SHER SHAH SUR

 

 ドームを頂くこの墓建築の広い基壇を形成している四角形テラスは、その四隅にドームを載せる建造物を備えており、またその四周には水辺から登れるように工夫された階段が造られている。平面の墓建築の本体を載せる形をとっている。この四隅基壇の中央に載るかたちの八角平面の墓建築本体は、デリーに現存しているサイイドおよびローディー両朝期の八角平面を持つ墓建築の様式を踏襲したものとみていいであろう。八角形とドームを支えるやや高目のドラムの周辺部には、それぞれドームを頂く四本柱からなるキオスクが造られている。湖畔からこの墓を見ると、これら小型のキオスク群が壮大な建物全体を一段と引き立たせ、周辺の水面のさざ波とともにこの墓建築を他のものとは異なる印象深いものとしている。現地でこの墓建築のさまざまな特徴をみてとると、この壮大な墓を湖上に造ることを命じたと思われるシェール・シャー自身と、設計と造営を担当した当代の建築家アリワール・ハーンがの抱き実現させた卓抜な構想とその成果とに感嘆の念を覚えずにはいられない。湖上に浮かぶこの壮大な墓の遺蹟こそは、首都デリーにのぼってムガル支配を一時中断させた智将シェール・シャーの性格と事績を象徴するものといってもいいかもしれない。(荒松雄)

 

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