イスラーム地域研究5班
研究会報告

B. Andaya 氏講演会報告

日時 : 2000 年 9 月 26 日(火)18:00〜

場所 : 大阪市立大学文化交流センター・大セミナー室

講演 : Barbara W. Andaya(University of Hawai'i)
     "Writing a Gendered History of Southeast Asia, 1500-1800."

主催 : ・基盤研究B「東南アジア史研究で卒論・修論を書くための
      教育・研究工具の開発のための研究」(代表:早瀬晋三)
     ・「イスラーム地域研究」5班cグループ


<講演概要>

 自分は1993年に南スマトラのペラクのローカルな歴史研究を完成させたが、次の仕 事として他の地域の同様なケーススタディを重ねるよりも、東南アジア全体のアー リー・モダンの時期の歴史を書こうと考え、その切り口として、これまで「女性の地 位が世界の他の地域と比べ相対的に高い」という一般論だけで具体的研究がなかった ジェンダーを選んで、現在著書を準備中である。ジェンダーとは、さまざまな社会や 文化が男性と女性についてどう考えるか、人が女性や男性になっていくときになにが おこっているのか、ということである。自分は東南アジアで1500〜1800年の時期に ジェンダーがどのように構築されたか、それがどのように変化したかを基本的な問題 とする。
 具体的なテーマとして、(1)山地によって中国やインドと隔てられ、風によって 太平洋地域と区切られることにより、東南アジアに独自のジェンダーエリアが成立し ているという地理的条件、(2)主要史料である旅行家の記述の再検討などヒストリ オグラフィの問題、(3)東南アジアにやってきた世界宗教がどのように男女につい ての考え方を変えたか、男女のヒエラルキーの明白なそれらの宗教を、なぜ女性が支 持したかなど宗教に関する問題、(4)遠距離交易、プランテーション、「奴隷制」 などの経済関係、とくに普遍的に発生し主に家内労働に従事した奴隷の検討、(5) つねに男女関係の規範化をはかる国家など、法と国家の問題を取り上げる。これによ り、他の地域の研究者にも比較の対象を提供し、貢献しうるような歴史書を書きた い。

講演の後、東南アジア島嶼部と大陸部の差異、東南アジア研究のなかで歴史学がおか れた位置その他、活発な質疑がおこなわれた。

(文責:片山 須美子(大阪大学大学院生))


戻る