イスラーム地域研究5班
研究会報告

bグループ国際ワークショップ
"Ports, Merchants and Cross-cultural Contacts"報告

日時 : 2000年9月23日(土)13:00〜18:00
場所 : 東京大学東洋文化研究所・3階大会議室
参加人数 : 51名
5班bグループは、2001年10月に開催予定の「イスラーム地域研究」のまとめの国際 会議で、一つのセッションを担当する予定である。今回のワークショップは、来年の 会議に参加することが決まっている3人の外国人研究者を招き、お互いの研究内容を 紹介しあうとともに、来年のセッションの内容を固めるための準備会としての意味を 持っていた。


1)各発表の題目
Philippe Haudrere (Universite d'Angers)
"Commerce et religion a Pondichery aux 17e et 18e siecles"
Haneda Masashi (University of Tokyo)
"Bandar-i Abbas in the Eighteenth Century - State, Port and Companies"
Edmund Herzig (University of Manchester)
"The Armenian Merchants of New Julfa and their Significance for the Study of Early Modern Asian Trade"
Rudiger Klein (Universitat von Tubingen)
"From Business Archives to the Social History of International Trading Cities: the Middle East"

2)各発表の要旨
Haudrere氏は、インド・コロマンデル海岸の都市、ポンディシェリにおけるイエズス 会宣教師の活動やフランス東インド会社と現地の異教徒の商人や仲介人との関係を明 らかにし、カトリック至上主義をとるフランスの商業活動の特徴と限界を明らかにす るものだった。

羽田は、イギリス東インド会社とサファヴィー朝ペルシアの間の外交交渉の過程で、 両者の「国家」に対する認識が異なっていることを指摘し、同時に、イギリスやオラ ンダの東インド会社の文書がイラン史研究にいかに有効かを強調した。

Herzig氏は、ジュルファを中心にして17-18世紀のユーラシアに広がるアルメニア商 人のネットワークの具体的な姿(組織、慣行、異文化接触など)を説明し、その重要 性を指摘するとともに、他の商人集団との比較検討の必要性を力説した。

Klein氏は、17世紀末から20世紀前半の時期のアレッポで活躍した商人の家系に伝わ る文書類を紹介し、総計50万点にも上るというこの文書群が、アレッポの都市社会史 や国際商業史の研究の発展に貢献する豊かな可能性を持っていると述べた。

3)発表へのコメント
各発表に対して、多くのコメントや質問が出されたが、とりわけBarbara Andaya氏 は、各発表者が一様に都市を扱っているのだから、来年のセッションでは、発表の冒 頭にそれぞれが扱っている都市のトポグラフィーや社会的な特徴を述べて、相互の比 較を可能にした上で各論に入ったらどうかとの提案を行った。来年のセッションでは この点が考慮されることになり、東南アジアの都市を扱うAndaya氏も発表者として参加することになった。

4)来年へ向けて
(1)さまざまな広域的諸関係(商人ネットワーク、宗教的ディアスポラ、エスニッ ク・グループ、布教組織、植民地行政機関、治外法権と領事裁判権など)が交錯する 局地空間としての都市、地域間交流の結節点としての都市を、開かれた分析単位とし て設定する。都市のトポグラフィーにも注目しながら、これら諸問題のうちから各自 の興味に合うものを取り出して論じる。

(2)来年の会議には、今回のワークショップに参加した4人以外に、5班bグルー プの研究分担者である深沢克己(東京大学人文社会系研究科、フランス史、国際商業 史)、黒木英充(東京外国語大学アジアアフリカ言語文化研究所、シリア史)の両 氏、それにBarbara Andaya(ハワイ大学、東南アジア史)、藤田加代子(ライデン大 学、日本対外交渉史)の両氏の参加がすでに決定した。あと2名程度の参加者は目下 交渉中である。

(文責:羽田 正)


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