イスラーム地域研究5班
調査報告

「イスラーム地域研究」5班 a 小研究会

[サライ・アルバムの研究]トルコ出張報告書
ヤマンラール・水野美奈子

[I]「イスラーム地域研究」5班Aグループ、小研究会[サライ・アルバムの研究]のトルコ出張の目的:

  1. H.2153 およびH.2160 のカタログ作成のための打ち合わせ
  2. カタログ作成の為の資料作成
  3. ワークショップ開催のための打ち合わせ
  4. 個別研究資料収集


出張先機関: トプカプ宮殿美術館、イスタンブル
出張期間 : 2月25日(木) - 3月19日(金)、1999年
出張者  : 杉村棟(龍谷大学)、小柴はるみ(東海大学)、関喜房(東海大学)、小林一枝(早稲田大学)、鈴木映子(お茶の水大学、院生)、ヤマン ラール・水野美奈子(東亜大学)
現地参加者: 安部克彦(上野学園大学)青木美由紀(イスタンブル工科大学、院生)

[II] トプカプ宮殿美術館に於ける調査研究許可取得手続き:

  1. トルコ共和国への研究許可申請;在日トルコ大使館を通して研究許可を申請(07.8 1998)。
  2. トルコ共和国より研究ビザがおりる(28.12 1998)。在日トルコ大使館にて出張参加者予定者各自のパスポートに研究ビザをもらう。 
  3. 出張地到着後、トプカプ宮殿美術館の発行した研究許可証をもって、イスタンブル警察に赴き、出張参加者全員の研究滞在許可証を申請、取得(03.3.1999)。研究滞在許可証の発行には数日かかったが、トプカプ宮殿美術館の好意で調査研究は警察の許可証が発行される前から(3月25日) 開始した。

[III]出張目的の各項目に関する報告

  1. H.2153 とH.2160のアルバムのカタログ作成に関するトプカプ宮殿美術館との打ち合わせに関しての報告:

    1. 打ち合わせ会議は3月25日(木)に館長F.チャーマンと館員、Z.ゲリク, G.ナキプオールと関、小林、青木、鈴木、水野によって行われた。

    2. 館長より、カタログ作成のプロジェクトが IAS の研究活動の一環として行われることに対して高い評価を得た。トプカプ宮殿美術館として、今後このプロジェクトを推進させて行くために、トルコ共和国文化庁に上記アルバムのカタログ製作に関する公的許可を申請すること、カタログ製作はトプカプ宮殿美術館と日本サイドで行うこと、出版に向けてトルコの諸財団に援助を仰ぐことが約束された。それに際しカタログ作成のトルコでの作業にトルコ側からトプカプ宮殿美術館館員のZ.ゲリクと G.ナキプオールの2名を参加させて欲しいとの要請があったので、了承した。

    3. カタログの形式に関しては、ファクシミリを前提とするが、部分写真の選択、索引、他の情報に関しては、今後の我々の記録入力の作業結果をみながら決定することになった。

    4. 今回トプカプ宮殿美術館で行う調査研究作業等に関しては、2月19日に送付した館長宛の研究作業計画書で明らかにしていたが、改めて確認を取った。作業計画は全面的に承認された。撮影に関してはデジタル・カメラでの撮影の許可を得た。調査研究の作業場となるトプカプ宮殿美術館図書館の研究者への公開日は週3日であるが、このプロジェクトに関しては美術館も関与しているということで、週5日作業する事が許可された。

    5. カタログ作成の為の資料作成に関する報告:
      資料作成は記録のパソコン入力とデジタル・カメラで撮影した映像の保存によって行われた。

    6. 資料作成の為に日本から持参した機材、器具は以下のとおりである;
      ノート・パソコン2台、ポータブル・パソコン用コピー機1台、MOディスク・ドライヴ機1台、デジタル・カメラ2台、変圧機1台、接写台1台、三脚1台。ページ、各作品の測定等の為に持参した器具;皮張りの文鎮、皮張りのクリップ、ストッパー付き巻き尺、定規(60,30.20cm)(測定の際、定規が紙に直に当たるためアクリル製を使用。紙やすりで軽くといで丸みを付けたものを使用)、水平測定器、カラーチャート、拡大鏡(ライト付き)、白・綿製手袋、その他文房具。
      撮影状況による必要性から現地で調達した機材、器具;接写台1台、接写用三脚1台、接写ライト用電球

