MOSQUE OF SIDI SAYYID

 

 アフマド・シャー時代の最後を飾るこのモスクは、その東正面は壁面を持たない五つのアーチと柱から成っており、その両端に八角形のミーナールを持つ間口五間奥行三間のモスクで、礼拝室内部の総計15の柱間はそれぞれ浅いドームや折上げ天井を載せている。これらの天井は、それを支える持ち送りやドーム内部を飾る彫刻文様がまたきわめてユニークなもので、南アジアの中世ムスリム建造物のドーム天井のなかでは特筆されて然るべきであろ。
 しかしながら、このモスクを広く世界に著名な遺跡として知らしめたのは、その背面と一部側面の上部を飾るジャーリー・スクリーンの華麗な透かし彫りの石彫である。とくに裏面の左右両端から二つ目の、樹木をモティーフとした繊細な透かし彫り彫刻は、南アジアの中世ムスリム建造物に備わる代表的な芸術的彫刻の成果としてひろく紹介されてきた。さらに、この樹木文様の有名度にかくれてほとんど紹介されていないその両側や建物側面のジャーリー・スクリーンにみる幾何学文様の精巧な透かし彫りも、素晴らしい出来である。(荒松雄)
 サブラマティー川に面する内城(バドル)の北東部に位置する。(深見奈緒子)

 

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