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佐藤 仁 准教授が日本学術振興会賞および日本学士院学術奨励賞を受賞

佐藤 仁 准教授の「『資源』の認識と分配に着目した国際協力研究」に対する日本学術振興会賞および日本学士院学術奨励賞(※)の授賞式が 2月10日、秋篠宮妃両殿下ご臨席のもと上野の日本学士院にて行われました(受賞のお知らせはこちら)。


当日、まず日本学術振興会賞について、安西祐一郎・日本学術振興会理事長の式辞にはじまり、野依良二・審査会委員長の審査経過報告、贈呈式が行われました。

続いて、日本学士院学術奨励賞について、常脇恒一郎・選考委員会委員長による審査経過報告があり、授与式、秋篠宮殿下のお言葉、下村博文文部科学大臣(櫻田義孝副大臣が代読)の祝辞がありました。

その後、全受賞者を代表して佐藤准教授が挨拶をしました。

ここに、その全文を掲載いたします。


授賞式挨拶

  秋篠宮同妃両殿下はじめ御臨席の皆様、受賞者を代表いたしまして、一言、お礼とご挨拶申し上げます。本日は、私どもの研究に対して、この上なく名誉な賞をいただき、大変光栄に存じます。野依審査会委員長をはじめとする日本学術振興会賞 審査会委員の先生方、常脇選考委員長をはじめとする日本学士院 学術奨励賞 選考委員の先生方、そして私どもを御推薦いただきました皆様方に、深く感謝申し上げます。順調なときには気づかないものですが、研究というのは心と体が健やかであって初めて成り立つものです。ここまで健康に育ててくれた両親、つらいときに支えてくれた家族や友人たちに受賞者を代表し、心から感謝申し上げます。

  祝福と感謝に満ちたこの場所で、私はあえてここにいない人々、この場に来られなかった人々に思いをはせたいと思います。「なぜお前だけが」と恨み節半分の研究仲間、研究の面白さや厳しさを教えてくれた学部時代や留学先の指導教員、本を通じて出会った今はなき偉大な先人たち。励まされる例ばかりではありません。経済的な理由から研究を断念せざるをえなかった友人、職業としての研究者に希望がもてなくなっている後輩や学生たちの顔も浮かびます。誰を思い浮かべるかは、人それぞれでしょう。私にとって特に想起せざるをえないのは、自分がフィールドワークを行ってきたタイやカンボジアの貧しい農村に暮らす人々です。タイ奥地の少数民族の村で住み込み調査を行って書き上げた最初の著作『稀少資源のポリティクス』は、題目の仰々しさとは裏腹に、小学校も出ていない農民たちの日常を観察することから組み立てられています。

  私たちの研究は一体、いつ、どこで、どんな人々と接点をもつのでしょうか。研究の世界では、その入り口において自然界や社会での出来事をデータとして論文に取り込みます。その一方で、研究の出口、つまり研究の結果が社会のどこに返っていくのかについては想像力に乏しいところがあるのではないでしょうか。このたびの受賞を機に、研究そのものの価値を増していく決意はもちろん、社会に支えられているからこその学術の役割を考えたいと、気持ちを新たにしています。

  権力や富で物事が決まることの多い今日の世界で、アイデアが力をもつことは、残念ながら決して一般的とはいえません。世界の多くの国では、いまだに貧困と暴力が蔓延し、アイデアを育み、そこに力を与えていくことを許しません。それができる日本という幸運な国に生まれ、恵まれた教育環境で育ったからこそ、私たちは今日の日を迎えることができました。このたびの励ましを追い風に、私たちは後進の目標になるような研究者として一層羽ばたいていこうと思います。ありがとうございました。
2014年2月10日
東京大学東洋文化研究所 佐藤仁

 


佐藤 仁 准教授が日本学術振興会賞および日本学士院学術奨励賞を受賞
 
佐藤 仁 准教授が日本学術振興会賞および日本学士院学術奨励賞を受賞
 
佐藤 仁 准教授が日本学術振興会賞および日本学士院学術奨励賞を受賞


 日本学術振興会賞は独創的・先駆的な研究に従事する45歳未満の若手研究者に贈られる賞であり、日本学士院学術奨励賞は左記受賞者の中から、顕彰にして特に今後の研究を奨励される研究者に贈られる賞です。

佐藤 仁 准教授が日本学術振興会賞および日本学士院学術奨励賞を受賞


追加情報 (2014年3月17日):
本受賞に関するニュースが複数の新聞にて取り上げられています。詳しくはこちらをご覧ください。



登録種別:研究活動記録
登録日時:SunMar615:55:582014
登録者 :佐藤・阪原・野久保(撮影)・藤岡
掲載期間:20140210 - 20140510
当日期間:20140210 - 20140210