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東文研セミナー「日中戦争期の周作人――文化的ナショナリズムの逆説」が開催されました

報告

  2016年7月4日に橋本悟先生(メリーランド大学 Assistant Professor)をお招きして、東文研セミナー「日中戦争期の周作人―文化的ナショナリズムの逆説」が開催されました。
  このセミナーにおいて橋本先生は、周作人をより広い文脈に置き、文学とナショナリズムの複雑な関係について話されました。周作人は、日中戦争期の著作が対日協力という烙印を押されたために、国民文学としての中国文学のなかでは十分に論じられませんでした。橋本先生は、五四期から三十年代さらには戦後の著作を一貫して論じることで、単純な対日協力という理解では届かない、普遍を目指す文学という視座を出されました。これは前近代の「文」の普遍性と切り結びながら、和辻哲郎に代表される近代日本の文化ナショナリズムとは異なるものであることが指摘されました。当日は多数の方々に来場いただき、学問的に意義深い質疑応答がなされたことを付言しておきます。

当日の様子

開催情報

【日時】 2016年7月4日(月)17:00より

【会場】 東京大学 東洋文化研究所 3階 大会議室

【題目】 日中戦争期の周作人――文化的ナショナリズムの逆説

【発表者】 橋本悟(メリーランド大学・Assistant Professor)

【司会】 中島 隆博 (東京大学東洋文化研究所・教授)

【使用言語】 日本語

【概要】
日中戦争期(1937−45)の周作人の著作は、作家の対日協力という烙印のために、これまで国民文学を単位とする研究の枠組みでは扱いにくい対象でありつづけてきた。とくに作者の五四期から三十年代にいたる著作との一貫性において、その意義を検討するという作業は不十分にしかなされてこなかった。本セミナーでは、周作人が日中戦争期に著した小品文や評論を、その五四期以降の作品との連続性のなかで読解することで、彼が構想した新文学における「文学」と「ネイション」との逆説的な関係性について論じたい。その上で、普遍主義的な「文」の伝統の記憶の上に、特殊主義的な国民「文学」を形成した東アジアの文学的近代性というより広い枠組みにおいて、その意義を考察してみたい。

担当:中島



登録種別:研究活動記録
登録日時:ThuJul712:30:362016
登録者 :中島・野久保(撮影)・藤岡
掲載期間:20160704 - 20161004
当日期間:20160704 - 20160704