「イスラームの女性観-男女の優劣をめぐる啓示解釈を中心に―」
第6回共催セミナーが6月24日(木)に開催されました。
20人近くの皆様がご参集下さり、ネパール産のコーヒー、サウジアラビア産のなつめやしを囲みつつ、
報告を伺いました。
音声と画像を交えつつ、精力的なご報告をして頂き、参加者一同、集中力を切らすことなく、
報告に耳を傾けました。
以下、盛会の様子をご報告させていただきます。
日時:6月24日(木)午後5時~6時
場所:東京大学東洋文化研究所 1階ロビー
テーマ:「イスラームの女性観――男女の優劣をめぐる啓示解釈を中心に」
報告者:後藤絵美(日本学術振興会、特別研究員)
セミナー内容
イスラームは女性に厳しい宗教なのか、それとも優しい宗教なのか。
イスラームの女性観をムスリム知識人の言葉から検討していく、という内容でした。
「男性は女性のカッワームである」「男性は女性の一段上にある」。
クルアーン(コーラン)のこうした言葉について、近代から現代に至るまで、さまざまな解釈がなされてきました。
ムスリム知識人の間では近代に入っても、この言葉を解釈するにあたって、
「男性は女性よりも優位にある」ことを示したものだ、という見方が優勢でした。
19世紀に入り、この流れを変えたのが、ムハンマド・アブドゥでした。
彼は、男性は女性よりも腕力や体力面でその優れている、と認めつつも、
その優位性ゆえに、男性が家族を保護し、指揮する役目を担っているという見方を示しました。
すなわち、彼は男女の格差を夫婦関係に限定することで、それまでの解釈を大きく変えたのでした。
その後、20世紀に入り、サイイド・クトゥブという思想家は
「男女は『同等』であるが、『同一』ではない」という見解を示し、
家族という社会の重要な集団の中で、男女が異なる役割を担っていることを示すものだという解釈を提示しました。
20世紀になると、アミーナ・ワドゥードという在米の女性学者が、クトゥブの見解を受け継ぎつつ、
更に斬新な解釈を打ち出しました。
男女は『同等』であり、男女の違いは女性のみが子供を妊娠し、出産することができる、という点である。
このとき、「男性は女性のカッワームである」という言葉は、女性を精神的、知的、物質的に女性をサポートすることである。
しかし、これらは責務ではなく、あくまで個々人が心がけるべき、姿勢である、と。
学者の解釈には、実際のイスラームの女性観がどのくらい反映されているのか、
解釈の変容はイスラーム社会の変容とどの程度、相互関係があるのか、など、質問がなされました。
ワドゥードの解釈が現代のイスラームにおいて必ずしも優勢であるわけではなく、
今でも様々な解釈があるそうです。
ムスリム女性の社会進出や服装の変化といった、社会の変化を、
宗教言説の変化からも今後は検討していきたい、というのが、今後の展望だそうです。
次回の第7回東文研・ASNET共催セミナーは「エミール・ガレと『オリエント』」と題して、7月1日17時から開催されます。
多くの皆様のご参加をお待ちしております。
[安田佳代]