イスラーム地域研究5班
研究会報告

第 6 回「回儒の著作研究会」報告

日時 : 12月 11 日(土)13:30〜  
場所 : 東京大学文学部アネックス
第 6 回の研究会では、前回に引き続き劉智の『天方性理』について以下の部分を取り上げ、読解を進めたのに加え、『天方性理』の版本の種類と系統についての発表がなされた。

 [ 1 ]「図伝第 1 章第 8 節」
     発表・翻訳担当 鈴木弘一郎(東京大学大学院 博士課程)
 [ 2 ]「劉智『天方性理』の版本について― 国内各図書館所蔵本を中心に ―」
     発表 佐藤 實(関西大学大学院 博士課程)

 [ 1 ] では、先天における性・智の残滓である「元気」が、後天において起化する段階を解説した「陰陽」の節を取り上げ、読解をすすめた。この節の冒頭には、「陰陽始分図」「陰陽終分図」「陰陽変分図」の 3 図が示されているが、「陰陽変分図」は次節への導入であるため、「陰陽終分図」までの 2 図を用いてこの段階は説明される。ここでは、「元気」中に混在していた陰・陽が、外側にに向かおうとする陽の性質と内側に向かおうとする陰の性質に従い、分離していくと説かれる。読解の中でとくに指摘されたのは、劉智が『太極図説』と類似した用語を使用しつつ陰陽の配置が異なるものが見られること、すなわち『太極図説』においては右陰左陽の配置であるのに対し、この節における後半の 2 図においては左陰右陽となっている点であったが、劉智がいかなる意図によりこの配置を用いたかについては以降の検討課題とされた。

 [ 2 ]では、現在知られている 7 種類の『天方性理』版本のうち、日本国内に所蔵されている 4 種類の版本について、版本中に含まれる序文の相違等についての検討を通じ、系統づけが行われた。ここで今後の課題として提出されたのは、日本国外に所蔵されている『天方性理』の種類と系統についてであり、『天方性理』等の回儒の著作は中華人民共和国の各図書館の発行する古籍一覧にも記載されることが少ないため、現地の図書館・研究機関・清真寺(マスジド)の所蔵版本についての調査の必要性が指摘された。
(文責:黒岩 高)


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