イスラーム地域研究5班
調査報告

a・b・c グループ合同 インド伝統染織調査報告

日 程  : 2000 年 3 月 11 日〜23 日
調査先  : インド・ムンバイ市およびグジャラート州各地
調査参加者: 阿部克彦(上野学園大学・美術史)
       金谷美和(日本学術振興会特別研究員・京都大学)
       関本照夫(東京大学)
       深沢克己(東京大学)
       柳宗玄(お茶の水女子大学名誉教授)

3月11 日 東京−ムンバイ
12 日 ムンバイ市内、エレファンタ島ヒンドゥー石窟寺院、
 プリンス・オブ・ウェールズ博物館
13 日 ムンバイ−スラート
 途次、カンヘリ石窟、ワルリ族村落の民俗絵画見学
14 日 スラート市内、旧市街町並み・ジャイナ教寺院・ゾロアスター教施設見学。
 金・銀糸製作ダイア加工所調査。旧オランダ城塞・旧港地区見学。
15 日 スラート−アフメダーバード
 アフメダーバードにてシュレヤス民俗博物館見学。
16 日 アフメダーバード市内
 ジャマー・モスク、ダーダ・ハリ 5 層地下井戸、キャリコ博物館、
 シティ・サイヤード・モスク見学。カラムカリ更紗製作調査。
17 日 アフメダーバード−パタン−ペタプール−アフメダーバード
 パタンにてパトラ(経緯絣)とマシュルー織調査
 ペタプールにて更紗捺染用ウッド・ブロック製作調査。
18 日 アフメダーバード−ブージュ
 途次、ダムドゥカにてウッド・ブロック捺染による更紗製造所調査。
 ブージュ近郊ブジョディにて毛織製造の調査。
19 日 ブージュ−ケラ−ムンドラ−ブージュ
  ケラにてシヴァ寺院見学。ムンドラにてフェルト敷物製造調査、バティック製造調査。
 ブージュにてアイナ・メール宮殿、民芸博物館見学。
20 日 ブージュ−チャトリ−ニローナ−ルディア−ドルド−ブージュ
 チャトリにて王族死者廟見学。ニローナにてローガン絵画の調査。
 ルディア村にて住居と民具調査。ドルド村にて住居とキルト刺繍、
 ミラーワーク刺繍調査。
21 日 ブージュ−ムンバイ
 ブージュにて絞り染め製造所調査。ムンバイにて市街・工芸品センター見学。
22 日 ムンバイ発
23 日 東京着


調査結果 :

 布は昔から貢納品・下賜品として重要な役割を果たし、階層的ステータスを示したり、性、身分、民族などをあらわす基本的記号となり、また遠距離交易の代表的物品のひとつであった。歴史を考え地域間の交流史を考えるとき、布は重要な手がかりである。そこで 5 班では a, b, c 各グループが合同して、布の文化史をたどる調査を企画した。最初である今回は、18 世紀まで世界の布生産の中心地であったインドを訪ねることにし、とくにヨーロッパから日本に至るまで多くの貴重で珍重される布を製造・輸出していたグジャラート州を調査地に選んだ。副次的な目的としては、昔から重要な貿易港であったムンバイ、スラートの旧港地区見学、布の意匠デザインと結びつく各種寺院建築のデザイン見学、地域の伝統住居や民具を広く概観することなどがあった。広いグジャラート州各地を強行軍で走り回り、多くの伝統的な布製造現場を見ることができた。史料からのみインドの布を知っていたわれわれにとって、その数多くの実物を見て意匠の細部にまでわたる多様性を目の当たりにし、製造工程を確認することができたのは、大きな収穫であった。とくに西部のカッチ地方では、伝統的な各種の布が生活の中で生きていて、住居・民具・風土と調和している様子を見ることができた。また北部のパタンでは昔から東南アジアに輸出され、王侯貴族の儀礼用衣装として高い価値を与えられていた経緯絣パトラの細密な製造工程を観察することができ、東南アジア各地で織物または染め物としてこれを模倣して作られてきた伝統的布との関係を、確認することができた。

(文責:関本 照夫)


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