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東文研セミナー/第93回日本台湾学会定例研究会(歴史・政治・経済部会)が開催されました

日本台湾学会定例研究会(歴史・政治・経済部会)第93回

日時 :2014年7月31日(木)16:00~18:15

会場 :東京大学東洋文化研究所3階303号室大会議室(東京大学本郷キャンパス)

題目 :習近平時代の両岸関係

報告 :周志懐氏(中国社会科学院台湾研究所所長)

コメンテーター :張華氏(中国社会科学院台湾研究所助理研究員)

司会兼コメンテーター :松田康博氏(東京大学)

使用言語 :中国語

担当 :松田康博

※上記研究会は、科研基盤B(代表:松田康博)の研究会を兼ねて行いました。

 

報告

 習近平時代を迎えた中国において、対台湾政策はどのように変化するのか。また、今後の中台関係(台湾海峡両岸関係/両岸関係)はいかなる展開を見せるのか。今回のセミナーでは、中国社会科学院台湾研究所より周志懐所長を招聘し、研究者個人としての立場から同問題についての報告を依頼した。周氏は、標題を「大陸対台政策与未来両年両岸関係発展」〔大陸の対台湾政策と今後2年間の両岸関係の発展〕として報告を行った。
 周氏はまず、両岸関係の新局面を理解するための前提として、毛沢東時代から今日に至る中国の対台湾政策の連続性に注目することの重要性を説き、その要点を整理した。すなわち、鄧小平が「一国二制度」を提起し台湾の「平和統一」への道を開くと、江沢民時代には香港及びマカオの返還でその実践がなされ、胡錦濤時代には台湾の平和統一に向けた具体的な施策が次々と展開された。この流れを継承する習近平時代の政策の要点は、「中国の夢をともに叶える〔共円中国夢〕」ことを台湾の同胞に向けて訴える点や、「両岸の政治分岐を代々伝承するわけにはいかない」とする方針などに求められる。ただし、周氏は、台湾統一の試みは性急に進められるのではなく、「小さな火でゆっくりと煮詰める〔小火慢炖〕」ことになると見る。共産党と国民党の間の主要な分岐は、生活方式およびイデオロギーをめぐる問題にあるが、これは調整可能である。ただし、共産党と民進党の間の主要な違いは、国家の主権と領土の保全をめぐる問題にあり、これは調整不能である。しかし、周氏は「台湾独立」はもはや台湾の主流の思潮ではなく、将来的な台湾との平和統一を概ね楽観視しているという。
 コメンテーターの張華氏からは、周氏の講演に対する補足として、両岸の民間交流も活発化していることにより、双方の民衆が互いに対して正確なイメージを持ち始めているなどの指摘がなされた。フロアとの質疑応答では、香港情勢の台湾問題への影響について、周氏は台湾と香港は根本的に問題の性質が異なると指摘された。これと関連して、台湾との統一形式は必ずしも「一国二制度」である必要はなく、両岸双方が受容できるものであれば、新たな方案が出て来る可能性があるとの見解も示された。習近平と馬英九の会談については、実現は難しいとする一方、「両岸の指導者の会談」は可能であると指摘された。また、2014年3月の「太陽花運動」の両岸関係への影響については、張華氏より、大勢に影響はないだろうとの見方が示された。

当日の様子

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登録種別:研究活動記録
登録日時:TueAug510:04:442014
登録者 :松田・野久保(撮影)・藤岡
掲載期間:20140731 - 20141031
当日期間:20140731 - 20140731