1.萬物始生圖
この節では前節の天地定位圖を受けて、天地が定位したのちに、万物が生まれる過程を説く。気、火、水、土の四元から、その四元を構成要素とした金、木、活の三子が生じ、金からは鉱物類が、木からは植物類が、活からは動物類が生じる。この節は『本經』第一章の「造化流行、至土而止、流盡則返、返與水合、而生金石、金與水火、而生草木、木與氣合、而生活類」を敷衍解説したものであるが、水火→気土という四元の生成ルートを再び追走することで金、木、活が生成されるのである。ただ『本經』では水と合して金石が生まれるとあるのに対して、本節では金気の流行によって玉石が生じると説かれており、『本經』と本節に齟齬があるように思われる。また四元三子を合わせて七行とする言説が『本經』に見えるが、イスラームでも言われるのであろうか。
(要約担当:佐藤 実)
2.大成全品圖
前節までで天地万物が全て備わる。巻一の最終節である大成全品圖では人が生まれる。そしてこれらの生成過程はすべて眞宰が司っている。天地万物が存在しても、人が存在していなければ意味をなさないという言説は人間中心主義的なイスラーム思想を体現している。「先天のことわりからいうと人は理気の種であり、後天のことわりからいうと人は理気の果である」「後天の果は先天の種である」などと述べられており、黒鳴鳳は按語で「庶幾知所以盡人」と述べている。本節で言う「人」は完全人間を指すのであろうか。また、この篇で述べられている人の「心」と「性」は巻三・知覺顯著圖で詳述されるが、「性」を構成する十徳の中で本篇の「言」は巻三では「嘗」、本篇の「憶」「悟」が巻三ではそれぞれ「想」「斷」に作っている。「性」十徳の「五覺」と「五力」はそれぞれイブン・スィーナ『医学典範』でいう知覚能力の外的知覚能力、内的知覚能力に相当すると考えられる。
(要約担当:佐藤 実)
(文責:黒岩 高)