サライ・アルバム研究会

サライ・アルバムとはトプカプ宮殿美術館に所蔵されている登録番号H.2152, 2153, 2154, 2160 の４冊の画帳（アルバム）です。

イルハーン朝、ジャライル朝、ムザッファル朝、白羊朝、黒羊朝、ティームール朝、サファヴィー朝、オスマン朝などで流行した絵画や書道の手本を集めた粉本（murakka)として製作されました。

合計で1000点以上の絵画を含んでいますが、画帳全体の内容はヴァラエティーにとみ、絵画史、書道史だけでなく、イスラーム文化史や東西交渉史などの観点からも豊富な研究テーマを提供してくれます。

研究会の発足　

IAS５班aグループの有志による小研究会として「サライ・アルバム研究会」が発足しました。したがって公開の研究会です。興味のある方はふるってご参加ください。

研究会では毎回スライドでアルバムの作品を紹介する予定ですので、スライドを観るだけにいらしても構いません。　

研究会発足の趣旨

本年（1998年）12月にトプカプ宮殿美術館で行う「サライ・アルバムの研究調査：絵画・文献資料にみるイスラーム文化の伝播」と、2000年に予定している国際ワークショップに向けての準備・勉強。

研究会主催者　

５班a 研究分担者　ヤマンラール・水野美奈子　

研究の対象となる作品　

トプカプ宮殿美術館蔵　H.2152, 2153, 2154, 2160の４冊ですが、当然のことながら関連する作品も扱います。

研究会のテーマ：　以下の三つに大別できます

1. ４冊のアルバムのデーターベースの作成。

   現在までこれらアルバムの総合的かつ詳細なデーターの作成は行われていません。

   そこで本研究会では、トプカプ宮殿美術館とトルコ研究者などとの共同作業によって、まず基本的なデーターを作成します。

   将来の最終的目的として４冊のカタログの作成を考えています。それが実現できればイスラーム美術史研究において画期的な事業になります。

   詳細なデーターができれば、各アルバムの絵画、書、文献資料の構成が明白になり、まだ明らかにされていないアルバムの製作意図の解明に繋がります。

2. ４冊のアルバムにおける絵画の美術史学的研究と、アルバムの絵画を資料に用いた諸研究分野の研究。

   これらに関しては既に欧米やトルコの研究者による多くの研究業績がありますが、まだまだ興味深い研究テーマが沢山残されています。　アルバムの絵画を資料にして研究できそうな分野を思いつくままに挙げてみると；　音楽（楽器、演奏形態、民族音楽）、舞踏（民族舞踊、舞踊の装束、仮面、舞と踊り）、生活文化（生活形態、衣・食・住）、建築（建築、建築装飾、室内装飾、照明）、庭園（庭園形態、植物、小動物、鳥類）、神秘主義集団の生活、馬具、武器・武具　等々。

   ４冊のアルバムはイスラーム世界に共通の絵画の粉本でしたので、アルバムの絵画の詳細な研究はイスラーム絵画史研究に新しい局面を開くことは明らかです。

   また中国や中央アジアの絵画の影響を強く残したアルバムの絵画の分析は、イスラーム世界における中国文化や美術の摂取とそれらのイスラーム化の過程を明らかにすると共にイスラーム世界と中国の東西交流の一端をも明確にします

3. ４冊のアルバムにおける書、書籍装飾、文献資料の研究。

   アルバムにおける書（能書家の書跡、書体の手本等）、文献資料（詩の断片、画論、上申書等）、料紙、装丁などは従来のアルバム研究では断片的にしか扱われているに過ぎず、ほとんど手が付けられていません。

   これらのアルバムが粉本(murakka)として製作されている以上、絵画と書を切り離して研究することは片手落ちであり、両者を一緒に総合的に研究することによってアルバム製作の本意がより明らかになります。　

研究会の参加予定者と専門分野

第１回研究会のお知らせ

日時：　平成10年５月30日（土）　　13:00-17:00

会場：　東京大学文学部アネックス　

テーマ：

1. 研究会の方針

   共同研究：データーベースの作成

   個別研究

2. サライ・アルバムの概要
3. これまでのサライ・アルバム研究

御連絡・質問はヤマンラール・水野美奈子(yaman@db3.so-net.or.jp)まで