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菅豊教授監修の映画『川はだれのものか―大川郷に生きる』が毎日新聞に取り上げられました

映画:村上のサケ伝統漁追った記録映画完成

「川に生きる漁師たち」描く/新潟

毎日新聞 2013年05月15日 地方版

◇「川はだれのものか」

 村上市山北地区の大川で300年以上続くサケの伝統漁法「コド漁」を追ったドキュメンタリー映画「川はだれのものか 大川郷にいきる」が完成した。巡る季節の中で、川を分かち合い、昔ながらの営みに携わる漁師たちの姿が描かれている。東京では16日に公開され、県内では今秋を目指して上映会が計画されている。

 コド漁は竹や柳などで作った囲いにサケを誘い込み、カギが先についた棒で捕まえる。現代のサケ漁は川を網などで仕切って遡上(そじょう)を止める漁法が主流で、コド漁は全国でも類がないという。

 制作した「周」(東京都世田谷区)代表で、共同企画演出の菊地文代さん(82)は「経済性に背を向けるように伝統漁法を続ける理由を知りたかった」と語る。描かれるのは、純粋に漁を楽しむ漁師と、地域が共同のルールを守って川と漁を「みんなのもの」として守る姿だ。菊地さんは「近代化により私的所有権が徹底されたことが、自然と人間の共生関係を壊した」と指摘する。

 漁に携わる大川漁業協同組合の鮭(けい)鱒(そん)増殖部会の会員は地元住民のみ。専業者はなく、定年退職後や休日のみの兼業が支えている。

 収められたのは11年夏から翌春までの風景だ。毎年8月、その年の持ち場を決める「川分け」から漁の季節は始まる。流れやサケの習性を熟知しなければできないコド作りや、サケを狙う漁師の姿を、カメラは美しい風景とともに追う。初めて採れたサケは神棚に供えられ、切り身にして近所に配られる。豊漁を祈る秋神楽など、漁は神事と結びつく。

 「サケを(カギで)ひっかいた瞬間が忘れられない」「大きなサケを腕一本でとる醍醐味(だいごみ)」−−。手間がかかる漁なのに、漁師たちは笑顔だ。共同企画演出で、現場を統括した前島典彦さん(66)は「利便性や合理性に突き進むことが、生きる喜びを失わせていないか」と話す。

 主人公のいない群像劇の手法が取られた。「社会が皆で成り立っていることを表したかった」(菊地さん)からだ。音楽やナレーションはなく、字幕解説だけの簡素な構成が、大川郷の素朴な人々の生活を際立たせている。

 東京での上映は「オーディトリウム渋谷」(渋谷区円山町、電話03・6809・0538)で。午後1時、3時40分、6時20分の計3回。【小林多美子】


登録種別:研究活動記録
登録日時:WedMay1517:35:432013
登録者 :室井
掲載期間:20130515 - 20130815
当日期間:20130516 - 20130516