データベース『世界と日本』
戦後日本政治・国際関係データベース
東京大学東洋文化研究所 田中明彦研究室

[文書名] 化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約(化学兵器禁止条約)

[場所] パリ
[年月日] 1993年1月13日署名,1995年4月28日国会承認,1997年4月29日効力発生
[出典] 外務省条約局,条約集(多数国間条約)平成9年,175−223頁.
[備考] 
[全文]

化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約

平成五年一月十三日 パリで作成
平成九年四月二十九日 効力発生
平成五年一月十三日 署名
平成七年四月二十八日 国会承認
平成七年九月十二日 批准の閣議決定
平成七年九月十五日 批准書寄託
平成九年四月二十一日 公布(条約第三号)
平成九年四月二十一日 告示(外務省告示第一四七号)
平成九年四月二十九日 我が国について効力発生
前文

この条約の締約国は、

厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小(あらゆる種類の大量破壊兵器の禁止及び廃棄を含む。)に向けての効果的な進展を図ることを決意し、

国際連合憲章の目的及び原則の実現に貢献することを希望し、

国際連合総会が、千九百二十五年六月十七日にジュネーヴで署名された窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス及び細菌学的手段の戦争における使用の禁止に関する議定書(以下「千九百二十五年のジュネーヴ議定書」という。)の原則及び目的に反するすべての行為を繰り返し非難してきたことを想起し、

この条約は、千九百二十五年のジュネーヴ議定書並びに千九百七十二年四月十日にロンドン、モスクワ及びワシントンで署名された細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約の原則及び目的並びに同議定書及び同条約に基づく義務を再確認するものであることを認識し、

細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約第九条に規定する目標に留意し、

全人類のために、千九百二十五年のジュネーヴ議定書に基づく義務を補完するこの条約の実施によって化学兵器の使用の可能性を完全に無くすことを決意し、

戦争の方法としての除草剤の使用の禁止が関連する協定及び国際法の原則において定められていることを認識し、

化学の分野における成果は人類の利益のためにのみ使用されるべきであることを考慮し、

すべての締約国の経済的及び技術的発展を促進するため、この条約によって禁止されていない目的のために、化学に関する活動の分野における国際協力並びに科学的及び技術的情報の交換並びに化学物質の自由な貿易を促進することを希望し、

化学兵器の開発、生産、取得、貯蔵、保有、移譲及び使用の完全かつ効果的な禁止並びに廃棄が、これらの共通の目的を達成するために必要な措置であることを確信して、

次のとおり協定した。

第一条 一般的義務

締約国は、いかなる場合にも、次のことを行わないことを約束する。

(a) 化学兵器を開発し、生産その他の方法によって取得し、貯蔵し若しくは保有し又はいずれかの者に対して直接若しくは間接に移譲すること。

(b) 化学兵器を使用すること。

(c) 化学兵器を使用するための軍事的な準備活動を行うこと。

(d) この条約によって締約国に対して禁止されている活動を行うことにつき、いずれかの者に対して、援助し、奨励し又は勧誘すること。

締約国は、この条約に従い、自国が所有し若しくは占有する化学兵器又は自国の管轄若しくは管理の下にある場所に存在する化学兵器を廃棄することを約束する。

締約国は、この条約に従い、他の締約国の領域内に遺棄したすべての化学兵器を廃棄することを約束する。

締約国は、この条約に従い、自国が所有し若しくは占有する化学兵器生産施設又は自国の管轄若しくは管理の下にある場所に存在する化学兵器生産施設を廃棄することを約束する。

締約国は、暴動鎮圧剤を戦争の方法として使用しないことを約束する。

第二条 定義及び基準

この条約の適用上、

「化学兵器」とは、次の物を合わせたもの又は次の物を個別にいう。

(a) 毒性化学物質及びその前駆物質。ただし、この条約によって禁止されていない目的のためのものであり、かつ、種類及び量が当該目的に適合する場合を除く。

(b) 弾薬類及び装置であって、その使用の結果放出されることとなる(a)に規定する毒性化学物質の毒性によって、死その他の害を引き起こすように特別に設計されたもの

(c) (b)に規定する弾薬類及び装置の使用に直接関連して使用するように特別に設計された装置

「毒性化学物質」とは、生命活動に対する化学作用により、人又は動物に対し、死、一時的に機能を著しく害する状態又は恒久的な害を引き起こし得る化学物質(原料及び製法のいかんを問わず、また、施設内、弾薬内その他のいかなる場所において生産されるかを問わない。)をいう。
(この条約の実施上、検証措置の実施のために特定された毒性化学物質は、化学物質に関する附属書の表に掲げる。)

「前駆物質」とは、毒性化学物質の生産(製法のいかんを問わない。)のいずれかの段階で関与する化学反応体をいうものとし、二成分又は多成分の化学系の必須成分を含む。
(この条約の実施上、検証措置の実施のために特定された前駆物質は、化学物質に関する附属書の表に掲げる。)

「二成分又は多成分の化学系の必須成分」(以下「必須成分」という。)とは、最終生成物の毒性を決定する上で最も重要な役割を果たし、かつ、二成分又は多成分の化学系の中で他の化学物質と速やかに反応する前駆物質をいう。

「老朽化した化学兵器」とは、次のものをいう。

(a) 千九百二十五年より前に生産された化学兵器

(b) 千九百二十五年から千九百四十六年までの間に生産された化学兵器であって、化学兵器として使用することができなくなるまでに劣化したもの

「遺棄化学兵器」とは、千九百二十五年一月一日以降にいずれかの国が他の国の領域内に当該他の国の同意を得ることなく遺棄した化学兵器(老朽化した化学兵器を含む。)をいう。

「暴動鎮圧剤」とは、化学物質に関する附属書の表に掲げていない化学物質であって、短時間で消失するような人間の感覚に対する刺激又は行動を困難にする身体への効果を速やかに引き起こすものをいう。

「化学兵器生産施設」とは、

(a) 千九百四十六年一月一日以降のいずれかの時に、次の(i)に該当するものとして又は次の(ii)のために設計され、建造され又は使用された設備及びこれを収容する建物をいう。

(i) 化学物質の生産段階(「技術の最終段階」)の一部であって、当該設備が稼働している時に物質の流れが次のいずれかの化学物質を含むもの

(1) 化学物に関する附属書の表1に掲げる化学物

(2) 化学兵器のために使用され得る他の化学物質であって、締約国の領域内又はその管轄若しくは管理の下にあるその他の場所において、この条約によって禁止されていない目的のためには年間一トンを超える用途がないもの

(ii) 化学兵器の充填(特に、化学物質に関する附属書の表1に掲げる化学物質の弾薬類、装置又はばらの状態で貯蔵するための容器への充填、組立て式の二成分型弾薬類及び装置の部分を構成する容器への充填、組立て式の単一成分型弾薬類及び装置の部分を構成する化学物質充填子爆弾弾薬類への充填並びに充填された容器及び化学物質充填子爆弾弾薬類の弾薬類及び装置への搭載を含む。)

(b) もっとも、次のものを意昧するものではない。

(i) (a)(i)に規定する化学物質を合成するための生産力能力を有する施設であって当該が一トン未満のもの

(ii) (a)(i)に規定する化学物質をこの条約によって禁止されていない目的のための活動の不可避の副産物として生産し又は生産した施設。ただし、当該化学物質が総生産量の三パーセントを超えないこと並びに当該施設が実施及び検証に関する附属書(以下「検証附属書」という。)に従って申告及び査察の対象となることを条件とする。

(iii) この条約によって禁止されていない目的のために化学物質に関する附属書の表1に掲げる化学物質を生産する検証附属書第六部に規定する単一の小規模な施設

「この条約によって禁止されていない目的」とは、次のものをいう。

(a) 工業、農業、研究、医療又は製薬の目的その他の平和的目的

(b) 防護目的、すなわち、毒性化学物質及び化学兵器に対する防護に直接関係する目的

(c) 化学兵器の使用に関連せず、かつ、化学物質の毒性を戦争の方法として利用するものでない軍事的目的

(d) 国内の暴動の鎮圧を含む法の執行のための目的

10 「生産能力」とは、関係する施設において実際に使用されている技術的工程又はこの工程がまだ機能していない場合には使用される予定の技術的工程に基づいて特定の化学物質を一年間に製造し得る量をいう。生産能力は、標示された能力又はこれが利用可能でない場合には設計上の能力と同一であるとみなす。標示された能力は、生産施設にとっての最大量を生産するための最適な条件の下における生産量であって、一又は二以上の実験によって証明されたものとする。設計上の能力は、標示された能力に対応する理論的に計算された生産量とする。

