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平成13年度第2回定例研究会

平成13年度第2回定例研究会
日時:7月12日 午後2時
場所:東京大学東洋文化研究所 大会議室(三階)
題目:古典インド聖典解釈学派による全知者批判
報告者:片岡 啓(東洋文化研究所 助手)
討論者:永ノ尾 信悟(東洋文化研究所教授)
司会 :上村 勝彦(東洋文化研究所教授)
報告要旨
祭式文献ヴェーダにたいする解釈学(ミーマーンサー),そのひとつの流れは,注釈者シャバラ(AD 500--560頃)を経て,復注釈者クマーリラ(AD 600--650頃)によって大成される.同時にクマーリラは,当時の思想界で表面化していた問題,および,潜在的な対立を含む問題を取り上げ,バラモン教学の正統を行く解釈学の立場を示すと同時に,哲学議論に共通の場となる諸論題を整備した.クマーリラ以降,認識論・
論理学・言語哲学といった哲学・思想をめぐる論争は,クマーリラが示した解釈学派の定説を一つの軸にしながら,発展していくことになる.

全知者をめぐる論争も,クマーリラによる派手な「全知者批判」以降,各学派が解答を与えねばならない必須の論題として組み込まれることになる.ここでクマーリラが念頭においている「全知者」とは,主に仏陀である.結果として,クマーリラの仏教批判は,同時代の仏教論理学者ダルマキールティ(法称)との論争を引き起こすことになる.

後七世紀前半に生じたバラモン教学正統派と仏教の思想対立,すなわち,クマーリラとダルマキールティの論争は,これまでの研究では,一部で密接な関係が指摘されながらも,ほとんど明らかになっていない.その要因は,ひとえに,ミーマーンサー研究の遅れにある.百人以上の専門家が集う国際ダルマキールティ学会が三回を迎えるにいたったのにたいし,クマーリラ研究は,相変わらず,貧弱なままである.

本論考では,初期の作品『頌評釈』に基づいてクマーリラの全知者批判を紹介・分析するとともに,現在は散逸した後期の作品『大註』回収断片を比較することで,ダルマキールティとの論争を経たであろうクマーリラ自身の思想発展に注目したい.

登録種別:研究会関連
登録日時:Tue Jun 5 15:51:11 2001
登録者 :研究協力掛
掲載期間:20010605 - 20010712
当日期間:20010712 - 20010712