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東文研シンポジウムのご案内(11月23日)

『東アジアの録音文化〜音と美をめぐって〜』
主催:東京大学東洋文化研究所「21世紀アジアの研究」超域連携研究「アジアの『美』の構築」
共催:人間文化研究連携機構研究「日本コロムビア外地録音のデ ィスコグラフィー的研究」

日時:2007年11月23日(金)10:00〜18:00
場所:工学部8号館7階716号室(東文研大会議室)

◇◇プログラム◇◇

9:30〜 受付開始
10:00〜 趣旨説明
10:10〜10:50 細川周平(国際日本文化研究センター)
「音楽テクノロジー研究史における『レコードの美学』再考」
11:00〜12:30 権トヒ(ソウル大学東洋音楽研究所)
「近代以降の韓国音楽の『美』の構築戦略」
12:30〜13:30 昼食
13:30〜15:00 李ソヨン(韓国芸術総合大学音楽院)
「植民地期朝鮮の新民謡をめぐる知識人の言説の諸相」
15:10〜16:40 山内文登(東京大学東洋文化研究所)
「『耳』の植民地化・脱植民地化:20世紀韓国朝鮮の音声の言語表象を読む」
16:50〜18:00 総合討論

※ 李・権両氏の発表は韓国語ですが通訳がつきます。東文研移転中のため、会場が狭隘で座席に限りがありますがご容赦ください。

連絡先:東京大学東洋文化研究所
      山内 文登 
      yanchy@ioc.u-tokyo.ac.jp


◇◇シンポジウム趣旨◇◇

本シンポジウムは、東京大学東洋文化研究所超域連携研究「アジアの『美』の構築」(以下「アジアの美」研究)と人間文化研究連携機構研究「日本コロムビア外地録音のディスコグラフィー的研究」(以下「外地録音」研究)の共催のもとに企画された。「アジアの美」研究としては二度目、「外地録音」研究としては三度目の研究会となる。
「アジアの美」研究は、「美」というものが社会的、政治的、経済的に、いかようにも構築されることを議論の前提として、アジア諸国の様々な位相に立ち現れる「美」の構築の現場に即しつつ、その具体的な道筋、技法、仕掛け、思惑などを比較検討することを目的に立ち上げられた。同時に、昨今の研究動向にあってはむしろ一般化し過ぎた感のある構築主義的スキーム自体を再考し、今一度「美」の本質性について語り得る新たな理論的視座の模索作業も射程に収めている。
一方、「外地録音」研究では、戦前・戦中期に日本のレコード会社が朝鮮や台湾、満洲などで大量に残した録音原盤(国立民族学博物館所蔵)をもとに、基礎研究として地域ごとのディスコグラフィーの作成を進めてきた。そして、今後の多角的な音盤研究への展開を念頭に、これまで既に二度にわたる東アジア国際学術セミナーを開催している。
本シンポジウムは、こうした二つの研究プログラムの研究課題を接合させる形で、音声にまつわる「美」について社会的構築の視座から捉え返し、さらにその先を展望する機会としたい。特に音声の記録としての「録音」を一つの参照軸としつつ、そこに関与する美的判断を含む価値評価のシステムを検討することが理論的な基調テーマとなるだろう。シンポジウムのタイトルにある「録音文化」を暫定的に概念化すれば、ある特定の音声を、商売、宣伝、教育、創作、再演、鑑賞、娯楽、収集、保存、復刻、批評、研究などの対象や素材、資源として多様に意義付けつつ、その記録・複製を生み出していく複合的な社会的プロセスといった程度の意味合いである。そして、そうしたプロセスにおいて作動する「美」についての言説や制度が分析の焦点となる。
今回は、韓国から李ソヨン氏、権ドヒ氏という二人の新進気鋭の音楽者をお招きし、特に韓国における具体的な事例についてお話いただく(なお、本シンポジウムに引き続き、国際日本文化研究センターにおいて上海や旧満洲など東アジアの他地域についても報告が行われる予定となっている)。


◇◇韓国報告者プロフィール◇◇

権トヒ(度希、Kwon Do Hee)
ソウル大学校音楽大学国楽科卒、同大学院音楽学科修・博士(国楽理論)。著書に『北韓の伝統音楽』(共著、2002)、『韓国近代音楽社会史』(単著、2004)、論文に「20世紀妓生の音楽社会史的研究」、「金昌祖散調の様式史的解明」などがある。博士論文を加筆修正して出版された『韓国近代音楽社会史』は、19世紀から20世紀前半期に至る音楽の担当者や流通の構造的変化に着目しつつ、音楽社会の近代的再編過程の社会史的記述を試みた嚆矢的著作として高く評価されている。

李ソヨン(昭●、Lee So Young)(●は口+永の合字)
ソウル大学校音楽大学卒(ピアノ)、同大学院音楽学科修士(西洋音楽理論)、韓国学中央研究院音楽学科博士(韓国音楽学)。民族音楽研究会代表。「日帝強占期の新民謡の混種性研究」と題された博士論文は、韓国の近代音楽史において初めてハイブリディティ概念を導入しつつ歴史記述と音楽分析を行った意欲的な研究である。「創作国楽」「フュージョン国楽」などハイブリッドな音楽実践への関心を背景に、韓国音楽の現代化、大衆化、グローバル化などの問題を考察してきており、そうした論考集として『韓国音楽の内面化されたオリエンタリズムを越えて』(2005)を著している。また、音楽評論家としてのキャリアは長く、『私は違った風に聴く』(1999)、『生存と自由』(2005)などの評論集も発表している。


登録種別:研究会関連
登録日時:Tue Nov 6 10:48:56 2007
登録者 :研究支援担当
掲載期間:20071106 - 20071123
当日期間:20071123 - 20071123