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佐藤仁教授の著書『野蛮から生存の開発論ー越境する援助のデザイン』(ミネルヴァ書房)が第21回国際開発大来賞を受賞しました

佐藤仁教授の著書『野蛮から生存の開発論ー越境する援助のデザイン』(ミネルヴァ書房)が第21回国際開発大来賞を受賞しました。

下記のページより詳細がご覧いただけます。

一般財団法人 国際開発機構 第21回国際開発大来賞 受賞作品


上記ページ「選評」より:
 読者に「開発研究の面白さ」を伝えたいというのが本書の目的であり、そもそも「開発研究」という領域が「学問として成り立つのか」という問いかけに答えたいというのが筆者の思いである。本書は「第Ⅰ部 開発・援助の知的技術」、「第Ⅱ部 開発・援助の想定外」、そして「第Ⅲ部 開発・援助と日本の生い立ち」の3部から成り立っており、さまざまなテーマを取り上げながら、開発の意味や技法、そして開発研究という学問のあり方について縦横無尽に論じたエッセー集である。
 本書の魅力は、なんといっても「開発研究」というテーマも方法も確立していない領域に果敢に取り組んだ点にある。「開発研究」の特徴は、開発にかかわる「さまざまな問題の発見」と「課題の解決」を求める点に特徴がある。「問題」が先で「方法」が後という学問領域であるため、既成のディシプリンを機械的に応用するのではなく、問題の発見と同時に分析方法自身をも模索せざるをえない。なんともやっかいな研究分野である。本書の第Ⅰ部と第Ⅱ部で、筆者はアマルティア・セン、アルバート・ハーシュマン、ジェームズ・スコットといった「越境人」の議論から得られたインスピレーションを批判的かつ精力的に吸収し、生活の質の評価、事例分析の意義、分業のもたらすリスク、「想定外」による開発の失敗、被災者へ援助物資の分配方法、「資源の呪い」の克服手段といったさまざまなテーマを取り上げている。どの章からも、従来見過ごされてきた開発にかかわる重要な論点が浮かび上がってきており、見事である。
 第Ⅲ部でとりあげたテーマは、Ⅰ部およびⅡ部とは関連はなく、我が国の援助史・援助体制をとりあげたものである。1950年代に着目し、「賠償に先立つ経済協力」あるいは「復興を中心に見据えた経済協力」という理念の系譜をえぐり出した点は、歴史研究としても見るべきものがある。
  本書は開発研究の一つのすぐれた出発点として高く評価できる。筆者には、今後さらに分析概念に磨きをかけてわが国の開発研究を新たな高みへと飛躍させてくれることを期待したい。
(法政大学教授 絵所 秀紀)

 


受賞作品(佐藤 仁 著 『野蛮から生存の開発論―越境する援助のデザイン』)の紹介

佐藤仁研究室



登録種別:研究活動記録
登録日時:FriDec1512:21:272017
登録者 :佐藤・藤岡
掲載期間:20171215 - 20180315
当日期間:20171215 - 20171215