11 「機関」とは、第八条の規定に基づいて設立する化学兵器の禁止のための機関をいう。

12 第六条の規定の適用上、

(a) 化学物質の「生産」とは、化学反応により化学物質を生成することをいう。

(b) 化学物質の「加工」とは、化学物質が他の化学物質に転換することのない物理的な工程(例えば、調合、抽出、精製)をいう。

(c) 化学物質の「消費」とは、化学物質が化学反応により他の化学物質に転換することをいう。

第三条 申告

締約国は、この条約が自国について効力を生じた後三十日以内に、機関に対して申告を行うものとし、当該申告において、

(a) 化学兵器に関し、

(i) 自国が化学兵器を所有するか否か若しくは占有するか否か又は自国の管轄若しくは管理の下にある場所に化学兵器が存在するか否かを申告する。

(ii) 検証附属書第四部(A)の1から3までの規定に従い、自国が所有し若しくは占有する化学兵器又は自国の管轄若しくは管理の下にある場所に存在する化学兵器の正確な所在地、総量及び詳細な目録を明示する。ただし、(iii)に規定する化学兵器を除く。

(iii) 検証附属書第四部(A)4の規定に従い、他の国が所有し及び占有し、かつ、他の国の管轄又は管理の下にある場所に存在する化学兵器であって、自国の領域内にあるものを報告する。

(iv) 千九百四十六年一月一日以降自国が直接又は間接に化学兵器を移譲したか否か又は受領したか否かを申告し、及び検証附属書第四部(A)5の規定に従って化学兵器の移譲又は受領について明示する。

(v) 検証附属書第四部(A)6の規定に従い、自国が所有し若しくは占有する化学兵器又は自国の管轄若しくは管理の下にある場所に存在する化学兵器の廃棄のための全般的な計画を提出する。

(b) 老朽化した化学兵器及び遺棄化学兵器に関し、

(i) 自国の領域内に老朽化した化学兵器を有するか否かを申告し、及び検証附属書第四部(B)3の規定に従ってすべての入手可能な情報を提供する。

(ii) 自国の領域内に遺棄化学兵器が存在するか否かを申告し、及び検証附属書第四部(B)8の規定に従ってすべての入手可能な情報を提供する。

(iii) 他の国の領域内に化学兵器を遺棄したか否かを申告し、及び検証附属書第四部(B)10の規定に従ってすべての入手可能な情報を提供する。

(c) 化学兵器生産施設に関し、

(i) 千九百四十六年一月一日以降のいずれかの時に、自国が化学兵器生産施設を所有し若しくは占有するか否か若しくは所有し若しくは占有していたか否か又は自国の管轄若しくは管理の下にある場所に化学兵器生産施設が存在するか否か若しくは存在していたか否かを申告する。

(ii) 検証附属書第五部1の規定に従い、千九百四十六年一月一日以降のいずれかの時に、自国が所有し若しくは占有し若しくは所有していた若しくは占有していた化学兵器生産施設又は自国の管轄若しくは管理の下にある場所に存在し若しくは存在していた化学兵器生産施設を明示する。ただし、(iii)に規定する化学兵器生産施設を除く。

(iii) 検証附属書第五部2の規定に従い、千九百四十六年一月一日以降のいずれかの時に、他の国が所有し及び占有し又は所有していた及び占有していた化学兵器生産施設であって、他の国の管轄又は管理の下にある場所に存在し又は存在していたもの(自国の領域内にあるものに限る。)を報告する。

(iv) 千九百四十六年一月一日以降自国が直接又は間接に化学兵器の生産のための設備を移譲したか否か又は受領したか否かを申告し、及び検証附属書第五部の3から5までの規定に従って当該設備の移譲又は受領について明示する。

(v) 検証附属書第五部6の規定に従い、自国が所有し若しくは占有する化学兵器生産施設又は自国の管轄若しくは管理の下にある場所に存在する化学兵器生産施設の廃棄のための全般的な計画を提出する。

(vi) 検証附属書第五部1(i)の規定に従い、自国が所有し若しくは占有する化学兵器生産施設又は自国の管轄若しくは管理の下にある場所に存在する化学兵器生産施設の閉鎖のためにとるべき措置を明示する。

(vii) 検証附属書第五部7の規定に従い、自国が所有し若しくは占有する化学兵器生産施設又は自国の管轄若しくは管理の下にある場所に存在する化学兵器生産施設を一時的に化学兵器の廃棄施設に転換する場合には、そのための全般的な計画を提出する。

(d) 他の施設に関し、自国が所有し若しくは占有する施設又は自国の管轄若しくは管理の下にある場所に存在する施設であって、千九百四十六年一月一日以降主に化学兵器の開発のために設計され、建設され又は使用されたものの正確な所在地並びに活動の性質及び全般的な範囲を明示する。この申告には、特に、実験施設及び試験評価場を含める。

(e) 暴動鎮圧剤に関し、暴動の鎮圧のために保有する化学物質の化学名、構造式及びケミカル・アブストラクツ・サービス(以下「CAS」という。)登録番号が付されている場合には当該番号を明示する。この申告は、その内容に変更が生じた後三十日以内に改定する。

この条の規定及び検証附属書第四部の関連規定は、千九百七十七年一月一日前に締約国の領域内に埋められた化学兵器であって引き続き埋められたままであるもの又は千九百八十五年一月一日前に海洋に投棄された化学兵器については、当該締約国の裁量により適用しないことができる。

第四条 化学兵器

この条の規定及びその実施のための詳細な手続は、締約国が所有し若しくは占有するすべての化学兵器又はその管轄若しくは管理の下にある場所に存在するすべての化学兵器について適用する。ただし、検証附属書第四部(B)の規定が適用される老朽化した化学兵器及び遺棄化学兵器を除く。

この条の規定を実施するための詳細な手続は、検証附属書に定める。

1に規定する化学兵器が貯蔵され又は廃棄されるすべての場所は、検証附属書第四部(A)の規定に従い、現地査察及び現地に設置する機器による監視を通じた体系的な検証の対象とする。

締約国は、現地査察を通じた申告の体系的な検証のため、前条1(a)の規定に基づく申告を行った後直ちに1に規定する化学兵器へのアクセスを認める。締約国は、その後、当該化学兵器のいずれも移動させてはならないものとし(化学兵器の廃棄施設への移動を除く。)、体系的な現地検証のため、当該化学兵器へのアクセスを認める。

締約国は、現地査察及び現地に設置する機器による監視を通じた体系的な検証のため、自国が所有し若しくは占有する化学兵器の廃棄施設及びその貯蔵場所又は自国の管轄若しくは管理の下にある場所に存在する化学兵器の廃棄施設及びその貯蔵場所へのアクセスを認める。

締約国は、検証附属書並びに合意された廃棄についての比率及び順序(以下「廃棄の規律」という。)に従い、1に規定するすべての化学兵器を廃棄する。廃棄は、この条約が自国について効力を生じた後二年以内に開始し、この条約が効力を生じた後十年以内に完了する。締約国は、当該化学兵器をより速やかに廃棄することを妨げられない。

締約国は、次のことを行う。

(a) 検証附属書第四部(A)29の規定に従い、1に規定する化学兵器の廃棄のための詳細な計画を各年の廃棄期間の開始の遅くとも六十日前までに提出すること。その詳細な計画には、当該年の廃棄期間中に廃棄するすべての貯蔵されている化学兵器を含めるものとする。

(b) 1に規定する化学兵器の廃棄のための自国の計画の実施状況に関する申告を毎年、各年の廃棄期間の満了の後六十日以内に行うこと。

(c) 廃棄の過程が完了した後三十日以内に、1に規定するすべての化学兵器を廃棄したことを証明すること。

締約国は、6に規定する十年の廃棄のための期間が経過した後にこの条約を批准し又はこの条約に加入する場合には、1に規定する化学兵器をできる限り速やかに廃棄する。当該締約国のための廃棄の規律及び厳重な検証の手続については、執行理事会が決定する。

化学兵器に関する冒頭申告の後に締約国がその存在を知った化学兵器については、検証附属書第四部(A)の規定に従って、報告し、保全し及び廃棄する。

10 締約国は、化学兵器の輸送、試料採取、貯蔵及び廃棄に当たっては、人の安全を確保し及び環境を保護することを最も優先させる。締約国は、安全及び排出に関する自国の基準に従って、化学兵器の輸送、試料採取、貯蔵及び廃棄を行う。

11 締約国は、他の国が所有し若しくは占有する化学兵器又は他の国の管轄若しくは管理の下にある場所に存在する化学兵器を自国の領域内に有する場合には、この条約が自国について効力を生じた後一年以内にこれらの化学兵器が自国の領域から撤去されることを確保するため、最大限度の努力を払う。これらの化学兵器が一年以内に撤去されない場合には、当該締約国は、機関及び他の締約国に対し、これらの化学兵器の廃棄のために援助を提供するよう要請することができる。

12 締約国は、二国間で又は技術事務局を通じて化学兵器の安全かつ効率的な廃棄のための方法及び技術に関する情報又は援助の提供を要請する他の締約国に対して協力することを約束する。

13 機関は、この条の規定及び検証附属書第四部(A)の規定に従って検証活動を行うに当たり、化学兵器の貯蔵及び廃棄の検証に関する締約国間の二国間又は多数国間の協定との不必要な重複を避けるための措置を検討する。
このため、執行理事会は、次のことを認める場合には、当該二国間又は多数国間の協定に従って実施する措置を補完する措置に検証を限定することを決定する。

