イスラーム地域研究5班

 

イスラーム地域研究5班共催広島市立大学コロキアム

 

日時:3月1日(月)2:00-5:00

場所:広島市立大学国際学部棟311教室

テーマ:「モロッコの宗教と社会」

講師:アブドゥッラフマーン・ラクサーシー氏(モロッコ国立ムハンマド5世大学文学人文科学部哲学社会学科イスラム研究教授)

コーディネーター:堀内正樹(広島市立大学国際学部)

報告:赤堀雅幸(上智大学外国語学部)

広島市立大学の教員学生諸氏に加えて、東京からも参加者のあった上記研究会において、まず、ラクサースィー氏から1時間ほどのプレゼンテーションが行われ、それを元に活発な議論が展開された。なお、討議にあたっては、英語を中心に日本語、フランス語、アラビア語などが用いられ、各人の専門が生かされ、かつたがいを補いあうような親密な雰囲気をもって、終了の時間が来るのがもったいなく思われたほどだった。

ラクサースィー氏はモロッコの一般的歴史と社会状況の説明から始めて、自身ご出身でもあり、またその人類学的研究の対象でもあるベルベルの人々が、同国のなかで占める社会的・文化的位置とその変遷について論を展開した。また、イスラームの信仰をめぐる同国での状況についても、時間を割いて説明され、今日のアラウィー王朝の正統性と信仰、とくにマラブーティズムとの関わりを明確な語り口で説明した。最後には、19世紀のサラフィーヤ運動(=イスラームの近代化運動)と今日のイスラーム主義運動(=近代のイスラーム化運動)の対比について持説を展開し、これは報告者にはたいへんに興味深い説と思われた。

質疑は、モロッコにおける社会的文化的多様性の問題に集中したが、同時に参加者の専門や出身地域をも反映して、イェメン、マレーシアなどの状況との比較にもおよんだ。さらにアラウィー朝と歴代王朝との対比などの歴史解釈、ベルベルの人々の口承文芸における伝統と新しい運動が論じられ、また理論的な側面においても、モロッコに限らず、イスラーム地域に対する視座を考えるのに有用な論点が多数提出された。 

5jimu@culture.ioc.u-tokyo.ac.jp