News

教員の新著が刊行されました
松田康博・清水麗編著『現代台湾の政治経済と中台関係』(晃洋書房)

編著者からの紹介

  私(松田)は、総統・副総統および立法委員選挙が行われた2016年1月16日夜、蔡英文率いる民進党が空前の大勝利を収めた時、開票速報を現地で眺めながら、さまざまな思いにふけっていた。ちょうど8年前に、同じように馬英九率いる国民党が大勝利を収めた時と、いったい何が違うのか、何が同じなのか。これはスイングなのか、それとも何かのトレンドなのか。台湾の挑戦は成功するのか、それとも台湾は、もはや中国から逃れられない運命にあるのか。巨大化する中国のすぐ側の島で起きたこの政治変動に対して、いったいどのような説明をつけることができるのか。
  私の疑問は、本書の執筆メンバー全員が共有している疑問でもある。我々は、日本貿易振興機構アジア経済研究所の研究グループを引き継いで、2009年4月に「両岸関係研究小組」(班研究「中台関係の総合的研究」)という研究グループを組織し、科学研究費基盤B「繁栄と自立のディレンマ――ポスト民主化台湾の国際政治経済学」(2010-2012年度)、科学研究費基盤B「和解なき安定――民主成熟期台湾の国際政治経済学」(2013-2015年度)、科学研究費基盤A「対中依存構造化と中台のナショナリズム――ポスト馬英九期台湾の国際政治経済学」(2016-2019年度)の研究プロジェクトを進めてきた。ここで、日本学術振興会に感謝を申し上げたい。
  我々の具体的な活動としては、訪問団を組織して台湾で聞き取り調査を行ったり、北京や上海など主要な中国の研究機関や大学と研究交流を行ったり、米国の研究機関と合同シンポジウムを開催したり、有力な研究者を招聘して研究会を行ったりなどがある。我々は、みな長年台湾・中国研究に携わってきた地域研究者である。地域研究の醍醐味は、単なる文献調査のみならず、現地で表情をうかがいながら当事者や研究者仲間から話を聞くことにある。本書の中で直接の引用はほとんどされていないが、我々は馬英九総統、蔡英文民進党主席、王毅国務院台湾事務辦公室主任を含め、多くの当事者・研究者への面会・聞き取りを行って、文献の向こうにある生身の現実と向き合ってきた(「両岸関係研究小組」の活動情況については、http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~ymatsuda/jp/project.htmlを参照)。もちろん選挙活動の中に分け入って、社会の深層変化を体感できることもまた楽しい瞬間である。こうした「研究の喜び」を、我々は読者諸氏とともに分かち合いたいと考えている。
  本書は、これらのプロジェクトの成果物であり、冒頭の疑問に答えようとしたプロセスであり、結果である。読者諸氏の建設的なご批判を賜りたい。また、本書各論文の大部分は、本研究プロジェクトの中間プロダクトとしてこれまでに各自が発表した論考に大幅な加筆、修正を施した決定版である。
(本書・「あとがき」より)


目次等、詳細情報は教員の著作コーナーに掲載した記事をご覧ください。



登録種別:研究活動記録
登録日時:Mon Apr 30 12:19:31 2018
登録者 :松田・清水・中村・野久保(撮影)・藤岡
掲載期間:20180430 - 20180730
当日期間:20180430 - 20180430