解説していただきました。
 
総合討論
 司会:鎌田繁教授(本研究所副所長)

会場から寄せられた多数の質問を下地に、各報告・講演の補足説明と活発な意見交換が行われました。
 
 
図書室の企画による本講演会は、前回の好評を受けて継続開催が実現したものです。研究所の改修工事を控えて蔵書移転の合間を縫っての慌しい開催となりましたが、日程がおよそ5時間半という長丁場にもかかわらず、学内、学外の大学や図書館等から計177名もの参加者を得ることができ、今回もまた予想以上の盛会となりましたことは、関係者一同喜びに耐えません。聴講者、講師陣、またご協力いただいた創立130周年事業関係者、会場をご提供くださった工学部関係者の皆様に厚くお礼を申し上げます。