(a) 当該二国間又は多数国間の協定の検証に関する規定がこの条及び検証附属書第四部(A)の検証に関する規定に適合すること。

(b) 当該二国間又は多数国間の協定の実施によってこの条約の関連規定の遵守が十分に確保されること。

(c) 当該二国間又は多数国間の協定の締約国がその検証活動について機関に対し常時十分な情報の提供を行うこと。

14 執行理事会が13の規定に従って決定する場合には、機関は、13に規定する二国間又は多数国間の協定の実施を監視する権利を有する。

15 13及び14のいかなる規定も、締約国が前条、この条及び検証附属書第四部(A)の規定に従って申告を行う義務に影響を及ぼすものではない。

16 締約国は、自国が廃棄の義務を負う化学兵器の廃棄の費用を負担する。また、締約国は、執行理事会が別段の決定を行う場合を除くほか、当該化学兵器の貯蔵及び廃棄の検証の費用を負担する。執行理事会が13の規定に従い機関の検証措置を限定することを決定した場合には、機関が行う補完的な検証及び監視の費用については、第八条7に規定する国際連合の分担率に従って支払う。

17 この条の規定及び検証附属書第四部の関連規定は、千九百七十七年一月一日前に締約国の領域内に埋められた化学兵器であって引き続き埋められたままであるもの又は千九百八十五年一月一日前に海洋に投棄された化学兵器については、当該締約国の裁量により適用しないことができる。

第五条 化学兵器生産施設

この条の規定及びその実施のための詳細な手続は、締約国が所有し若しくは占有するすべての化学兵器生産施設又はその管轄若しくは管理の下にある場所に存在するすべての化学兵器生産施設について適用する。

この条の規定を実施するための詳細な手続は、検証附属書に定める。

1に規定するすべての化学兵器生産施設は、検証附属書第五部の規定に従い、現地査察及び現地に設置する機器による監視を通じた体系的な検証の対象とする。

締約国は、閉鎖のために必要な活動を除くほか、1に規定する化学兵器生産施設におけるすべての活動を直ちに停止する。

いかなる締約国も、化学兵器の生産又はこの条約によって禁止されているその他のすべての活動のため、新たな化学兵器生産施設を建設してはならず、又は既存の施設を変更してはならない。

締約国は、現地査察を通じた申告の体系的な検証のため、第三条1(c)の規定に基づく申告を行った後直ちに1に規定する化学兵器生産施設へのアクセスを認める。

締約国は、次のことを行う。

(a) この条約が自国について効力を生じた後九十日以内に1に規定するすべての化学兵器生産施設を検証附属書第五部の規定に従って閉鎖し、その旨を通報すること。

(b) 1に規定する化学兵器生産施設の閉鎖の後、当該施設が引き続き閉鎖されていること及びその後に廃棄されることを確保するため、現地査察及び現地に設置する機器による監視を通じた体系的な検証のために当該施設へのアクセスを認めること。

締約国は、検証附属書並びに合意された廃棄についての比率及び順序(以下「廃棄の規律」という。)に従い、1に規定するすべての化学兵器生産施設並びに関連する施設及び設備を廃棄する。廃棄は、この条約が自国について効力を生じた後一年以内に開始し、この条約が効力を生じた後十年以内に完了する。締約国は、当該化学兵器生産施設並びに関連する施設及び設備をより速やかに廃棄することを妨げられない。

締約国は、次のことを行う。

(a) 1に規定する化学兵器生産施設の廃棄のための詳細な計画を各施設の廃棄の開始の遅くとも百八十日前までに提出すること。

(b) 1に規定するすべての化学兵器生産施設の廃棄のための自国の計画の実施状況に関する申告を毎年、各年の廃棄期間の満了の後九十日以内に行うこと。

(c) 廃棄の過程が完了した後三十日以内に、1に規定するすべての化学兵器生産施設を廃棄したことを証明すること。

10 締約国は、8に規定する十年の廃棄のための期間が経過した後にこの条約を批准し又はこの条約に加入する場合には、1に規定する化学兵器生産施設をできる限り速やかに廃棄する。当該締約国のための廃棄の規律及び厳重な検証の手続については、執行理事会が決定する。

11 締約国は、化学兵器生産施設の廃棄に当たっては、人の安全を確保し及び環境を保護することを最も優先させる。締約国は、安全及び排出に関する自国の基準に従って化学兵器生産施設を廃棄する。

12 1に規定する化学兵器生産施設は、検証附属書第五部の18から25までの規定に従って化学兵器の廃棄のために一時的に転換することができる。転換した施設については、化学兵器の廃棄のために使用しなくなった場合には速やかに、いかなる場合にもこの条約が効力を生じた後十年以内に廃棄しなければならない。

13 締約国は、やむを得ず必要となる例外的な場合には、この条約によって禁止されていない目的のために1に規定する化学兵器生産施設を使用するための承認を要請することができる。締約国会議は、検証附属書第五部Dの規定に従い、執行理事会の勧告に基づき、当該要請を承認するか否かを決定し、及び承認のための条件を定める。

14 化学兵器生産施設は、工業、農業、研究、医療又は製薬の目的その他の平和的目的のために使用する施設であって、化学物質に関する附属書の表1に掲げる化学物質に関係しないものよりも、化学兵器生産施設に再転換する可能性が高くならないように転換する。

15 すべての転換した施設は、検証附属書第五部Dの規定に従い、現地査察及び現地に設置する機器による監視を通じた体系的な検証の対象とする。

16 機関は、この条の規定及び検証附属書第五部の規定に従って検証活動を行うに当たり、化学兵器生産施設及びその廃棄の検証に関する締約国間の二国間又は多数国間の協定との不必要な重複を避けるための措置を検討する。
このため、執行理事会は、次のことを認める場合には、当該二国間又は多数国間の協定に従って実施する措置を補完する措置に検証を限定することを決定する。

(a) 当該二国間又は多数国間の協定の検証に関する規定がこの条及び検証附属書第五部の検証に関する規定に適合すること。

(b) 当該二国間又は多数国間の協定の実施によってこの条約の関連規定の遵守が十分に確保されること。

(c) 当該二国間又は多数国間の協定の締約国がその検証活動について機関に対し常時十分な情報の提供を行うこと。

17 執行理事会が16の規定に従って決定する場合には、機関は、16に規定する二国間又は多数国間の協定の実施を監視する権利を有する。

18 16及び17のいかなる規定も、締約国が第三条、この条及び検証附属書第五部の規定に従って申告を行う義務に影響を及ぼすものではない。

19 締約国は、自国が廃棄の義務を負う化学兵器生産施設の廃棄の費用を負担する。また、締約国は執行理事会が別段の決定を行う場合を除くほか、この条の規定に基づく検証の費用を負担する。執行理事会が16の規定に従い機関の検証措置を限定することを決定した場合には、機関が行う補完的な検証及び監視の費用については、第八条7に規定する国際連合の分担率に従って支払う。

第六条 この条約によって禁止されていない活動

締約国は、この条約に従い、この条約によって禁止されていない目的のため毒性化学物質及びその前駆物質を開発し、生産その他の方法によって取得し、保有し、移譲し及び使用する権利を有する。

締約国は、毒性化学物質及びその前駆物質が、自国の領域内又は自国の管轄若しくは管理の下にあるその他の場所において、この条約によって禁止されていない目的のためにのみ開発され、生産その他の方法によって取得され、保有され、移譲され及び使用されることを確保するために必要な措置をとる。このため及びこれらの活動がこの条約に規定する義務に適合していることを検証するため、締約国は、化学物質に関する附属書の表1から表3までに掲げる毒性化学物質及びその前駆物質並びにこのような化学物質に関係する施設及び検証附属書に規定するその他の施設であって、自国の領域内又は自国の管轄若しくは管理の下にあるその他の場所に存在するものを検証附属書に規定する検証措置の対象とする。

締約国は、化学物質に関する附属書の表1に掲げる化学物質(以下「表1の化学物質」という。)を検証附属書第六部に規定する生産、取得、保有、移譲及び使用の禁止の対象とする。締約国は、検証附属書第六部の規定に従い、表1の化学物質及び同附属書第六部に規定する施設を現地査察及び現地に設置する機器による監視を通じた体系的な検証の対象とする。

締約国は、検証附属書第七部の規定に従い、化学物質に関する附属書の表2に掲げる化学物質(以下「表2の化学物質」という。)及び検証附属書第七部に規定する施設を資料による監視及び現地検証の対象とする。

締約国は、検証附属書第八部の規定に従い、化学物質に関する附属書の表3に掲げる化学物質(以下「表3の化学物質」という。)及び検証附属書第八部に規定する施設を資料による監視及び現地検証の対象とする。

締約国は、検証附属書第九部22の規定に従って締約国会議が別段の決定を行う場合を除くほか、同附属書第九部の規定に従い、同附属書第九部に規定する施設を資料による監視及び最終的には現地検証の対象とする。

締約国は、この条約が自国について効力を生じた後三十日以内に、検証附属書に従い、関連する化学物質及び施設に関する冒頭申告を行う。

締約国は、検証附属書に従い、関連する化学物質及び施設に関する年次申告を行う。

締約国は、現地検証のため、検証附属書に従って査察員に対して施設へのアクセスを認める。

10 技術事務局は、検証活動を行うに当たり、この条約によって禁止されていない目的のための締約国の化学に関する活動に対する不当な干渉を回避し、及び特に、秘密情報の保護に関する附属書(以下「秘密扱いに関する附属書」という。)に定める規定を遵守する。