    7. 資料作成作業行程;
      トプカプ宮殿美術館図書館の閲覧室のテーブルの一つを我々の作業用にあててくれたので、かなり楽に仕事ができた。今回の調査は H.2153の記録入力と撮影を行った。H.2153 のアルバムは製本されておらず、各フォリオが両面ガラスの額縁の中に収められているので、フォリオ番号順に額縁を8点ずつぐらい出してもらった。
      それらの撮影、測定、記録入力を平行して行った。役割分担を定めて分業で作業し、特に注意を要する箇所は指摘し、説明した。撮影では、各フォリオ全体と部分を撮ったが、特に記録に残したい 部分は接写した。また絹などの布に描かれた作品は布目の接写を行った。測定はフォリオ寸法、貼られている作品すべての寸法、継ぎ目、折り目がある場合はそれらの測定、ジェトゥヴェル(枠取り)のある作品はその内外の寸法の測定。書に関しては、文字の大きさの測定。記録入力作業では、データー・ベース表(出発前に作成)に従って必要事項を記入。データー・ベース表事項にない記入事項はメモ欄に記録入力した。

    8. 調査作業の結果
      今回の調査では、H.2153の フォリオ77までの撮影、記録入力を終了した。測定に関してはフォリオ69まで終了、フォリオ70以降はZ.ゲリク とG.アキプオールに担当してもらう為、測定方法などを示した。
             
      カタログ資料として入力したものは以下のようである;
      データー・ベース シート638枚
      映像点数1937点
        
      トプカプ宮殿美術館側が予想以上に自由に調査させてくれたので、作品をゆっくり観察することができたし、撮影も多くできた。ただ逆に作業スピードはあがらなかった。しかし時間をかけて観察したことによって、かなり細部に至るまで記録する事ができた。例えば台紙に貼ってある書や絵画そのものの裏面の作品の様子を見たり、映像にして記録する事ができた。また図案をコピーするステンシル(針穴)なども多数記録した。また金の砂子散らしや金泥による装飾紙の状態も把握し記録した。その他ジェトゥヴェルと本図の関係なども映像に撮って保存した。

  2. ワークショップに関する打ち合わせの報告:

     3月15日にトプカプ宮殿美術館図書館長室で2000年に予定されるワークショップの打ち合わせ会議を行った。

    出席者 : 館長 F.チャーマン、Z.ゲリク、G.アキプオール、G.ネジプオール、杉村、小柴、関、水野

    館長の要望でハーヴァード大学のG.ネジプオールも参加した。研究書出版も目標の一つであるので、規模を多少拡大し、シンポジウムの形態で研究発表の場を設けることで意見が一致した。G.ネジプオールは、カタログの出版に伴って出版予定の研究書とその間に行われるシンポジウムに大学として参加する意志を明らかにした。シンポジウムの具体的な日程や人選は8月にトルコで打ち合わせ会議を開いて決定することになった。8月の打ち合わせ会議の出席予定者は以下のとおりである;

    F.チャーマン   トプカプ宮殿美術館館長
    G.ネジプオール  ハーヴァード大学教授
    D.ロクスブル   ハーヴァード大学
    Z.タヌンドゥ   ブルサ大学教授
    S.バージュ    ハジテペ大学教授
    日本側      杉村、小柴、関、水野 予定。

     なおF.チャーマン館長は、カタログの出版に伴い、アルバムの展覧会を企画したいとの意向を明らかにした。

  3. 個別研究資料収集の報告:

     各自がアルバムからテーマをとって行う個別研究は、カタログと一緒に出版予定の研究書において発表するものである。時間をかけて作品を見たので、関係箇所を記録する時間はあった。また希望があった場合は接写も行った。 


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