イスラーム地域研究5班
研究会報告

第 7 回「回儒の著作研究会」報告

日時 : 1月 15 日(土)14:00〜
場所 : 東京大学文学部アネックス
 第 7 回の研究会では、前回に引き続き劉智の『天方性理』について以下の部分を取り上げ、読解を進めた。

 [ 1 ]「図伝第 1 章第 9 節」
     発表・翻訳担当 鈴木弘一郎(東京大学大学院 博士課程)
 [ 2 ]「図伝第 1 章第 10 節」
     発表・翻訳担当 発表 佐藤 實(関西大学大学院 博士課程)

 [ 1 ]では、陰・陽が水・火に転化し、さらに両者の接触によって気と土が生じる段階を説明した「四象」の説を取り上げ、読解を進めた。ここでは、水・火・気・土の「四象」を用いて陰・陽からの転化が説明されるが、劉智の説く「四象」は易で用いるそれとは相違があり、アリストテレスの哲学における四元素と類似した点が見られることが指摘された。さらに、劉智の「四象」はアリストテレスの四元素とも次のような相違点も見られることが指摘され、今後の検討課題とされた。すなわち、アリストテレスの四元素においては、軽重の順は火・風・水・土であるのに対し、劉智の「四象」においては、始め火・気・土・水の順であったものが気・火・水・土の順に変化する点である。

 「 2 」では、「元気」が現象として形が定まった段階を説明した「天地定位図説」を取り上げ、読解を進めた。ここでは、朱熹が宇宙を説明する差異に用いる卵の黄身と白身の比喩によって天地の構造が説明される。読解の中で指摘されたのは、この節においては「気」が複数の意味に用いられていることであり、『天方性理』を通じて「気」がいかなる意味を持って使われているかを分類・判別していくことが今後の課題とされた。
(文責:黒岩 高)


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