11 この条の規定については、締約国の経済的又は技術的発展及びこの条約によって禁止されていない目的のための化学に関する活動の分野における国際協力(この条約によって禁止されていない目的のための化学物質の生産、加工又は使用に関する科学的及び技術的情報、化学物質並びに装置の国際的な交換を含む。)を妨げないように実施する。

第七条 国内の実施措置

一般的約束

締約国は、自国の憲法上の手続に従い、この条約に基づく自国の義務を履行するために必要な措置をとる。締約国は、特に、次のことを行う。

(a) 自国の領域内のいかなる場所又は国際法によって認められる自国の管轄の下にあるその他のいかなる場所においても、自然人及び法人がこの条約によって締約国に対して禁止されている活動を行うことを禁止すること(当該活動に対する罰則を規定する法令を制定することを含む。)。

(b) 自国の管理の下にあるいかなる場所においても、この条約によって締約国に対して禁止されている活動を認めないこと。

(c) 自国の国籍を有する自然人が行った活動(場所のいかんを問わない。)であってこの条約によって締約国に対して禁止されているものに対し、国際法に従い、(a)の規定に従って制定する罰則を規定する法令を適用すること。

締約国は、1の規定に基づく義務の履行を容易にするため、他の締約国と協力し、及び適当な形態の法律上の援助を与える。

締約国は、この条約に基づく自国の義務を履行するに当たっては、人の安全を確保し及び環境を保護することを最も優先させるものとし、適当な場合にはこの点に関して他の締約国と協力する。

締約国と機関との関係

締約国は、この条約に基づく自国の義務を履行するため、機関及び他の締約国との効果的な連絡のための国内の連絡先となる国内当局を指定し又は設置する。締約国は、この条約が自国について効力を生ずる時に自国の国内当局を機関に通報する。

締約国は、この条約を実施するためにとる立法措置及び行政措置を機関に通報する。

締約国は、この条約の実施に関連して機関から秘密のものとして受領する情報及び資料を秘密情報として取り扱い、並びに当該情報及び資料に対し特別の取扱いを行う。締約国は、当該情報及び資料を、この条約に基づく自国の権利及び義務との関連においてのみ利用するものとし、秘密扱いに関する附属書に定める規定に従って取り扱う。

締約国は、機関のすべての任務の遂行に当たって機関に協力すること及び特に技術事務局に対する援助をすることを約束する。

第八条 機関

一般規定

締約国は、この条約の趣旨及び目的を達成し、この条約の規定(この条約の遵守についての国際的な検証に関する規定を含む。)の実施を確保し並びに締約国間の協議及び協力のための場を提供するため、この条約により化学兵器の禁止のための機関を設立する。

すべての締約国は、機関の加盟国となる。締約国は、機関の加盟国としての地位を奪われることはない。

機関の本部の所在地は、オランダ王国へーグとする。

機関の内部機関として、締約国会議、執行理事会及び技術事務局をこの条約により設置する。

機関は、できる限り干渉の程度が低く、かつ、検証活動の目的の適時の及び効果的な達成に合致する方法で、この条約に規定する検証活動を行う。機関は、この条約に基づく自己の責任を果たすために必要な情報及び資料のみを要請する。機関は、この条約の実施を通じて知るに至った非軍事上及び軍事上の活動及び施設に関する情報の秘密を保護するためにすべての措置をとるものとし、特に、秘密扱いに関する附属書に定める規定を遵守する。

機関は、その検証活動を行うに当たり、科学及び技術の進歩を利用するための措置を検討する。

機関の活動に要する費用は、国際連合と機関との間の加盟国の相違を考慮して調整される国際連合の分担率に従い並びに第四条及び第五条に定めるところにより、締約国が支払う。準備委員会に対する締約国の財政的負担については、適当な方法により、機関の通常予算に対する当該締約国の分担金から控除する。機関の予算は、運営費その他の費用に関連するもの及び検証の費用に関連するものの二の別個の項目から成る。

機関に対する分担金の支払が延滞している機関の加盟国は、その未払の額が当該年に先立つ二年の間に当該加盟国から支払われるべきであった分担金の額に等しい場合又はこれを超える場合には、機関において投票権を有しない。ただし、締約国会議は、支払の不履行が当該加盟国にとってやむを得ない事情によると認めるときは、当該加盟国に投票を許すことができる。

締約国会議

構成、手続及び意思決定

締約国会議(以下「会議」という。)は、機関のすべての加盟国により構成する。各加盟国は、会議において一人の代表を有するものとし、その代表は、代表代理及び随員を伴うことができる。

10 会議の第一回会期は、この条約が効力を生じた後三十日以内に寄託者が招集する。

11 会議は、別段の決定を行う場合を除くほか、毎年通常会期として会合する。

12 会議の特別会期は、次のいずれかの場合に開催される。この場合において、(d)に規定する場合を除くほか、開催の要請において別段の明示がない限り、技術事務局の事務局長がその要請を受領した後三十日以内に開催される。

(a) 会議が決定する場合

(b) 執行理事会が要請する場合

(c) いずれかの加盟国が要請し、かつ、加盟国の三分の一が支持する場合

(d) 22の規定に従ってこの条約の運用について検討する場合

13 会議は、また、第十五条2の規定に従って改正会議として開催される。

14 会議の会期は、会議が別段の決定を行う場合を除くほか、機関の所在地で開催される。

15 会議は、その手続規則を採択する。会議は、各通常会期の始めに、議長及び他の必要な役員を選出する。これらの者は、次の通常会期において新たな議長及び他の役員が選出されるまで在任する。

16 会議の定足数は、機関の加盟国の過半数とする。

17 機関の各加盟国は、会議において一の票を有する。

18 会議は、出席しかつ投票する加盟国の単純多数による議決で手続事項についての決定を行う。実質事項についての決定は、できる限りコンセンサス方式によって行うべきである。決定に当たりコンセンサスが得られない場合には、議長は、いかなる投票も二十四時間延期し、この間にコンセンサスの達成を容易にするためのあらゆる努力を払い、及び当該二十四時間の終了の前に会議に対して報告する。当該二十四時間の終了の時にコンセンサスが得られない場合には、会議は、この条約に別段の定めがある場合を除くほか、出席しかつ投票する加盟国の三分の二以上の多数による議決で決定を行う。実質事項であるか否かについて問題が生ずる場合には、会議が実質事項についての決定に必要な多数による議決で別段の決定を行わない限り、実質事項として取り扱う。

権限及び任務

19 会議は、機関の主要な内部機関であり、この条約の範囲内のいかなる問題又は事項(執行理事会及び技術事務局の権限及び任務に関するものを含む。)も検討する。会議は、締約国が提起し又は執行理事会が注意を喚起するこの条約に関するいかなる問題又は事項についても、勧告及び決定を行うことができる。

20 会議は、この条約の実施を監督し、並びにその趣旨及び目的を推進するために行動する。
会議は、この条約の遵守状況を検討する。会議は、執行理事会及び技術事務局の活動も監督するものとし、この条約に従いこれらのいずれの内部機関に対してもその任務の遂行に関し指針を与えることができる。

21 会議は、次のことを行う。

(a) 執行理事会が提出する機関の報告、計画及び予算を通常会期において検討し及び採択し並びに他の報告を検討すること。

(b) 7の規定に従って締約国が支払う分担金の率につき決定すること。

(c) 執行理事会の理事国を選出すること。

(d) 技術事務局の事務局長(以下「事務局長」という。)を任命すること。

(e) 執行理事会が提出する執行理事会の手続規則を承認すること。

(f) この条約に従い会議がその任務を遂行するために必要と認める補助機関を設置すること。

(g) 平和的目的のために、化学に関する活動の分野における国際協力を促進すること。

(h) この条約の運用に影響を及ぼし得る科学的及び技術的発展を検討すること。このため、事務局長がその任務の遂行に当たり会議、執行理事会又は締約国に対してこの条約に関連する科学及び技術の分野における専門的な助言を行うことができるようにするために、科学諮問委員会を設置することを事務局長に指示すること。科学諮問委員会は、会議が採択する付託事項に従って任命される独立した専門家で構成する。

(i) 第一回会期において、準備委員会が作成する協定案、規則案及び指針案を検討し及び承認すること。

(j) 第一回会期において、第十条の規定による援助のための任意の基金を設置すること。

(k) 第十二条の規定に従い、この条約の遵守を確保し並びにこの条約に違反する事態を是正し及び改善するため、必要な措置をとること。

22 会議は、この条約が効力を生じた後五年及び十年が経過した後一年以内に並びに会議が決定する場合にはその期間内の他の時期に、この条約の運用について検討するため特別会期を開催する。その検討においては、関連する科学的及び技術的発展を考慮する。その後は、別段の決定が行われる場合を除くほか、同様の目的を有する会議の特別会期は、五年ごとに開催される。

