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2018年度 第4回 定例研究会「歴史書と法廷文書から「自己」を探る:18世紀オスマン帝国のある中級裁判官のライフヒストリー」(秋葉淳 准教授)が開催されました

報告

  2018年11月8日(木)14時より、2018年度第4回定例研究会が大会議室にて開催された。発表者は秋葉淳准教授で、「歴史書と法廷文書から「自己」を探る:18世紀 オスマン帝国のある中級裁判官のライフヒストリー」と題する研究報告が行われた。約30名の参加者があり、オスマン帝国の裁判官制度の特徴や、歴史家であり裁判官でもあるシェムダーニーザーデの遺した歴史書・法廷文書に現れる自己イメージについて、活発な議論が交わされた。

当日の様子

開催情報

日時:2018年11月8日(木)14時~16時

会場:東京大学 東洋文化研究所 3階 大会議室

題目:歴史書と法廷文書から「自己」を探る:18世紀オスマン帝国のある中級裁判官のライフヒストリー

報告者:秋葉淳(東京大学東洋文化研究所・准教授)

司会:長澤栄治(東京大学東洋文化研究所・教授)

使用言語:日本語

発表要旨:
 報告者は長年にわたってオスマン帝国の裁判官(カーディー)について、とくにその徴税請負制的な任命制度と、そこで実際に裁判官職を担う代理(ナーイブ)の出自や職業生活を研究対象とし、その18世紀から19世紀半ばまでの変遷を著書にまとめる作業を進行中である。もう一つの著書の企画は、オスマン社会における「エゴドキュメント」とリテラシーに関するもので、その二つの切り口からこれまで報告者が行ってきた一連の研究と現在進行中の研究をまとめる予定である。本報告では、これらの計画の概要を説明したのち、具体的には両プロジェクトに関わるテーマを取り上げる。
 本報告で焦点を当てるのは、18世紀オスマン帝国の歴史家かつ裁判官シェムダーニーザーデ・フンドゥクルル・スレイマンという人物である。彼は独自の情報や率直な社会批判を含むその年代記によって知られているが、他方で彼は裁判官、正確にはその代理(ナーイブ)として生計を立てていた。その意味で、シェムダーニーザーデはこれまでオスマン帝国史の伝記的研究で扱われてきた高位高官ではなく、中級官僚というべき地位にあった人物である。彼は多作ではなかったが、歴史書の異なるヴァージョンが存在し、完成版に至るまでの過程をある程度追うことができる。また、彼が裁判官を務めていたアナトリアの町の法廷台帳が数冊残されており、そこに彼の残した刻印を見いだすことができる。これらの史料を用いて、この歴史家=裁判官のライフヒストリーを同時代の社会の中に位置付けるとともに、彼の自己認識や個性を析出することを試みる。

担当:秋葉



登録種別:研究活動記録
登録日時:MonNov1214:17:162018
登録者 :秋葉・藏本・藤岡・野久保(撮影)・田川
掲載期間:20181112 - 20190208
当日期間:20181108 - 20181108