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教員の新著が刊行されました
後藤絵美 著, 長沢栄治 監修 『イスラームのおしえ』(イスラームってなに シリーズ1)

シリーズ監修者からの紹介

  「何とかファースト」、つまりは「自分ファースト」、「自分たちファースト」という言葉が流行る、嫌な世の中になったものです。自分たちの対極にある他人、とくに見えない他者を、テロリスト(一昔前なら「匪賊」)と決めつけて悪魔化する考えとそれは紙一重だからです。しかし、そんな風潮がまかり通る中、希望を与える若い人の声が聞こえてくるから、この列島の社会もまだ捨てたものではない、とも思うのです。
  先日、このシリーズ第1巻の著者である後藤絵美さんが中心になって開催したASNET企画「共生を語ろう—世界の経験と発想から」という国際セミナーにおいて、ある高校生の方が日本の学校教育における宗教、とりわけイスラームの知識を教えることの重要性を、英語による発表で訴えていました。公立学校の中には、宗教関係の本を図書館には置かない方針のところもあるようです。そんな大人の気後れした姿勢に比べるなら、きわめて啓発的で成熟した主張ではないでしょうか。
  このシリーズの巻頭言「はじめに」では、見知らぬ他者である「イスラーム君」と向き合い、「まっすぐな自分の眼で見て、自分の頭で考え」「本当の意味で仲の良い友だちとなってほしい」と書きました。こうした高校生の方のしっかりした意見を聞くと、これから世界に出ていく若い人たちだけではなく、本来の対象とする読者の親の世代にもこのメッセージは向けられるべきではないかと思いました。ぜひ、親子一緒に、このシリーズの各巻を読んでいただきたいものです。

著者からの紹介

  イスラームはどんな宗教? 誰がはじめたの? ムスリム(イスラーム教徒)にとって神さまってどんな存在? コーランって何? その中には何が書かれているの? 日本の子どもたちが抱くかもしれない、そんな疑問に答えてみたいという思いから、この本を書きました。執筆に際してとくに気をつけたのは、答えを単純化し過ぎないことです。世界には十数億人のムスリムがいると言われていますが、上の質問の答えとして、一人ひとりが思い描くものは、決して一つとは限らないからです。
  もちろん、多くのムスリムが共通して信じたり、大切に思ったりしていることもあります。神の存在や、預言者・使徒の存在、コーランが神に由来すること、来世で神の裁きがあること、天国や地獄が存在すること、ムスリムにとって礼拝や断食などの義務があることなどです。一方で、神がコーランや使徒を通して人間に何を伝えようとしたのか、その内容の理解は人によって異なる場合があります。そのために、たとえば、ムスリムとしてどのような服装がよいとされるのか、男性は二人以上の妻をもつことができるのかなど、同じくコーランの言葉を出発点としながらも、異なることが言われてきました。
  本書では、こうした多様なすがたを含めて、「イスラームのおしえ」がどのようなものであるのかを、わかりやすく紹介しようと心がけました。岡部哲郎さんのかわいらしいイラストと、かもがわ出版の編集の皆さんの工夫のおかげで、情報量が多めながらも読みやすく、楽しい一冊に仕上がったのではと思います。本書をきっかけの一つとしてより多くの人が、イスラームやムスリムについて、柔軟な視点をもちつつ理解を深めていってくださればと願っています。


目次等、その他の情報は教員の著作コーナー掲載した記事をご覧ください。



登録種別:研究活動記録
登録日時:Wed Sep 6 10:29:58 2017
登録者 :長澤・後藤・野久保(撮影)・野久保
掲載期間:20170906 - 20171106
当日期間:20170906 - 20170906