執行理事会

構成、手続及び意思決定

23 執行理事会は、四十一の理事国により構成する。締約国は、輪番の原則に従い、理事国としての任務を遂行する権利を有する。理事国は、二年の任期で会議が選出する。特に、衡平な地理的配分、化学産業の重要性並びに政治上及び安全保障上の利益に十分な考慮を払い、この条約が効果的に機能することを確保するため、執行理事会の構成は、次のとおりとする。

(a) アフリカ地域の締約国が指名する九のアフリカの締約国。この指名の基礎として、これらの九の締約国のうち、三の国は、原則として、国際的に報告され及び公表されている資料によって当該地域において最も重要であると決定される国内化学産業を有する締約国とするものとする。更に、当該地域の集団は、これらの三の理事国を指名するに当たり、他の地域的要素も考慮することに同意する。

(b) アジア地域の締約国が指名する九のアジアの締約国。この指名の基礎として、これらの九の締約国のうち、四の国は、原則として、国際的に報告され及び公表されている資料によって当該地域において最も重要であると決定される国内化学産業を有する締約国とするものとする。更に、当該地域の集団は、これらの四の理事国を指名するに当たり、他の地域的要素も考慮することに同意する。

(c) 東欧地域の締約国が指名する五の東欧の締約国。この指名の基礎として、これらの五の締約国のうち、一の国は、原則として、国際的に報告され及び公表されている資料によって当該地域において最も重要であると決定される国内化学産業を有する締約国とするものとする。更に、当該地域の集団は、この一の理事国を指名するに当たり、他の地域的要素も考慮することに同意する。

(d) ラテン・アメリカ及びカリブ地域の締約国が指名する七のラテン・アメリカ及びカリブの締約国。この指名の基礎として、これらの七の締約国のうち、三の国は、原則として、国際的に報告され及び公表されている資料によって当該地域において最も重要であると決定される国内化学産業を有する締約国とするものとする。更に、当該地域の集団は、これらの三の理事国を指名するに当たり、他の地域的要素も考慮することに同意する。

(e) 西欧及び他の国の地域の締約国が指名する十の西欧及び他の国の地域の締約国。この指名の基礎として、これらの十の締約国のうち、五の国は、原則として、国際的に報告され及び公表されている資料によって当該地域において最も重要であると決定される国内化学産業を有する締約国とするものとする。更に、当該地域の集団は、これらの五の理事国を指名するに当たり、他の地域的要素も考慮することに同意する。

(f) アジア地域並びにラテン・アメリカ及びカリブ地域の締約国が連続して指名する更に一の締約国。この指名の基礎として、当該締約国は、両地域から交互に選出されるものとする。

24 執行理事会の第一回の選挙においては、23に規定する定められた理事国の数の割合に十分な考慮を払い、選出される理事国のうち二十の理事国の任期を一年とする。

25 第四条及び第五条の規定が完全に実施された後、会議は、執行理事会の理事国の過半数の要請により、執行理事会の構成を規律する23に規定する原則に関係する進展を考慮し、その構成を再検討することができる。

26 執行理事会は、その手続規則を作成し、承認のためこれを会議に提出する。

27 執行理事会は、その議長を理事国より選出する。

28 執行理事会は、通常会期として会合するほか、通常会期と通常会期との間においては、その権限及び任務の遂行のため必要に応じて会合する。

29 執行理事会の各理事国は、一の票を有する。執行理事会は、この条約に別段の定めがある場合を除くほか、すべての理事国の三分の二以上の多数による議決で実質事項についての決定を行う。執行理事会は、すべての理事国の単純多数による議決で手続事項についての決定を行う。実質事項であるか否かについて問題が生ずる場合には、執行理事会が実質事項についての決定に必要な多数による議決で別段の決定を行わない限り、実質事項として取り扱う。

権限及び任務

30 執行理事会は、機関の執行機関である。執行理事会は、会議に対して責任を負う。執行理事会は、この条約によって与えられる権限及び任務並びに会議によって委任される任務を遂行する。執行理事会は、これらを遂行するに当たり、会議の勧告、決定及び指針に従って行動し、並びにこれらの勧告、決定及び指針の適切かつ継続的な実施を確保する。

31 執行理事会は、この条約の効果的な実施及び遵守を促進する。執行理事会は、技術事務局の活動を監督し、締約国の国内当局と協力し、並びに締約国の要請に応じて締約国間の協議及び協力を促進する。

32 執行理事会は、次のことを行う。

(a) 機関の計画案及び予算案を検討し及び会議に提出すること。

(b) この条約の実施に関する機関の報告案、執行理事会の活動に関する報告及び執行理事会が必要と認める特別報告又は会議が要請する場合には当該要請による特別報告を検討し及び会議に提出すること。

(c) 会議の会期のための準備(議題案の作成を含む。)を行うこと。

33 執行理事会は、会議の特別会期の開催を要請することができる。

34 執行理事会は、次のことを行う。

(a) 会議が事前に承認することを条件として、機関に代わって国及び国際機関と協定又は取決めを締結すること。

(b) 第十条の規定に関連して機関に代わって締約国と協定を締結し及び同条に規定する任意の基金を監督すること。

(c) 技術事務局が締約国と交渉する検証活動の実施に関する協定又は取決めを承認すること。

35 執行理事会は、その権限の範囲内のいかなる問題又は事項であってこの条約及びその実施に影響を及ぼすもの(この条約の遵守についての懸念及び違反を含む。)も検討し並びに、適当な場合には、締約国に通報し及び当該問題又は事項について会議の注意を喚起する。

36 執行理事会は、この条約の遵守についての疑義又は懸念及び違反(特に、この条約に規定する権利の濫用を含む。)を検討するに当たり、関係締約国と協議し及び、適当な場合には、当該締約国に対し、一定の期間内に事態を是正するために措置をとるよう要請する。執行理事会は、更に行動が必要であると認める場合には、特に、次の一又は二以上の措置をとる。

(a) すべての締約国に対し問題又は事項を通報する。

(b) 問題又は事項について会議の注意を喚起する。

(c) 事態を是正し及びこの条約の遵守を確保するための措置に関して会議に対し勧告を行う。

執行理事会は、特に重大かつ緊急な場合には、問題又は事項(関連する情報及び判断を含む。)につき、直接に、国際連合総会及び国際連合安全保障理事会の注意を喚起する。執行理事会は、同時に、すべての締約国に対しこの措置を通報する。

技術事務局

37 技術事務局は、会議及び執行理事会が任務を遂行するに当たり、会議及び執行理事会を補佐する。技術事務局は、この条約に規定する検証措置を実施する。技術事務局は、この条約によって与えられるその他の任務並びに会議及び執行理事会によって委任される任務を遂行する。

38 技術事務局は、次のことを行う。

(a) 機関の計画案及び予算案を作成し及び執行理事会に提出すること。

(b) この条約の実施に関する機関の報告案及び会議又は執行理事会が要請する場合には他の報告を作成し及び執行理事会に提出すること。

(c) 会議、執行理事会及び補助機関に対し、運営上及び技術上の援助を提供すること。

(d) この条約の実施に関する事項につき、機関に代わり、締約国に対し通報し及び締約国からの通報を受けること。

(e) この条約の実施に当たり、技術上の援助及び評価(化学物質に関する附属書の表に掲げる化学物質及び掲げていない化学物質の評価を含む。)を締約国に対して提供すること。

39 技術事務局は、次のことを行う。

(a) 執行理事会が承認することを条件として、検証活動の実施に関する協定又は取決めにつき締約国と交渉すること。

(b) この条約が効力を生じた後百八十日以内に、第十条7の(b)及び(c)の規定に基締約国による緊急の及び人道上の援助の常設的な備蓄の設置及び維持について調整すること。技術事務局は、常備されている援助が使用に供し得ることを検査することができる。常備されるべき援助の一覧表は、21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する。

(c) 第十条に規定する任意の基金を管理し、締約国が行う申告を取りまとめ及び、要請がある場合には、同条の規定の実施のために締約国間で締結する二国間協定又は締約国と機関との間で締結する協定を登録すること。

40 技術事務局は、任務の遂行に関連して生じた問題(検証活動の実施に当たり知るに至ったこの条約の遵守についての疑義、あいまいな点又は不確かな点であって、当該締約国との間の協議により解消することができなかったものを含む。)を執行理事会に通報する。

41 技術事務局は、技術事務局の長でありかつ首席行政官である事務局長、査察員及び科学要員、技術要員その他の必要な人員により構成する。

42 査察部は、技術事務局の一の組織であり、事務局長の監督の下で行動する。

43 事務局長は、執行理事会の勧告に基づき四年の任期で会議が任命する。その任期は、一回に限り更新することができる。

44 事務局長は、技術事務局の職員の任命、組織及び任務の遂行につき会議及び執行理事会に対して責任を負う。職員の雇用及び勤務条件の決定に当たっては、最高水準の能率、能力及び誠実性を確保することの必要性に最大の考慮を払う。締約国の国民のみが、事務局長、査察員並びに他の専門職員及び事務職員となる。できる限り広範な地理的基礎に基づいて職員を採用することが重要であることについて、十分な考慮を払う。職員の採用に当たっては、技術事務局の責任を適切に遂行するために職員を必要な最小限度に保つという原則を指針とする。

