ビジネスブームに沸くミャンマー。アウンサン・スーチー氏の動向、投資環境、国境紛争や難民、待ちゆく人々の様子など、メディアに取り上げられることも非常に多くなってきたが、ミャンマー6000万人口の3分の2が住むといわれる農村部は、報道も注目もされない、まるでプラックボックスのようである。しかし、農村部は歴史上常に政治経済変動の起点であり続けてきた。1988年のあの民主化運動も農村部の反発から始まったと言ってもよい。
著者は、ミャンマーがビルマ連邦社会主義共和国であった時代から、200余りの農村を訪ね、そのうちの十数ヵ村に暮らし、数千人に及ぶ村人たちと語り合ってきた。そこで得た知見を体系的に整理し、自らが生まれ育った日本の村と比較しながら、「ミャンマーにおける村とは何か」という長年にわたって持ち続けてきた問題に答えようとしたのが本書である。
結論は、日本の村が生産と生活の共同体であるのに対し、ミャンマーの村は生活あるいは消費のコミュニティである、というものである。そこに至る論考の過程については、本書を参照してほしい。
はじめに | |
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1. ミャンマーの風土と農業 | |
2. ミャンマーの村と村人たち | |
3. 私的村落経験から見た日本とミャンマー | |
4. 日本の村、ミャンマーの村 | |
あとがき |
髙橋 昭雄 著
『ミャンマーの国と民―日緬比較村落社会論の試み―』
明石書店, 198ページ
2012年11月