JAMA MASJID

 この壮大なモスクは、五間の奥行を持つ西側礼拝室と奥行三間の南北の回廊の部分、および東側の今はその大半が崩落してしまっている二間の回廊部に囲まれた中庭を持ち、その東側にはドームを頂く四角平面で八角の部屋を持つ堂々たる入口の門を持っている。西側礼拝室は、その中央と南北両端の部分の屋根とに三つのかなり高いドームを頂き、その他にも合計で58個もの小ドームを掲げており、装飾彫刻を施していない多くの柱列によって仕切られた多柱室である。この西側礼拝室と同様の小型ドームは他の南北、東の三面の屋根にも設けられているが、東側二間の上部の大半と南北両側の回廊の部屋の上の東寄りの部分の屋根の小ドーム群は崩落してしまっていた。
 このモスク全体は基壇の上に造られている。基壇上を二段に区切った壁面も建物全体にどっしりした印象を与えている。東側の基壇部分はアーチ形の小部屋やがんを備えている。四隅に小ドームを配した大きなドームを頂き、東側に高い階段を張り出した堂々たる四角平面の堂々たるダルワーザによって、このモスクの東側正面の外容をさらに威厳あるものとするのに役立っている。この正門の内部はジャーリー・スクリーンによって採光されるように工夫されており、この部屋を通って中庭に入る者は、広い中庭を隔てて三つの高いドームを頂く西側礼拝室の十一のアーチの柱列を持つ入口を望み見ることによってこのジャーマ・マスジドの荘厳な気分を抱かされるであろう。さらにこの東側回廊部を中庭の方から見ると、大きなアーチ形の浅いがんの列が中央のドームとともに、他のモスクからは窺えない独特な雰囲気を感じさせる。
 西側礼拝室の内部の多数の柱やスクインチや小さながんなどの大半には彫刻が施されてないが、その西壁に備わる中央の大型のものを含めて全部で17個のミフラーブにも、ほとんど目立った彫刻が認められない。ただ、中央ミフラーブはかなり派手な二重のアーチやメダリオンを持っており、その周辺にはコーランからの引用文のアラビア文字の刻文が巡らされている。さらにその周辺には、他のミフラーブと同じくそのアーチの一部に黒い石を用いた帯が備わっており、他のアーチ形の部屋の間仕切りやスクインチの彫刻を持たない簡素な石のかもしだす効果とともに、これまた独特の雰囲気をかもし出すのに成功している。中央ミフラーブの北側には階段を備えてパルピット(ミンバル、説教壇)が設けられているが、ドームを頂く小部屋を持つこのパルピットにはヒンドゥー技工の参加を示す箇所が多々窺われ、このモスクにも中央インドのヒンドゥー工芸の遺産が残されていることを示している。このマーンドゥーのジャーマ・マスジドは、ダハルやマーンドゥーに残存するモスクばかりでなく南アジアの多くのモスク群のなかでも、さまざまな点から注目されて然るべき建造物であると、私自身考えていることを付言しておきたい。(荒松雄)

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