45 事務局長は、21(h)に規定する科学諮問委員会の組織及び任務について責任を負う。事務局長は、締約国と協議の上、個人の資格において職務を遂行する科学諮問委員会の委員を任命する。当該委員は、この条約の実施に関連する特定の科学の分野における専門的知識に基づいて任命する。事務局長は、また、適当な場合には、科学諮問委員会の委員と協議の上、特定の問題について勧告を行うための科学専門家の暫定的な作業部会を設置することができる。これに関連して、締約国は、事務局長に対して専門家の名簿を提出することができる。

46 事務局長及び査察員その他の職員は、その任務の遂行に当たって、いかなる政府からも又は機関外のいかなるところからも指示を求め又は受けてはならない。これらの者は、会議及び執行理事会に対してのみ責任を有する国際公務員としての立場に影響を及ぼすおそれのあるいかなる行動も慎まなければならない。

47 締約国は、事務局長及び査察員その他の職員の責任の専ら国際的な性質を尊重するものとし、これらの者が責任を果たすに当たってこれらの者を左右しようとしてはならない。

特権及び免除

48 機関は、締約国の領域内又はその管轄若しくは管理の下にあるその他の場所において、機関の任務の遂行のために必要な法律上の能力並びに特権及び免除を享受する。

49 締約国の代表、その代表代理及び随員並びに執行理事会のために任命された代表、その代表代理及び随員並びに事務局長及び機関の職員は、機関に関連する自己の任務を独立して遂行するために必要な特権及び免除を享受する。

50 この条に規定する法律上の能力、特権及び免除については、機関と締約国との間の協定及び機関と機関の本部が所在する国との間の協定で定める。これらの協定は、21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する。

51 48及び49の規定にかかわらず、検証活動が行われている間事務局長及び技術事務局の職員が享受する特権及び免除については、検証附属書第二部Bに定める。

第九条 協議、協力及び事実調査

締約国は、この条約の趣旨及び目的又は実施に関連して問題が生ずる場合には、当該問題について、締約国間で直接に又は機関を通じて若しくは他の適当な国際的手続(国際連合の枠内で及び国際連合憲章に従って行われる手続を含む。)により、協議し及び協力する。

締約国は、この条約の遵守について疑義を引き起こす問題又はあいまいと認められる関連する事項について懸念を引き起こす問題を、まず締約国間の情報交換及び協議により明らかにし及び解決するため、可能なときはいつでもあらゆる努力を払うべきである。もっとも、すべての締約国の申立てによる査察を要請する権利は害されない。締約国は、このような疑義又は懸念を引き起こすと他の締約国が認める問題を明らかにするよう当該他の締約国から要請される場合には、できる限り速やかに、いかなる場合にも当該要請の後十日以内に、当該他の締約国に対し、提起された疑義又は懸念に答えるために十分な情報を提供し、及びその情報がどのようにして当該問題を解決するかについての説明を行う。この条約のいかなる規定も、二以上の締約国が、遵守について疑義を引き起こす問題又はあいまいと認められる関連する事項について懸念を引き起こす問題を明らかにし及び解決するため、相互の合意により締約国間で査察その他の手続について取り決める権利に影響を及ぼすものではない。このような取決めは、この条約の他の規定に基づく締約国の権利及び義務に影響をお及ぼすものではない。

事態を明らかにするための説明を要請する手続

締約国は、あいまいと認められる事態又は他の締約国によるこの条約の違反の可能性について懸念を引き起こす事態を明らかにするに当たって援助するよう執行理事会に要請する権利を有する。執行理事会は、このような懸念に関連する自己の保有する適当な情報を提供する。

締約国は、あいまいと認められる事態又は他の締約国によるこの条約の違反の可能性について懸念を引き起こす事態を明らかにするための説明を当該他の締約国から得るよう執行理事会に要請する権利を有する。この場合において、次の規定を適用する。

(a) 執行理事会は、事務局長を通じ、説明の要請の受領の後二十四時間以内に当該他の締約国に対しこれを送付する。

(b) 説明の要請を受けた締約国は、できる限り速やかに、いかなる場合にも要請の受領の後
十日以内に、執行理事会に説明を行う。

(c) 執行理事会は、(b)の規定に従って行われた説明に留意し、当該説明の受領の後二十四時間以内に説明の要請を行った締約国に対しこれを送付する。

(d) 説明の要請を行った締約国が(b)の規定に従って行われた説明が十分でないと認める場合には、当該締約国は、説明の要請を受けた締約国から更に説明を得るよう執行理事会に要請する権利を有する。

(e) (d)の規定により更に説明を得るため、執行理事会は、事務局長に対し、懸念を引き起こす事態に関連するすべての利用可能な情報及び資料を検討するために、技術事務局の職員により構成される専門家の会合又は技術事務局において適当な職員を利用することができない場合には技術事務局の職員以外の専門家の会合を設置するよう要請することができる。専門家の会合は、その検討結果に基づく事実関係についての報告を執行理事会に提出する。

(f) 説明の要請を行った締約国が(d)及び(e)の規定に基づいて得た説明が十分でないと認める場合には、当該締約国は、執行理事会の理事国でない関係締約国が参加することのできる執行理事会の特別会期を要請する権利を有する。執行理事会は、当該特別会期において、この問題を検討し、及び事態を解決するために適当と認める措置を勧告することができる。

締約国は、また、自国についてあいまいと認められた事態又は自国によるこの条約の違反の可能性について懸念を引き起こした事態について明らかにするよう執行理事会に要請する権利を有する。執行理事会は、これに対し、適当と認める援助を提供する。

執行理事会は、この条に規定する説明の要請について締約国に通報する。

締約国は、この条約の違反の可能性について自国が提起した疑義又は懸念が、説明の要請を執行理事会に提出した後六十日以内に解消されなかった場合又はこのような疑義が緊急な検討を正当化するに足りるものであると信ずる場合には、前条12(c)の規定に基づき、会議の特別会期を要請することができる。もっとも、申立てによる査察を要請する当該締約国の権利は害されない。会議は、当該特別会期において、この問題を検討し、及び事態を解決するために適当と認める措置を勧告することができる。

申立てによる査察のための手続

締約国は、この条約の違反の可能性についての問題を明らかにし及び解決することのみを目的として他の締約国の領域内又は他の締約国の管轄若しくは管理の下にあるその他の場所におけるいかなる施設又は区域に対しても申立てによる現地査察を要請する権利並びにこの査察がいかなる場所においても事務局長が指名する査察団により遅滞なく、かつ、検証附属書に従って行われることを求める権利を有する。

締約国は、査察の要請をこの条約の範囲内で行う義務を負い、及びこの条約の違反の可能性について懸念を引き起こす基礎となったすべての適当な情報を検証附属書に従って当該査察の要請の中で提供する義務を負う。締約国は、濫用を避けるために注意を払い、根拠のない査察の要請を慎まなければならない。申立てによる査察は、この条約の違反の可能性に関係する事実を決定することのみを目的として行う。

10 この条約の遵守の検証のため、締約国は、技術事務局が8の規定に従い申立てによる現地査察を行うことを認める。

11 被査察締約国は、施設又は区域に対する申立てによる査察の要請及び検証附属書に規定する手続に従い、次の椎利を有し、又は義務を負う。

(a) 自国によるこの条約の遵守を証明するためにあらゆる合理的な努力を払う権利及び義務並びにこのために査察団がその査察命令を遂行することができるようにする権利及び義務

(b) 専らこの条約の違反の可能性についての懸念に関連する事実を確認することを目的として要請される施設又は区域内へのアクセスを認める義務

(c) この条約に関係しない機微に係る設備を保護し並びにこの条約に関係しない秘密の情報及び資料の開示を防止するための措置をとる権利

12 オブザーバーについては、次の規定を適用する。

(a) 要請締約国は、被査察締約国の同意を得て、自国又は第三の締約国のいずれか一方の国民である代表者を申立てによる査察の実施に立ち会わせるために派遣することができる。

(b) (a)の場合において、被査察締約国は、検証附属書に従ってオブザーバーに対してアクセスを認める。

(c) 被査察締約国は、原則として、提案されたオブザーバーを受け入れる。ただし、被査察締約国が拒否する場合には、その事実は、最終報告に記録される。

13 要請締約国は、執行理事会に対し申立てによる現地査察のための査察の要請を行い、また、速やかな手続の開始のために同時に事務局長に対して当該要請を行う。

14 事務局長は、直ちに、査察の要請が検証附属書第十部4に定める要件を満たすことを確認し及び、必要な場合には、要請締約国が当該要件に従って査察の要請を行うことを援助する。査察の要請が当該要件を満たす場合には、申立てによる査察のための準備を開始する。

15 事務局長は、被査察締約国に対し、査察団の入国地点への到着予定時刻の少なくとも十二時間前までに、査察の要請を伝達する。

16 執行理事会は、査察の要請を受領した後、当該要請に基づいて事務局長がとる措置に留意するものとし、査察が行われている間を通じてこの問題を検討する。ただし、執行理事会の検討は、査察を遅滞させるものであってはならない。

