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東文研セミナー「破壊され、焼き尽くすための芸術―祭礼アートとしての造り物論―(科研「「野の芸術」論―ヴァナキュラー概念を用いた民俗学的アート研究の視座の構築」(研究代表者:菅豊)第5回研究会)」が開催されました

報告

 2020年6月20日(土)13時から東文研セミナー「破壊され、焼き尽くすための芸術―祭礼アートとしての造り物論―」が開催された。本研究会は、菅豊教授(東京大学)を研究代表とする科研プロジェクト「「野の芸術」論―ヴァナキュラー概念を用いた民俗学的アート研究の視座の構築」の第5回研究会である。
 本研究会では、塚原伸治准教授(茨城大学人文社会科学部)により、滋賀県近江八幡市で3月半ばに開催される左義長まつりに関する報告が行われた。特に祭礼に登場する「ダシ」と呼ばれる造り物を議論の主題とし、その製作から祭礼当日の取り扱い、そして祭礼後に破壊されるまでの一連の過程をアートとして捉える見方について、参加者との活発な議論が進められた。
 なお研究会当日は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う感染症予防の観点から、オンライン会議アプリケーションであるZoomを活用したリモート会議形式で開催された。

※本研究会はJSPS科研基盤B「「野の芸術」論―ヴァナキュラー概念を用いた民俗学的アート研究の視座の構築」(研究課題/領域番号19H01387)の研究成果である。

当日の様子

開催情報

■日時:6月20日(土)13:00~15:30

■開催形式:Zoomミーティング

■発表者:塚原伸治(茨城大学人文社会科学部)

■趣旨:
 滋賀県近江八幡市で3月半ばに開催される左義長まつりは、食材を用いて町内総出で制作される「ダシ」と呼ばれる造り物を、神輿のようにして担いで巡行する祭礼である。ダシの制作には毎年3~4か月を費やし、その精巧な造形は素人の制作とは思えないレベルに達している。
 ところがこれだけの労力をかけたダシは、祭礼中にダシ同士をぶつけ合う「けんか」によってぼろぼろになるまで破壊され、最終的には火をつけて焼き尽くされてしまう。残されるのは灰のみである。しかし、制作にあたる町内の人たちはそれを嫌がるのでもなく、また、「仕方がない」こととして受け入れているのではない。それどころか、そのことに興奮すらしているのである。
 この制作、破壊、焼尽という一連の儀礼の過程は、灰になることによって完成するアートとみることもできるだろう。本発表では、そのような想定のもとに、新型コロナウイルス感染症にゆれる2020年3月に自粛ムードの中で実施された左義長まつりの報告をしつつ、制作から焼尽にいたる儀礼の過程をアートとして考察したい。

■主催:「野の芸術」論研究会(科研「「野の芸術」論―ヴァナキュラー概念を用いた民俗学的アート研究の視座の構築」グループ(研究代表者:菅豊))、東京大学東洋文化研究所班研究「東アジアにおける「民俗学」の方法的課題」研究会(主任:菅豊)



登録種別:研究活動記録
登録日時:WedJul0115:45:502020
登録者 :菅・川野・藤岡
掲載期間:20200702 - 20200920
当日期間:20200620 - 20200620