17 執行理事会は、査察の要請が根拠がなく、権利を濫用するものであり又は8に定めるこの条約の範囲を明らかに超えると認める場合には、査察の要請を受領した後十二時間以内に、執行理事会のすべての理事国の四分の三以上の多数による議決で、申立てによる査察の実施に反対することを決定することができる。その決定には、要請締約国及び被査察締約国は参加してはならない。執行理事会が申立てによる査察について反対することを決定する場合には、査察のための準備は停止され、査察の要請に基づく新たな措置はとられず、及び関係締約国に対しその旨の通報が行われる。

18 事務局長は、申立てによる査察の実施のための査察命令を与える。査察命令は、8及び9に規定する査察の要請を遂行するためのものであり、かつ、査察の要請に適合するものとする。

19 申立てによる査察は、検証附属書第十部の規定に従い又は化学兵器の使用若しくは戦争の方法としての暴動鎮圧剤の使用の疑いがある場合には同附属書第十一部の規定に従って行う。査察団は、できる限り干渉の程度が低く、かつ、任務の効果的な及び適時の遂行に合致する方法で申立てによる査察を行うとの原則を指針とする。

20 被査察締約国は、申立てによる査察が行われている間を通じて、査察団を援助し、及びその任務の遂行を容易にする。被査察締約国は、検証附属書第十部Cの規定に従い、この条約の遵守を証明するための措置であって十分かつ包括的なアクセスに代わるものを提案する場合には、この条約の遵守を証明することを目的として事実を確認する方法について合意に達するため、査察団との協議を通じてあらゆる合理的な努力を払う。

21 最終報告には、事実関係の調査結果並びに申立てによる査察の十分な実施のために認められたアクセス及び協力の程度及び性質についての査察団による評価を含める。事務局長は、要請締約国、被査察締約国、執行理事会及び他のすべての締約国に対し、査察団の最終報告を速やかに送付する。事務局長は、更に,執行理事会に対し、要請締約国及び被査察締約国による評価並びに評価のため他の締約国の見解が事務局長に提出される場合には当該見解を速やかに送付し、その後これらをすべての締約国に送付する。

22 執行理事会は、その権限及び任務に従い、査察団の最終報告が提出された後直ちに当該最終報告を検討し、及び次の事項について検討する。

(a) 違反があったか否か。

(b) 査察の要請がこの条約の範囲内で行われたか否か。

(c) 申立てによる査察を要請する権利が濫用されたか否か。

23 執行理事会は、その権限及び任務に従い、22の規定に関して更に措置が必要となるとの結論に到達する場合には、事態を是正し及びこの条約の遵守を確保するための適当な措置(会議に対する具体的な勧告を含む。)をとる。要請する権利が濫用された場合には、執行理事会は、要請締約国が申立てによる査察の財政的負担の一部を負うべきであるか否かについて検討する。

24 要請締約国及び被査察締約国は、22に規定する検討に参加する権利を有する。執行理事会は、このような検討の結果につき、締約国に対し及び次の会期において会議に対し報告する。

25 執行理事会が会議に対して具体的な勧告を行った場合には、会議は、第十二条の規定に従って措置を検討する。

第十条 援助及び化学兵器に対する防護

この条の規定の適用上、「援助」とは、化学兵器に対する防護(特に、探知装置及び警報装置、防護機具、除染装置及び除染剤、解毒剤及び治療並びにこれらの防護手段に関する助言を含む。)につき調整し及び締約国に対しその防護を提供することをいう。

この条約のいかなる規定も、締約国が、この条約によって禁止されていない目的のため化学兵器に対する防護手段を研究し、開発し、生産し、取得し、移譲し又は使用する権利を妨げるものと解してはならない。

締約国は、化学兵器に対する防護手段に関する装置、資材並びに科学的及び技術的情報を可能な最大限度まで交換することを容易にすることを約束し、また、その交換に参加する権利を有する。

締約国は、防護目的に関係する自国の計画の透明性を増進するため、第八条21(i)の規定に基づき会議が検討し及び承認する手続に従い、毎年、当該計画に関する情報を技術事務局に提供する。

技術事務局は、要請する締約国の使用に供するため、化学兵器に対する各種の防護手段に関する自由に入手可能な情報及び締約国が提供する情報から成るデータバンクをこの条約が効力を生じた後百八十日以内に設置し及び維持する。
技術事務局は、また、その利用可能な資源の範囲内で、かつ、締約国の要請に応じ、締約国が化学兵器に対する防護能力の開発及び向上のための計画をいかなる方法で実施することができるかについて特定するに当たり、当該締約国に専門的な助言を行い、及び援助する。

この条約のいかなる規定も、締約国が、二国間で援助を要請し及び提供する権利並びに援助の緊急な調達に関して他の締約国と個別の協定を締結する権利を妨げるものと解してはならない。

締約国は、機関を通じて援助を提供すること及びこのため次の一又は二以上の措置を選択することを約束する。

(a) 会議の第一回会期において設置される援助のための任意の基金に拠出すること。

(b) この条約が自国について効力を生じた後できる限り百八十日以内に、要請に基づく援助の調達に関して機関と協定を締結すること。

(c) この条約が自国について効力を生じた後百八十日以内に、機関の要請に応じ提供することのできる援助の種類を申告すること。締約国は、その後、申告した援助を提供することができなくなった場合にも、引き続き、この7の規定に従って援助を提供する義務を負う。

締約国は、次のことを認める場合には、援助及び化学兵器の使用又は使用の脅威に対する防護を要請し並びに9から11までに規定する手続に従ってこれらを受ける権利を有する。

(a) 自国に対し化学兵器が使用されたこと。

(b) 自国に対し暴動鎮圧剤が戦争の方法として使用されたこと。

(c) 自国が、いずれかの国の措置又は活動であって、第一条の規定によって締約国に対し禁止されているものにより脅威を受けていること。

8の要請については、当該要請を裏付ける関連する情報を付して事務局長に対して行うものとし、事務局長は、当該要請を直ちに執行理事会及びすべての締約国に伝達する。事務局長は、当該要請を、7の(b)及び(c)の規定に従い、化学兵器の使用又は戦争の方法としての暴動鎮圧剤の使用の場合においては緊急の援助、化学兵器の使用又は戦争の方法としての暴動鎮圧剤の使用の重大な脅威の場合においては人道上の援助を要請の受領の後十二時間以内に関係締約国に提供することを自発的に申し出た締約国に対し、直ちに伝達する。事務局長は、当該要請の受領の後二十四時間以内に、更にとるべき措置のための基礎を提供するために調査を開始する。事務局長は、七十二時間以内に調査を完了し、執行理事会に対し報告を提出する。調査を完了するために追加の期間を必要とする場合には、当該七十二時間以内に中間報告を提出する。調査に必要な当該追加の期間は、七十二時問を超えてはならない。ただし、同様の期間により更に一回又は二回以上の期間の追加をすることができる。各追加の期間の終了の時に執行理事会に報告を提出する。調査は、適当な場合には、要請及び要請に付された情報に従い、要請に関係する事実並びに必要とされる追加的な援助及び防護の種類及び範囲を確定する。

10 執行理事会は、調査の報告の受領の後二十四時間以内に事態を検討するために会合するものとし、技術事務局に対し追加的な援助を提供するよう指示するか否かを次の二十四時間以内に単純多数による議決で決定する。技術事務局は、すべての締約国及び関係国際機関に対し、当該報告及び執行理事会の決定を直ちに送付する。執行理事会が技術事務局に対し迫加的な援助を提供するよう指示することを決定する場合には、事務局長は、直ちに援助を提供する。このため、事務局長は、要請した締約国、他の締約国及び関係国際機関と協力することができる。締約国は、援助を提供するために可能な最大限度の努力をする。

11 化学兵器の使用による犠牲者が存在すること及び速やかな措置が不可欠であることが実施中の調査又は他の信頼し得る情報源からの入手可能な情報により十分に明らかとなる場合には、事務局長は、すべての締約国に通報するものとし、会議がこのような事態のために事務局長の利用に供した資源を用いて援助のための緊急措置をとる。事務局長は、この11の規定に従ってとる措置を常時執行理事会に通報する。

第十一条 経済的及び技術的発展

この条約は、締約国の経済的又は技術的発展及びこの条約によって禁止されていない目的のための化学に関する活動の分野における国際協力(この条約によって禁止されていない目的のための化学物質の生産、加工又は使用に関する科学的及び技術的情報、化学物質並びに装置の国際的な交換を含む。)を妨げないように実施する。

締約国は、この条約の規定に従うことを条件として、かつ、国際法の諸原則及び適用のある国際法の諸規則を害することなく、

(a) 単独で又は共同して、化学物質を研究し、開発し、生産し、取得し、保有し、移譲し及び使用する権利を有する。

(b) この条約によって禁止されていない目的のための化学の開発及び利用に関係する化学物質、装置並びに科学的及び技術的情報を可能な最大限度まで交換することを容易にすることを約束し、また、その交換に参加する権利を有する。

(c) 工業、農業、研究、医療又は製薬の目的その他の平和的目的のための化学の分野における貿易並びに科学的及び技術的知識の開発及び促進を妨げる制限(国際協定による制限を含む。)であって、この条に基づく義務に反するものは、締約国間で維持してはならない。

(d) この条約に規定され又はこの条約が認める措置以外の措置を実施するための根拠としてこの条約を利用してはならず、及びこの条約に適合しない目的を追求するために他のいかなる国際協定も利用してはならない。

(e) この条約の趣旨及び目的に適合したものにすることを目的として、化学物質の貿易の分野における既存の国内法令を検討することを約束する。

第十二条 事態を是正し及びこの条約の遵守を確保するための措置(制裁を含む。)

会議は、この条約の遵守を確保し並びにこの条約に違反する事態を是正し及び改善するため、2から4までに規定する必要な措置をとる。会議は、この1の規定に基づく措置を検討するに当たり、問題に関し執行理事会が提出するすべての情報及び勧告を考慮する。

締約国が、自国によるこの条約の遵守に関して問題を引き起こしている事態を是正する措置をとることを執行理事会により要請され、かつ、一定の期間内に当該要請に応ずることができなかった場合には、会議は、特に、執行理事会の勧告に基づき、当該締約国がこの条約に基づく義務に従うための必要な措置をとるまでの間、この条約に基づく当該締約国の権利及び特権を制限し又は停止することができる。

この条約の趣旨及び目的に対する重大な障害がこの条約(特に第一条の規定)によって禁止されている活動から生ずる可能性のある場合には、会議は、締約国に対して国際法に適合する集団的な措置を勧告することができる。

会議は、特に重大な場合には、問題(関連する情報及び判断を含む。)につき、国際連合総会及び国際連合安全保障理事会の注意を喚起する。

第十三条 他の国際協定との関係

この条約のいかなる規定も、千九百二十五年のジュネーヴ議定書並びに千九百七十二年四月十日にロンドン、モスクワ及びワシントンで署名された細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約に基づく各国の義務を限定し又は軽減するものと解してはならない。

第十四条 紛争の解決

この条約の適用又は解釈に関して生ずる紛争は、この条約の関連規定に従い及び国際連合憲章の規定によって解決する。

この条約の解釈又は適用に関して二以上の締約国間で又は一若しくは二以上の締約国と機関との間で紛争が生ずる場合には、関係当事者は、交渉又は当該関係当事者が選択するその他の平和的手段(この条約に規定する適当な内部機関に対し提起すること及び合意により国際司法裁判所規程に従って国際司法裁判所に付託することを含む。)によって紛争を速やかに解決するため、協議する。関係締約国は、いかなる措置がとられるかについて常時執行理事会に通報する。

執行理事会は、執行理事会が適当と認める手段(あっせんを提供すること、紛争当事国である締約国に対し当該締約国が選択する解決のための手続を開始するよう要請すること及び合意された手続に従って解決するための期限を勧告することを含む。)によって紛争の解決に貢献することができる。

会議は、締約国が提起し又は執行理事会が注意を喚起する紛争に関係する問題を検討する。会議は必要と認める場合には、第八条21(f)の規定に従い、これらの紛争の解決に関連して補助機関を設置し又は補助機関に任務を委託する。

会議及び執行理事会は、それぞれ、国際連合総会が許可することを条件として、機関の活動の範囲内において生ずる法律問題について勧告的意見を与えるよう国際司法裁判所に要請する権限を与えられる。このため、機関と国際連合との間の協定を第八条34(a)の規定に基づいて締結する。

この条の規定は、第九条の規定又は事態を是正し及びこの条約の遵守を確保するための措置(制裁を含む。)に関する規定を害するものではない。

第十五条 改正

いずれの締約国も、この条約の改正を提案することができるものとし、また、4に規定するこの条約の附属書の修正を提案することができる。改正のための提案は、2及び3に規定する手続に従う。4に規定する修正のための提案は、5に規定する手続に従う。

改正案については、すべての締約国及び寄託者に対して回章に付するため事務局長に提出する。改正案は、改正会議においてのみ検討する。改正会議は、改正案の回章の後三十日以内に、三分の一以上の締約国が改正案を更に検討することを支持する旨を事務局長に通報する場合に開催される。改正会議は、改正案の検討を要請する締約国が早期の開催を要請する場合を除くほか、会議の通常会期の後直ちに開催される。いかなる場合にも、改正会議は、改正案の回章の後六十日を経過するまで開催されない。

改正は、次の(a)及び(b)の要件が満たされる場合には、(b)に規定するすべての締約批准書又は受諾書を寄託した後三十日で、すべての締約国について効力を生ずる。

(a) 改正会議において、いかなる締約国も反対票を投ずることなく、すべての締約国の過半数の賛成票により採択されること。

(b) 改正会議において賛成票を投じたすべての締約国が批准し又は受諾すること。

この条約の実行可能性及び実効性を確保するため、附属書の規定は、修正案が運営上の又は技術的な性質の事項にのみ関連する場合には、5の規定に従って行われる修正の対象とする。化学物質に関する附属書のすべての修正は、5の規定に従って行われる。秘密扱いに関する附属書のA及びCの規定、検証附属書第十部の規定並びに検証附属書第一部に規定する定義であって申立てによる査察にのみ関係するものは、5の規定に従って行われる修正の対象としない。

4に規定する修正については、次の手続に従って行う。

(a) 修正案は、必要な情報と共に事務局長に送付する。すべての締約国及び事務局長は、当該修正案を評価するための追加の情報を提供することができる。事務局長は、すべての締約国、執行理事会及び寄託者に対し、当該修正案及び情報を速やかに通報する。

(b) 事務局長は、修正案の受領の後六十日以内に、この条約の規定及び実施に及ぼし得るすべての影響を把握するために当該修正案を評価するものとし、その結果についての情報をすべての締約国及び執行理事会に通報する。

(c) 執行理事会は、すべての入手可能な情報に照らして修正案を検討する(当該修正案が4に定める要件を満たすか否かについての検討を含む。)。執行理事会は、当該修正案の受領の後九十日以内に、適当な説明を付して、執行理事会の勧告を検討のためにすべての締約国に通報する。締約国は、十日以内にその受領を確認する。

(d) 執行理事会がすべての締約国に対し修正案を採択することを勧告する場合において、いずれの締約国もその勧告の受領の後九十日以内に異議を申し立てないときは、当該修正案については、承認されたものとみなす。執行理事会が修正案を拒否することを勧告する場合において、いずれの締約国もその勧告の受領の後九十日以内に異議を申し立てないときは、当該修正案については、拒否されたものとみなす。

(e) 執行理事会の勧告が(d)の規定に従って締約国によって受け入れられない場合には、会議は、次の会期において実質事項として修正案の承認についての決定(当該修正案が4に定める要件を満たすか否かについての判断を含む。)を行う。

(f) 事務局長は、この5の規定に基づく決定をすべての締約国及び寄託者に通報する。

(g) この5に定める手続に従って承認された修正は、他の期間を執行理事会が勧告し又は会議が決定する場合を除くほか、すべての締約国につき、事務局長が当該承認を通報した日の後百八十日で効力を生ずる。

第十六条 有効期間及び脱退

この条約の有効期間は、無期限とする。

締約国は、この条約の対象である事項に関係する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認める場合には、その主権を行使してこの条約から脱退する権利を有する。この権利を行使する締約国は、他のすべての締約国、執行理事会、寄託者及び国際連合安全保障理事会に対しその九十日前にその旨を通告する。その通告には、自国の至高の利益を危うくしていると認める異常な事態についても記載する。

この条約からの締約国の脱退は、国際法の関連規則、特に千九百二十五年のジュネーヴ議定書に基づく義務を引き続き履行することについての国の義務に何ら影響を及ぼすものではない。

第十七条 附属書の地位

附属書は、この条約の不可分の一部を成す。「この条約」というときは、附属書を含めていうものとする。

第十八条 署名

この条約は、効力を生ずる前はすべての国による署名のために開放しておく。

第十九条 批准

この条約は、署名国により、それぞれ自国の憲法上の手続に従って批准されなければならない。

第二十条 加入

この条約が効力を生ずる前にこの条約に署名しない国は、その後はいつでもこの条約に加入することができる。

第二十一条 効力発生

この条約は、六十五番目の批准書が寄託された日の後百八十日で効力を生ずる。ただし、いかなる場合にも、署名のための開放の後二年を経過するまで効力を生じない。

この条約が効力を生じた後に批准書又は加入書を寄託する国については、その批准書又は加入書の寄託の日の後三十日目の日に効力を生ずる。

第二十二条 留保

この条約の本文については、留保は付することができない。この条約の附属書については、この条約の趣旨及び目的と両立しない留保は付することができない。

第二十三条 寄託者

国際連合事務総長は、ここに、この条約の寄託者として指名されるものとし、特に、次のことを行う。

(a) すべての署名国及び加入国に対し、各署名の日、各批准書又は各加入書の寄託の日、この条約の効力発生の日及びその他の事項に係る通告の受領を速やかに通報すること。

(b) この条約の認証謄本をすべての署名国政府及び加入国政府に送付すること。

(c) 国際連合憲章第百二条の規定に従ってこの条約を登録すること。

第二十四条 正文

この条約は、アラビア語、中国語、英語、フランス話、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とし、国際連合事務総長に寄託する。

以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けてこの条約に署名した。

千九百九十三年一月十三日にパリで作成した。

{填はてんとルビ}